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ミステリの祭典

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パラドックス13

作家 東野圭吾
出版日2009年04月
平均点5.77点
書評数13人

No.13 7点 Tetchy
(2016/02/04 23:39登録)
まず驚いたのはP-13現象が起きた後の世界ではほとんど全ての人間が消失し、運転していた車がところどころで衝突し、事故の山を築き、飛んでいた飛行機もまた墜落している、まさに地獄絵図のような状況が繰り広げられる。私は最初この情景描写を読んだ時にアメリカドラマの『フラッシュフォワード』を想起したが、その後度重なる巨大地震と集中豪雨で川が決壊し、地震と重なった起きた津波の描写で東日本大震災を想起した。しかし本書は2009年4月に刊行された作品で東日本大震災は2年後の3.11なのだ。まさに本書で描かれた状況は当時の被災地の人間が体験したそれのように思えるのだ。『天空の蜂』もまた3.11で起きた原発事故を予見するような内容だったが、それに加えて被災地の状況をも予見した作品として読むと驚愕に値する。

そしてほんの十数人を残して消え去った人々の世界を東野圭吾は持ち前の想像力とシミュレーション力で克明に描いていく。食糧危機にライフラインの根絶、あまり小説で描かれない登場人物たちのトイレ事情なども忘れずにきちんと書くところがこの作家が他の作家とは一線を画した存在であると云えよう。実にリアルである。

最も印象に残るのは度重なる危難の際に集団のリーダーとして皆を先導する久我誠哉の冷静な判断だ。
翻って腹違いの弟冬樹は感情に任せた判断をしては兄の誠哉に諌められる。しかし冬樹の判断こそが通常我々が陥る一般常識だ。

ただ一方で冷静に判断を下していた誠哉も理性や論理だけでは全てが解決しないことを知らされる。
そして次第に誠哉の論理的思考はエスカレートしていく。
論理的思考型人間の久我誠哉と感情的行動型人間の弟冬樹の2人を対照的に描くことで物語に起伏を、そして読者の思考に揺さぶってページを繰る手を止めさせない東野氏の筆致に改めて感心した。

本書は単にSF的興味やクライシス小説として読むには勿体ない。大災害が発生した時に生存するためにいかに行動し、どのような選択をしてくかを示した一種の指南書にもなり得るからだ。絶望的状況に見舞われた老若男女たちがそれまでの人生の中で培った価値観によってどのような選択をしていくかもまた読み処だ。それぞれが己の人生観に添った選択をするため、それぞれに一理ある。刑事、会社の重役とその部下、老夫婦、やくざ、女子高生、看護婦、主婦とその子供、ニートの若者とメンバーは実にヴァラエティに富んでいる。そのどれに自分を重ねるか。そんな風に自分と照らし合わせて読むのもまた一興だろう。

No.12 6点 haruka
(2014/06/19 23:55登録)
SFっぽい形式を取っているが中身は人間ドラマ。想像できないような設定だが臨場感をもって一気読みできた。たしかにラストが安直だった。

No.11 2点 ムラ
(2013/02/26 15:42登録)
善と悪を明確にしたキャラがそれぞれ対立して「生きるための善とは悪とは何か?」をうっとおしいくらいひたすら問いてくる作品。
一言で言えば東野作品らしくない印象。
もっと意外な謎で引っ張り、思いっきり負の方向に叩きつけつつも最後にバシッと決めてくれるいつもの作風とは全然違うのでそこがまずガッカリ。
pー13の真相は面白かったけど、それでもオチはありきたりだし。
やはり、この人の作品なら、読者を騙してやろうという本格ミステリが見たいと改めて思った
ただ、東野作品なのでそこはいつも通り読みやすいです。最後まですらすらと読める。問題はオチや展開が手抜きとしか思えないくらいセオリー的なところ。
ところで河瀬はどうなったんだろ

No.10 6点 mozart
(2011/06/19 14:59登録)
ミステリーとは言えないかも知れないが、緊迫感が持続していて、読み応えはあった。ただ、最後でもう少し登場人物達に救いの手をさしのべても良かったんじゃないかな(特に兄の方へ)。

