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みりんさん
平均点: 6.66点 書評数: 385件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.12 8点 ぼくは化け物きみは怪物- 白井智之 2024/11/02 04:28
「みんな教えて」のこのミス予想企画の期限もあと1ヶ月(隙あらば宣伝)、さすがにランキングに高確率で関わるであろう白井智之の新刊は読まねばなりませんね。はじめの方は「2年連続大傑作を拵えてきたシラユキ先生でもたまには凡作も書いちゃうよね…(安心)」と油断していたら………

『最初の事件』 5点
掴みとしてはかなり良い、なんたって小学生名探偵の最初の事件だからね。ここからアフリカ・韓国・時間兵器…etcとお話が広がっていくかと思いきや、ぶつ切り!もったいない!!

『大きな手の悪魔』 6〜7点
「尼崎事件」が元ネタか。狡猾な老婆と紳士な悪魔の頭脳戦。いくらなんでも紳士すぎるでしょ山羊さん…

『菜々子の中で死んだ男』 7〜8点
犯人探しの遊郭巡りと飛躍ロジック楽しく、最後に浮かび上がるタイトルの意味もお見事。

『モーティリアンの手首』 6点
まさかの地学ミステリ。化石に執着する男とその貴婦人、それぞれの思惑は3万年の時を超えて地層に生き続ける。設定がいつもよりSF特化。いつかハードSFとかも読んでみたいね。

【以下ネタバレ注意 『名探偵のいけにえ』に関する言及もあり】



『天使と怪物』 9〜10点
1つ1つの密室は既出のアイデアであるが、本作の凄さは3通りの不具者に適した3通りの真相、多重解決に対する新たな試み、異様な現場の状況に筋を通す真犯人の動機。何から何まで計算され尽くさている。密室に対して数通りの解を出し、多重解決を意味のあるものに昇華させたという点で『名探偵のいけにえ』を思い出さずにはいられない。そう、怪物とは白井智之だったんだな…
短編でここまでの完成度の作品は正直見たことがない。

ただ、短編集としてみると『死体の汁を啜れ』の方が上かな。

No.11 9点 エレファントヘッド- 白井智之 2024/02/12 01:30
年末に本サイトの「みんな教えて」機能にて、よんさん主催の「このミス予想」というとても楽しい企画がありましたね。私はそこで参加者9人のなかで単独最下位を取ってしまいました( ; ; )  そんな私でも読む前から明らかに異彩を放っていた『エレファントヘッド』は的中させましたよ。ドヤ

【ネタバレあります】


白井智之作品は謎解き以外の無駄が一切なく(ほんとか?)、純粋なパズラーとしての密度が尋常じゃないくらい高い。それ+特殊設定のせいで読んでいる間は疲れるけれど、そんな疲れを吹き飛ばすカタルシスがある。今回でいえば最後に明かされるアレがそう。
白井作品史上最高のトリックなだけでなく、特殊設定ミステリ史上最高にして最恐のトリックと言っても過言ではない(はず!)。
ただ、エンタメとしての面白さももちろん保証するが、こんなことを思いつく作者への畏怖が勝ってしまうなあ。シスマ打って読む前に戻りてぇ…
でもハウとホワイのバランスを考えると『名探偵のいけにえ』の方が好みかな。白井作品制覇記念に10点満点にしておこう。

No.10 7点 おやすみ人面瘡- 白井智之 2024/02/09 03:01
うーん面白い。これ3作目なんだねぇ…
3作品続けてこんなに面白いと、作家に対する信頼みたいなものを感じはじめる頃だろうか。本作品まで読まずとも、『人間の顔は食べづらい』『東京結合人間』あたりで既にとんでもない作家が来たと期待感に溢れている当時のレビューを読むとニヤニヤしてしまう。本サイトの楽しみ方の1つ。

【ネタバレあります】






まず、人面瘡の設定は発症した"人間"の生涯を思うと精神的に辛くなるなあ。フィクションだけど、これだけで色々妄想してしまう… この設定が今回の謎解きにどう関わってくるのかはずっと不思議だった。
中学生パートは友情・青春・辛酸。キャラクターが中学生でも、この作者は容赦のない仕打ちを用意します。また、中学生4人が容疑者となって開かれた推理合戦では、意外な探偵役が場を引っ掻き回し、二転三転する真相。一見どれも筋が通っているように見えるのがこの作者の凄いところ。
意外な犯人と救われない結末に+2点

No.9 6点 ミステリー・オーバードーズ- 白井智之 2024/02/05 23:32
「俺、普通にグロイのいけるんだよね」という厨二病的なイキリをしたくなるところだが、『ちびまんとジャンボ』がちょっと本当に読んでてキツい。トラウマレベルの気持ち悪さ。
虫が苦手な方はやめておいた方がいいでしょう。

