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ミステリの祭典

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了然和尚さんの登録情報
平均点:5.53点 書評数:116件

プロフィール| 書評

No.56 6点 クロイドン発12時30分
F・W・クロフツ
(2015/07/28 04:05登録)
「サウサンプトンの殺人」を入手したので、前書きを読んでみると倒叙物とのこと。本作と2つ続けて倒叙物を書いていたのかと思い、本書は2年前に読んでたのを再読。(あまり内容の印象は無かったので)再読で気がついたのですが、犯人の視点で犯罪の構成が描かれるというのに目が行きがちですが、本作では犯人がいきなり逮捕されて裁判で判決を待つ過程が楽しめますね。通常のミステリでは探偵が犯人に証拠を提示して、「まいりました」で終わるのですが、本作では状況証拠が示されるだけで、フレンチの解説は有罪判決の後になっています。(とってつけたようなインタビュー形式で)
裁判では、状況証拠しか無く、弁護側の反対尋問が強烈で、なんか無実の結果を予想させますが、ちょっと意外な有罪判決でした。本件は無罪で、手ぬかりが多そうな執事殺害の方で有罪(実際にフレンチは可能性を語っている)というオチもあるかと思ったのですが、他の有名作と同じになってしまいますね。では、サウサンプトンの殺人に取り掛かります。


No.55 6点 カナリヤの爪
E・S・ガードナー
(2015/07/27 10:51登録)
これまでの作品のような寝技工作や法廷での論争は減っているので、ペリーメイソン物らしくない感じもしますが、複数の事件や人物がぴたり収まる展開には感動です。最初の3作あたりでは、法廷活動が中心で、極論すれば自分の弁護人が無実になれば真相はどうでもよい(じつは真犯人であっても)という感じでしたが、本作では普通に本格物の名探偵的なポジションになっていて、謎を解決します。


No.54 6点 予告殺人
アガサ・クリスティー
(2015/07/23 11:42登録)
改めてクリスティーを続けて読んでみると、天一坊物とでも呼べそうな、なりすましと口封じのための殺人というのが多いですね。今までその印象が薄かったのですが、本サイトのランクでも上位にはこの趣旨の作品は入ってないというのは面白いですね。本作では、「誰が犯人か」から「次に誰が殺されるか」、「誰が偽物か」と推理のポイントが移っていくのが面白かったですが、3人も偽物が出てきてしまっては、もうなんでもありですね。


No.53 6点 ホッグズ・バックの怪事件
F・W・クロフツ
(2015/07/19 21:16登録)
内容の採点の前に、創元推理文庫に−10点。ハヤカワの昔のクリスティーの表紙でもいきなりのネタバレが幾つかありましたが、本作もやってしまいました。ドールハウスの組み立てが出てきた段階で犯人とアリバイ工作確定です。しかも、有力容疑者の1人が最初の登場人物一覧に載ってません。本作も新表紙(あまり手にしたことはないが、かっこいいですね)に変わって、修正されていることを望みます。 で、内容ですが、動機の面で工夫されていて、複数の要素が見事に組み立てられています。この時期のクロフツは絶好調なのかなと思います。減点は、複数犯であることで、アリバイの相互補完というアイデアは良いのですが(実に細かく記述されている)、それならもう一人加えて3人でアリバイ補完がおもしろいのでは(その一人が登場人物に抜けてる人ですが)、なら何人でも。。。 となってちょっと話が台無しになってしまいますね。


No.52 7点 動く指
アガサ・クリスティー
(2015/07/16 11:07登録)
よくある構図かと思いますが楽しめました。犯人は娘のミーガンであるかのように書かれていて、ちゃんと証拠的なものも書かれています。最後にどんでんがえしで夫の妻殺しとなるのですが、それはないやろと感じます。(こっちの手がかりは書かれてた?)
しかし、マープルの説明には納得せざるをえません。例えば、殺されたお手伝いさんは「ミーガンが手紙を入れたのを見た」とミスリードされますが、「だれも手紙を入れるのを見なかった」と考えた方が、その後の行動がしっくりきます。家庭教師へ怪文書がこなかったことも同様です。燻製ニシンのミーガンが、ちょっと個性的すぎるキャラクターのために、人によってどう感じるかで本作の評価は変わりそうですね。


No.51 5点 蒼ざめた礼服
松本清張
(2015/07/15 00:34登録)
世間が防衛問題で騒がしい中、防衛庁がらみということで読んでみましたが、いつもの松本清張スタイルで楽しめました。プラス点は、比較的結末の収まりが良かったこと、マイナス点は旅情が無かったことです。清張ミステリーの楽しみ方として、昭和の歴史物として読む楽しみがありますが、今回は東京湾での海苔の養殖が語られています。ま、私は関東圏の人間ではないので、ピンとこなかったのは残念でした。


