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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.105 6点 レイクサイド
東野圭吾
(2015/06/10 08:44登録)
東野作品にしては新機軸にこだわらずあっさり書いた印象。。 と思ってると最後にやっぱりズン!と来た。 子どもを巻き込む陰鬱な内容の割に、妙に薄味なんだけどね。。 何にせよサスペンスと意外な展開/終結は保証付き。 社会派めいたものはさほど感じず。


No.104 3点 誰の死体?
ドロシー・L・セイヤーズ
(2015/06/09 19:02登録)
ところが「ナイン・テイラーズ」に数年先立って読んだこちら(処女長編)はまた何とも。
謎も解決もユーモアもそれなりに読めるのだけど、心の琴線を上滑りして行きました。
不思議なものです。
気品のある文章には好感が持てました。


No.103 9点 ナイン・テイラーズ
ドロシー・L・セイヤーズ
(2015/06/09 18:48登録)
ふとした折、記憶の向こうから聞こえて来る鐘の音たちのきらびやかさに今も幻惑されます。音の洪水と水の洪水に呑み込まれ、世にも怖ろしい事の眞相はいったい何処に漂い着いたやら。
セイヤーズ女史から読者に向けて放たれた壮大な心理トリックの網、推理小説に於ける「殺人とは何か」をあらためて照らし直す大胆で残酷で皮肉な物理トリック、二者は一分の隙無くお互いを支え合い、旧い英国田園を背景に荘重たる謎の大伽藍を打ち立てますが、最後は潔く流されて行きました。。。 構築美に圧倒される奇蹟の一品。


No.102 9点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2015/06/09 05:39登録)
こりゃあもう、ヤヴァいっすよねえ。
かなり若い時節、世評にほだされて読み、最後の最後、の直前、まで騙されました。直前にピン!と来た瞬間のスリルと来たら、こりゃただものでは無かったねえ。
清張もかくやの物語吸引力は凄まじく、だからこそ容易に真相を悟らせない。
古典力爆発の必読作。


No.101 8点 球形の荒野
松本清張
(2015/06/09 05:15登録)
(ネタバレ的)

Aさんはこの世に生きていますが、法的には死んだ事になっています。それは決して覆されません。 Aさんは戸籍を売っていませんし、何らかの間違った死亡診断書を出された事もありません。また、Aさんは自分が生存中である事を近親者や旧い友人にも打ち明けられません。Aさんは監禁されて不自由な身の上というのではありません。 いったいAさんに何があったのでしょう。 

こんなAさんが最重要人物として登場する本作は、最後の最後で涙を誘い、表題の意味を明かします。 歴史の重さが被さる、壮大な社会派サスペンスです。


No.100 8点 北の夕鶴2/3の殺人
島田荘司
(2015/06/09 00:57登録)
私にとって「斜め」とは似て非なる(とは言えバカはバカですが)壮大なトリック解明に辿り着くまでの魅力的な謎と謎解きこそがこの小説の美点の中核。

それにしても、御手洗でなくまさか吉敷警部がこんな事件に遭遇するとは! 彼が主人公のせいで幾分抑制の効いた渋い雰囲気で進む物語が、最後のトリック究明で一気に大バカ大会に突入、しつつも微妙にまだダンディズムの薫りを残している(のか?ww)というまるで泉昌之のマンガを思わせるクスクス笑いの感覚はお笑い的は大好きだけど推理小説としてはどうだかなあ。でも島荘さんの作品(ご本人も?)ってそういう何というか「モテそう+可笑しい」みたいなムウドがどこかしら付いて回りますよね。。
とにかく、面白いです。 長い間、御手洗ものと勘違いしてました。


