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Tetchyさん
平均点: 6.74点 書評数: 1617件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.497 8点 マルタの鷹- ダシール・ハメット 2009/04/06 21:44
エラリー・クイーンやエルキュール・ポアロ、さらにHM卿が活躍していた時代にサム・スペードのようなリアルな探偵が出てきたことは正に衝撃だったろう。
事件を解決して自らの何かを失う探偵なぞ当時の本格派の探偵にいただろうか?
社会の裏側で生きる者たちに対抗するには探偵それ自身がその手を、その身を汚さなければならない。
己が生きるためにはかつて愛を交わした女でさえも売らなければならない、こんな探偵は存在しなかったはずである。

生きることのつらさと厳しさ、そして卑しさをまざまざと見せ付けた本書は、自身が探偵であったハメットでなければ描き得なかった圧倒的なまでのリアリティがある。
故に本書の軸となる黄金の鷹像の存在が妙に浮いた感じを受けるのである。

マルタの鷹は何かの象徴か?
マルタの鷹は存在したのか?
私にはマルタの鷹が誰もが抱く富の憧れが生み出した歪んだ幻想だと思えてならない。

No.496 7点 フェアウェルの殺人 ハメット短編全集1- ダシール・ハメット 2009/04/05 20:29
玉石混交の短編集といった感じ。
私のお気に入りは「夜の銃声」。二段構えの皮肉な結末に思わずニヤリとさせられた。ヴォリュームも30ページ前後と、引き締まった内容で読みやすい。
かと思えば「新任保安官」のように登場人物が多すぎて収拾がつかない物もあり、一長一短がある。

面白かったのは、一般にハードボイルドと呼ばれるハメット作品もサプライジング・エンディングを踏まえた本格テイストを備えている事。ただ、解決へ至る手掛かりが探偵のみに与えられているアンフェアな所が腑に落ちないが…。

No.495 7点 スペイドという男 ハメット短編全集2- ダシール・ハメット 2009/04/04 22:07
評価のしにくい短編集だ。
平均的な水準の作品ばかりが並んでいると、つまらない印象を受けた1編ないし数編が妙に目立ってしまい、評価を下げるような結果に繋がるし、またつまらない作品が数編あっても傑作と呼べる極上の1編があれば評価は俄然高くなるから困りものだ。そこでこの短編集は、と云えば前者に含まれる。
「殺人助手」という登場人物が乱雑に出てくる1編のつまらなさが頭に残っていてあと一歩という感じ。でも結構好感の持てる作品があるのも確かなのである。
う~ん、難しい。

No.494 5点 影なき男- ダシール・ハメット 2009/04/03 22:29
本書はハメットには珍しくフーダニットをメインとした謎解きのミステリであり、探偵もニックのノラの明るい夫婦が務める軽妙な仕上りになっている。所謂ハメットらしさが一番希薄なのだが、あのハメットがこんなのも書いていたのを知るには絶好の一作ではなかろうか。

No.493 7点 ワイオミングの惨劇- トレヴェニアン 2009/04/02 22:12
トレヴェニアンの遺作である本書は非常に複雑な想いを抱く読後である。
果たして創作メモめいた最後のエピローグは必要だったのだろうか?
ここに至り、今まで語られたストーリーの結構というものが揺るぎを持ち、何とも評し難い思いが渦巻いている。結局、何が語りたかったのだろう、作者は?

感想としては最後の一文に救われる思いがしたが、やはり後味が何とも悪いのである。

No.492 10点 夢果つる街- トレヴェニアン 2009/04/01 19:57
最初の1ページを読んだ時からこの作品は傑作だなと感じた。それも生涯忘れ得ぬほどの…。
外国の小説でこれほど町のイメージがたやすく浮かんだのは、本書が初めてではなかろうか?
それは著者が街の住人を誰一人として疎かにせず、見事に活写したため。
行間から息吹が、匂いが立ち上ってくるが故に、それぞれが皆、確かに生きていた。

明るい未来の見えぬ街“ザ・メイン”はそのまま主人公ラポワントであるといえよう。心臓に爆弾を抱えた彼と、何か不穏な空気を秘めたこの街は、いつそれがカタストロフィを迎えてもおかしくはない。だからラポワントはそれ以上を求めない。彼は彼の流儀で“ザ・メイン”を取り締まる。

十年、いや二十年に一度出るか出ないかの稀に見る傑作だ。

No.491 3点 バスク、真夏の死- トレヴェニアン 2009/03/31 22:33
なんと今度はサイコホラーである。
しかし私には合わなかった。なんだかこういう耽美な物語が性に合わないのもある。
やはりトレヴェニアンは冒険小説が一番!

