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ミステリの祭典

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平均点:6.00点 書評数:1859件

プロフィール| 書評

No.319 7点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術
泡坂妻夫
(2010/09/19 21:50登録)
ヨギガンジーシリーズ。
う~ん。泡坂マジック炸裂!という感じでしょうか。
新興宗教団体の跡継ぎ争いに絡む本筋そのものはトリッキーだけど、噂に聞くほどでもないなーという感じで読んでましたが、さすがに「本書」そのものの仕掛けが分かってみると「?!!!・・・」
よくもまぁ・・・、結構苦心したんじゃないでしょうか?
本を○○るというのも含めて、「遊び心」がありますよねぇ・・・
泡坂氏が「ニヤリ」とする瞬間が見えるようです。


No.318 7点 ビター・ブラッド
雫井脩介
(2010/09/17 00:02登録)
お笑い系の要素を加えた、雫井版警察小説といった感じ。
ページ数の割にはグイグイ読ませます。
県警捜査一課係長が殺されるという衝撃的事件に新米刑事の佐原が挑みますが、同じ捜一には実父の島尾刑事も在籍、佐原は母親を不幸にした島尾を恨んで決して許そうとしない、さぁ事件は? 2人の仲は?というストーリー。
ラストはこの2つの要素が絡み合っていき・・・予想外の結末を迎えます。
「ビター・ブラッド」とは、ほろ苦い親子関係(直訳すれば”苦い血”)とでも訳すのでしょうか、言い得て妙とでも言いたくなるタイトルです・・・
島尾の「新米刑事にとって一番重要なのはジャケットだ!」というセリフも笑わせますし、ジャケットプレイは是非実写で見てみたい!


No.317 6点 灰色の仮面
折原一
(2010/09/16 23:44登録)
初期の叙述作品。
久々に再読。
読んでると、何となく後々の「○○者シリーズ」の“はしり”を思わせる雰囲気があります。
灰色の仮面(=パンスト)を被り、独り暮らしの女性を襲う連続殺人犯、ひょんなことから犯人と間違われる主人公の2人を軸として、途中からどちらが「本当の殺人犯」なのか分からなくさせるという、作者お得意の叙述トリックです。
ラストを読んで何か違和感があったんですが、解説によると、改訂版では初版とラストが変わっているとのことで納得・・・ただ、改訂版ではスッキリしすぎて逆に味わいが薄いような気もしますけど・・・
採点は辛めですが、ラストまで読ませる力のある作品ですし、割と好きな作品の一つです。


No.316 5点 もう誘拐なんてしない
東川篤哉
(2010/09/16 23:31登録)
作者お得意のお笑い系ミステリー。
何となく、槇原敬之の昔の曲を思い起こさせるタイトルですねぇ(巻末で解説の大矢氏が同じこと書いてますが・・・)
偶然にもヤクザの組長の娘を助けた主人公が巻き込まれる狂言誘拐、身代金をうまく受け取ったと思いきや、殺人事件に巻き込まれて、さぁたいへん・・・というストーリー。
帯には、本格ミステリーと青春小説の融合なんて大仰なコメントがついてますが、どっちにしても中途半端な出来にしか思えませんでした。
アリバイトリックもごくごく基本的な○○の錯誤を利用したものですし、明らかにパンチ不足気味。
本書の舞台として、下関と門司(もちろん関門海峡も)が詳しく紹介されてますので、土地勘がある方にとってはシンパシーを感じられるかも・・・


No.315 5点 シャム双子の秘密
エラリイ・クイーン
(2010/09/12 21:34登録)
国名シリーズ。
クローズドサークル内の殺人事件や、「読者への挑戦」がないなど、シリーズ中でも異色の作品として有名。
他の方の書評でも触れられてますが、確かに全体的に中途半端感を感じてしまいますねぇ。
異形の双生児や「骸骨」という名の登場人物(すごい名前・・・)など、ちょっとおどろおどろしい雰囲気作りもあり、フーダニットとしての味わいとしては優れていますが、真相は「うーん」という感想。
今回、エラリーの推理は二転三転するのですが、徹頭徹尾トランプによるダイイングメッセージに拘り、推理内容のほとんどがそれだけに終始してしまうのも何か消化不良です。
ちなみに、NYではないためか、いつもの覇気が感じられないクイーン警視の弱気な態度が逆に新鮮でしたけど・・・


