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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2517件

プロフィール| 書評

No.137 6点 テンプラー家の惨劇
ハリントン・ヘクスト
(2010/04/11 19:15登録)
英国の名門テンプラー家一族の皆殺しを図る連続殺人を描いた本格ミステリ。
この作品には「赤毛のレドメイン家」と同じ要素の批判があると思います。物語が古臭い、トリックが陳腐、明らかにアンフェアな表現、警察が無能すぎる、犯人は残った人物だからミエミエなど。
しかし、真犯人の比類ないような特異な性格を描いた人物造形は一読の価値あり。作者の失敗は、これを本格ミステリとして書いたことだと思います。


No.136 6点 証拠は語る
マイケル・イネス
(2010/04/11 18:54登録)
黄金時代後の英国新本格の旗手の一人マイケル・イネスの大学を舞台にした学園ミステリ。
癖のある作品が多くとっつきにくい印象がありますが、この作品は比較的読みやすいオーソドックスな本格編です。
いきなり隕石で圧死した死体が出てきてどうなることかと思いましたが、大学教授らの人を食ったようなキャラと推理で、本来退屈となりがちなアプルビイ警部の捜査や証人尋問も楽しく進行しています。
油断していたためか、クライマックスのどんでん返しの連続も意表をつかれました。


No.135 5点 フレンチ警部と毒蛇の謎
F・W・クロフツ
(2010/04/11 18:13登録)
クロフツ最後の未訳長編ということで、期待と不安感を持って読みました。
動物園園長の視点で語られる倒叙形式のミステリですが、実行犯(主犯)は別にいて、園長はある手助けをする人物な訳で、殺人行為自体にタッチしていない。そのため、倒叙なのにハウダニットというユニークな構成になっています。この園長が犯罪に関与しなければならなくなった経緯が物語の3分の2を占めていねいに描写されていますが、この部分を楽しめるかどうかで、読者のこの作品に対する評価が別れると思います。
ようやくフレンチ警部が登場し、いつものスタイルになる訳ですが、むしろ一貫して園長の視点で語られていたほうが、クライム・ミステリとして完成度の高いものになっていたような気がしました。


No.134 8点 殺す者と殺される者
ヘレン・マクロイ
(2010/04/10 18:15登録)
英国の某古典怪奇小説が元ネタと思われる騙しのテクニックが冴えたサスペンス・ミステリの傑作。
サスペンス小説といっても本格ミステリの趣向が存分に組み込まれていて、特に冒頭の一行から始まる数々の伏線の敷き具合と回収方法が抜群にうまいと思いました。
中心となる大ネタは、いかにもマクロイが使いそうなものですが、今では使い古されていて、新本格で鍛えられた現代の読者であれば物語中盤で仕掛けに気付くと思われます。しかし、本作の肝は最後の一行でしょう。
読み終えたあと、タイトルの秀逸さに誰もが感動するはずです。
(以下ネタバレ)
「水平線の男」のネタバレもしています。


主人公のハリーが二重人格で、しかも「副人格」の方だったというのがすごい。「ジキル博士(殺す者)とハイド氏(殺される者)」は、二重人格ものではなく薬による変身ものですが、タイトルもシンクロしているので元ネタに間違いないと思います。ハリーとヘンリーとか英米の人名呼称習慣を巧く使っていることにも感心します。
二重人格をトリックにしたミステリの先駆は、東京創元社絶版本の盟友「水平線の男」だと思います。マクロイの10年前に出版されています。
もうひとつの大仕掛けとして、時制の誤認があります。これは、副人格ということを隠蔽するために必要な叙述トリックで、その伏線が尋常でないくらい張られていたことに驚きます。
(2010年4月16日 ネタバレを追記)


No.133 7点 俳優パズル
パトリック・クェンティン
(2010/04/10 17:32登録)
「愚者パズル」に続くパズルシリーズ第2弾。
今回もレンズ博士が探偵役を務め、前作でアルコール依存症から脱却したダルースが語り手となって、初演直前の劇場を舞台に幽霊劇場の謎と連続する怪死事件を解決するという粗筋です。
本格ミステリとして見た場合、大掛かりなトリックはありませんが、怪しげな事情を抱えた俳優たち(飛行機事故で顔を大怪我した人物など)の読者に誤解を与えるような言動が効いていて、動機を上手くミスリードさせています。証拠が明確かはやや微妙ですが、演劇のフィナーレと並行して明かにされる最後のどんでん返しは実にスリリングで劇的です。