No.490 9点 シブミ- トレヴェニアン 2009/03/30 22:29
ローマ空港で虐殺されたアラブ過激派を狙うユダヤ人報復グループの生き残り、ハンナから助けを求められたニコライ・ヘルは日本の思想「渋み」を体得したフリーランサーの殺し屋だったというちょっと「?」な設定だが、これを非常に説得力ある筆致で書くこのトレヴェニアンという作家の博識ぶりに舌を巻く。

特に外人にはなかなか理解されない「侘び」「寂び」を斯くも明確に叙述し、しかも日本の囲碁に宇宙を感じるなどといった件を読めば、この作家は外人の振りをした日本人ではないかと勘ぐってしまう。

特に「渋み」の叙述には深いものがあり、その一種、東洋哲学に通ずる理解の深さには逆にこちらが学ばされる思いがした。

ただこのニコライの人と成りを読者に理解させるために彼の過去のパート、特に彼に「渋み」の思想を教えた貴志川将軍との師弟関係の交遊のあたりに冗長さを感じるきらいはある。

しかしこのような作品を外国人が書いたというだけで驚嘆だし、またそれをエンタテインメントに昇華した技量もすごい。もっと注目してほしい作品だ。

No.489 9点 アイガー・サンクション- トレヴェニアン 2009/03/29 19:40
優れた登山家にして大学教授、美術鑑定家という肩書きを持つジョナサン・ヘムロック教授はなんとフリーの殺し屋でもあるという、マンガの主人公のような設定ですが、トレヴェニアンの精緻な描写がそれに現実味を持たせて、読者の目を離させない。
彼が殺しを依頼されるCII、過去のエピソード、アイガー北壁登攀に臨む準備などが非常に詳細かつ緻密に書かれて、ジョナサンのプロフェッショナルさを際立たせる。
登山チームの中に裏切り者がいるという状況はなかなかに新鮮。なぜならば極寒の地の登山は、チームワークこそ大事で、1人の命の損失はそのまま自らの死をも招き寄せるからだ。そんな中で裏切り者を見つけ出し、暗殺を履行しなければならないというジョナサンの精神力のタフさに畏れ入る。それを印象付けさせているのはトレヴェニアンの重厚な筆力に他ならない。

クリント・イーストウッド主演で映画化もされたぐらいに有名な作品だが、私が手に入れた15年くらい前の当時でさえ入手困難だった。
これほどに面白いのに非常に勿体無いと思う。。

No.488 7点 ルー・サンクション- トレヴェニアン 2009/03/27 23:15
『アイガー・サンクション』の続編。
『アイガー・サンクション』ではスパイ物でありつつ、本格的な山岳小説でもあったが、本作は純粋なスパイ小説に徹している。

図らずもスパイ稼業に復帰せざるを得なくなったジョナサン。しかし読者の予想を裏切って百戦錬磨の活躍を見せるわけではなく、ブランクによる違和感と若さの喪失を悔やむジョナサンと読者は対面する事になる。

しかし、相変わらずトレヴェニアンの描く登場人物は個性的で際立っている。アイルランド娘マギーを筆頭に、完璧な美を誇る売春婦アメージング・グレース(素晴らしい名前だ!)、同じく永遠の若さを理想とする悪役マクシミリアン・ストレンジ、そして一癖も二癖もある美術品泥棒マックテイントなどなど、全て印象的である。

今考えてみると、本作は残酷なシーンと哀しみが表裏一体となっている。
残酷さと哀しみ。
どちらも負の感情だ。
だからこの作品の読後感に爽快感はない。大きな喪失感が残る。元大学教授とトレヴェニアンの略歴にはある。心理学なのか文学の教授だったのかわからないが、一連の作品に通底するペシミズムは彼のこの経歴から来るものなのかもしれない。つまり小説創作を通じて実験を行っている、それはあまりに穿ち過ぎか。