No.99 7点 消えた乗組員(クルー)
西村京太郎
(2015/06/09 00:33登録)
京太郎海洋期。『消えたタンカー』に続くは、船が消えず中にいる筈の人間だけ消えて発見される、その名も『消えた乗組員(クルー)』。 
「魔の海域」を巡って対立するオカルト研究家と科学評論家の各派。 やがて件の海域に一台の大型クルーザーが出される事となり。。 「海難審判」なる毛色の違った法廷シーンも新鮮。 スピーディーに読めて爽快、納得の一冊。


No.98 6点 フレンチ警部と紫色の鎌
F・W・クロフツ
(2015/06/08 22:39登録)
序盤から登場する主役級かと思えた若い女子があっけなく殺されてしまうサイコ効果(?)にはびっくり。その後も起こる連続殺人の裏側に徐々に見えて来る、不可解な、しかし奇妙に地味とも思える何らかの詐欺事件のようなもの。。 明かされる「悪事トリック」に拙者は「占星術殺人事件」のメイントリックに一脈通じるものを嗅いでしまったのだが、、考えすぎですかな。 だけど本作の主たるトリックを別角度から根気良く煎じ詰めて行くと、実は島荘サン的驚天動地の心理的大物理トリックに行き着くのではないかと、どうにも妄想してしまうのでございます。。 既に誰か何かやってるかも知れませんがね。


No.97 8点 眼の壁
松本清張
(2015/06/08 13:00登録)
詐欺、暴力、差別、謀略と残酷なトリックの渦中を疾走するサスペンス、サスペンス、怖いほど強烈なサスペンス、、、にがっちりと抱き留められた本格推理の力作! 人間社会に棲み付く、事件を産み出した諸々の暗黒要素があまりに生々しく息づいているため、人それを社会派と呼ぶのもごもっともで異論無し!! 壮年期とは言え駆け出し時代の筆に拠るせいか、時折蒼い草の匂いが漂うのも素敵だ。


No.96 9点 理由
宮部みゆき
(2015/06/08 11:48登録)
「黒死館」に寄せた乱歩の序文じゃないが、壮大なこの一篇に埋め込まれた膨大な創作ドキュメンタリー資料の数々から幾つもの硬派な社会派推理小説群が解(ほど)き出されるのではないか、とそんな愉しくも少し苦い妄想をせずにいられない市民物語の巨大集積塔。。。。 の圧倒ぶりに較べて結末だけ意外にあっさりしてしまったか。
とまれ必読の風格漂わざるを得ぬ、重みの一冊。


No.95 8点 大滑空
佐野洋
(2015/06/08 11:33登録)
アウトドア・スポーツを通しテーマに置いた、これは本格ミステリの隠れた傑作短篇集。代表作に数えられていないのがあまりに勿体無い。
大胆な伏線が思いも寄らない場所に音を立てて引っ掛かり、崩れる様にまさかの結末へ。。 言うまでも無く文章は洒落ている。お洒落は通奏低音、主旋律はストーリーと謎解きのデュエット、中盤の分厚いハーモニーがサスペンス、時々エロスのアタックが入っては消える。 「世の中には頭のいい奴がいるんだなあ」という後味を残す。

大滑空 /血滴る矢 /心を読む馬 /絶対本命 /空の蛇 /赤い点が光った
(講談社文庫)


No.94 8点 一本の鉛
佐野洋
(2015/06/08 11:21登録)
都会派佐野洋、初期の佳品。 表題の意味は最後の最後に明かされ、同時に事件の真相も一気に収斂します。
秀れた技巧が悪目立ちせず、ひたすら作品の完成だけに貢献する、フランス音楽で言うラヴェルのようないい香りのする若き熟練の一品。事件は女性ばかり暮らすアパートにて、バーのホステス殺し(昭和!)。容疑者は現場で確保。一見ごく当たり前の事件の様ですが。。

それにしても、これだけ洒脱で明るいムードなのに、ここまで強いサスペンスと深い謎めき度合い。かなり踏み込んだエロティック描写を爽やかに描き切る手管。天性と育った環境の存在を感じさせずにはいられません。日本共産党も惜しいシンパを無くしたものです。