No.132 6点 マネキン人形殺害事件
S=A・ステーマン
(2010/04/10 14:01登録)
人形はなぜ殺される。
列車が臨時停車した田舎町でマレイズ警部が目撃したのは、心臓部にナイフが刺さって線路に置かれたマネキン人形だった。
人形のモデルとなった青年、飼い猫と続く怪死を、警部の友人ウェンズ氏が安楽椅子で解く、ミッシングリンクものの隠れた名作。
しかし、人形が殺される理由・・・必然性がないよなあ。


No.131 6点 もう探偵はごめん
コーネル・ウールリッチ
(2010/04/09 23:26登録)
ミステリ短編集、バラエテイに富んだ作品7編収録。
友人の殺人嫌疑を晴らすべく奔走する主人公の悲しい結末「もう探偵はごめん」、ホラー風味の異色作「モンテズマの月」など。
しかし、編中の白眉はタイムリミットものの「バスで帰ろう」でしょうか。
都会の生活に挫折した同じ町出身の男女の出会い、再生へのデッドラインは明朝の故郷行き始発バス。
始発に間に合わないなら次の便にしたら?と言う人とは友達になりたくないです(笑)。


No.130 5点 そして死の鐘が鳴る
キャサリン・エアード
(2010/04/09 22:58登録)
知的ユーモア風味のスローン警部シリーズ、英国本格ミステリ。
改装中の教会内での密室殺人を扱っています。解決編を読んでもトリックがよく分からなかったですが、有栖川有栖の「密室大図鑑」で図解入りで説明されてました。まあバカミスのたぐいですね。


No.129 6点 サムシング・ブルー
シャーロット・アームストロング
(2010/04/09 22:36登録)
サスペンス・ミステリの教科書のような作品。
ヒロインの婚約者が殺人者で遺産目当てであると知った青年は元恋人の彼女を救おうと奔走する・・・。
「何か青いもの」が最後の決め手というのが、うまく決まっていて、読後感もさわやかな佳作です。


No.128 7点 真鍮の栄光
ジョン・エヴァンズ
(2010/04/09 22:05登録)
シカゴの私立探偵ポール・パインを主人公とする正統派ハードボイルド、シリーズ第3弾。数年前に論創社から未訳だった第2作が出版されシリーズ全作読めるようになりました。
ロス・マクほどの作品数もないため、あまり有名でないかもしれませんが、ハードボイルドながら結末の意外性も追求しているところは、ちょっと中期のロス・マク作品に似ている気がします。


No.127 7点 悪党たちのジャムセッション
ドナルド・E・ウェストレイク
(2010/04/09 21:09登録)
不運な泥棒ドートマンダーと仲間たちの騒動記、スラップスティック・コメデイの第4弾。
いつもながら小悪党の仲間たちが面白い。疫病神アンデイ・ケンプ、しゃべくり運転手スタン・マーチなど、会話にしろ動作にしろ、やることなすことツボにはまります。本作は特にギャグが冴え、ドートマンダーの可哀そうなくらいの不運との相乗効果で爆笑もの。
シリーズ最高傑作じゃないかと思います。


No.126 6点 刑事くずれ/ヒッピー殺し
タッカー・コウ
(2010/04/09 20:48登録)
自分の不祥事で同僚を死なせた元刑事、ミッチ・トビンを主人公とするシリーズ第2弾。
ハードボイルド風の再生物語の様相ですが、実はこのシリーズ5冊いずれも本格ミステリの趣があります。とくに本作は密室殺人を扱っており、それもちょっと独特な心理トリックで読ませます。
著者の別名義でも見かけないユニークな作風で、地味ながら埋もれさせるには惜しいシリーズだと思います。


No.125 7点 カジノ島壊滅作戦
リチャード・スターク
(2010/04/09 20:32登録)
犯罪プランナー・悪党パーカーシリーズ第8弾。
組織の依頼で離島にあるカジノを襲撃することになるが、別の集団が介入することで作戦は思わぬ方向へ・・・。
今回はいつもの、仲間集め-計画-準備ー実行の流れでなく、いきなり襲撃に向かう場面から始まる。襲撃後の島からの脱出はまるで冒険小説の味わいで、マンネリ回避の意識が働いているように思いました。
俳優強盗グロフィールドも襲撃メンバーに入っていて、当シリーズからスピンオフした彼を主役とする第1作は、この物語とつながっているのが面白い。


