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ミステリの祭典

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田沢湖殺人事件
改題『死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#1 追憶(recollection)  田沢湖からの手紙』

作家 中町信
出版日1983年03月
平均点7.29点
書評数7人

No.7 7点 ミステリ初心者
(2024/01/07 02:46登録)
ネタバレをしております。

 この前に読んだ龍神池の小さな死体もそうですが、手に入りづらい名作を復刻してくれるのは非常にありがたいです! 龍神池の小さな死体も大変面白く、その流れでまた復刻レーベルから購入しました。

 始まりは割とスタンダードで、謎の死を遂げた妻の真相を追う堂上と、兄の死の真相を追う奈那。事件を追ううちに15年前の殺人事件が徐々に明らかになっていき…。というありがちなものです。
 途中、15年前の事件を知っていそうな人物が次々に殺され、または交通事故死するというミステリにあり勝ちな展開が続いて(笑)読みづらさはあったものの、密室が出てきたあたりからはかなり速いペースで読むことができました。登場人物こそ多いですが、ほとんどが何かしらで死んでおり、軽いメモ程度でも十分ついていけるレベルでした。


 推理小説的要素について。
 トリックもドンデン返しも盛りだくさんで非常に満足感が強いです。復刻版あとがきには"鮎川哲也+クリスティー"というハードルアゲアゲ文章が書かれていて心配でしたが、ある程度納得できましたw

 トリックとしては、密室・時刻表トリック・電話を使った錯視の3つありました。しかし、個人的にはどれも好みではなかったです…。
 時刻表は個人的にちょっと苦手でしてw 
 密室は多くの人物達の多くの偶然が折り重なっておりますし、ヒントはあれど推理するのが難しく、また真相をみても本当にそれが現実で起こるのか想像できません。
 電話を使ったトリックは仰天しましたが、犯人は危ない綱を渡っている気がしますね。
 鮎川作品もすべて見たわけではないですし、また良いものと悪いものもあるでしょうが、鮎川作品ならばもう少し現実的に実現できそう(と思わせてくれる)トリックがおおいかなぁ~という印象。

 ドンデン返しはとても見事でした! この点についてはクリスティーに匹敵すると思います。
 堂上が妻の死の真相を追う…15年前の殺人事件が出てくる…となれば、十中八九15年前の殺人事件の犯人が現在の事件の犯人と考えるでしょう。よくある展開ですし。それが、丸々ミスリードだったわけですねw
 私は、堂上の登場が最初のみであとは奈那や警察の主観文章ばかりな点、美保の頭痛と堂上の途中の懸念(美保の手術は失敗じゃなかったのか?という文章)をみて、ややメタ的に一瞬だけ堂上が犯人だったらどうなのだろう?と考えましたが、その一瞬だけでしたね;;

 総じて、非常に質の高いドンデン返しものとして評価します。あとがきの通り、添畑や元村死亡時にはまだページ数が残っているので真犯人がいることがバレるのは残念ですが、それでもこのドンデン返しは鮮やかでした。

No.6 7点 ことは
(2023/07/30 00:35登録)
1部の前半はあまり楽しめなかった。「ロール・プレイング・ゲームを、そのままノベライゼーションしたようだ」と思うくらい。「Aは悲しかった」といった無味乾燥な文章で、事件と経過がつづられていくだけなのだ。
これはちょっとつらいかなと思ったが、事件が動き出してからは面白かった。
文章が無味乾燥なのは同じだが、事件が動くこと、動くこと。別の事件が起き、謎があらわれ、謎が解かれ、そしてまた新たな事件が起きる。テーマパークのトラムみたいに、飽きさせない。最後に見えてくる構図も、なかなか魅力的だ。
これは評価が高いのもわかる。
ただ、評価するのは謎解きミステリ好きだけだろうな。文章表現や人物造形にはほとんど魅力がなく、プロット展開のみの魅力だけだから、ミステリ的なプロットに嗜好がない人には、退屈きわまりない作品かもしれない。

No.5 8点 測量ボ-イ
(2020/11/06 20:45登録)
一見2時間サスペンスドラマ(U田Y夫氏作?)風の
タイトルながら、中身は本格度強し。おおいに楽しめ
ました。
個人的にはあの名作「模倣の殺意」に勝るとも劣らな
い評価です。


(ここからネタばれ)
密室・アリバイ・電話トリックと盛りだくさん。
密室は錯覚を利用したものですが、やや微妙。リアリ
ティ重視の人には、納得しないかも。
アリバイは鮎哲ばりの時刻表トリックですが、慣れた
人なら路線図みただけでピンと来るかな?(僕はそう
でした)
電話は公衆電話を用いたトリックですが、これは平成
生まれの人には推理が難しい?(僕は昭和生まれなの
で大丈夫ですが)

No.4 8点 パメル
(2018/01/12 02:00登録)
トラベルミステリっぽい安易なタイトルが残念だが、中身はガチガチの本格もの。
有名な作品群「●●の殺意」と比較しても決して引けを取らないという事で読んでみた。連続する殺人事件に過去の事件を絡ませ、密室トリック、フーダニット、アリバイ崩し、そして作者お得意の叙述トリックなど、本格ミステリの要素がたくさん詰まっていて楽しむことが出来る。
緻密なプロットにストーリー展開も二転三転し、これで決着と思わせてのもう一波乱を持ってくるなど驚かせてくれる。哀愁漂うラストも素晴らしい。

No.3 7点 ボナンザ
(2017/04/02 17:22登録)
お見事としか言いようがない傑作。丁寧な一つ一つのトリックと、全体を覆う大トリックの連携が素晴らしい。

No.2 7点 蟷螂の斧
(2012/10/19 18:45登録)
物語開始と同時に事件が起こり、すぐ謎解きが開始されるので、だれることなく読むことができました。密室や時刻表アリバイトリックなどありますが、それより大きなミスディレクションが本作の読みどころと思います。写真と○○・・・気になっていたのですが、そう来ましたか!ということでやられてしまいました。

No.1 7点 kanamori
(2012/03/30 18:10登録)
脳神経科の権威・堂上の妻で推理作家の美保が、中学の同窓会に出席したあと田沢湖で変死する。妻が15年前のある事件について調査していたのを知る堂上は、関係者に会い妻が殺害されたと確信する、というのが粗筋です。

これは中町信の会心作でしょう。15年前の中学の密室事件のトリックはユニークだけど冷静に見ればバカミスとも言えますし、2本のアリバイ・トリックのうち時刻表トリックは土地勘がないとピンとこないもので、個々のトリックは大したことはないです。しかしながら、美保の残した手紙の断片が挿入される構成の妙と、プロット全体に施された〇〇を誤認させる工夫が秀逸です。プロローグも、作者の他作品と比べ露骨な叙述トリックになっていないのも好感が持てる。

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