home

ミステリの祭典

login
斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.68点 書評数:1448件

プロフィール| 書評

No.248 10点 時計館の殺人
綾辻行人
(2015/08/14 20:00登録)


胸がいっぱいです。。。。


私の求めてやまなかった、、、「容疑者X」でさえそこには届いていない、、、『悪魔のアリバイ・トリック』はこの館でとうとう発見されました。

早い段階から多くの伏線が大胆に投げ出されますし、色々勘付く人も多いとは思います。。

(これよりネタバレ度、弱より徐々に強)

どう見ても推理小説的にいちばん怪しいのはあの人、という自然に湧く疑惑は序の口もいい所。
この小説の神髄である悪魔的(デモーニッシュ)にして壮大なアリバイトリックを、全ての重要点を正しく押さえて看破する事は極めて困難でしょう。 特に、実は、それが既に亡くなっている某人物の凄まじく強靭な意志で構築された「ある仕掛け」を、生きている某人物が全く別の(しかし過去は繋がっている)強い意志に基づく全く別の意図で利用して云々、、更にその仕掛けを知る人物達は云々、、という背景事情までまるっと窺い知る洞察はなかなか出来ないわざと言えましょう。

さて肝となる時計のトリックですが。。 私はずっと「不定時法」(の応用)を想定していました(時計薀蓄のミスディレクションに引っ掛かったのか?)。 眞犯人が、正午や真夜中にこだわって細工を施していたような気がしたので。。こりゃ思い込みによる誤読だな、きっと。

実は時計たちは、天上的に狂っていると言えるまさかの理由で、不定時法とはまったく異なる、悪魔の様な動きを強いられていたのですね。。。。そしてそれに乗っかって悪魔的アリバイ・トリックを構築し、最後まで貫徹して逃げ切ろうとした本事件の眞犯人。 その犯罪動機もまた、既に亡い某人物が時計たちに狂った動きを強いた動機と同様、我が子への強力無比な愛がその根底にはあった。


さて、不定時法と見当違いはあったものの、時計の動きにこそ巨大な秘密が隠されていると踏んだ私は
「ならばきっと、巻末近くの方に『対照表』の様なリストが印刷されている筈だ!」 
と信じ込み、ハラハラドキドキしつつも(うっかり文字を読んでしまわないよう気を遣いながら)パラパラと後半の頁をめくってみたのでした。。 すると、、果たしてうっすら見えた、明らかに何かを掘り起して白日に晒すが為の『対照表』が!! 
この発見の瞬間の異様な感動を私は忘れられません。 実際に結末まで読み進めると、やはりやはりそれは、ある時間と、また別のある時間の『対照表』でした。 しかしながらその一方は私が思っていた、毎日いちいち落とし前が付いて何度もやり直す「不定時法」ではなく、遥か無限の彼方に向かって人智を超えた収束なのか拡散なのか、あるいは人間らしい悲劇的な超級巨大破綻をイメージ喚起せずにはおかない、悪魔のアリバイ・トリックと呼ぶに相応しい、究極のギミックと言える何物かの核心なのでした。。。。






No.247 5点 日時計
クリストファー・ランドン
(2015/08/14 18:00登録)
妙にcozyな味のある、旧き良き誘拐サスペンス。 意外な結末とかは、無いね。
いや、サスペンスってほどサスペンスも無いね。 と言ってハードボイルドなわきゃ無いし。。 バカ法廷でも恋愛叙述でも冷戦スパイでもない、日時計という自然の力をそのまま使った素朴な道具に想像を絶する驚天動地の仕掛けを施した悪魔のアリバイ・トリック物でもある筈がなく。。
そうだ、やっぱり miniさんの仰った「軽冒険小説」という呼称がとてもしっくり来ると思います。

