home

ミステリの祭典

login
クリスマス・プディングの冒険
ポアロほか、中短編集

作家 アガサ・クリスティー
出版日1961年01月
平均点5.90点
書評数10人

No.10 5点 レッドキング
(2022/05/21 19:07登録)
アガサ・クリスティー第十三短編(といっても半分は中編)集。
  「クリスマスプディングの冒険」 いかにも、非カトリック的な英米的な、クリスマスちょっといい話ミステリ。4点
  「スペイン櫃の秘密」 「バグダッド櫃」と同骨格どころか同プロット。多少、ヒロインにキャラ肉付け。6点
  「負け犬」 無意識の証言からの犯人解明。タイトルまんまの真犯人、捻りの無い所がむしろ・・・5点
  「二十四羽の黒つぐみ」 古時計の様な来店メニュー習慣を破って死んだ老人の謎。5点
  「夢」 カー「妖魔の森の家」同様、名探偵をアリバイ利用する身の程知らずな犯行。5点
  「グリーンショウ氏の阿房宮」 「バカ建物」相続を廻る弓矢殺人。逆密室トリック付きが嬉しい。7点
※作者の前書きには異議あり、「グリーンショウ氏の~」がメインディッシュで、「スペイン櫃」はセミファイナル。

No.9 5点 弾十六
(2022/05/14 21:11登録)
1960年10月出版。早川クリスティ文庫で読んでいます。
原著は1920年代から1960年までの統一性のない作品集。
私はアガサさんを初出順に読んでいるので、タイトルは初出順に並び替え。カッコつき数字は単行本の収録順です。初出情報は、英WikiとFictionMags Indexで調べました。
**********
⑶ The Under Dog (初出Mystery Magazine 1926-4)「負け犬」小笠原 豊樹 訳: 評価5点
ポアロもの。
作者の中篇作品は初めての試みだろう。売れたのは米国雑誌だし、これも新しいリテラリイ・エージェントの助言によるものだろうか。
内容はちょっとゴタついていて、人物描写が軽く、切れ味に乏しい。ミステリ的にも弱い。強いて言えば、依頼人のキャラが面白いのが取り柄か。ポアロは現役バリバリの私立探偵、という設定。
p199 掛け金(a latch-key)
p201 ミラー警部(Inspector Miller)♠️初期のポアロもの(1923年スケッチ誌)にときどき登場する名前。
p202 お金でやとわれた話し相手(paid companion)
p208 従僕(vallet)… ジョージ(George)♠️ポアロの従僕。これが初登場だと思われる。英国人タイプ、背が高く、顔色は蒼く、感情を表に出さない(English-looking person. Tall, cadaverous and unemotional)。ヘイスティングズが使えないので、ウッドハウス調を狙ったものか。
p214 株が大暴落したとき----ときどきあります♠️現代の我々はすぐ1929年を思ってしまうが『ドクトル・マブゼ』(1922)などでもわかるように、資本主義の高度化に伴い、当時、暴落はちょいちょい起きていた。
p232 ラシャ張りのドア(a baize door)
p243 三番目のメイド(The third housemaid)
p277 メイヒュー(Mayhew)♠️戯曲版『検察側の証人』でもソリシタ役で登場している。同一人物か。
p286 これが堂々と出てくる。当時でも結構うさんくさいものだと思うが…
p300 紙の上でする足跡ゲーム(the game of tracing footprints on a sheet of paper)♠️どんなものかは不明。
(2022-5-14記載)
**********
⑸ The Dream (初出The Strand Magazine 1938-2)「夢」小倉 多加志 訳
ポアロもの。
**********
⑷ Four-and-Twenty Blackbirds (初出Collier’s 1940-11-9)「二十四羽の黒つぐみ」小尾 芙佐 訳
ポアロもの。
**********
⑹ Greenshaw's Folly (初出Daily Mail 1956-12-3〜7)「グリーンショウ氏の阿房宮」宇野 利泰 訳
ミス・マープルもの。
**********
⑵ The Mystery of the Spanish Chest (初出:週刊誌Women's Illustrated 1960-9-17〜10-1, 3回連載 挿絵Zelinksi)「スペイン櫃の秘密」福島 正実 訳
ポアロもの。元は「バグダッドの大櫃の謎」(The Mystery of the Bagdad Chest、初出
The Strand Magazine 1932-1)
**********
⑴ The Adventure of the Christmas Pudding (単行本初出; 雑誌掲載は週刊誌Women's Illustrated 1960-12-24〜1961-1-7 挿絵Zelinksi as “The Theft of the Royal Ruby”)「クリスマス・プディングの冒険」橋本 福夫 訳: 評価5点
ポアロもの。元はやや短めの短篇The Adventure of the Christmas Pudding(初出The Sketch 1923-12-12別題Christmas Adventure)
ほとんど同じ内容だが、時代に合わせて変えた部分あり。ヘイスティングズへの愚痴がある1923年版の方が良く出来ていると思います。クリスマス・プディングの習慣は1960年版の説明の方が詳しくてわかりやすい。
p63 十シリング金貨(ten-shilling piece, gold)◆英国ではジョージ五世のHalf sovereign 金貨(1926)が最後のようだ。純金,  4g, 直径19mm。
---
TVドラマのスーシェ版(1992, 3期9話)はタイトルがThe Theft of the Royal Ruby。1923年版ではなく1960年版に基づく脚本。アラブの王族は現代を反映してかなり傲慢な若者になっていました。プディングを混ぜるシーンとか炎に包まれたプディングを切り分けるシーンがとても興味深かったです。
(2022-5-14記載)

