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ミステリの祭典

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スカイ・クロラ
スカイ・クロラシリーズ

作家 森博嗣
出版日2001年06月
平均点7.42点
書評数19人

No.19 7点 Tetchy
(2017/07/12 23:13登録)
何処とも知れない、しかし世界のどこかであることは間違いない場所でいつの頃なのかも解らない時代を舞台にいつも以上に仄めかしが多い文章で、世界観を理解する説明めいた文章はなく、主人公カンナミ・ユーヒチの一人称叙述で物語は断片的に淡々と進んでいく。
その内容はまさに空を飛んでいるかのように掴みどころがない。それぞれが何か秘密を抱えているようだが、カンナミ・ユーヒチの一人称叙述で進むこの作品では全てが雲を掴んでいるかのようになかなか手応えが感じられない。それは主人公のカンナミをはじめ各登場人物たちがあまり人に関心を持たない性格だからだ。戦時下の前線にいるパイロットや整備士などにとって今いる仲間はいつ死んでもおかしくない、つまり今日は逢えても明日は逢えるか解らない境遇であるため、他人と距離を置き、ほどほどに付き合う程度の人間関係を構築しないからだろう。だからカンナミが色々質問しても「それを知って何になる?」と云わんばかりに沈黙で応える。しかし日数が経つと次第に打ち解けて断片的に自分のことや他人のこと、そして過去のことが断片的に語られていく。まあ、現代の人間関係と非常に似通っていてある意味リアルでもあるのだが。

そんな独特の浮遊感を持ちながら進む作品はしかし、カンナミたちが飛行機に乗って空を飛ぶとたちまち澄み渡る空の青さと雲の白さとそして眩しい太陽の日差しの下で自由闊達に躍動する飛行機たちの姿とカンナミ・ユーヒチが機体と一体になって空を飛ぶ描写が瑞々しいほど色鮮やかに浮かび上がる。そして敵と相見える空中戦ではコンマ秒単位に研ぎ澄まされた時間と空間把握能力が研ぎ澄まされた皮膚感覚を通じて語られる。それは人の生き死にを扱っているのになんとも美しく、空中でのオペラを奏でているようだ。飛行機乗りでしか表現できないようなこの解放感と無敵感をなぜ森氏がこれほどまでに鮮やかに描写できるのか、不思議でならない。

淡々と進む物語は随所にそんな美しい飛行戦をアクセントに挟みながら、カンナミ・ユーヒチの日常と彼の仲間たちの日常、そして変化が語られ、そして徐々に物語が形を表していく。
カンナミの前任者クリタ・ジンロウは果たして本当に上司の草薙水素が殺したのか?カンナミ、そして草薙が属するキルドレとは一体何なのか?

地面から5センチほど宙に浮いたような感覚で読み進めた本書だったが、最後になってどうにかその世界へと着陸することが叶った。森氏が開いた新たな物語世界。次作からじっくり読み進めていくことにしよう。

No.18 4点 smk
(2013/10/21 20:55登録)
リーダビリティは高いが世界観には入り込めなかった。
飛行用語もあるのでとっつきにくいのかな。
ミステリではないので△1点でこの点数。

No.17 2点 daiki
(2009/06/02 00:39登録)
ミステリではないと思う。「クール」で面白いけど。

No.16 6点 vivi
(2008/08/30 20:25登録)
映画化ということで、映画は見ないけど原作読みたい気に。
で。ミステリではないと思うので、点数は高くないけれど、
楽しめました☆

心情を吐露している主人公が、「人間」くさくないので、
作品世界が、めちゃくちゃ透明です。
何かが指の間からすべり落ちていくのにも気づかないくらい。

物事に価値をつけたり、理屈をつけたり、理由をつけたりすることを、
全て否定してみると、こんな作品が出来るのでしょうね。
小さな子供の頃は、皆そうだったんだよな~・・・

No.15 5点 VOLKS
(2007/08/05 10:44登録)
ふんわりとした感覚に包まれる感じ。
読後感も悪くない。
ただ、理解するのに時間がかかった。
何度か読み終えた今になっても、きちんと理解出来ているか不安な作品。
映像化前に一読しておくべき。

No.14 9点 ルルファー
(2005/03/29 17:37登録)
確かに村上春樹からジョークのセンスを無くして、クールさを増させたような印象を受ける。そのせいで、春樹作品からは感じられない自己中心主義的なものを感じてしまうのが残念だ。あんた何様よ?って言いたくなるんだよね。
まあ、それでもこの作品は十分に良い出来だろう。
宮崎駿にアニメ化させたら面白そうだな。

No.13 9点 Pj
(2005/02/20 19:08登録)
ミステリィよりもこちらの方が良い。これほどの作品には、なかなか出会えない。

No.12 9点 SD
(2004/05/09 08:23登録)
「平和」というものをさめた目で描いているところが好きです。

No.11 10点 なな さんいち
(2003/09/21 18:32登録)
これほどの小説に出会えたことを、神に感謝!

No.10 8点 バナナフィッシュ
(2002/09/20 13:46登録)
SFだと思う 森博嗣氏のプラモマニアとしての要素が
かなり入っているのだろうか 世界観は良いですね

No.9 6点 由良小三郎
(2002/09/03 20:04登録)
印象としては、少年ジャンプの劇画原作という感じです。
メカ用語は、それなりの効果ですが、サンテクジュペリの人間の土地だとかの世界のリアリズムはないような気がしました。または松本零士の戦場マンガと比べてどうなんだろうと思いました。

No.8 10点 ぷー
(2002/08/16 15:10登録)
すごく良かったと思います。ガンパレちっくで。

No.7 6点 一千花
(2002/08/16 14:59登録)
皆さん高得点をつけていらっしゃるので
期待していたのですが なんか村上春樹みたいだ
と思いました いや「〜みたい」というのは
誉め言葉として失礼ですが うーん評価しづらいです
わかる人にはわかるのでしょうが スロットルとか
不明な単語がたくさんで難儀しました

No.6 9点 高柳光臣師父
(2002/08/05 13:54登録)
単純に楽しめましたよ。これわ。
登場人物の個性溢れるところがまた最高!
あと、難点をいえば、最後がどうなったかよくわかりませんでした。設定もよくわからなかったし。

No.5 9点 あこ
(2002/06/24 01:52登録)
飛行気乗りという一般には現実感のない視点の設定でありながら、その切実な絶望感には共感をおぼえる現代人が多いのでは?息を詰めて目をつぶって駆け抜ける感じ。装丁も良い。

No.4 10点 G?予想家K
(2002/03/20 16:11登録)
作者の「飛行機とハードボイルドを書きたい欲」が炸裂してますね。青空が見え滑走路を吹く風の音が聞こえてきそうな作品。一方で、説明しないことを不親切と感じる人は楽しめないかも。

No.3 5点 氷雨
(2001/09/23 21:53登録)
爽やかに絶望感に浸れる作品。何がどうなったのかが分からないところがあるけれど、世界は綺麗だ。

No.2 9点 或る河童
(2001/08/28 13:26登録)
つかみ所のない様な世界観が非常に良いと思う。

No.1 8点 十六夜
(2001/07/26 12:27登録)
ミステリか否かは別にして、気持ちよく読めた。
単純に好きな作品。

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