No.487 7点 プードル・スプリングス物語- レイモンド・チャンドラー&ロバート・B・パーカー 2009/03/26 22:32
第4章まで書かれた本作をロバート・B・パーカーが書き継いで完成させた本書。
かなり賛否両論に分かれている(というよりも否の声の方が多いようだが)作品だが、個人的には愉しめた。

何よりもまず驚くのがいきなりあのマーロウの結婚生活から物語が始まるという設定だろう。
結婚相手は『長いお別れ』で知り合ったリンダ・ローリング。しかしチャンドラーが書いた4章で既にこの結婚が破綻しそうな予感を孕んでいる。

探偵稼業という時間が不定期な仕事と結婚生活の両立が上手く行かない事は自明の理であり、パーカーもそれを受け継いで物語を紡いでいる。

この2人の関係にパーカーのスペンサーシリーズの影が見えると云われているが幸いにして私はスペンサーシリーズを読んだ事ないので、かえってパーカーよくぞ書いたと思ったくらいだ。

マーロウの信奉者には卑しき街を行く騎士が結婚生活をしちゃあかんだろうと、夢を覚まさせるような感想が多いが、しかしこれはチャンドラーが残した設定なのだ。

私はいつもにも増して男の女の関係性という側面が盛り込まれ、そこで苦悩するマーロウが人間くさく感じられてよかった。
最後の「永遠に」と呟く2人のセリフは私の中で永遠に残るだろう。

No.486 5点 フェニックスの弔鐘- 阿部陽一 2009/03/25 22:29
江戸川乱歩賞受賞作。
しかしそれを先入観として読むとかなり面食らう作品。
なんせ内容はかなりハードなエスピオナージュで、見開き2ページは字で埋め尽くされ、各国の政治家の思惑と、アメリカを襲うテロの脅威が事細かに記されている。
果たして今読んで面白く感じるかどうかは解らないが、当時は情報量の多さと読み慣れない政治用語が多くて、読後ぐったりしたのを覚えている。

No.485 8点 エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン 2009/03/24 20:15
エラリー・クイーンが活躍する短編集。しかし短編ながらもその謎とロジックは全くレベルを下げていない。いやむしろ短編だからこそ一切の無駄を排しており、さらにロジックに磨きが掛かったような印象を受ける。

また短編の中にはそれまでの長編の雛形ともいうべき作品が見られる。
例えば冒頭の「アフリカ旅商人の冒険」では複数の推理合戦というトライアル&エラーの趣向が盛り込んであり、これは国名シリーズでは『ギリシア棺の謎』と同じ趣向である。「一ペニイ黒切手の冒険」では稀覯本の紛失と高額な古切手を巡る切手収集家の事件という設定は『ドルリイ・レーン最後の事件』と『チャイナ・オレンジの謎』を思い浮かべるし、「ひげのある女の冒険」の1つの屋敷の中で展開する遺産相続の軋轢でぎくしゃくする金持ちの子供らの息詰まるような関係、そして突然訪れる火事などは、名作『Yの悲劇』を思わせる。
「見えない恋人の冒険」で出てくる墓掘りシーンは『ギリシア棺の謎』を思い出した。また『フランス白粉の謎』でクイーンが試みた、最後の一行で犯人の名が明かされるという趣向は本作では「チークのたばこ入れの冒険」と「七匹の黒猫の冒険」と2作で使われている。しかし『フランス白粉~』ではこの趣向に無理を感じたが、この2作では短編であるゆえにスピード感があり、引き締まって演出効果が良く出ている。

特に「三人のびっこの男の冒険」、「見えない恋人の冒険」、「チークのたばこ入れの冒険」、「ガラスの丸天井付き時計の冒険」、「七匹の黒猫の冒険」の諸作でみられる不可解な謎、各所に散りばめられた証拠・証言の提示ならびにそれらから解明されるロジックの美しさは実に素晴らしく、これらが収められている後半では出来が尻上がりに良くなっている感じがした。

