YMYさんの登録情報 | |
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平均点:5.91点 | 書評数:386件 |
No.46 | 5点 | ここを過ぎて悦楽の都 平山瑞穂 |
(2019/06/13 20:09登録) 現実と夢との間を漂うような体験が描かれた異色作。 どうしようもない不安と危うい快楽がないまぜになった「カフカ的な世界」に迷い込んだ青年の物語。現実世界を理不尽で醜いものと感じ、他人ばかりか家族ですら苦手に思い、絶えず生きづらさを抱えている人ならば、本作はあらがいがたい魅力を感じるでしょう。 |
No.45 | 5点 | てのひらに爆弾を 黒武洋 |
(2019/06/02 08:13登録) 罪なき市民を恐怖に陥れる衝撃的な物語。 携帯電話が爆発し、女性が重傷を負った。やがて同様の事件が起き、犯人は携帯電話会社に5千万円を要求してきた。だが、その後の犯人の動きはいささか不可解なものだった。犯人の目的は?なぜ携帯電話会社を脅迫するのか? 無差別殺人という大胆な犯罪を描く本作。だが、社会のあちこちで起こる救いようのない悲劇を止めるには、それだけのショックを与えなければならないのかもと思わせる説得力がある。社会的サスペンスといえるでしょう。 |
No.44 | 7点 | モリアーティ秘録 キム・ニューマン |
(2019/05/13 19:43登録) シャーロック・ホームズの宿敵モリアーティ教授を描いたパスティーシュ(模倣)小説。 原典にも登場した、教授の手下モラン大佐が残した手記の体裁をとっている。ホームズ作品と微妙に重なり合う、魅力に富んだピカレスク(悪漢小説)に仕上がっている。 博覧強記の作者ならではの、細部へのこだわりも楽しい。 |
No.43 | 5点 | 拳銃使いの娘 ジョーダン・ハーパー |
(2019/05/06 10:20登録) アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀新人賞受賞、アレックス賞受賞作で、少女の成長を描く犯罪ドラマ。 11歳のポリーの前に現れたのは、刑務所から出てきた父。犯罪組織を敵に回した彼は、妻子ともども命を狙われていた。父とともに逃亡の旅を続けながら、ポリーは過酷な境遇を生き延びる力を身に付けていく。 起伏に富んだ展開の中で、父と娘の間に信頼が育つ様子が描かれる。粗削りだが、心を揺さぶる物語。 |
No.42 | 7点 | 死が最後にやってくる アガサ・クリスティー |
(2019/04/24 19:12登録) 再読です。 数あるアガサ・クリスティーの作品で、最初にこの作品を選んで読んだのは自分だけではないだろうか?何故この作品を最初に読んだかというと・・・。特に意味はなくその当時、アガサ・クリスティーという名前は知っていたが、どの作品が有名で知られているかの知識はなく、適当に選んでしまったからです。 古代エジプトを舞台にした作者唯一の歴史ミステリー?(違っていたらすみません)で、謎解きと家族ドラマが融合された本格派推理小説。前半は地味で退屈ですが、後半に入ると一気にサスペンスフルな展開になり楽しめました。 |
No.41 | 5点 | 殺人回廊 梶龍雄 |
(2019/04/08 19:26登録) 第二次世界大戦を背景にした作品。 終戦間際でのスパイ事件という扱われ方の微妙さや、公爵ならではの体面、さらには物不足、食料不足といった時代背景が全て事件に溶け込んで一つのミステリーを形成している点は評価できるが、真相は早い段階で予想できてしまうのはどうかと思う。 |
No.40 | 5点 | 堕天使拷問刑 飛鳥部勝則 |
(2019/03/29 19:24登録) 本格ミステリー小説、ホラー小説、冒険小説さらには恋愛小説が混然一体となっている作品で、詰め込みすぎの感はあるが、途中のとんでもない謎解き、そしてラストの謎解きと共にいい感じ。 ただ全編に渡り、ラノベ調なので好き嫌いは大きく分かれると思う。 |
No.39 | 5点 | 刑事シーハン 紺青の傷痕 オリヴィア・キアナン |
(2019/03/21 10:47登録) 舞台はアイルランドのダブリン。主人公のシーハンは、警視正という階級だが、現場での捜査を好む根っからの刑事。彼女は共感を武器に捜査を進める。そのため、真相を追う過程で、自らも心に傷を負わざるを得ない。丁寧に描かれた警察の捜査活動と、体当たりで事件に挑む刑事の姿が心に焼き付く小説。 |
No.38 | 7点 | オブジェクタム 高山羽根子 |
(2019/03/14 19:44登録) 短編三作を収めている。 描かれている世界にはリアリティーがあり、現実そのもののように見える。だが、その世界は少しだけ、でも決定的にわれわれの「現実」とは違っている。 例えば、表題作では、壁新聞や秘密基地など懐かしいモチーフに彩られているものの、注意深く読めば、実は近未来が舞台であることが分かってくる。変化に乏しい日常の中に、ささやかな奇跡が立ち現れる。たまにはSFもいいなと思わせてくれた作品。 |
