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ミステリの祭典

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厳冬之棺

作家 孫沁文
出版日2023年09月
平均点7.80点
書評数5人

No.5 7点 虫暮部
(2024/02/09 13:22登録)
 冒頭の推理小説家の件も含め、四つの密室のアイデアはどれも驚きで嬉しくなった。が、ツッコミどころもあるんだなぁ。うーむ。
 
 (陸家)第一の密室:トリックに使った或る道具に、そこまでの強度は無いだろう。そしてそれ以上に、あの方法では水圧に逆らってドアを閉められないだろう。

 第二の密室:現場見取図を見ると、そもそも棚のうち一つが家具の配置のせいで使えない。
 しかし、私の部屋でも本棚の前には溢れた本が積んであって、いちいちどかさないと奥の本を取り出せない。こういう不便がうっかり生じるのはよくあることだ。
 つまり、作中で予め指摘しておけば “よくあることだ” で済むのに、トリック解明時にいきなり注目するから “不自然な配置が推理に都合良く存在した” ような印象になってしまう。

No.4 8点 レッドキング
(2023/10/17 22:28登録)
” ついに現る!中国のジョン・ディクスン・カー ”
て、ことで、お通し2皿に、大皿3ディッシュの密室フルコース、さらに犯人Whoツイスト一皿付き・・太好了!
      「地」見立て、入口水没密室に、1点。
      「水」見立て、犯人消失密室に、3点。 
      「空」見立て、頭部切断密室に、2点。                 
      そこに、先付け密室と嬰児殺しネタへ+2点。犯人ドンデン返しは・・むしろ残念で -1点。
      さらに、密室を前面に出す態度に好感、1点おまけ。計、8点。
このサイトで知り初めて読んだが、何か大らかやね、中華ミステリ。大和民族よりも人間がスレてないのか、漢民族。猟奇殺人SMネタは許されているのね、中共検閲。
※「ガンダム」「ウルトラマン」日本料理店etc・・作者、日本マーケット狙ってんのかな、考えすぎか・・・再見!

No.3 8点 みりん
(2023/10/01 19:27登録)
お二方の書評で気になり、普段読まない翻訳物を購入。5時間の楽しい読書体験でした。
トリックを重視する方・不可能犯罪に興奮を覚える方・実現可能性を気にしない方・島田荘司が好きな方
ぜひ1200円を握りしめて書店に向かいましょう。 

【ネタバレあります】



密室殺人×3に見立て殺人に首無死体となんとサービス精神旺盛なミステリでしょう。
トリックはいつも通りちっとも見当がつかないのですが、私途中で確信を持って犯人が分かってしまいました。何作品ぶりの快挙かと喜びを噛み締めていると、「密室の王」はそこまで甘くなかったです。
ハウダニットとフーダニットどちらも高い次元で楽しめるでしょう。
不満点を挙げるとすると作中の謎が100%明かされないこと(続編匂わせか?)。あとタイトルの『厳冬之棺』と装丁から想像していた荘厳で幻想的な雰囲気が欲しかったことでしょうか。

No.2 8点 nukkam
(2023/09/26 13:50登録)
(ネタバレなしです) 中国の孫沁文(スン・チンウェン)(1987年生まれ)は2008年に推理小説家デビューして2021年までに57作の短編を発表していますが何とその内44作で密室の謎解きがあるそうで、これは米国のエドワード・D・ホックを連想しますね。長編第1作となるのが2018年発表の本格派推理小説の本書で、やはり密室の謎解きがあります。天才漫画家の安縝(あんしん)が第6章で「恐ろしい伝説がつきまとう薄暗い屋敷、男児しか生まれない不思議な一族、胎児の形をした怪しい湖、幽霊のような連続殺人犯。漫画にしたら絶対に面白くなりますよ」と興味深々で語ってますが、推理小説としても面白い内容でした。密室の謎も非常に凝っているしトリックも独創的(特に水没密室トリックは漫画化や映像化したらインパクトありそうです)、犯人当てとしても充実の推理を楽しめます。解決後の終章では名探偵役だった安縝をしびれさせる推理が突き付けられ、続編への期待を高めて締めくくられます。

No.1 8点 文生
(2023/09/26 06:19登録)
富豪の屋敷で起きた奇怪な連続密室殺人に名探偵が挑む!
といった感じのクラシカルな本格ミステリですが、探偵が人気漫画家でヒロインがアニメ声優という現代風の設定なのがユニーク。
3つの密室もそれぞれ凝ったトリックが用意されており、楽しませてくれます。
その他にも本格好きを楽しませてくれる仕掛けや設定が盛りだくさん。
トリックや動機の面でリアリティを犠牲にしている点は好みの分かれるところですが、今まで紹介された華文ミステリのなかでもかなり上位の作品です。
作風は日本の新本格の主流となっている叙述トリック、特殊設定、クイーンばりのロジックなどとは異なり、”ロジックよりトリック”な感じでしょうか(もちろんロジックが皆無というわけではなく、名探偵による推理自体は魅力的です)。日本のミステリー作家でいえば、島田荘司、二階堂黎人、加賀美雅之、小島正樹らに近いといえます。
ちなみに、作者の孫沁文は中国のディクスン・カーこと鶏丁の別名義。2018年に発表された本作が著者の初長編となります。

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