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みりんさん
平均点: 6.66点 書評数: 385件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.17 7点 一寸法師- 江戸川乱歩 2024/10/29 04:43
『地獄の道化師』の続きに収録。あちらと比べると、やたら読みにくい上に真相の納得感で数段落ちますが、『黒蜥蜴』『蜘蛛男』『暗黒星』よりは本格推理小説としてよく練られている印象です。明智小五郎って日本三大探偵なのに結構ダークなやつだな。結末がお決まりパターンから脱却していて気に入ったのでこちらも7点。

No.16 7点 地獄の道化師- 江戸川乱歩 2024/10/29 04:41
犯人消失トリック・犯人の意外性・真相の納得感など、今まで読んできた乱歩の通俗物の中では出色の出来映えだと思いました。私は空さんが指摘している誘拐の描写ですっかりミスリードされたせいで、真相は普通に衝撃的でありました。なにかと謙遜(というか卑下)するイメージの乱歩でさえも「通俗ものながら、犯人の意外性の構成は、ややうまくできていたのではないかと思う」と言っています。それにしても、男の○○○は流石にズルいwww
話の流れは毎度お決まりのパターンですが、それでそれなりに面白くなってしまうので仕方ないです。

No.15 5点 少年探偵団- 江戸川乱歩 2024/10/29 04:28
俺みたいなハタチ超えて、児童書コーナーで少年探偵団シリーズ漁ってる野郎、他に、いますかっていねーか、はは 

少年時代はつゆ知らず、これは匂うなあ…小林芳雄少年と明智小五郎のただならぬ関係…怪しいロマンスの雰囲気が…
頬を赤らめたり、○○させたり、『暗黒星』でもそうだったが、明智はひょっとして美少年嗜好が強いのだろうか。そういう描写をあえて入れてるような気がするんだが、考えすぎか?

少年探偵団シリーズ26作を読んで書評していこうかと思ったが流石にやめておこう(笑) 大人向けの方に戻ります。

No.14 6点 怪人二十面相- 江戸川乱歩 2024/10/29 04:23
掲示板にて大人になってから再読したという方がいて、私もつい。
怪人二十面相はその存在自体がミステリアスな神出鬼没の超人というイメージでしたが、意外と協力者をお金で買収したり、明智と煽り合ったり、子供にいっぱい食わされたりと、人間臭いのが意外でした。
当時の少年達が寝る間も惜しんで、夢中に読んでいる姿が目に浮かびます。

乱歩がティーン向けに書いた作品は、区別のために「明智小五郎シリーズ」より「少年探偵団シリーズ」にした方が良さそう…?

No.13 8点 江戸川乱歩傑作選(新潮文庫)- 江戸川乱歩 2024/10/09 11:15
これは乱歩初心者の私にとって珠玉の短編集だった。
国内最古の暗号と密室『二銭銅貨』『D坂の殺人事件』、明智のプロファイリング能力が光る『心理試験』などの有名な探偵小説寄りの代表作群に加えて 、乱歩の持ち味である異常心理・性愛・残虐嗜好が存分に活かされる『芋虫』『人間椅子』『鏡地獄』も揃ってて隙が無い。
ただし『鏡地獄』があるならば、『目羅博士の不思議な犯罪』も収録しといて欲しかったかな。結構気に入ってるので。あと有名所で入ってないのは『押絵と旅する男』とか?
何気に『パノラマ島奇談』がないのはかなり痛い。まあ、あれは短編とは呼べない分量だから仕方ないのかな?