『シャーロック・ホームズの冒険』はオールタイムベストに必ず選出されるのに、なぜ本作は上がらないのか、実に不思議だ。もっと評価されていい短編集だと声高に云いたい。

No.484 10点 長いお別れ- レイモンド・チャンドラー 2009/03/23 23:03
『かわいい女』から4年後、チャンドラーは畢生の傑作を物にする。それはミステリのみならずその後の文学界でも多大なる影響を今なお与え、チャンドラーの名声を不朽の物にしたほどの傑作だ。それがこの『長いお別れ』だ。

テリー・レノックスという世を儚んだような酔っ払いとの邂逅から物語は始まる。自分から人と関わる事をしないマーロウがなぜか放っておけない男だった。
この物語はこのテリーとマーロウの奇妙な友情物語と云っていい。

相変わらずストーリーは寄り道をしながら進むが、各場面に散りばめられたワイズクラックや独り言にはチャンドラーの人生観が他の作品にも増して散りばめられているような気がする。

「ギムレットにはまだ早すぎるね」
「さよならを言うことはわずかのあいだ死ぬ事だ」
「私は未だに警察と上手く付き合う方法を知らない」

心に残るフレーズの応酬に読書中は美酒を飲むが如く、いい酩酊感を齎してくれた。

本作は彼ら2人の友情物語に加え、マーロウの恋愛にも言及されている。本作でマーロウは初めて女性に惑わされる。今までどんな美女がベッドに誘っても断固として受け入れなかったマーロウが、思い惑うのだ。
恐らくマーロウも齢を取り、孤独を感じるようになったのだろう。そして本作では後に妻となるリンダ・ローリングも登場する。

本書を読むと更に増してハードボイルドというのが雰囲気の文学だというのが解る。論理よりも情感に訴える人々の生き様が頭よりも心に響いてくる。

酒に関するマーロウの独白もあり、人生における様々なことがここでは述べられている。読む年齢でまた本書から受取る感慨も様々だろう。

ミステリと期待して読むよりも、文学として読むことを期待する。そうすれば必ず何かが、貴方のマーロウが心に刻まれるはずだ。

No.483 7点 不夜城- 馳星周 2009/03/22 19:50
書評家坂東齢人改め馳星周氏のデビュー作にしてその年の『このミステリーがすごい!』で1位を獲得した話題作である。
しかしその鳴り物入りの本書だが、発表後13年経った今読んでみると、なぜこれが1位?と首を傾げざるを得ない。

刊行当時、読書の共感をおよそ得ることのない劉健一という人物が下す最後の決断はかなり衝撃的だったのだろうけど、私は純粋に彼のピカレスク小説として読んでいたため、さほどの驚きは感じなかった。

それよりも劉健一とその連れ夏美にいろいろ設定を詰め込み過ぎたような気がする。
1つ1つの彼らの過去はかなり重いが、その割には虚無感とか絶望感とかが伝わってこない。ハングリーさばかりが際立って、それがどうも彼らの過去と結び付かない。
突出したエピソードを彼らと取り巻く登場人物にあてがった方が各々のキャラクターに厚みが出て、良かったように思う。

しかし確かに何かは心に残った。次も読もうと思う。

No.482 7点 湖中の女- レイモンド・チャンドラー 2009/03/20 22:59
本書は他の作品に比べると実に物語がスピーディに動く。原案となった同題の短編が基になっていることも展開に早さがある一因だろう。

しかし本作はミステリの定型のまま、物語が進んだという印象が拭えない。失踪した妻の捜索を依頼され、いなくなったと云われた湖に行ってみるとそこから死体が浮かび上がる。
しかしその死体は別の女性の死体だった。そしてマーロウはこのことで別の事件に巻き込まれるといった具合。

特に印象に残るキャラがいないせいか、佳作という感が否めない。

No.481 8点 高い窓- レイモンド・チャンドラー 2009/03/19 15:16
『さらば愛しき女よ』の後に出たということで期待してしまうせいか、あまり評されない作品だ。
古金貨の捜索という、人捜しではなく物探しというところが他の作品と違う特異点だが、それが特化されないのは結果的に行きつく所がある家族の過去であるからかもしれない。

それでもしかしきらめく文章が横溢している。例えばこんな文章。

「家が視界から消えるにつれて、私は奇妙な感じにとらわれた。自分が詩を書き、とてもよく書けたのにそれをなくして、二度とそれを思い出せないような感じだった」

こんな経験は誰でもあるのではないだろうか?こういう言葉にしたいがどういう風に言い表したらいいのだろうかともどかしい思いをチャンドラーは実に的確に表現する。
詩的なのに、直情的。正に文の名手だ。

