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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2940件

プロフィール| 書評

No.1460 7点 転がるダイス
E・S・ガードナー
(2016/07/18 00:30登録)
(ネタバレなしです) 一族のもてあまし者扱いされていたオルデン・リーズは今や大金持ち。その彼が謎の人物宛てに2万ドルの小切手を振り出した。もしもこれが詐欺や脅迫絡みなら、意地悪な親戚がオルデンを禁治産者に仕立てて財産を処理できないようにしかねないという相談をペリイ・メイスンが受けるプロットの1939年発表のペリイ・メイスンシリーズ第19作です。敵対する側は無論ですがオルデン側にも一筋縄ではいかない人物を配するなど複雑な人物模様にメイスンもなかなか大変ですが、しかしそこを見事に切り開くのがやはりメイスンならでは。本格派推理小説としての謎解きも充実しており、なかなか印象的なトリックが使われています。


No.1459 7点 大鴉の啼く冬
アン・クリーヴス
(2016/07/18 00:18登録)
(ネタバレなしです) 日本では1980年代に「新本格派」と呼ばれる作家が登場して本格派推理小説の一時代を築き上げましたが、海外でもこの時期はポール・アルテ、エリザベス・ジョージ、ポール・ドハティ、ジル・マゴーン、ジェニファー・ロウなど本格派の実力者が次々にデビューしています。1986年デビューの英国の女性作家アン・クリーヴス(1954年生まれ)もその一人です。2006年発表の本書はCWAの最優秀長編賞を獲得した作品で「シェトランド島四重奏」の第1作となる本格派推理小説です。文章表現は地味で、後半の祭りの場面なんかはもっと賑やかに盛り上げてもいいのではと思わなくもありませんが単調で退屈というわけではなく、しみじみと読者の心に訴える語り口が何とも心地よいです。謎解きプロットもしっかりしていますが小説としても丁寧に作られているので、ミステリーを読まず嫌いの読者にも試しに読んでみたらと勧められるような作品です。


No.1458 5点 月夜のかかしと宝探し
シャロン・フィファー
(2016/07/18 00:06登録)
(ネタバレなしです) 2004年発表のジェーン・ウィールシリーズ第4作です。やはりこのシリーズはコージー派ミステリーとしては明るさや楽しさは少ないです。第13章で主人公のジェーンが自己を振り返っているように過剰反応、曲解、自己防衛、そして自信喪失と読者の共感を得にくい描写が少なくないのも一つの理由だと思います。謎解きも論理的な説明でありません。本書の1番の読ませどころはジェーンの昔なじみの老夫婦(容疑者でもあるのですが)の抱える問題描写ですが、コージー派どころか読んでて辛くなるような重苦しい人間ドラマを生み出しています。


No.1457 5点 ぶち猫 コックリル警部の事件簿
クリスチアナ・ブランド
(2016/07/16 01:37登録)
(ネタバレなしです) コックリル警部の事件簿とも言うべき本書はブランドの死後の2002年に発表されており、コックリル警部の人物像を紹介したエッセイやショート・ショートまで幅広く収容されています。三幕構成の戯曲「ぶち猫」がなかなかの力作です(上演されたのかなあ)。第二幕で登場人物の動きに「ここは観客に見えなくていい」とか細かく指定しているのが緻密なブランドらしいですね。コックリルが精彩を欠いているのが物足りませんが第三幕のどんでん返しの連続は圧巻です。ショート・ショートの「アレバイ」も切れ味鮮やかです。残念ながら論創社版は英国オリジナル版から4作品が除外されています。その4作品とは「招かれざる客たちのビュッフェ」(1983年)(創元推理文庫版)に収められたコックリル警部シリーズ4短編で、重複しないよう配慮したのでしょうけど名作中の名作「婚前飛翔」だけでも残すべきではなかったでしょうか。これでは論創社版はマニア読者向けではあってもビギナー読者向けとは言えなくなってしまったように思います。