No.12 6点 蜘蛛男- 江戸川乱歩 2024/10/09 11:03
犯人やトリックは見え見えで前半で真相のほとんどが看破できてしまう。犯人の行動には必然性を感じないし、プロットの瑕疵にも突っ込みたくなる………のにどうしてこんなに夢中になって読んでしまうのか分からない。乱歩の卓越したストーリーテリングの力というものを見せつけられた。戦前にこんな特大のエンターテイメントがあれば少年たちが夢中になるのも当然だよねぇ。

No.11 7点 人間椅子- 江戸川乱歩 2024/09/24 10:08
可愛らしいデザインの角川文庫のもので読みました。
『人間椅子』は乙女の本棚シリーズで読んでいたので再読。
初読時はよくぞこんなニッチな異常性癖を…と楽しみましたが、あの『芋虫』を読んでしまった後はまだまだ振り切れていないなと。感覚器官欠損の美学として『芋虫』は『人間椅子』の強化版です(私見)。そして、最後の最後でリアリズムというか、著者の中の理智が勝ってしまったような葛藤が読み取れる。
『目羅博士の不思議な犯罪』は鏡(模倣)の恐怖をテーマにしていて、怪奇短編『鏡地獄』が探偵小説寄りになったような感じか?これは両者引き分け。なんだかこの目羅博士、夢野久作の作品にも出てきそうな感じがする(笑)
『押絵と旅する男』も人ならぬものに恋煩った男の話。これもどこか『人でなしの恋』とダブる。老化はやはり人生における最大の敵ですな。

No.10 7点 心理試験- 江戸川乱歩 2024/09/13 01:47
本サイトに登録されている乱歩作品の中で最高評価を受けているのが本作。この雑味のないシンプルさと心理分析の納得感に起因しているのでしょう。罠の引っかかり方だけを抽出すれば犯人はただのアホにしか見えないところなのだが、犯人の行動原理を的確にプロファイリングした明智の賢さを実に巧みに示している点が流石乱歩だと思います。


【ネタバレのようなもの】



お金を半分だけ盗む→自演で交番に届ける
もし仮に強盗目的であることが発覚しても、逮捕には繋がらない。これ何気に賢いなと思いました。これのせいで疑われたことを差し引いても、なかなかのトリックじゃあないですか?

No.9 6点 D坂の殺人事件- 江戸川乱歩 2024/09/13 00:08
日本最古の密室もの(1925)らしい。ソースはwikipedia(^^;)
海外ではポー、ドイル、ルルーなどが既に優れた密室を生み出していた中、本作の功績は「日本の家屋で密室を成立させるのは不可能」という定説を覆したことらしい。ほんとですか?じゃあ+1点しとくか。
全体的に『モルグ街の殺人』の影響が色濃く出ているのを感じますが、真相のぶっ飛び具合で遠く及んでいないという印象。明智小五郎という探偵が有名になりすぎてしまったのも一つの弊害か。
密室ものだけどその構築方法は肩透かしで、HowよりWhyの方がはるかに印象に残りました。

No.8 6点 黒蜥蜴- 江戸川乱歩 2024/09/11 13:15
明智ィ〜さすがにモブ盗賊の命の扱い酷くねえか?笑
流石に誘拐犯対名探偵の頭脳戦はご都合主義で子供騙しに感じてしまいましたが、私は好敵手から想い人へと変わってしまう黒衣婦人のヒロイン小説として楽しみました。最後のキスシーンで、毒を口移しにして共倒れエンドにしていたら、私の好みの結末でした。
三島由紀夫ってこういうのも好きなんだ、意外。三島由紀夫版も読まないとねえ…

No.7 8点 芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション2- 江戸川乱歩 2024/09/10 17:27
表題作『芋虫』はあまりにも凄惨を極めた内容で衝撃を受けました。評点は『芋虫』だけの評価。
外界からの(性的)刺激を受信する感覚器官の欠損という点で『人間椅子』に通ずる異常性愛の形であると読み取ることもできます。
『人でなしの恋』は性愛の異常さでいえば、『芋虫』には遠く及びません(我基準)が、両作ともに残された妻は生涯罪の意識に苛まれることでしょう。