No.37 | 5点 | 消せない女 多岐川恭 |
(2019/03/02 18:06登録) 命を狙われつつも本人が気がつかないうちに、強運で助かってしまう人物と、その人物を殺そうとするその他の人物、さらにその計画を頼んでもいないのに阻止しようとする第三勢力まで加わり、本人がのんびり構えている間に周囲で悲喜こもごもの人間模様が繰り広げられるという変わった物語。 作者ならではのユーモアが楽しめるが、プロットは今一つ。 |
No.36 | 4点 | イヴの夜 小川勝己 |
(2019/02/21 20:25登録) 恋人が殺害された揚げ句マスコミに犯人呼ばわりされてしまう男、風俗業界で働く周囲と全くそりが合わない女。二人の共通点は、生き方がこれでもかというくらい不器用なところ。 ミステリのガジェットをところどころ使いつつも、どちらかといえば恋愛小説に近いミステリ。 |
No.35 | 5点 | 殺人群衆 河野典生 |
(2019/02/14 18:42登録) 学生運動が全盛の時代。持て余される若さのエネルギーと狡知に長けた打算とがぶつかるハードボイルド青春小説。 物語は一種の倒叙形式によって進められる。大物政治家の秘密を握り、自らが立つという野望を胸に秘めた秘書と、その姿に反発し同等に渡り合おうとする主人公。さらに無思慮な若者が三者三様の動きを見せる展開はスリリング。 |
No.34 | 6点 | 剣と薔薇の夏 戸松淳矩 |
(2019/02/10 16:03登録) 奇妙な死体の状況に不可解な爆破。見立て?不可能犯罪?その狙いは?そして犯人は誰? 当時の風俗、地理、文化、政治、庶民の生活など、あらゆる角度から丁寧に描かれている。本格ミステリであり、歴史小説でもある。 |
No.33 | 5点 | プロジェクトぴあの 山本弘 |
(2019/02/01 19:24登録) アイドルグループの一員である結城ぴあのは、天然キャラだが、実は物理学と天文学に秀でた天才少女。 そんな彼女が巻き起こす騒動を描いた本書は、ハードSFとライトノベル感覚が融合した痛快ストーリー。 |
No.32 | 5点 | 秘密資産 マイケル・シアーズ |
(2019/01/26 08:58登録) 元花形トレーダー、ジェイスンが主人公で、ニューヨークを舞台にした金融サスペンス。 急死した父親の巨額の隠し資産を探してほしいという依頼に、金に困っていたジェイスンは飛びつくが、彼ばかりか息子の命まで狙われはじめる。このシリーズの読みどころである息子への深い愛情に加え、今回は母性愛にも心を揺すぶられた。 |
No.31 | 8点 | カササギ殺人事件 アンソニー・ホロヴィッツ |
(2019/01/20 17:05登録) たくらみに満ちた作品。 実は作中作であるアガサ・クリスティばりの古典的ミステリと、それを読む担当編集者の物語からなる二重の構成を持っているからだ。 上巻を読めば、下巻を読まずにいられない。入念極まりない計算に感嘆させられた。 |
No.30 | 5点 | ガットショット・ストレート ルー・バーニー |
(2019/01/16 19:33登録) 刑期を終えたシェイクは裏の仕事で出会った女ジーナを救い、大金をめぐる追いつ追われつの争いに巻き込まれる。 カール・ハイアセンを思わせる軽妙な会話、とぼけた味のある登場人物、悪賢い美女とお楽しみが盛りだくさん。 |
No.29 | 5点 | ロング・ドッグ・バイ 霞流一 |
(2019/01/06 10:53登録) 人間から見ると多少不思議に過ぎない事件が、犬の視点からすると通常では、実現不可能となっているところがユニーク。 謎に対して犬たちによる討論場面、一つの謎が明かされないまま現れる謎の数々。裏側には大掛かりなトリックがあり、さらにその解決方法も犬を主人公としているだけに工夫がみられる。 タイトルからしてかなりふざけている。バカミスが合わない人にはおすすめできない。 |
No.28 | 5点 | 天国通り殺人事件 シュテファン・スルペツキ |
(2018/12/09 10:37登録) 目の前で起きた殺人事件の濡れ衣を着せられそうになった元刑事が、無実を証明するため、被害者が働いていた療養所に潜入捜査する。 癖の強い語り口は読者を選ぶかもしれないが、登場人物たちの強烈な個性で読ませる物語となっている。 |
No.27 | 7点 | 容疑者 ロバート・クレイス |
(2018/11/19 19:50登録) ロス市警の刑事スコットは銃撃戦で相棒を失い、それがトラウマになっている。彼は心と体の傷が癒えないまま、主人を失ってやはり傷ついているシェパードのマギーの訓練に取り掛かる。そんな時、銃撃戦の捜査に新たな展開があったことを知り、マギーとともに探り始めるのだった。 スコットの不器用だが粘り強い捜査ぶりも新鮮だが、なによりマギーとスコットが少しずつ心を通わせていく過程が胸を打つ。 犬というのはなんて愛情あふれる忠実な生き物なんだろうと、健気な姿に胸がしめつけられた。 |