No.314 7点 天国からの銃弾
島田荘司
(2010/09/12 21:19登録)
吉敷や御手洗といった御馴染みのキャラクターが全く登場しない短編集。
「謎解き」度は薄めですが、作者らしい独特の世界観、イズムが味わえる佳作でしょう。
①「ドアX」=途中までは訳が分からない展開ですが、ある登場人物の言葉で世界が一変。あと、女性のセックス観の話が妙に身に染みました・・・
②「首都高速の亡霊」=真相は島田流「偶然の連続」によるもの。高速道路と官僚の話は非常に腹立たしい限りです。
③「天国からの銃弾」=真相はあまりパッとしませんが・・・やっぱり発想が斬新。
全3編。
3編とも「東京」を舞台とし、それがストーリー上のスパイスとして効いてる感じ。(それも島田作品らしいところでしょう・・・)


No.313 8点 顔 FACE
横山秀夫
(2010/09/08 23:31登録)
本作もやはり絶品の短編集。
「陰の季節」収録の1編「黒い線」で脇役として登場したD県警の婦人警官、似顔絵のスペシャリスト平野巡査を主人公に据えた作品集です。
①「魔女狩り」=警察対マスコミ。作者得意の設定です。
②「決別の春」=意に沿わぬ配置換えをされた平野巡査の心の動きが手に取るように分かります。(同じく、組織の中で働く人間として)
③「疑惑のデッサン」=女の対決。男には分からない世界かもしれません。
④「共犯者」=意外な犯人と意外な動機。短編には付き物ですよね。
⑤「心の銃口」=結構な長さで中篇と呼ぶべき。婦人警官と銃・・・なかなか難しいテーマですし、それだけ読む者の心を撃ってきます。
全5編+αあり。
とにかく、作者の筆力には脱帽です。主人公はもちろんフィクションなのですが、そんなことは忘れてしまい、思わず「頑張れ!」と応援したくなってしまいました。


No.312 7点 消えた巨人軍
西村京太郎
(2010/09/08 23:16登録)
左門字探偵シリーズの第1作目。
豊富な「誘拐物」のバリエーション、アッと驚く凝ったプロットで有名なシリーズです。
阪神戦に向けて新幹線で大阪へ移動する巨人軍の選手30数名が犯人グループにより鮮やかに誘拐され、球団社長へ5億円の身代金が要求される・・・
やはりプロットの勝利でしょうねぇ・・・左門字対犯人グループの知恵比べのような捜査過程が面白くてグイグイ読まされます。
探偵役としての左門字も実に生き生きと書かれてますし、十津川警部ではなく、こちらをメインキャラにしていたらと残念な気がしてなりません。(もう新作は読めないでしょうねぇ)
ちなみに、監督が長嶋、主力選手が王、張本、柴田、堀内・・・という時代の話。(定岡が新人投手として出てきます。なつかしい・・・)


No.311 7点 太鼓叩きはなぜ笑う
鮎川哲也
(2010/09/08 23:02登録)
「三番館」シリーズ。
本作は創元推理文庫版での同シリーズ第1作。
鬼貫警部や星影龍三を探偵役とする長編の重厚な雰囲気と違い、洒落っ気たっぷり、軽いタッチでグイグイ読ませます。
①「春の驟雨」=アリバイトリックとしては基本どおりなのですが、見せ方がうまいですね。
②「新ファントム・レデイ」=W.アイリッシュの名作「幻の女」を下敷きにはしてますが・・・そこはやはり鮎川流のアレンジ。
③「竜王氏の不思議な旅」=短編ですが、鬼貫物を彷彿させるアリバイトリックが炸裂。ラスト1行が効いてます。
④「白い手黒い手」=白い手の人物と黒い手の人物・・・バーテン氏の推理はちょっと強引な気がしますけど・・・
⑤「太鼓叩きはなぜ笑う」=これもやや変格のアリバイトリック物。バーテンの推理法が鮮やかです。
全5編。
短編もうまいですねぇ。バーテン氏をはじめ、私立探偵・弁護士といったシリーズキャラクターの配役も絶妙です。


No.310 7点 悪魔が来りて笛を吹く
横溝正史
(2010/09/05 15:22登録)
金田一耕助シリーズ。
作者中期の代表作の1つといっていいでしょう。
『悪魔ここに誕生す』という有名なフレーズが頭にこびりついて離れません。まさに、本作はこの「悪魔」の意味を解明するための物語なのでしょう。
「出生の秘密」というギミックは、作者の有名他作品にもたびたび登場してきますが、第二次大戦前後の波乱の時代とはいえ、何とも言えない偶然=運命のいたずらに心を打たれます。
氏の作品らしく、途中のそこかしこに伏線があからさまに明示されているので、純粋な「謎解き」としてはやや不満が残りますし、神戸~須磨~淡路島の場面はもう少しあっさりしていてもよかったような気がします。
本作は映像作品(TV)でも何度か見ましたが、やはり文書よりも映像でより栄える作品なのかもしれません。