主人公の男がなんだか自分っぽくて共感出来た、と記憶している。 かなり前の話だけど。


No.246 8点 三角館の恐怖
江戸川乱歩
(2015/08/14 12:16登録)
「フー」と「ホヮイ」がここまで興味深く、しかも論理的、と言うよりむしろ数学的に直結している本格ミステリも珍しいのではなかろうか。 目次にある通り正しく『異様な動機』です。 遺産相続の絡むお話ながら、世評が「動機が凄い」「動機が独特」とあまり言い立てるので、読中「これはもしや。。」とある事に気付き、世評そのものから逆算(文字通り「逆算」、なんて書くとネタばれくさいか)して、評者にはたいへん稀な事ながらきっちりとロジックだけで(逆に勘というものが働けない)犯人と動機を言い当てました。(当時の人だったら、懸賞応募したかったなァ。。) 普段さっぱりロジック萌えしない評者ですが、この小説の中でロジックくんが果たしている役割のスリリングな決定力には最後までハラハラさせられました。脱帽です。

乱歩さんの原作でないって事実は、とりあえず気にしないって事で(?)。 それ以上に気にならないのが、エレベーター内の密室(&アリバイ)トリックね、アレはもう本当にどうでもいいw いや、もちろんあのシーンがあるからこその暗くおぞましい雰囲気、サスペンス、小説の成り立ちなんですけどね。(ってか実はホヮイダニットくさく見せないためのミスディクションなのかあの密室殺人は?)


No.245 7点 十三角関係
山田風太郎
(2015/08/14 11:26登録)
*長篇単体です。光文社文庫より出た「傑作選名探偵篇」の方ではなく。

題名が目を引きますよね。

これはこれは、、眞犯人まったく分かりませんでした。 充分すぎるほど疑い得た人物なのに、これが心理の盲点というヤツか。。 そして殺人の動機、これだってその根源たる部分は思い当たって当然の所、いったい何に目くらましされたのか。

終結近く「噓倶楽部」でのふざけた問答から怖るべき告白合戦へ繋がって行く件(くだり)は推理小説として誠に重厚な一連の時間ですなあ。 ありゃグッと来ますよ。

ただ被害者が世にもグロテスクな状態で発見された経緯についての解決がね、ちょっと簡単に済ませ過ぎではないかとね。

しかしねえ、これだけ主要登場人物をいっぱい出しといて、それぞれの個性を苦無くちゃんと識別出来るってのは、立派な筆だね。

暗闇の中で実行された一連の云々とその背景がね、常より私の追い求める「悪魔的アリバイトリック」をちょっと掠ったかもね。。


No.244 7点 ぼくは明日、昨日のきみとデートする
七月隆文
(2015/08/14 10:40登録)
「イニシエーション・ラヴ」を読んで恋愛はもう嫌気が差したと言うあなたに(そんな人がもしいれば)、本作を強く薦めます。
こちらは本当に綺麗な物語。嫌らしい裏切りなどありません。その代わり、世にも哀しく美しく、頭がぼーっとするほど(過去と未来の両方に向けて)ノスタルジックな、全く別種の反転が待ち受けています。。

(ここよりネタバレ気味)

こ、これはまさかの読まずの出落ち(題名ネタばらし)。。。。 と見せかけて実は何か別なこと企んでるんじゃないかな。。。 と思って読んでみたら本当に題名そのものの内容! でもがっかり感はまるでありません。 現実感の薄いSFファンタジーと現実的な幼く美しいラヴストーリーを交差させ、前者に内在する軽めのセンス・オヴ・ワンダーが後者の哀切極まりないまさかの展開に後ろから眩しい光をこっそり当てていると言った構造。 SFミステリ的大ネタは飽くまで物語を引き立てる魔法の薬でした。

ところでこの小説、なんと、ちょうど半分行ったあたりでそのSFミステリ的大ネタをあっさりばらしてしまいます。 ということは、更にもう一つの反転が最後に待ち受けているんだな。。とミステリ読みは思ってしまいますがさにあらず、後半は「ではどうしてその『大ネタ』がそんなに哀しい事なのか」の核心を突くために費やされます。 その合間合間に、美しい純愛風景をはさみながら。。 否、その日常の風景こそが哀しみの核心だったのですね。。

