ダック・コール ハードボイルド・冒険小説、他 |
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作家 | 稲見一良 |
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出版日 | 1991年02月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 7点 | ◇・・ | |
(2023/12/02 20:18登録) 他の村の狩場に入った男が数万羽に及ぶリョコウバトの飛来に遭遇、殺戮と狂乱の一夜を経験する「パッセンジャー」、言葉を発することの出来ないい少年の休園前夜の遊園地での冒険を木製の鴨の視点から描く「デコイとブンタ」など、野鳥を題材にした六編にブラッドベリ「刺青の男」から着想を得た外枠を付した連作短編集。 風景がリアリズムを超越する劇的な一瞬を詩情溢れる筆で現出。その刹那に突き動かされる情動を物語へと巧みに落とし込む。猛々しさと叙情性の共鳴がなんとも心地よい。鳥の象徴性や自然回帰といったテーマ性はファンタジーに近いといえる。しかしながら、生きることを見失いかけた時に読み返したくなる一冊であることに変わりはない。 |
No.7 | 7点 | E-BANKER | |
(2015/05/04 15:09登録) 1991年に発表された作者の第三作目がコレ。 その年の山本周五郎賞受賞作且つ各種ミステリーランキングでも上位を賑わせた作品。 男と鳥が紡ぎ出す珠玉の物語たち・・・ ①「望遠」=映画プロダクションの浮沈を賭け一年がかりで準備されたベストショット。あとはボタンひとつ押せばという時、目の前に現れた“そこにいるはずもない野鳥”・・・。ラストショットを任されていたひとりの男は、刹那野鳥にアングルを向けてしまう・・・。男の行動を擁護するプロダクション社長の台詞が格好いい。 ②「パッセンジャー」=アメリカのある小村。森の中に迷い込んだ青年は、上空を覆うほどの鳩の大群に遭遇する。大冒険の末、鳩を仕留めた青年は勇躍帰村するのだが・・・。鳩やそれを狙う隣村の野蛮な男たちの前で揺れ動く青年の心の描き方に凄み。 ③「密猟志願」=大病を患い職も失った初老の男。キャンピングカーを駆り、手慰み程度の密猟を楽しんでいた男の前にある少年が現れる。初老の男と少年の心の交流が清々しくもあり、なぜか悲しくもある・・・ ④「ホイッパーウィル」=脱獄囚を追う男たちのマンハントを描く一編。これまでの①~③と異なり、ややハードな味わい。主人公の日系アメリカ人が出会う一人の老兵。この男もやはり只者ではなかった・・・ ⑤「波の枕」=これまでの「山の中」から一変、南太平洋のまん真ん中が舞台となる本編。沈没船から投げ出され、大海に漂う男の脳裏に浮かぶのは、故郷・紀州での生活。それも傷ついた鳥たちを助け、育てていく生活。そして、ひとりの少女との出会い・・・。ラストが感動的。 ⑥「デコイとブンタ」=鴨の形をした木彫りの擬似鴨(当然非生物です)の目線で描かれる最終譚(って、かなり強引!)。ブンタという少年と出会い、心を通わせていく(!?) やがて判明する少年の秘密と突如訪れたピンチ。 以上6編。 さすがに評判どおり、何とも言えない雰囲気のある作品。 全編で「鳥」が登場し、男たちの物語に小さくない影響を与えていく存在として描かれる。 動物との関わりをテーマにしたハードボイルド作品もあるが、鳥だけがテーマというのは珍しい。 本作に登場する男たちは「鳥」との関わりを通して成長していく。 それが年端のいかない少年でも、初老の男でも・・・ 人は人として、もちろん男は男として矜持を持って生きていかねばならない。 格調ある文章とともに、そういうメッセージを強く感じた作品。 (タイトル名は「鳩笛」の意味だが、作中に鳩笛は一度も出てこない・・・) |
No.6 | 5点 | ボナンザ | |
(2014/09/13 14:14登録) 日本でもハードボイルドが書けるのかという驚き。 鳥と男の物語。 |
No.5 | 7点 | itokin | |
(2011/10/13 20:14登録) 冒険小説であって、メルヘン調それぞれ読後余韻が残る不思議な作品ですね。 |
No.4 | 7点 | isurrender | |
(2009/08/28 17:33登録) 美しい文章とストーリー かっこいい!の一言ですね 「密猟志願」と「ホイッパーウィル」が特によかったです |
No.3 | 8点 | あるびれお | |
(2009/06/13 06:15登録) ハードボイルドっていうのはこういうものなんだなあって読んだ当時に感じました。「男の浪漫」ですよね、これって。 |
No.2 | 5点 | daiki | |
(2009/06/02 00:26登録) 面白いと思う。けど文章が、なんというかものすごくつっかかる・・・ |
No.1 | 10点 | Tetchy | |
(2007/10/14 21:44登録) 男ならば是非とも読んでほしい珠玉の短編集。 男の不器用さ、腕白少年のカッコよさ、自分の主義を愚直なまでに死守する姿勢など、忘れかけていた人間として大切なものを思い出させてくれます。 そこには作者の生き様さえも見え隠れして、一人の人間として尊敬の念を自然と抱かせてくれる、そんな作品です。 |