No.93 6点 四十八時間の告発
笹沢左保
(2015/06/07 16:56登録)
暗めの男女関係を基調に置いた本格/サスペンス短編集。 消えた犯人ならぬ「消えた被害者」の謎を追う『幻の殺人』が秀逸。 『雪の女』の、藤沢周平を思わす甘く優しいエンディングも心に残ります。 他もまず良作ばかり。


No.92 6点 三人の登場人物
笹沢左保
(2015/06/07 15:09登録)
主要登場人物を限界ぎりぎり三人まで絞ったサスペンス。芸能界を引退したばかりの清楚な新妻は、マンション階下で殺人事件が起きて以来、人が変わった様に不良化する。疑惑を抱いた夫は旧友の雑誌記者と再会し、調査を依頼するが。。

登場人物が少ないだけに、否が応にも妄想先読みしてしまうが故のサスペンス。その終結は、果たして。。


No.91 5点 シャーロック・ホームズ最後の挨拶
アーサー・コナン・ドイル
(2015/06/04 19:16登録)
薄味の感はありますが、、異色の面白さが全篇通して目を引き、長きに渡り間を置いて書かれた作品達ならではの内容の散らばり加減も手伝って、そう退屈って事も無い。
最後の「最後の挨拶」の風雲急を告げる終わり方はちょっとシビれます。(時代背景もあったでしょう)


No.90 6点 シャーロック・ホームズの帰還
アーサー・コナン・ドイル
(2015/06/04 18:56登録)
「回想」より派手めの印象なのは「踊る人形」等の超有名作比率が増えているせいだと思いますが、出来不出来のムラも見えます。 「冒険」「回想」と並べて格段に点は辛くなりますが、、やはり必読でしょう。


No.89 2点 毒薬の輪舞
泡坂妻夫
(2015/06/04 18:45登録)
妻夫さんの長編だから期待したんだが、こりゃ詰まらなかったな。 精神病棟を舞台に面白い登場人物、印象深い人も出て来るんだが。。 琴線に触れそうで触れません。


No.88 8点 乱れからくり
泡坂妻夫
(2015/06/04 18:41登録)
眞犯人と大まかな全体像は最初のほうでピンと来てしまいましたが、、 それでも物語の力と文章の技、何より作者の愛情が滲み出る「からくり」の臨場感溢れる描写と流れ出る様な薀蓄で、たいへん面白く読みました。


No.87 8点 11枚のとらんぷ
泡坂妻夫
(2015/06/04 17:13登録)
こりゃあ面白い! マジックとミステリー、そこにユーモアを注入、まるでドラマ「TRICK」の様な世界ですね(ユーモアはこっちが良い意味でぐっと緩いけど)。 殺人に使われたトリックは何気に記憶が曖昧ですが、作中作「11枚のとらんぷ」で何気無く触れられる犯人特定の”手掛かり”は印象深く、忘れられません(すぐピンと来ちゃいましたが)。 コージーなのも、こういう腹に一物ありそうなやつは好きだ。 最後の、国際マジックコンベンションでのシーンもなんだか心に残ります。謎が解けても放り出さず、小説をやさしくきちんと締めていますね。


No.86 6点 興奮
ディック・フランシス
(2015/06/04 16:09登録)
エキサイティングな展開ながら適度なリアリティがあり、面白く読みました。
主人公のタフな善人ぶりがいいですね。依頼人の娘とか、頭のおかしい貴族とか、忘れえぬ悪役(大小問わず)もいました。 潜入した厩舎の仕事仲間にも、心に残る奴がいたなあ。甥に鉄道模型を買ってやるんだって言ってた頭の弱い男とか。違ったっけ? 
事件の解決した後、最後にもう一つ又別の急展開を見せる所はなかなかの名場面。何気にハラハラします。
例のシンプルなトリックは、特に驚きはしませんが、記憶に残ります。
そういや最初は英語教材の朗読テープで聴いたんだった。この小説。

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