そして本作では依頼人の秘書のマールと運転手のキャラクターが鮮烈な印象を残す。
特にマールの存在については現在にも繋がる問題として、読後しばらく考えさせられてしまった。

No.480 9点 さらば愛しき女よ- レイモンド・チャンドラー 2009/03/18 00:27
私がこの作品と出逢ったことの最大の不幸は先に『長いお別れ』を読んでしまったことにある。もしあの頃の私がフィリップ・マーロウの人生の歩みに少しでも配慮しておけば、そんな愚行は起こさなかったに違いない。あれ以来、私は新しい作者の作品に着手する時は愚直なまでに刊行順を踏襲するようになった。
そんなわけでチャンドラー作品の中で「永遠の№2」が私の中で付せられるようになってしまったのだが、全編を覆うペシミズムはなんとも云いようがないほど胸に染みていく。上質のブランデーが1滴も無駄に出来ないように、本書もまた一言一句無駄に出来ない上質の文章だ。

とにかく大鹿マロイの愚かなまでの純真に本書は尽きる。昔の愛を信じ、かつての恋人を人を殺してまで探し求める彼は手負いの鹿ならぬ熊のようだ。そして往々にしてこういう物語は悲劇で閉じられるのがセオリーで、本書も例外ではない。

本書でもマーロウは損な役回りだ。だけど彼は自分の信条のために生きているから仕方がない。自分に関わった人間に納得の行く折り合いをつけたい、それだけのために自ら危険を冒す。

本書の原形となった短編は「トライ・ザ・ガール(女を試せ)」だが、チャンドラーはそれ以後も大男をマーロウの道連れにした短編を書いているから、よっぽどこの設定が気に入ったのだろう。そしてそのどれもが面白く、そして哀しい。

そしてマーロウのトリビュートアンソロジーである『フィリップ・マーロウの事件』でも他の作家が大鹿マロイを思わせる大男とマーロウを組ませた作品を著しているから、アメリカの作家の間でもかなり評価が高く、また好まれている作品となっている。

本作の感想はいつになく饒舌になってしまった。そうさせる魅力が本書には確かに、ある。

No.479 8点 大いなる眠り- レイモンド・チャンドラー 2009/03/16 22:40
冒頭の一節からチャンドラーの本作に賭ける意気込みがびしびしと伝わってくる名文が織り込まれている。

金満家の娘に訪れたスキャンダル処理を頼まれたマーロウが自分の納得行くまで調査を行う物語。つまりこの時点ですでにマーロウは騎士なのだ。

ストーリーは難解(というよりも捻くり回されている?)で映画作品『三つ数えろ』でマーロウ役を演じたボガードが原作を読んだ後、「ところで殺したのは誰なんだ?」とぼやいたのは有名な話だ。

本作はアメリカの富裕層の没落を犯罪を絡めて描き、一見裕福に見える家庭の悲劇を卑しき街を行くマーロウという騎士が自身の潔白さをかろうじて保ちながら浮き彫りにするという物語。このフィリップ・マーロウ第1作にその後ロス・マクドナルドが追究するテーマが既に内包されている。

No.478 7点 日曜の夜は出たくない- 倉知淳 2009/03/15 19:16
倉知淳のシリーズ探偵猫丸先輩のデビュー作で、同時に倉知氏自身のデビュー作でもある。
本作も若竹七海や西澤保彦の某作品と同じ、各短編に散りばめられたミッシングリンクが最後に明かされる趣向の短編集になっている。

ただ最後で判明する隠されたメッセージなどはあまりに凝りすぎて読者が見つけ出せるレベルの物ではない。驚愕とか感心とかを通り越して呆れてしまった。

さて本作で探偵役を務める猫丸という人物。その後シリーズ化されているが、確かに面白いキャラクターだ。
一番面白かったのはやはり4編目での猫丸だ。他の作品とは違うきびきびとした振る舞いにニヤニヤしてしまった。

各編の趣向は島田荘司風ミステリあり、ハートウォーミングストーリーあり、ロジックのみを追究したミステリあり、サスペンスありと様々だ。
個人的には表題作がベストだった。

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