No.1456 6点 荒野のホームズ、西へ行く
スティーヴ・ホッケンスミス
(2016/07/16 01:15登録)
(ネタバレなしです) 2007年発表のアムリングマイヤー兄弟シリーズ第2作はハヤカワポケットブック版の巻末解説の通り、映像化をねらったかのような派手なシーンが満載で特に終盤の盛り上がり方は半端ではありません。推理があっさり過ぎに感じられましたがこれだけ勢いのある展開に押し流されると不思議と不満に感じません。謎解き伏線は再読時に改めて回収することにしましょう(笑)。


No.1455 6点 シャーロック・ホームズのドキュメント
ジューン・トムスン
(2016/07/16 01:06登録)
(ネタバレなしです) シャーロック・ホームズが兄マイクロフトの依頼でフランスの暗殺者と対決する「並木通りの暗殺者」、主人の命が危険にさらされていると家政婦が訴える「ウィンブルドンの惨劇」など、ホームズが公表の許可を与えなかった7つの事件記録を収めた第4短編集で1997年に出版されました。失敗談あり(但しホームズは満足しています)、命がけの仕事ありと多彩な作品が読めますがそれでいてドイル原作の雰囲気を壊すことはありません。人情談的要素のある「フェラーズ文書事件」や、犯人逮捕で終わらずホームズが事件の凶悪性を長々と説明しているのが珍しい「ウィンブルドンの惨劇」が印象に残りました。


No.1454 6点 カオスの商人
ジル・チャーチル
(2016/07/16 01:02登録)
(ネタバレなしです) 1998年発表のジェーン・ジェフリイシリーズ第10作は家族の触れ合いやご近所との付き合いなどの主婦奮闘ぶりが久しぶりにたっぷりと描かれています。どたばたと混乱の中でも親友シェリイとのアマチュア探偵活動はちゃんとやっています。事件も手掛かりも勝手に向こうからジェーンの方にやって来る展開の上に警察より先行して謎解きしていくのですから、メル・ヴァンダイン刑事が感謝といらだちを同時に顔を出すのもごもっとも(笑)。


No.1453 6点 ポカパック島の黒い鞄
シャーロット・マクラウド
(2016/07/16 00:59登録)
(ネタバレなしです) 1989年発表の本書はセーラ・ケリングシリーズの第9作と紹介されることもあるようですがセーラは電話の声のみの出演で完全に脇役です。代わりに「唄う海賊団」(1985年)にも登場した伯母のエマ・ケリングが主人公の番外編的作品です。友人の代わりにコテージ滞在客の世話をする羽目になったエマですが、エキセントリックな客たち相手に臆することもなく仕切っていて十分に主人公ぶりを発揮しています。被害者の登場場面が少なく死後もあまり話題になっていないこともあってミステリーのプロットとしては惹きつける力が弱く、「私は探偵には向いてません」とエマもとまどい気味ですが最後はちゃんと推理して犯人を見抜いていましたね。


No.1452 5点 クッキング・ママの告訴状
ダイアン・デヴィッドソン
(2016/07/15 13:08登録)
(ネタバレなしです) 2000年発表のゴルディシリーズ第9作です。事件に巻き込まれた大切な人間をゴルディが救おうとするお決まりのパターンではなくゴルディ自身が有力容疑者で、しかも何者かに何度も狙われるというのがこのシリーズとしては珍しいですね。他人への思い入れが強くて心配性というゴルディのキャラクターが時に濃すぎると感じる人には本書はややあっさり目の描写なのでその分読みやすいかもしれません(とはいえ悪い方悪い方へと考えすぎ気味なのは相変わらずですが)。ゴルディの探偵癖が宣伝されてしまい、容疑者たちから敬遠されているのも見所です。推理は十分といえず真相はまたも場当たり的に解決されてしまうのは前作「クッキング・ママの真犯人」(1998年)と同じです。