No.9 4点 ある
(2011/05/24 00:52登録)
震災後であれば,作品としての発表は難しかったかも。
遺伝子のことまで考えて国を作り生きていこうとする主人公・兄の心意気が,可能かどうかはともかく凄いなぁ‥と。

話の内容と余り関係はないのですが,ヤクザ屋さんだけは同じ運命になってしまったのかな?自業自得だけど,ちょっと可愛そう。。

No.8 6点 VOLKS
(2010/09/02 11:48登録)
設定が怖すぎて、切なくて、読み物として楽しめなかった。
が、逆を返せば、それだけ一気にその世界に引き込まれた、という感じ。
恐ろしや、東野作品。

No.7 7点 いけお
(2010/08/27 09:33登録)
ミステリ度は低いが楽しんで読めた。
恋愛話の描写が薄いのは、この作者らしいところ。

No.6 7点 ミステリー三昧
(2010/01/07 02:59登録)
<毎日新聞社>「P-13現象」というSF要素を取り入れたヒューマンドラマです。
あくまで「P-13現象」は小道具の一部にすぎない。「Pー13現象とは何か?」や「何故13人は生き延びたのか?」が物語の主軸ではなく「これからどう生きるか?」に終始スポットが当てられている。よってミステリ要素は低い。
けど、割と楽しめた。「生」を追求する物語っていいなぁ。。。東野圭吾が描く登場人物には「生」のパワーを感じる。所詮、作中の人物ではあるけど、彼らから学ぶことって一杯ありますね。
「人間は一人では生きてゆけない」みたいなセリフを連発していた点が印象深かった。まぁ、その通りだろうけど現実世界ではどうかな。私的には割と生きていける気がする。現代は「人間」より「物」に頼ることの方が多くなった。それ故に孤独でも「のほほん」と生きれる世の中になってしまったと思う。「生きる意味」を真剣に考えながら生きている人なんて少ないと思う。一人の方が逆に「社会的ルールによる縛り」もなく開放的で清々しい。もちろん一人だから「身分の差」も気にすることなく「何が善と悪か?」なんかも自分で決めてしまえばいい。
ホント自由すぎると思う。いざ「P-13現象」状況下に置かれたらと思うと怖い。私は自制心が保てず、パニックになって自滅する(笑)。

No.5 6点
(2009/12/05 15:24登録)
人が生きる目的とは?やや、哲学的なことを考えさせられますが、物語の進行の速さ(作者のうまさ)でスラスラと読み進んでしまいました。

No.4 7点 白い風
(2009/10/07 22:32登録)
久し振りの東野さんのSF系ですね。
私は結構楽しめました。
登場人物も12名なので判りやすかったね。
「トキオ」などが好きな方にはお勧めだと思うよ。

No.3 6点 akkta2007
(2009/09/03 20:19登録)
「運命の13秒」まさにそのとおりでは、あったが・・・・
個人的には、なんとなく好きになれない内容であった。しかし、“文明の中で生きてきた人間が、文明が突然なくなった世界で何を考え、どう行動するのか”―ということを頭の中で考えながら読むと、違った意味で、面白い小説だと思う。
“P-13現象”とは何か?、なぜ13人は生き延びたのだろうか?もう一度じっくり読み直すと楽しめそうな作品であった。
東野作品、読みやすさはやはり健在である。

No.2 8点
(2009/07/16 16:51登録)
 近年、少し本格ミステリーから離れつつある東野圭吾が、ついにここまで来てしまったのか。という感じの、「善と悪」を扱ったSFです。
 とはいえ、そこは東野圭吾。読みやすいし、あきさせない展開だけに、最後まで物語に飲み込まれてしまいました。SFとして成功しています。

 でも、初期の本格ミステリーが好きな僕にとっては、SFは少々不満足だったため、1点減点です。

No.1 3点 こう
(2009/05/04 00:32登録)
 今作品はSF以外の何物でもありませんでした。この作品の世界にのめりこめる方なら楽しめると思いますが個人的にはだめでした。また「どうして彼らがその世界にいったのか」というより「どうして彼ら以外の人間が世界から消えたのか」という謎があるのですが作品にのめりこめないと正解がわかっても大して感動が得られません。
 個人的には自分がSFに合わないのが再認識された作品でした。

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