No.50 9点 死の鉄路
F・W・クロフツ
(2015/07/10 13:06登録)
これはクロフツの中でも最高に面白かった。背景が鉄道工事であったり図面に関する複写の細かいことが出てくるので、馴染みにくい点が多いが、ミステリーの組み立ては優れてました。一人称に近い人物が犯人で叙述物の感じもあるのですが、その近くに読者的に最有力容疑者が燻製ニシンになっていて、この人物のアリバイが固いが故に(退屈なくらいに丁寧にアリバイが検証される)よけいに引っ張られるのが、作者にしてやられた感があります。最後の勘違いー>活劇展開というのもクロフツらしくて、意外な犯人を盛り上げて良かったです。


No.49 4点 毒を食らわば
ドロシー・L・セイヤーズ
(2015/07/06 16:14登録)
このヒ素に関するメイントリックは印象には残りますね(単純だけに)。まったくありえない話なら専門家のクリスティーから一言ありそうなので、科学的なのかもしれません。と言って、みんなが知ってる常識であればミステリーにならないですね。ストーリー展開は平凡で、注釈が多く読みにくいのですが、描写される生活感や文化には雰囲気を感じることもあります。私にはセイヤーズは面白さのポイントが掴みにくい作家ですね。


No.48 7点 皇帝のかぎ煙草入れ
ジョン・ディクスン・カー
(2015/07/03 15:18登録)
手がかりもよく示されて、無駄な登場人物もない、よくできた作品なのですが、私には物足りませんでした。クリスティーの「そして誰もいなくなった」、クイーンの「Yの悲劇」、クロフツの「樽」(これはちょっとこじつけ)カーの本作や「火刑法廷」と作家のベストと言われる作品にレギュラー探偵が出てこないのは偶然でしょうか? それぞれにでてこない理由が存在するのですが、本作ではフェル博士でも問題なさそう。フェル博士は「そうか 私はとんだ思い違いをしていたんだ」とは絶対に言わないので、探偵役が最初に「ロウズ家内部の犯行」と言わせたいための探偵変更か?


No.47 4点 光る崖
夏樹静子
(2015/06/30 12:21登録)
「テレビでよくやっている女性検事ものの最初の作品」ということで読んでみたのですが、イマイチでした。主人公の女性検事は公私ともにキレがない感じで存在感が薄かったです。


No.46 6点 仮面荘の怪事件
カーター・ディクスン
(2015/06/27 08:36登録)
チェスタートンの短編っぽい内容でしたが、短編の再構成だとは知りませんでした。泥棒が行動する場面で叙述トリックが使われています。カーはトリックの内容が注目されることが多いですが、表現の工夫も素晴らしいです。比較的単純な被害者と加害者の入れ替えですが、この泥棒の行動表現がよく効いています。


No.45 7点 カーテン ポアロ最後の事件
アガサ・クリスティー
(2015/06/21 16:57登録)
ポワロものを順番に読んできましたが、晩年のスタイルは本格とは言えないものなので、本作も期待はなかったのですが、実際に書かれたのが本格全盛期とあって、予想以上の面白さでした。XXX最後の事件の犯人はXXXとか、偶然の審判とか既読感は強いのですが、それらのネタをよくまとめたと思います。読んでいる途中で、殺人を仄めかす犯人(Xですね)はW卿か双眼鏡の人かどっちかなと思って、最初に戻って読み直そうとしたところ、表紙になにやら不自然な双眼鏡のイラストが! このシリースの別の作品でもありましたが、これはダメでしょう。 それはともかくとして、銃撃事件の時にW卿が過去の事件をほのめかしていましたので、こっちが本星かと思ったら、ポワロの解説では、それも双眼鏡の人が吹き込んでおいたとのこと。こういう別解のつぶしが本格ミステリーらしくて好きですね。


No.44 5点 象は忘れない
アガサ・クリスティー
(2015/06/20 09:14登録)
またもや過去の事件についての真相解明でした。「五匹の子豚」の方が生々しい感じがあり、本作は少しもの足りない感じでした。推理のピースは細かく、模様も不鮮明で、いかようにも結果が推理できる展開で楽しめましたが、結果は平凡すぎました。特に、話を持ち込んだ義母が、小悪党(にもなってないか)で途中で消滅したのは残念でした。「息子が殺害され、血筋から問題の婚約者の娘が疑われる」などという展開の伏線は存在するのですが。