探偵小説的趣向が強いのは『夢遊病者の死』とせいぜい『双生児』くらいで他はほぼ怪奇小説。
『芋虫』と『人でなしの恋』以外は正直4〜6点ほどで、『踊る一寸法師』が結構よかったかな。元ネタのエドガー・アラン・ポー『ちんば蛙』も読まねばならん。

あと巻末の三津田先生の解説が良い。未収録の『陰獣』で解説を〆るほどお気に入りなのが面白い。

No.6 6点 暗黒星- 江戸川乱歩 2024/09/10 01:57
このレベルのミスリードにすっかり騙されてしまうのは私くらいなものか…(苦笑)
手垢のついたプロットかもしれないが、少年の気持ちになって雰囲気を存分に楽しんだ。「暗黒星」とは明智小五郎にとってだけではなかった。伊志田一家にとっても、十年以上目に見えぬ脅威として鳴りを潜めていた。まさに隕石級の底知れぬ執念がそこにはあったということか。

No.5 6点 屋根裏の散歩者- 江戸川乱歩 2024/09/09 22:40
犯罪のもつ魅力に取り憑かれてしまった男。狂人の異常心理を扱った犯罪小説パートが80%、シンプルなトリックと明智小五郎の冴え渡る推理を楽しむ本格探偵小説パートが20%。どちらかというと前者が乱歩の持ち味かな〜という風に思います。こういうトリックも好きですけどね
そういえば『陰獣』にもこんなやついたなあ。というか元ネタか。読む順番逆だったな。

No.4 8点 パノラマ島奇談- 江戸川乱歩 2023/09/13 21:17
冒険モノを期待して読むと耽美で絢爛な幻想小説でした。
ここまでこの舞台を映像で見せてくれ!!と思わせたのは初めてで、パノラマ島の幽玄な描写に魅了されました。初恋の女性かずっと夢見たユートピアのどちらを選び取るのか見届ける作品でもあります。

(再読)これがいまのところ『芋虫』『孤島の鬼』に並んで最高作かもしれない。7点→8点

No.3 5点 二銭銅貨- 江戸川乱歩 2023/08/08 03:05
乱歩のデビュー作。
よく練られたショートコントっぽい。8字ずつ飛ばす理由までついてると嬉しかった。
当時男同士では頭脳の優劣を競い合うことくらいしかやることなかったんでしょうか笑

No.2 8点 孤島の鬼- 江戸川乱歩 2023/07/27 01:53
これは名作ですね〜 乱歩良いな乱歩
江戸川乱歩って子供向けなイメージがあって今読んでもつまらないだろ?って失礼な先入観があったんですが、「陰獣」を読んでからイメージが180°変わりました。
「孤島の鬼」では「陰獣」のような粘着質で気持ち悪い文体ではなく、かといって清涼!爽やか!って感じでもなく、どこか不気味で不安感を駆り立てる良い雰囲気でした。

スリラー・冒険・本格・怪奇小説そしてラブロマンス どれも優秀でそれぞれが魅力を打ち消し合わずに、ジャンルが変わっていく面白さを味わえます。

No.1 7点 陰獣- 江戸川乱歩 2023/07/07 21:26
三津田信三氏の「忌館 ホラー作家の棲む家」という作品の中でこの「陰獣」が絶賛されていたので気になって読んでみました。昔の作品だからか?120ページ読むのに2時間程かかってしまいました笑

【ネタバレがあります】


連城作品の耽美性を薄めて陰湿さを強化したような感じで、作品の雰囲気が独特で読み味がありますね。
そんな陰獣、派手なトリックはないもののラストの2転3転する多重解決と答えの出ない推理に悩み悶える主人公が印象に残りました。

もう一つの中編「蟲」では異常者の犯罪心理をたっぷり読ませられる。ここまで徹底されてるのは「殺戮に至る病」以来だ。これはまさに陰獣に登場した探偵作家、大江春泥の得意とする内容だろうか。

こりゃ乱歩作品他のも読まないとなあ。

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