No.124 7点 幻の終わり
キース・ピータースン
(2010/04/09 18:51登録)
ニューヨークの事件記者ジョン・ウェルズが主人公のハードボイルド第2弾。
雪の夜に出会って意気投合した海外通信員の死と残した言葉の謎を追ってマンハッタンを駆け巡ります。
この小説の魅力は主人公の熱い思いと情感あふれる文章です。それと、やはり部下の女性記者ランシング(笑)。登場場面が少なめながら、なぜか存在感大で、アメリカ人女性ぽくないところが非常に惹かれます。
このシリーズ、4作品で終了したのは残念です。


No.123 6点 裏切りの氷河
デズモンド・バグリイ
(2010/04/09 18:17登録)
元英国情報部員が巻き込まれる非情な英ソ諜報戦。
冷戦を背景にした定番のスパイ冒険小説で、どちらかというとギャビン・ライアルが書きそうな物語です。アイスランドという舞台を活かしたアクションの数々は読みごたえがありました。終盤のどんでん返しも、お約束とはいえ、バグリイの小説としては意外な結末を設定しています。
それにしても、早川ノベルスの訳文はどれも読みずらい。


No.122 6点 クリヴィツキー症候群
逢坂剛
(2010/04/09 00:07登録)
現代調査研究所・岡坂神策シリーズの連作ミステリ短編集。
いずれも、スペイン内戦が背景にある謀略がらみのサスペンスで、現代史ですが一種の歴史ミステリとしても読めます。
表題作と「謀略のマジック」が印象に残りました。


No.121 6点 六蠱の軀
三津田信三
(2010/04/08 23:51登録)
完璧な女性を創るために女性の五体を狙う猟奇的な連続殺人犯。
シリーズ第3作は、作中でも触れられているように「占星術」を思わせるアゾート殺人もので、ホラー風味は益々うすくなって、フーダニット志向が強い本格ミステリです。
最後の関係者を集めた謎ときシーンでは、三連続でダミー犯人を指摘するなどニヤリとさせますが、真犯人特定のロジックは甘め。そもそも死相が見えるという探偵の特質があまり生きていないように思いました。


No.120 7点 スカイジャック
トニー・ケンリック
(2010/04/08 21:38登録)
満員の乗客をのせたジャンボジェット機の消失を扱ったユーモアミステリ。著者のスプラスティック・コメデイの原点と言える作品ですが、ミステリとしても飛行機消失トリックのアイデアがすばらしい。
懸賞金目当てに乗り出す若手弁護士と秘書で元妻コンビの漫才風やり取りやドタバタ劇は一級品の面白さで、まさに抱腹絶倒ものでした。


No.119 8点 アデスタを吹く冷たい風
トマス・フラナガン
(2010/04/08 18:56登録)
早川書房の復刊希望投票で創刊45周年、50周年度と連続して第1位に輝いたミステリ短編集です。
某軍事国家の憲兵・テナント少佐ものの連作4編と単発もの3作が収録されていますが、いずれも格調高い文体と意外性を追求したミステリ趣向に溢れた傑作作品集だと思いました。
テナント少佐ものでは、武器密輸の意外な抜け道が意表を突く表題作や、少佐の人物造形が最後の逆転に結びつく「獅子のたてがみ」が読ませます。
単発ものでは、歴史ミステリ「玉を懐いて罪あり」が抜群の出来。15世紀イタリアの密室状況の城内からの秘宝の消失を扱っていますが、警護の聾唖者への尋問など圧倒的な迫力を感じました。密室ものアンソロジーでは「北イタリア物語」のタイトルで収録されていて、そのタイトルの方が好みです。


No.118 5点 飛車角歩殺人事件
本岡類
(2010/04/08 18:20登録)
傍若無人のプロ棋士・神永七段が探偵役を務めるシリーズ第1弾で、著者の長編本格ミステリの第1作。
もともと、オール読物推理小説新人賞を将棋ミステリで受賞しているくらいですから、この世界に詳しいのでしょうが、主人公の造形を含めて棋界の人間関係などまずまず楽しめました。肝心のミステリの部分は、既読感のあるタイトル戦に絡む連続殺人を描いていて、物理的殺人トリックとアリバイ工作もいまいちです。まだ手探りのミステリ創作といったところでしょうか。

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