No.1451 6点 臆病な共犯者
E・S・ガードナー
(2016/07/15 12:26登録)
(ネタバレなしです) ミスディレクションが鮮やかな「日光浴者の日記」(1955)ととんでもない展開に驚かされる「怯えるタイピスト」(1956年)の間にはさまれて1955年に発表されたペリイ・メイスンシリーズ第48作の本書はやや地味な印象を受けますがそれでもそれなりの特色を持っています。アメリカの法廷では夫婦は互いの不利になる証言をしないですむようになっているようで、メイスンシリーズでも「カレンダー・ガール」(1958年)などでそれを巡っての法廷駆け引きが見られますが本書ではあのメイスンがその禁じ手を使おうとしているのが大変珍しいです。その顛末(てんまつ)がどうなるかは読んでのお楽しみです。


No.1450 5点 列車の死
F・W・クロフツ
(2016/07/15 12:22登録)
(ネタバレなしです) 1946年発表のフレンチシリーズ第26作で後期の代表作と評価されています。列車とその運行を丁寧に描写しているところは鉄道技師出身の作者ならではの個性が発揮されていてなかなか読ませますがミステリーとしてはそれほど感銘できませんでした。内容は組織対組織の色合いの強いスパイ・スリラーで、フレンチの地道な捜査も描かれているとはいえフーダニットの要素もほとんどありません。あっけにとられるほど「暴力的」解決だったのが珍しいですが、でもこれは私が期待するクロフツとは程遠かったです。


No.1449 6点 女郎ぐも
パトリック・クェンティン
(2016/07/15 12:16登録)
(ネタバレなしです) 1952年発表のダルース夫妻シリーズ第8作でシリーズ最終作(トラント警部も登場します)、ウェッブとホイーラーのコンビ作品としても最後の作品らしいです。本書以降のクェンティン作品はホイーラー単独執筆によるサスペンス小説路線になるのですが本書でも本格派推理小説としての謎解きはあるけれどピーター・ダルースの危機また危機の描写の方にに力点を置いており、後年の代表作「二人の妻をもつ男」(1955年)を彷彿させます。もっともピーターの行動は時に思慮を欠いていて身から出た錆ではないかと思いましたけど(笑)。


No.1448 5点 ロンジン・ティーと天使のいる庭
ローラ・チャイルズ
(2016/07/15 12:10登録)
(ネタバレなしです) 2007年発表の「お茶と探偵」シリーズ第8作で、18章や終盤ではアクションシーンがやや目立っているもののコージー派の気楽に読める雰囲気は損なわれていません。前ぶれ的な推理もなく犯人の正体が唐突に判明してそこからばたばたと真相が明らかになる展開は謎解き好き読者には不満も多いでしょうが、このシリーズはどの作品も解決パターンが似たり寄ったりなのでそこはあきらめましょう(笑)。


No.1447 5点 一瞬の光
アーロン・エルキンズ
(2016/07/14 16:26登録)
(ネタバレなしです) 1991年発表の美術館員クリス・ノーグレンシリーズ第2作です。殺人事件もありますが盗難事件での巻き添えに過ぎません。前作「偽りの名画」(1987年)と同じく手先を使っての(しかも今回はマフィアがらみ)犯罪があるのではせっかく20章でクリスが推理を披露して犯人を指摘していても本格派推理小説としての魅力を落としていると思います。美術好きなら美術及び美術界に関する知識をたっぷり堪能できますし、美術に無関心の読者でもイタリア描写は(料理も美味しそう)楽しめると思います。


No.1446 6点 カウント9
A・A・フェア
(2016/07/14 14:50登録)
(ネタバレなしです) 1958年発表のドナルド・ラム&バーサ・クールシリーズ第18作で、ハヤカワポケットブック版の巻末解説で紹介されているように本格派推理小説要素がかなり強い作品です。しかも密室風の謎というのが珍しいです。但し不可能犯罪的な演出は弱いのですが。ハウダニットに重きを置きすぎて犯人当てとしては推理らしい推理もなく解決してしまったようなところがあります。また密室トリックについてもある大事なところが(ネタバレ防止のため詳しく書けませんが)説明されていないような気がします。むしろ前半の盗難品探しに関する切れ味抜群の推理の方が印象的でした。