No.8 6点 ボナンザ
(2019/08/20 21:31登録)
良作ぞろいの短編集。下手な長編よりもしっかりまとまっていてお得感がある。

No.7 7点 ミステリーオタク
(2016/12/24 16:44登録)
傑出した作品はないが全編そこそこ楽しめる
特に表題作は面白い


皆さんに素敵なクリスマスが訪れますように

No.6 6点 りゅうぐうのつかい
(2016/12/19 17:48登録)
傑出した出来の作品はなく、すべて平均点程度の出来で、一番良かったのは「クリスマス・プディングの冒険」。

「クリスマス・プディングの冒険」
ある国の王子の高価なルビー盗難事件を秘密裏に解決してほしいとの依頼を受けるポアロ。推理物ではなく、ポアロが巧みな策略で事件を解決する話。奇妙な手紙が置かれていたり、子供たちが殺人事件の芝居でポアロをかつごうとしたリと、楽しめる筋書き。

「スペイン櫃の秘密」
スペイン櫃の中で殺された男の妻が容疑者の無実を信じ、その無実の証明をポアロに依頼する話。偽装された手紙の謎や衝立が動かされた謎など、シェークスピアの「オセロ」になぞらえて、ポアロは意外な真相を暴き出すが、証拠は不十分。

「負け犬」
殺人事件の容疑者の無実を直観で信じた女性より、無実の証明を依頼されるポアロ。アフリカでの鉱山の出来事、医者による催眠術の聞き取り調査など、色々と話を膨らませてはいるが、真相は腰砕け。推理ではなく、ポアロの策略によって、解決する話。

「二十四羽の黒つぐみ」
料理店に毎週火曜日と木曜日に現れる男が一度月曜日に現れ、その2週間後から姿を見せなくなった謎にポアロが興味を持ち、解決する。

「夢」
3時28分にピストル自殺するという、同じ夢をずっと見続ける男から相談を受け、事件に関わるようになるポアロ。実際に、その男が3時28分にピストルで死ぬ。ポアロが間違えて渡した手紙が事件解決に結びつくところが面白い。

「グリーンショウ氏の阿房宮」
奇妙な建築物「阿房宮」の所有者、ミス・グリーンショウが弓矢で撃たれて殺される事件。容疑者3人には鉄壁のアリバイがあるが、事件の背景にあるカラクリをミスマープルが暴く話。既視感ありありのトリックだし、このように巧く騙せるのか、疑問に感じる。