帯の煽り文句の様に電車内で号泣はしませんでしたが、流石に目頭が熱くなりました。 切ないから、哀しいからというよりむしろ、前述の、過去と未来両方への遠い遠いノスタルジー、こいつが後半途中から徐々に徐々にグゥ~~~ンと迫って来やがってね。

ラストシーン、いい。


No.243 8点 四つの終止符
西村京太郎
(2015/08/13 14:10登録)
母殺しの容疑で逮捕され、憤死を遂げた聾唖の青年。 その無罪を信じて調査を始めた、交流のあった飲み屋の女。。

この哀しさは沁みる。 義憤を湛え、ほの暗く静かな空気感で進む、美しい物語。


No.242 5点 黒蜥蜴
江戸川乱歩
(2015/08/13 10:54登録)
読前の憶測を遥かに上回るべったりの通俗ぶりに仰天!! 三島由紀夫の戯曲でどんだけ化けたのか気になります。

黒蜥蜴の正体に意外性があるわけでもないのは少し残念ですが、謎解き的にびっくりさせる作りの小説じゃないのだから仕方ありません。

往時の挿絵入り(創元推理文庫)で読みましたけれど、絵の彼女(黒蜥蜴)にさっぱり性的魅力を感じず、困りました。。


No.241 6点 目撃者ご一報下さい
山村美紗
(2015/08/12 12:34登録)
ノンシリーズの短編集。 表題作は処女作らしからぬ洒脱な完成度を誇る一品。
全体的に、わたしの好きな佐野洋の短編集に近い雰囲気あり。
古過ぎない昭和の香りを吸いたい方にお薦めします。

偽装の回路 /その日、あなたは死亡し /虹への疾走 /人気作家の秘密 /京都映画村殺人事件 /人形寺殺人事件 /尼僧殺人事件 /椅子とりゲーム /青い札束 /死ぬ前に電話を /目撃者ご一報下さい
(集英社文庫)


No.240 9点 二銭銅貨
江戸川乱歩
(2015/08/11 21:49登録)
(ネタバレ)

短篇「二銭銅貨」単体への評価ってんなら、そりゃもう「満足」ですわ。
最後のツイストだけ取って見たらあきまへん。 そこへ落とすまでの豪腕なミスディレクション、ミスディレクション、ミスディレクション~~~ が実はこの小説の最大の関心事そのもの、というね。 えらい爽快に騙されましたわ~。


No.239 5点 影男
江戸川乱歩
(2015/08/11 21:39登録)
なんだかツルンと読んじゃって、呆気に取られてあらおしまい、って。 イージー過ぎてプチ退屈なとこもあった。 何のオチ無く終わっちゃった。 影男が楽しそうだからいいや。


No.238 6点 魔術師
江戸川乱歩
(2015/08/11 21:29登録)
通俗な話だが、本気の猟奇度ちょっと濃い目、謎解き(勘で)の愉しみも割とある。 真面目に想像すると怖いシーン多々。 犯人は、すぐ分かっちゃいましたけどね。


No.237 5点 動く密室―洋上トリックの謎
斎藤栄
(2015/08/11 21:05登録)
結末はふぅ~んてなもんだけど、読んでる間はまず面白かったっすよ。

古いし、緩いけど、それなりのスケール感はあり。


No.236 4点 倒錯のロンド
折原一
(2015/08/11 20:44登録)
最後、そこまでナニを連発されたら滑っちゃうばかりよ醒めるよ詰まらんよ。
そこまでは結構愉しく読んでたんだ。

現実世界の「乱歩賞獲り」を取り込んでいるのは面白いと思います。 乱歩自身が「陰獣」で試みた悪戯をうっすらと連想させるってなイメージ重層具合で。


No.235 5点 最終電車を待つ女
小林久三
(2015/08/11 16:38登録)
野暮ったい佐野洋、と言った趣だが、決して悪くはない。 が、いかんせん浅いね。「暗黒告知」との落差というか相違は大きい。ま量産期の文庫オリジナルですしね。
再読を唆るわけでなし、読み捨てに最適などと言ってしまいたくなるが、面白い事は面白い。
昭和末期の緩い短篇推理が好きな方に。。 お薦めは敢えてしませんw