No.1445 5点 トム・ブラウンの死体
グラディス・ミッチェル
(2016/07/14 14:13登録)
(ネタバレなしです) 1949年発表のミセス・ブラッドリーシリーズ(本書のハヤカワポケットブック版ではブラッドリイ夫人)の第22作です。解説によればこのタイトルはトマス・ヒューズ(1822-1896)の「トム・ブラウンの学校生活」(1857年)をもじっているらしいです。ちなみに本書にはトム・ブラウンという名の人物は登場しませんし、私はヒューズの作品を読んでいないので本書との関連性があるのかどうかはわかりません。中盤のビネ=シモン式知能検査法の場面は江戸川乱歩の短編「心理試験」(1925年)を読んだ人なら思わずニヤリとしそうです。ミッチェルの作品としては「おとなしい」という評価が多いようですが最終章の衝撃は「ソルトマーシュの殺人」(1932年)や「タナスグ湖の怪物」(1974年)にも劣らないと思います。推理説明が物足りなくて真相に唐突感があるのがちょっと不満です。


No.1444 6点 シャドー牧場の秘密
キャロリン・キーン
(2016/07/14 14:02登録)
(ネタバレなしです) 1931年発表のナンシー・ドルーシリーズ第5作で、以降のシリーズ作品でレギュラー出演することになるナンシーの親友ベスとジョージ(この名前で女の子だったのにはびっくり!)が初登場する作品です。事件は次々起きますがプロットはシンプルで読みやすく(そのため犯人の目的も早々と予想がつきますが)、冒険心くすぐる展開が魅力的です。西部劇的な雰囲気漂う舞台も特徴の1つです(少女読者向けミステリーですから銃撃戦なんかはありませんけど)。


No.1443 6点 猫は鳥を見つめる
リリアン・J・ブラウン
(2016/07/14 12:55登録)
(ネタバレなしです) 1991年発表のシャム猫ココシリーズ第12作です。結構早い段階で犯罪が起きるのですが死体発見者でもあるクィラランもココも捜査には積極的に参加せず、随分と回り道した挙句に唐突に解決されてしまったかのような感じを受けました。でも一応は謎解き伏線を張ってありましたね。


No.1442 5点 無実はさいなむ
アガサ・クリスティー
(2016/07/13 14:19登録)
(ネタバレなしです) 1958年発表のシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。クリスティー文庫版の(濱中利信による)巻末解説でも指摘されている通り、登場人物の個性がないわけではないのですが主人公不在の物語のためかクリスティーにしてはだらだらしたプロットに感じられます(あくまでもクリスティーとしてはですが)。部分的には優れたところもありますけど謎解きも粗いです。


No.1441 5点 水時計
ジム・ケリー
(2016/07/13 13:44登録)
(ネタバレなしです) 英国のジム・ケリー(1957年生まれ)がジャーナリストから作家に転向して2003年に発表したのがフィリップ・ドライデンシリーズ第1作となる本書です。創元推理文庫版の巻末解説でも紹介されていますがドロシー・L・セイヤーズの名作「ナイン・テイラーズ」(1934年)の影響が見られる本格派推理小説です。もっともセイヤーズ作品に時折見られるのどかな雰囲気やユーモアは本書では皆無に近く、ドライデンの不幸な境遇の描写もあって重苦しさとシリアスさに満ちています。ただドライデンが妻以外の女性とベッドインしたりしているのでどこまで読者の共感を得られるかは未知数ですけど。プロットは予想以上に複雑で後期のアガサ・クリスティーが得意とした「回想の殺人」的な展開を見せるのも興味深いところです。

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