アルバトロスは羽ばたかない 「七海学園」シリーズ |
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作家 | 七河迦南 |
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出版日 | 2010年07月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 7点 | パメル | |
(2022/07/21 08:46登録) 児童養護施設・七海学園を舞台にした「七つの海を照らす星」の続編。前作を読んでいなくても十分楽しめるが、読んでいないと最後の衝撃度は半減されると思う。本作は「冬の章」の合間に「春の章」「夏の章」「初秋の章」「晩秋の章」がカットバック的に挟み込まれた構成となっている。一つ一つの短編に伏線を散りばめ、全体を貫く仕掛けが用意されている。 「春の章」母親に殺されそうになったと思っている一ノ瀬少年の話。真相は見えやすいので、ミステリとしての面白味はないが、伏線がしっかり描かれ説得力がある。 「夏の章」城青学園の生徒がサッカーの試合で会場から姿を消す話。話としては面白いが、それは気付くだろうと思ってしまった。 「初秋の章」鷲宮瞭が織裳利映にCD-Rをもらう。しかし再生できない。また樹里亜という七海学園の新入生が転校前にもらった寄せ書きが無くなるという二つの謎が描かれる、日常の謎的ミステリ。胸に苦いものが残る。 「晩秋の章」望という少女が七海学園に預けられる。刑務所に入っていた望の父が出所し、望を連れ戻そうとする話。海王さんのある言葉が伏線になっている叙述トリック。完全に騙された。 そして「冬の章」では、校舎屋上からの転落事件を中心に、それまでに登場した人々を巻き込んだ物語が展開される。 最後の最後で、それまで頭で思い描いていた構造が一変する構成は、見事としか言いようがない。このどんでん返しには、かなりのインパクトがある。伏線も十二分に張られている。納得のサプライズ。 |
No.7 | 8点 | よん | |
(2021/07/16 17:15登録) 舞台は児童養護施設。デビュー作の縮小再生産と思ったら大間違い。日々の生活への密着度がすごい。 ヒロインが被害者をなぜ深く信頼できたのか違和感があったが、説得力ある解答に唸った。トリックと感動のツボが一体化しているのが素晴らしい。 |
No.6 | 9点 | じきる | |
(2021/06/17 12:56登録) 痛みを伴う衝撃的な結末と、それを支える細部の丁寧な伏線。このタイプのミステリとしては非常に高いクオリティではないでしょうか。 世評に違わぬ傑作です。 |
No.5 | 5点 | mozart | |
(2012/10/24 15:31登録) 前作「七つの海を照らす星」を経ずに今作を読んだせいか、北沢春菜なる保育士に特別な感情移入をしていなかったので、最後のどんでん返しはそれほど衝撃的ではなかったけれど、それでも最後まで騙されていました。 ただ、冬の章で「わたし」が回想しているのが、「春の章」~「晩秋の章」であるならば、アンフェアではないのかも知れないけれど、やはりちょっと納得がいかなかったりして。「冬の章」での記述自体もやや不自然に感じられる部分も見受けられるし・・・。 話そのものはまずまず面白かったけれど、自分にはそれほどフィットしなかった、というのが正直な感想です。 |
No.4 | 7点 | まさむね | |
(2011/08/27 22:50登録) 児童養護施設「七海学園」の子どもたちが通う高校の文化祭当日に,校舎屋上からの転落事件が発生。単なる事故だったのか,その謎を追う「冬の章」が作品のメインなのですが,その合間合間に,春から晩秋までにかけて起こった,学園の子どもと春菜保育士を取り巻く4つの事件が挟み込まれている構成です。4つの事件の中に「冬の章」の手掛かりというか,伏線が用意されている訳ですね。 4つの事件(短編)自体もなかなかの出来栄えなのですが,やはり何といっても,作品の「全体構成」を評価したいですね。終盤の反転は,全体構成の賜物。綺麗で巧妙です。 |
No.3 | 7点 | abc1 | |
(2011/05/08 00:02登録) 良質な連作短篇集。肝腎の大どんでん返しは、「有給休暇」という言葉でかなり早い段階で気づいてしまったけど、それでも充分楽しめました。 |
No.2 | 6点 | HORNET | |
(2011/04/24 17:40登録) 児童養護施設「七海学園」の保育士,北沢春菜が施設の子どもとかかわる中で,いろんな謎を解いていく。一方,施設の子が通う七海西高校で起きた転落事件の真相解明に取り組む主人公。自殺として処理しようとする警察に対し,「自殺ではない」と信じ,自分なりに捜査をしていくが・・・。真相には確かに驚かされる。まぁうまいにはうまいけど・・・騙された感もぬぐえない(腑に落ちないほうで)。 上記の謎のみを追究する一編ではなく,過去の施設で起きたさまざまな謎解きが回想として描かれ,それぞれに楽しめる短編のようになっているのがよかった。物語メインの謎は自分としては「・・・・・・・」だったが,そうした点で面白かったのでこの評価とした。 |
No.1 | 7点 | kanamori | |
(2010/12/26 12:14登録) 児童養護施設”七海学園”を舞台にした連作ミステリ・シリーズ第2弾。 高校の校舎屋上からの墜落事件の謎を本筋に、その事件のヒントとなるような4つの日常の謎系のエピソードを間に挿入した構成になっています。 評判どおり、終盤で主要登場人物たちの立ち位置が劇的に反転する仕掛けが素晴らしい。前作を読んでいれば驚きが倍増するでしょう。シリーズ2作目でこれをやられるとは思わなかった。 痛ましい過去をもつ子供が多数登場し、重たいエピソードが続くので、好みが分かれる作風かもしれませんが。 |