No.43 6点 殺人者と恐喝者
カーター・ディクスン
(2015/06/14 09:21登録)
この翻訳タイトルはやっぱり反則ですね。タイトルと本文1行目で全てがわかってしまいますよ。今回は初読なのでまあいいのですが、10年、20年後に再読した時に「あ。これか」って感じになりそうです。再読時に備えてカバーとタイトルのページは破り捨てておこうと思います。 文庫本の麻耶雄嵩氏の解説は良かったですね。「カーが単独犯に拘る」とか犯人の印象の消し方は、なるほどという感じでした。それにしても、カーの作品で使われるトリックは空間認識が必要ですよね。私は数学でも幾何的なものは苦手だったので、どうも読んでいるだけでは、場面が浮かびにくく、本作でも改めて最初から読み直して問題の部屋や窓を書き出してみましたが、うーん。。。 「震えない男」では、落書きのような簡単な平面図が実に重要な図面で驚きました。「アラビアンナイトの殺人」では、複雑すぎて理解不能でしたが、たまたま見つけた英語の原書には詳しい平面図が付いていて、細かな設定の作り込みに改めて感動しました。他にも翻訳時に省略されていることがあるとするなら残念です。以後カーを読む時は間取りとかをこまめにメモしながら読まねば。


No.42 6点 ハロウィーン・パーティ
アガサ・クリスティー
(2015/06/11 13:53登録)
読むに従ってパズルのピースが組み上がっていく見事な作品でした。まあ、各ピースが大きく絵柄もはっきりしているのでゴールが予測しやすいのですが。クリスティーの作品は比較的に別回答がありそう(カーは細かく別解を消していたりする)で、本作も、単独犯でも可能ではないか?(共犯者は殺されている事務員)とか殺人を見たのは殺された本人であっても成り立つやろ、とか思います。しかし、そのパーツを使って横溝的な隠された親子の因縁とかで締めくくられますが、ビジュアル的にもいい感じなので、本格評価としてマイナス1点のところ逆にプラス1点です。


No.41 5点 どもりの主教
E・S・ガードナー
(2015/06/08 20:18登録)
これで9作目まで読みましたが、さすがに既読感があり新鮮さが無いですね。死体(罪体)の登場が遅く、それまでの登場人物は主教他胡散臭いので、ちょっと読みにくかったです。解決もどこまでが犯人とグルなのか理解しにくく、読み直しさせられましたが、それなりに本格の手がかりが示されており、感心します。デラ・ストリートが殺されかかるというテレビ映えしそうな場面もあります。


No.40 4点 第三の女
アガサ・クリスティー
(2015/06/06 09:12登録)
人物が入れ替わっていて、その正体を知る者が殺される。動機の解明が即、犯人につながるため、身元を不明にしたり不可解な状況をつくる。クリスティーでは(あるいは本格では)よくこのパターンが使われますが、本作では、事件そのものを隠蔽し、もう一段深くしてみることを試みたようです。が、ちょっと無理だったのでは。前半が退屈すぎて、後半が急展開過ぎました。前半に死体が出てこない退屈さの埋め合わせでオリヴァ夫人は襲われたんでしょうか?


No.39 4点 複数の時計
アガサ・クリスティー
(2015/06/02 15:38登録)
犯人が推理作家の未刊の作品ノートを参考に、自分の犯罪に利用したという一種の筋書き殺人のようですが、発想力が乏しかったのでなんとも意味のない(不可解ですらない)事件になってしまいました。そうか、この作品の評価が低いのはクリスティーが悪いのではなく、この犯人がだめだめだったんですね。犯人夫婦は過去に海外の遺産を手にいれたことや、姉の存在に関する矛盾など本格の手がかりを示されていますが、なぜか見逃してしまうんですね。この遺産の入手が計画的でなく成り行きの偶然だからかなと思います。成り行きに行えば問題のないものを、仕掛けを考えすぎて手がかりを与えてしまう、本格小説のキモですね。


No.38 4点 鳩のなかの猫
アガサ・クリスティー
(2015/05/30 09:35登録)
本格物として、いろいろと残念な点が多いです。一番気になったのは、一人称的に描写されている部分(本作は多視点になってますが)でその人が犯人であったことですかね。その直後に、別の犯人のアリバイ状況が語られているので、確信犯的なミスリードなのかもしれませんが、フェアプレー派から見れば大ブーイングでしょう。とってつけすぎの結末も余計です。


No.37 3点 天才画の女
松本清張
(2015/05/28 20:52登録)
犯罪要素が少ない作品ですので、本格ミステリー好みの本サイトでは低い評価です。しかし、小説としては6点(楽しめた)ぐらいで、面白さはあります。前半では松本清澄の評論家(本編では美術評論家になってますが)嫌いがちょっとしたファースになってます。(あの評論家先生の説明。。。 あれはないやろ)全体の半分の150ページぐらいから謎の追跡に入りますが、殺人も盗難も詐欺と言えるようなたいそうなこともないのですが、いつもの旅情物で展開します。最後にちょっとサスペンス風になりますが、ごく短く語られる結末はまたもファース的で笑えます。

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