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ミステリの祭典

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正義
アダム・ダルグリッシュ

作家 P・D・ジェイムズ
出版日1998年10月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 7点 ことは
(2023/03/09 01:11登録)
ジェイムズ作は、間違いなく、作を追うごとに読みやすくなっている。
1つ1つの描写は相変わらず濃厚だが、各章がそれほど長くなく(章ごとに視点人物は変わるけれど)視点人物が明確なため、全体をすっき見渡せるからだと思う。
全体を概観してみよう。
第1部は、被害者のまわりの人間関係が描かれ、動機があると想定される人物が複数描かれる。(被害者が誰かについては、作者が最初の数行で明かしているので、ネタバレではないかな)
第2部は、ほとんど捜査側の視点で、点景で関係者側が描かれるだけ。ここまで捜査側にふりきった視点は、ジェイムズの過去作にはなかったのではないか? これは、読みやすさに貢献していると思うし、この読み心地は、警察小説の面白さ、もしくは、私立探偵小説の面白さだと感じた。この辺は好み。
第3部で、かなり駆け足で事件が進行する。ここから警察小説/私立探偵小説というよりは、犯罪ドラマになっているかなぁ。ここからラストまで、犯罪ドラマとしてはよいが、謎解きミステリとしての面白さ(謎が解かれたときのカタルシス)はあまりない。ただ、第1部で描かれた殺意のうち”これがこう嵌まっていくのか!”というところて、犯罪ドラマとしては面白かったし、なにより「邪悪に生まれついた人」を説得力をもって描いていて、これはかなり印象深い。
個人的に好みだったのは、終盤の犯罪ドラマの部分の主体がミスキン警部がになっていること。最終版に明かされる”あるちょっとした事実”がミスキン警部に関わってきて、これはなかなか面白かった。その前にも、ミスキン警部が「死の味」のあるシーンを思い出すシーンがあり、ミスキン警部のドラマとしては、「死の味」「原罪」「正義」で3部作なんだなと感じた。いつか「死の味」を再読したら、ミスキン警部のドラマ部分は、圧倒的に初読時より楽しめる気がするなぁ。
また、まだ読んでいないが、この後の作品のあらずじ/ネット感想を参照すると、ミスキン警部のドラマとしてはここまでで一旦区切りで、この後のミスキン警部関連のドラマはトーンが変わっていくと予想している。(継続して読むつもりなので、違ったら今後の作の感想で訂正します)
ミスキン警部関連では、本作の初登場シーンが、終盤のシーンの(ドラマとしての)伏線となっている点もいい。やはり作者は、ダルグリッシュと同じくらいミスキンにも思い入れがありそうで、ミスキン警部推しとしては、今後の作品も楽しみだ。

No.1 4点 nukkam
(2016/07/12 20:12登録)
(ネタバレなしです) 1997年発表のアダム・ダルグリッシュシリーズ第11作です。被害者とその人間関係を描いた第一部など前半はまあまあ快調ですが、ある手紙でかなりの謎が解ける終盤の展開は推理の要素が薄くて本格派推理小説好きには受けにくいと思います。最後にあるどんでん返しが用意してあるのですが過去作品の焼き直し感が強く、作者もそろそろ息切れ気味ではと私は下衆の勘繰りをしてしまいました。

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