No.5 7点 nukkam
(2016/08/18 18:08登録)
(ネタバレなしです) いつの頃からはわかりませんが本国(英国)では「クリスマスにクリスティーを」という洒落たキャッチフレーズでクリスティーの新作を販売促進していたそうですが1960年に発表された本書はまさにこの宣伝文句にふさわしい短編集です。1920年代から1940年代にかけて書かれた作品(一部はリメイクされてますが)を寄せ集めたに過ぎず、しかもポアロ作品5作とミス・マ-プル作品1作というのは短編集としてはバランスが微妙に悪いように思います。とはいえなかなか充実した作品が揃っており、特に「スペイン櫃の秘密」は短編とは思えぬ深みのある物語で作者が自画自賛したのも納得の名作だと思います。謎解きは他愛ないですが「クリスマス・プディングの冒険」はクリスマスの雰囲気描写が見事だし、ちょっとオカルト・ミステリー風な「夢」も面白かったです。

No.4 6点 クリスティ再読
(2016/08/15 22:19登録)
本短編集は、とにかく「おいしい」。食べ物描写に念が入っていて、それを読むだけでもイイな。で、収録は表題作70p、スペイン櫃の秘密70p, 負け犬100p, 二十四羽の黒つぐみ25p, 夢40p, グリーンショウ氏の阿房宮50p と、前半3作がほぼ中篇の体裁で、すべてガチのパズラーである。
本短編集は初期のキャラ別短編集みたいなものではなく、長編の抜粋か雛型みたいな内容である。もう一ネタ組み合わしてキャラをうまく設定すれば立派な長編になるくらいのもの。というか、「葬儀を終えて」の後の小暗黒期だと内容的に本短編集レベル以下の作品が結構あると思うよ....まあだからクリスティに純粋にパズラー以外求めないような読者なら、コスパよく充分満足のイケる作品集だろう。
個人的にはイギリスのクラシックなクリスマス料理って食べてみたいな....昔クリスマス時期に「プディング」を売っている店を見つけて、クリスマス時期になると買ってたのが懐かしい。評者のイギリス料理の印象はほぼクリスティの作品で培われたものじゃないかな。
で評者は次に「マン島の黄金」を読んだんだが、これが結構本短編集とバージョン違いがカブるのだ...詳細は「マン島の黄金」を見よ。

No.3 6点
(2012/04/15 13:16登録)
中編3編、短編3編からなる作品集で、その内5編がポアロものです。
表題作は長い割に謎解き的には特にどうということもないのですが、いかにもクリスマス・ストーリーらしい楽しい作品で、ポアロの計略が笑えます。
『スペイン櫃の秘密』は某短編を倍ぐらいの長さに書き直したものですが、膨らませ方が中途半端だと感じました。おもしろいアイディアなので、もっと長くして、人間性を描きこめばよかったのに、と思えます。
『負け犬』は最も長い作品で、地味ではあるもののかなり好印象を持ちました。ただし、この作品には謎解き内容以外で、非常に不満な点があります。どこがということを明かせば、完全にネタバレになってしまいますが。
後に続く短い3編については、内容に共通点があることにびっくりしました。クリスティーはなぜこれらを1冊の中にまとめたのでしょうか。ミス・マープルものの『グリーンショウ氏の安房宮』はいくら何でも無理があります。

No.2 5点 江守森江
(2010/01/17 14:30登録)
表題作を含めてポアロが登場する短編はドラマを先に観るファジーな読書を実践してみた。
ポアロ(スーシェ)のイメージが浮かび、なんとスラスラ読める事だろう!
表題作はドラマ版では「盗まれたロイヤル・ルビー」とタイトル変更されているが楽しい作品の一つだろう。
クリスマス・プディングが日本人のイメージするプリンとは別物で幸運の当たりクジ付きな事をこの作品で知った。
「スペイン櫃~」「負け犬」等、粒ぞろいな作品集。

No.1 6点 シーマスター
(2008/12/22 21:04登録)
アガサおばさんからのクリスマス・プレゼント。
パーティーのテーブルに並んだ色とりどりのアラカルトのような短編集です。

全体に古き良き英国の香りがそこはかとなく漂い、むごいマーダーも軽く読ませてくれます。

非常に都合がよろしい展開や漫画めいた事象(捜査手段として大真面目に催眠術が使われたりもする)など「???」なシチュエーションも多々ありますが、そこはご愛嬌・・・・目くじらを立てることもないでしょう・・・・この赦しの季節に。

10レコード表示中です 書評