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ミステリの祭典

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マダム・タッソーがお待ちかね
クリッブ&サッカレイ

作家 ピーター・ラヴゼイ
出版日1983年04月
平均点5.60点
書評数5人

No.5 6点 nukkam
(2016/07/12 19:43登録)
(ネタバレなしです) 1978年発表の本書はクリッブ部長刑事&サッカレイ巡査シリーズの第8作でシリーズ最終作となった本格派推理小説です(但し本書はサッカレイは登場せずクリッブ単独の物語です)。エラリー・クイーンの「Zの悲劇」(1933年)やウィリアム・アイリッシュの「幻の女」(1942年)のようなタイムリミットが設定されていますがりゅうさんのご講評でも紹介されていますがサスペンスはそれほど強くなく、クリッブの地道な捜査を丁寧に描いてテンポはむしろ遅めです。アガサ・クリスティーの某作品を連想させるトリックが使われていますがトリックそのものよりもクリッブが真相を掴むことによって事件関係者たちが動揺するシーンの方が印象に残る作品でした。

No.4 4点 斎藤警部
(2015/06/24 18:42登録)
歴史的背景はまず興味深く勉強させていただきましたが、物語そのものはどうにも掴みどころが無く、終始ワクワク出来ませんでした。 肌が会わないのだと思います。。

No.3 6点 りゅう
(2011/11/06 22:44登録)
 容疑者ミリアムが容疑事実を認めているにもかかわらず、ミリアムの犯行の実施可能性に疑義があるため、捜査を命じられるクリッブ刑事。ミリアムの絞首刑執行までに残された日数は11日。並行して、ミリアムの蠟人形を制作し、マダム・タッソー蠟人形館に展示する話が絞首刑執行人ベリーの視点で語られます。2つの話が微妙にリンクして、ひねりのある結末を迎えます。
 タイムリミットものですが、サスペンス性はあまり感じられません。クリッブ刑事の捜査は回りくどく感じられ、緊迫感がなく、中盤あたりはやや退屈に感じました。 この作品の筋立てや犯人の企みは、日本人読者にはわかりにくいと思います。クリッブ刑事は長々と捜査をした挙句にミリアムを訊問しているのですが、なぜすぐにミリアムを訊問して疑義を確認しなかったのかと疑問に思います。一応、作品中では、ミリアムが処刑猶予の期待を持っていて、訊問することで動揺をきたすのを避けるためだとの説明があるのですが、腑に落ちません。容疑者の犯行の可能性に係る謎はなかなか魅力的で、うまい解決法なのですが、ちょっと狡いとも感じました。

No.2 6点 kanamori
(2010/12/19 18:08登録)
ヴィクトリア朝ミステリ、クリッブ部長刑事シリーズ最後の8作目。
タッソーの蝋人形館には、極悪人の人形を飾った部屋があり、殺人の罪で処刑がまじかに迫った写真館の妻ミリアムの人形もそのうち陳列されるだろうという、タイトルにブラックなユーモアを感じます。
真相を隠蔽するミスディレクションの手法としては、クリスティ作品などで多用されたものですが、シリーズの中ではミステリ度が高く比較的まとまった佳作だと思います。

No.1 6点 こう
(2008/10/19 02:25登録)
 ヴィクトリア朝を舞台としたクリッブ部長刑事を探偵役としたシリーズの一作です。
 写真館の助手が毒殺され館主の妻が逮捕、死刑が宣告され処刑期日が迫っている時に内務大臣あてに妻の犯行を否定する写真が届き、クリッブ刑事が捜査を命じられ、という発端から始まるストーリーです。
 処刑前のタイムリミットものとしては幻の女はじめいくつもありますがラブゼイはまた違った作品に仕上げています。イギリスは現代では死刑廃止国ですのでこの時代だからこそ書ける作品でしょう。
 トリックも日本の作品を考えればかなり地味ですし手がかりが全て提出されてはいませんが作品自体は一応本格のテイストがあり、最後も一ひねりがあります。
 また容疑者たる館主の妻ミリアムのキャラクターが上手いと思います。他の処刑前のタイムリミットものと違いサスペンス色は強くなくのんびりした印象は減点ですし所謂大技はなく小振りですが水準作だと思います。

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