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作家 | スティーヴン・キング |
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出版日 | 2013年09月 |
平均点 | 8.00点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 8点 | 猫サーカス | |
(2022/03/15 18:13登録) 分かりにくい題名だが、つまり一九六三年十一月二十二日という意味。ケネディが暗殺されたその日だ。主人公ジェイクは二〇一一年のアメリカ北東部メーン州アンドロスコッギン群リスボンフォールズに住むリスボン・ハイスクールの牧師で、作文の添削や演劇の指導をしている。その作文の中に、社会人学生の書いた、父親の家族殺人が綴られた一編があった。このことが物語の伏線になる。ジェイクはハンバーガーショップのなじみの客。癌で死が間近に迫る経営者アルは、ある日ジェイクを食品倉庫に案内する。そこには、別世界に入る穴があったのである。その別世界とは、一九五八年のアメリカだった。ジェイクはアルの熱望「ケネディ暗殺を止める」ことを実行しようとする。そのために過去の世界で、テキサス州にまで移動して五年間生活をすることになる。この小説自体がアリスの穴のようで、引き込まれたら出られなくなる。まず六〇年代の住居、飲食、ファッション、ジャズにロック、そして歴史である。日本人なのに懐かしい。出てくる町や施設は実在に近くリアルだ。キングの小説の面白さは、生活の中でふと出会う異常体験にある。日常と異常が実は隣り合わせで、そこに突然穴が開く。それはキングの作品に共通している。本書は人の心の中にある「悔恨」を刺激する。あの時あれを止めていればと。では過去を変えればもっと人は幸せになるのか。「今」が無二の瞬間であることを読んだ後、深く納得する。 |
No.2 | 8点 | YMY | |
(2019/07/14 20:03登録) 国際スリラー作家協会長編賞などを受賞したエンターテインメント大作。 高校教師のジェイクは、病に倒れた友人から、過去に通じる「穴」の秘密を託され、同時にケネディ大統領暗殺を食い止めたいという友人の悲願も受け継ぐ。 歴史改変に挑む主人公は、元に戻ろうとする「時間」の法則に勝つことが出来るのか。アクティブでナイーブなSFの王道を行く「あの時間を止めたい」系タイムトラベルもので、ラストには感動さえも与えてくれる。 |
No.1 | 8点 | kanamori | |
(2014/01/29 23:16登録) 英語教師の”ぼく”ジェイクは、死期が迫った友人のアルから秘密を打ち明けられる。それは、50年前の過去に通じるタイムトンネル”兎の穴”の存在だった。そしてアルは、自分に代わってケネディ大統領の暗殺を阻止してほしいとジェイクに告げる-------。 1963年11月22日に発生した歴史的事件、ジョン・F・ケネディ暗殺の阻止を題材にした歴史改変もののSF冒険小説にして、哀切感ただよう恋愛小説。 本書が邦訳出版された昨年は暗殺からちょうど50周年にあたり、また長女キャロラインの駐日大使赴任も重なったこともあって、ちょっとしたJFKブームだった。JFKネタの謀略冒険小説もいくつか出版されたが本書はその決定版といえます。 いやあ凄い、でも長かった。上下巻2段組みで1000ページを超える分量もそうですが、兎の穴が通じているのは”Xディ”の5年も前という設定のため、クライマックスの年に到着するまでの物語が長い。別の事件での予行演習や、最愛の女性セイディーとの出会い、実行犯オズワルドの監視など、ジェイクの過去の世界での行動が手記形式で延々と続くので、正直冗長に感じるところもあった。しかし、それらダラスやジョーディの町でのエピソードは最後に生きてきます。そしてエピローグはなかなかの感涙もの。 「過去は改変されることを望まない」------たびたび出てくるこのフレーズが印象に残ります。 |