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ミステリの祭典

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山妣

作家 坂東眞砂子
出版日1996年11月
平均点7.50点
書評数4人

No.4 7点 レッドキング
(2023/10/13 07:58登録)
「これ採点しよ思ったまま数年すぎた」作品その二。雪山深くに生息する伝説の山姥・・中世近代~現代「父系権威家族」日本のアンチテーゼの如く伝承された・・山姥の生きた浪漫物語。別に本格ミステリでもなんでもないが、敬意を表して点数大いにオマケ。

No.3 7点 TON2
(2012/11/11 16:22登録)
新潮文庫
直木賞受賞作。
明治30年代、冬は雪に閉ざされる越後の山奥の村。そこには、山に入ると山姥に食われるという伝説が息づいていた。
金山街の遊郭から金を盗んで男とともに逃げた遊女。その女は金を持った男に捨てられ、山人に救われ、今は山の中に一人住む。東京から芝居指導のために村を訪れた両性具有の役者。村の庄屋の息子と女房は役者とできてしまうが、二人は山姥と恐れられる遊女の子どもたちであった。
熊狩りの日、因果はめぐりめぐり村人たちの上におそいかかる。
人間の業が生み出す壮絶な運命を濃密に描いた伝奇小説です。

No.2 6点 touko
(2010/02/16 23:48登録)
坂東真砂子は好きで全作読んでいます。
これはずいぶん前に読んだのですが、いさがなぜ失踪しなければならなかったのか、古代人のような山妣と化したのかというのがミステリと言えばミステリ?

この作家は、近年のこなれた感じのちょっとエロティックな短編とかの方が個人的には好きなんですが、直木賞受賞作だけあって、この作家特有の思想性を前面に押し出しながらも理屈っぽくはなく(フェミニズム臭が気になる方は気になるかも?)、民俗学の絡め方も業の部分の昇華の仕方もうまく、エンタメとしてよく出来ている、万人向けの大作です。

ネットでは毀誉褒貶の激しい作家ですが、その歪みや怨みや業を、作品に昇華させる力はたいしたもので、アマゾンの評などでは、猫殺しは許せないけど作品はいいね、などと10代の女の子たちにも言われているくらいです。

No.1 10点 Tetchy
(2008/05/11 14:52登録)
大傑作!
とにかく凄まじいほどの物語の力だ。
東北の雪深い山奥にある村に訪れる落ちぶれた役者たちの来訪が、悲劇の始まりとなっている本書は今までの坂東作品のフォーミュラを踏襲しているが、各登場人物の書き込みが群を抜いて濃厚。しかも捨てキャラなし!
特にいさの物語が凄まじい!

ところで本書の紹介文や帯には人の業が織成す運命悲劇というような文句がさかんに謳われているが、それよりも私は山が愚かな人間に振り下ろす鉄槌の物語だと思った。
山が生き物であるかのように人間の運命を翻弄する。

読後はあまりの物語の力に呆然となった。坂東眞砂子、恐るべし!

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