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ミステリの祭典

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喪服のランデヴー

作家 コーネル・ウールリッチ
出版日1957年01月
平均点6.78点
書評数9人

No.9 7点 斎藤警部
(2024/07/31 23:53登録)
恋人を殺された青年は、5人のヒットリストを作った。 それは二つの意味で、普通のリストとは違った。 だが彼はそのリストに基づき、スパンの長い復讐を重ねる。

「神さま、ありがとうございます。彼女は待っててくれましたよ、ぼくを」

主人公が易々と心理を明かさない中、オムニバス形式の様に犯罪物語が進行する。 推理は出来ないがある種のフーダニット趣向がある。 やはり不思議な格調がある。 逆説孕んだ空気感が徐々に迫るサスペンス劇場には、ウールリッチならではの、渋過ぎずちょっと甘い情緒が間歇泉のように溢れる。 キャメロン刑事の独特な存在感、斬れるようで鈍いようでなんだか場違いにユーモラスな立ち位置は不思議と邪魔をしない。 泣かせるシーンにスリリングなシーンがいっぱい。 盲目の娘が晴眼者のふりをするシーンは手に汗握った。 盲目の娘が或る別れの言葉を放つシーン ・・・・・   こう言うとネタバレかも知れないけれど、最後、ミステリになりそこなったよなぁ。 カッチリ嵌ってない。 でもそれが、主人公の心なんだよなぁ。

Tetchyさん仰る通り、本作の主人公は Johnny Marr。 これだけでも充分
> 洋楽ファンなら思わずニヤリ
なのに、実はあろうことか Morrissey なる人物まで登場し、あまつさえ Marr に対してちょっと○○っぽい発言をするシーンまであります。 偶然だよね??

No.8 5点 クリスティ再読
(2019/10/15 17:40登録)
「黒」シリーズでは本作で最後になるわけだけど、どんどんとマニエリスティックな方向に走ってる印象がある。ウールリッチ耽溺者ならハマれていいのかもしれないが、情緒過多になりすぎてて、若干シラケる部分も今回は感じているよ。
もちろん女性主人公復讐話の「黒衣の花嫁」の方がウケやすいし、映画化も狙いやすい(トリュフォーの名作もある)。男主人公だったら一般ウケしづらいかもしれないが、作者が自己投影しやすいのは確かだ。本作は作者が自分に溺れてしまったような印象なのは、やはり失敗、ということなんだろう。
要するに「うまいなあ」と思わせる部分がウールリッチらしく、この人にしか書けないような...であるまさにそのことが、既視感を強く感じるというあたりに、本作のデッドエンドっぽさを感じる。まあ仕方ないことなんだけどね。それにしても主人公、改めて振り返ると相当凶悪...と思ってしまうあたりが、ウールリッチの魔法にも限度はある、ということなのかもね。
(刑事のカメロンくん、無精キャラで何か評者コロンボみたいなキャラにイメージしてた。防御率悪いから、名刑事じゃあない。あと余談。上村一夫の語り口ってウールリッチを研究したんじゃないか?と気が付いた。どうだろう)

No.7 7点 測量ボ-イ
(2015/05/03 17:50登録)
後で冷静に考えると、結構単純な話しなんですけどね。
それでも読ませてしまうのが、ウ-ルリッチ(アイリッシュ)
の筆力なんでしょうか。

No.6 5点 ボナンザ
(2014/08/13 12:16登録)
かなりストレートな物語。
黒衣の天使を最初に読んだ身としては二番煎じにも思えるが。
それでもウールリッチの文章あって水準には達していると思う。

No.5 7点 蟷螂の斧
(2013/06/15 20:36登録)
黒衣の花嫁(1940年)から、8年後の作品。前作は、いまひとつ感情移入できなかったのですが、本作は、かなりのめり込むことができました。最初は犯人側、後半は被害者側へと(笑)。ラストでは、オチも用意されていましたし、サスペンス+1で楽しめました。また、文章もいいですね。解説は、小泉喜美子氏で、氏の最後の長編「死だけが私の贈り物」<コーネル・ウールリッチに捧ぐ~もう、あなたのようなミステリーを書く人はいなくなったので。>を近々読みたいと思います。

No.4 7点 kanamori
(2010/07/20 18:27登録)
恋人を死に至らしめた可能性のある人々を標的にした、ある青年の連続復讐ものサスペンスです。
プロットは、冒頭のエピソード(泡坂妻夫「乱れからくり」に匹敵する!)を始め無茶が多いのですが、ウールリッチを理屈で読んではいけません。
青年の短絡的な行動は理解しづらいと思えるが、いつの間にか主人公に感情移入してしまう。抒情的な文章の魔力というべきか。

No.3 6点 ロビン
(2009/02/28 02:56登録)
全ての登場人物が、物語展開を成立させるために動いている。取る行動のいちいちが感情的にも理屈的にも理解できない。つまるところ、リアリティがなさすぎる。ウールリッチ(アイリッシュ)の作品の中でも都合の良さは断トツで目に付きます。

しかし、本書を読んでいて終始抱いていた違和感が、こうさんの文章を読んで氷解しました。本当にハヤカワ文庫の裏表紙は読んではダメです。これがなかったらもう1、2点はプラスされていたでしょう。ネタばれ故、上記の点が気になったのかもしれません。

No.2 9点 Tetchy
(2008/10/21 20:31登録)
通常ではありえないと思われる導入部も、ウールリッチならばさもありなんと思ってしまうから不思議。
飛行機から投げ落とされたビンに恋人が当って死に、その復讐のため、乗客を一人一人殺していく。
荒唐無稽と感じるが、これが実に面白い。
1つ1つの殺人劇が極上の短編のように書かれ、思わず犯人を応援したくなる。

しかし主人公の名前がジョニー・マーって、洋楽ファンなら思わずニヤリとしてしまいますね。

No.1 8点 こう
(2008/07/05 01:29登録)
 アイリッシュの別名義のサスペンスです。毎年決まった日に女性が殺されてゆくストーリーですが、冒頭で犯人が明かされており、5人の男性のリストが提示されその男性の妻、恋人が狙われることがあからさまになっておりミッシングリンクとは言えません。ただアイリッシュらしくサスペンスを際立たせる筆致はすごいです。5人目の所で本当に単純ですが本格的トリックが使われています。
 犯人のやっていることはまさに狂人そのものなのですが殺人の動機が非常に救われない、悲しいストーリーです。
 作品自体はラストまで作りは単純ですがアイリッシュ風なストーリーで物悲しく、とても良かったです。
 但しハヤカワ文庫の裏表紙にはあからさまに犯行の動機がネタバレされ、ストーリー上の謎が一つもなくなってしまうため読む場合は裏表紙を読まないことをお薦めします。(裏表紙でネタバレされた本は初めてでした)
 尚、黒衣の花嫁は男女が違うだけでほぼ同じです。

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