個人的には、哀愁の昭和シティ歌謡「最終電車に乗る女(水沢夕子)」の方が好きだ。
その唄のイメージでなんとなく流され読みしちまったかな。

妻の過去 /耳の悪魔 /霧のなかの女 /犬を連れた貴婦人 /最終電車を待つ女 /太陽の墓場
(ケイブンシャ文庫)

うん、どれも見事に内容憶えてない。


No.234 5点 四日間の奇蹟
朝倉卓弥
(2015/08/11 16:09登録)
面白く読めたけど、エンディングに感動も驚きもなかったね!
むしろ物語途上の清冽な雰囲気こそ記憶に残っている。
このミス大賞なのにミステリ要素が極薄なのには驚き。別にそれはいい。


No.233 6点 白い兎が逃げる
有栖川有栖
(2015/08/11 16:00登録)
このアリスさんは良かった。 表題作、女優さんの造形も魅力的、企画の鮮やかなアリバイ崩し、わくわくして読めました。 「地下室の処刑」における「毒殺の理由」と、それが看破されるきっかけ、唸らせるね。


No.232 4点 中途の家
エラリイ・クイーン
(2015/08/11 13:11登録)
世評も良く、かなりの期待を載せて読んでみたら、好みに合わず。
ただ、よく出来たA級推理小説ではあるように思えます。


No.231 8点 靴に棲む老婆
エラリイ・クイーン
(2015/08/11 13:05登録)
こんな家には住みたかないが、外から観るならメルヘンチックでカラフルでミステリ興味も充分のキュートな「館」もの。 もう相当な昔になるけど、読んでいて本当に愉しかったなあ。 エラリーさんの本も、ロジックで来るだけでなく舞台装置に妙な一癖かませてくれると相乗効果で本当に魅力的だ。

あんまり面白いんで母親にも薦めたら「そういう(ガーイキーチーのいっぱい出て来る)話は(気分的に)好きじゃない」と断られたんだ。懐かしいなあ。


No.230 7点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2015/08/10 19:01登録)
(ちょぃとネタバレ)

物語の半ば頃、犯人がどの方向にいる人物かふと勘付き、目の前の光景がグイーンと90度ずれる様なシビレる感覚を得ました。(180度の感覚じゃない所がニクい)

露骨に社会派ミステリへの果し状の様な結末の反転ぶりですが、松本清張の短篇にもこの様な騙しの一篇が有った様な、無かった様な。。

多くの方が言及される通り、ラストシーンが美しく印象的ですね。
私には二冊目の鮎川長篇でした。この辺から氏がだんだん特別な存在になりつつありました。


No.229 7点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2015/08/10 18:35登録)
ご他聞に漏れず、先に犯人と言うか仕掛けを知ってから読みましたが、物語が終盤に及ぶに連れ、仕掛けを知っているからこそのスリルがじりじりと突き上げて来、ポアロが眞犯人を追及する件(くだり)では本当に手に汗握るどころが汗かき過ぎで滑っちゃって握れもしない程でした。 逆に、もし仕掛けを知らずに読んだら(個人的にですが「幻の女」の場合のように)あのポワロによる眞犯人追い詰めのシーンの途中で「まさか!」と勘付いて急性のスリルに一気に襲われたのだと思います。 結末以外の部分がどうにも凡庸に感じられただけに、仕掛けを知ってしまってから読んで意外と正解だったかという気もしますなあ。


ところで、初読時全く気付かなかったのが、クリスティ再読さんご指摘の「死亡推定時刻」の件です。

(ここからはっきりネタバレ)

眞犯人が死亡推定時刻を決める医師であり、尚且つ物語の語り手でもあるという事は、当時まったく見過ごしていましたが、実は私が常々求めて止まない「悪魔的アリバイトリック」にかなり際どい所まで迫った怖るべき作品だったのではないか、と思われてなりません。 こりゃ再読しろという神のお告げでしょうか。

1448中の書評を表示しています 1201 - 1220