No.309 6点 曲った蝶番
ジョン・ディクスン・カー
(2010/09/05 15:05登録)
フェル博士探偵譚の一作。
タイタニック号沈没に端を発する主人公(ジョン卿)の入れ替わり疑惑や、「悪魔崇拝」「自動人形」など事件の周辺に見え隠れするいかにもカーらしい怪奇趣味が見どころの作品。
「犯人の姿が全く見えず、周りに複数の目撃者がある中で、なぜ被害者は喉を掻き切られたのか?」という、いわば開かれた密室の謎が最大のポイントでしょう。
ただ、真相を見破るのはなかなか困難・・・そんな不思議な○○があったなんて・・・と思わずにはいられません。
2人のジョン卿の真贋についても、割とあっさり片が付いてしまったり、悪魔崇拝についても何か中途半端な気がするなど、評判ほどでもないかなという感想。
まぁ、ラスト(第Ⅳ部)での捻りはなかなか効いていて、トータルでは「さすが」と思わせます。


No.308 7点 一の悲劇
法月綸太郎
(2010/08/31 22:44登録)
法月綸太郎シリーズ。
「二の悲劇」とのセット作品ですが、物語のラストに「一」の本当の意味が分かる仕掛け・・・(その辺り、本家の「XYZ」を意識してるんですね)
本作、特に中盤以降は「ミスリード」の連続で読者を欺き続けます。そして、裏の裏が真相かと思いきや、さらなる仕掛けが炸裂!
というわけで、なかなか痺れるプロットですし、他作品のようないらないサイドストーリーや回り道がない点でも良作といえるでしょう。
ただ、「あとがき」で作者が触れているとおり、先行作品の影響をまあまあ受けている部分でやや割引。
余談ですが、本作のリンタローはなかなかカッコいいですね。


No.307 6点 三毛猫ホームズの推理
赤川次郎
(2010/08/31 22:32登録)
当時、一世を風靡した「三毛猫ホームズ」シリーズの記念すべき第1弾。
堅牢な「密室殺人」や複数の犯罪が絡む多重構造の事件など、ミステリーの要素をバラエティ豊かに詰め込んだなかなかの野心作だと思います。
ただし、文体は軽いタッチで読みやすく、頁をめくる手が止まらなくなるなど、さすが一時代を築いた作家だけはあります。
密室トリックはたいしたことはありませんが、ラストは畳み込むようなサプライズの連続・・・ということで普通ならもっと高得点なのでしょうが、ちょっとやりすぎのような気がして、若干引いてしまいました。
でも、ホームズのキャラはいいですねぇ・・・こんなに愛すべきキャラはなかなかいません。


No.306 8点 桜宵
北森鴻
(2010/08/31 22:21登録)
ビア・バー「香菜里屋」シリーズの短編集第2弾。
どれも余韻の残る珠玉の作品集になっています。
①「十五周年」=正直、そんな理由でそこまでするか?という気にはさせられます。
②「桜宵」=表題作に相応しい美しい作品。「御衣黄」という名の珍しい桜がミステリーに華を添えます。
③「犬のお告げ」=なんかありそうでなさそうな、なさそうでありそうな話。”リストラ”が絡むと無条件に切ない話になりますね。
④「旅人の真実」=マスター工藤の親友(?)が登場。
⑤「約束」=工藤が初の地方出張(?)。女って嫌だねぇ・・・と思わずにはいられません。
以上5編。
前作「花の下にて春死なむ」を凌駕する一作。作者にしか書けない独特の作風が光ります。
それにしても、近くに「香菜里屋」があったら、絶対通うなぁ・・・(誰もがそう思うでしょうけど)


No.305 6点 五匹の子豚
アガサ・クリスティー
(2010/08/28 00:07登録)
ポワロ物の一作。
英国の童謡(?)「五匹の子豚」になぞらえた五人の容疑者が登場、ポワロが16年前の殺人事件の真相に迫ります。
5人の容疑者との面談内容や、それぞれに書かせた手紙を順に読ませていく展開に終始していて、確かにこの作品はかなり地味な部類に入るでしょう。
「最も犯人らしいと思わせた部分が実は犯人ではない最大の証拠である」というからくりがラストで示され、その点思わず唸らされます。
ただ、普通に読むとどうしても平板な感じがして、もう少しドラマティックな展開があってもいいなぁという感想になってしまいますねぇ・・・


No.304 7点 七つの棺
折原一
(2010/08/27 23:54登録)
作者のデビュー作「五つの棺」に2編を加えて、再編集した短編集。
黒星警部-竹内刑事の迷コンビシリーズ。
作品の多くは過去の密室物名作のパロディになってます。
①「密室の王者」=ノックス「密室の行者」のオマージュ。ひじょうーにくだらない真相。
②「ディクスン・カーを読んだ男たち」=ラスト、3人の登場人物の独白が面白い。ただ、プロバビリテイすぎる!
③「懐かしい密室」=密室での死体出現を扱ってますが、この「ユダの窓」はあまりに安易。普通気付くだろう!
④「脇本陣殺人事件」=当然あの作品のパロディ。4本指の男も出てきます。真相は肩透かし。
⑤「天外消失事件」=かなり強引だと思うが、プロットは結構好き。
他2編。
辛目の書評を書いてますが、全体的には作者の遊び心が前面に出た異色の短編集といったテイストで割りと気に入ってます。


No.303 6点 翳りゆく夏
赤井三尋
(2010/08/27 23:30登録)
第49回江戸川乱歩賞受賞作。
過去の乳児誘拐事件を巡って、大手新聞社の窓際社員梶(カジ。名は不明)が意外な真相を突き止めるというストーリー。
探偵役のキャラや謎の提示、ラストの意外な展開など、いかにも「この賞の受賞作」という設定や匂いがプンプンしていて、それはそれでまぁいいんですが、最初から「いかにも意外な真犯人役」にピッタリな人物が出てきており、「もしかしてコイツが?」と考えつつ読んでいると、「やっぱりなぁ・・・」というラストを迎えてしまいます。
その分どうしても評価を割り引いてしまうんですが、リーダビリティは感じますし、デビュー作としては十分及第点でしょう。
マスコミ出身者らしく、その辺りの描写にもリアリティを感じさせられます。


No.302 5点 変調二人羽織
連城三紀彦
(2010/08/22 21:51登録)
「幻影城」発表作品を中心とした短編集。
文学的にも味わい深い作品となっています。
①「変調二人羽織」=ひっくり返しの連続で騙し絵のような作品。刑事二人が手紙のやり取りで事件を解くというのも変わってます。真相は肩透かし。
②「ある東京の扉」=一応アリバイトリックものですかねぇ・・・結局、何がどうしてどうなったか判然とせず。
③「六花の印」=時代を異にする2つの事件を並列進行させつつ、最後に交わらせる手法。なかなか鮮やかではあります。
④「メビウスの環」=面白い趣向かもしれませんが・・・なんかモヤモヤ感が残ってしまう。
⑤「依子の日記」=「日記」といえば当然なかに仕掛けがある、というのが常道ですが・・・やはり大きな仕掛けがありました。そうきましたか。
作品のレベルは十分な高さなのですが、どうも個人的な好みからはずれていて、短い作品なのに妙に読みにくさを感じてしまいました。その分辛い評価に・・・


No.301 6点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件
島田荘司
(2010/08/22 21:39登録)
ロンドン留学中の夏目漱石が名探偵S.ホームズと出会ったら・・・というありそうで絶対にありえない設定で書かれた初期作品。
久々に総ルビ版で再読。
解決場面で真犯人を一網打尽にするシーンなどは、ホームズ物の”香り”をよく出していて「ニヤリ」とさせられます。
密室やミイラに関するトリックそのものは大したことはないですが、全体的はよくできている作品でしょう。
ワトスン視点の部分は全く問題ないのですが、漱石視点の部分はシャーロキアンにとっては許せないんじゃないかと思わず心配になりますが・・・
あと、ラストの島田氏の年表(出生から出版年までの)はファンにとっては非常に興味深くてよかった。(若い頃、様々な経験をしてるんですねぇ・・・)


No.300 7点 そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティー
(2010/08/21 00:04登録)
300冊目の書評は歴史的なこの名作で。
今さら私ごときが書評するのもおこがましい限りです。
細かい部分はさておいて、やはり「孤島」というジャンル(?)を確立した意義は特大。
地元の童謡になぞらえて、次々と殺されていく招待客。殺人とともに1つずつ減っていくインディアン人形・・・こういう道具立てだけでもミステリー好きの心を痛いほどくすぐってくれます。
評点としてはやや辛いのかもしれませんが、やはり現代の成熟した同系統ミステリーと比較した場合、サプライズの大きさでやや劣るかなぁという部分で・・・
あと、動機も(10人殺すにしては・・・)

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