【ネタバレあります】





『グルメ探偵が消えた』 6点
珍しく外国舞台 「目には目を 歯には歯を」の精神大事ですね。真相がややずるい気も。
『げろがげり、げりがげろ』 8点
中盤の衝撃のタイトル回収に爆笑。いやーさすがですねぇ、しっかり騙されましたよ。すこーしだけ(色んな意味で)感動するラスト。
『隣の部屋の女』 5点
なんか普通。いや騙されたけど。あまり白井作品らしくないサスペンス寄り(?)の作風。なんか似たような真相の作品を読んだことある気がするなあ。連城か?
『ちびまんとジャンボ』 5点
読むのキツかった。ふつうにフナムシ過剰摂取で死なないの?って思った。
『ディティクティブ・オーバードーズ』8点
「完全幻惑」「事実幻惑」「虚偽幻惑」を分類し、消去法で犯人を特定する発明的ロジック。難解すぎて一部諦めたが『東京結合人間』のドミノ倒しロジックと同じく、よく思いつくなと感心です。

No.8 8点 死体の汁を啜れ- 白井智之 2024/02/04 19:14
おーっとこれは白井智之ベスト短編集に間違いなさそうですよ。うろ覚えだが「お前の彼女は二階で茹で死に」「名探偵のはらわた」よりトリック重視で、その辺が気に入ったのかも。

【ネタバレがあります】





中でも「死体の中の死体」がベストオブベスト。なぜこんなアイデアが思いつくのか?もしかして作者5人くらいいる?
次点で「膨れた死体と萎んだ死体」「何もない死体」も短編とは思えない満足度。平均だと6〜7点だが、傑出している作品を大きく評価して8点付けます。
オチの勘違いも良い。珍しく使いまわせそうなコンビが出てきたので続編どうでしょうか?

No.7 6点 そして誰も死ななかった- 白井智之 2023/12/22 15:07
「死者が蘇る世界で謎解き」ってのを最初に考案した作家は誰なんでしょうね。七回死んだ男か生ける屍の死か?それとも海外作家が遥か前から書いていたのか気になるところ。
話が逸れましたが、この作者の割には普通寄りの特殊設定(どういうこと?)ではあるが、相変わらずよくこんな多重推理のアイデアが泉の如く湧き出てくるなと感心する。特に時計と血と亀裂のロジックは分かりやすいしユニークだし面白い。ただ、多重解決ものは最後に明かされる真相が1番ぶっ飛んでいてほしいという願いもあり、トリックも動機も衝撃が薄れてしまった感も否めない。

【ネタバレあり】



「私たちははじめから一度死んでいたのだ」ってヤツ、妙に既視感があるのに何の作品か思い出せない。モヤモヤする。

No.6 7点 名探偵のはらわた- 白井智之 2023/10/28 22:54
津山30人殺しをモチーフにしたミステリはこれで3つ目ですが、どれも当たりですね。


【ネタバレがあります】


今まで読んできた白井作品は根っからの悪人が語り手であることが多かったのでこんなに真っ当なヤツは初めてな気がする。あと『名探偵のいけにえ』と話が繋がっているとかいないとか聞いていたんですが、いけにえの方をだいぶ前に読んだせいでどこが繋がってたんだ?って思い出せなくてモヤモヤしてます。読み直すか…

神哭寺事件 6点
心理アリバイトリック+オカルト特殊設定の導入。いつもより鬼畜猟奇趣味は控えめではある。

八重定事件 8点
だと思っていると、やって来ましたよ
受け渡しのシーンの絵面を思い浮かべるとシュールすぎる。

農薬コーラ事件 7点
少々ズルいミスリードと人間消失。子供の頃、親から外に放置されてる飲み物を飲むなと執拗に忠告されたのはこの事件のせいだったのか。

津ヶ山事件 7点
どこまで元の事件から改変を加えているのかは寡聞にして知らないが、こういう実際の事件に新たな解釈を施す試みは面白い。

ところで表紙の武装した女キャラはいったい誰やねん…

No.5 7点 お前の彼女は二階で茹で死に- 白井智之 2023/10/22 01:48
正直いうと短編集ってあんまり心踊らないんだよねぇ。でもこの作品の密度は異常です。短編でも多重解決を徹底するのってふつうに頭おかしいと思うんだけど、どうなってんのこの著者。今最も脳内を覗き見したい作家ランキング堂々の第1位。
いつもの謎比喩と全編にわたる"ゲロキモロジック"に加えて、やたら記憶に残るネーミングセンス(大耳蝸牛、ヒコボシ、まほまほ…etc)が楽しめる。

【ネタバレがあります】




『ミミズ人間はタンクで共食い』『アブラ人間は樹海で生捕り』の2つはノエルが○したのがどちらかという前提条件で推理がガラリと変わるのすごいね。よう思いつくわこんなん。
『トカゲ人間は旅館で首無し』では純密室+雪密室。そして何の思い入れもなさそうに惜しみなくコロされてしまうあのキャラ。もっと見たかったよミミズ女探偵。
『水腫れの猿は皆殺し』はおもしろトリックと連作短編だからこそできる少々強引なサプライズ。ですが今まで相棒も探偵も容赦なくコロしてきたお話だからこそ生きる仕掛けだと思います。
『後始末』では『ミミズ人間はタンクで共食い』という原点に戻る綺麗な幕引き。お見事。

ヒコボシが最後にナンカイイヤツ感を出すのとお咎めなしなのがちょっと不満だったかな。

No.4 7点 少女を殺す100の方法- 白井智之 2023/10/17 19:27
外で読むときはブックカバー必須の物騒なタイトルですね。周りに引かれないように気をつけましょう。
どうやら傑作『名探偵のいけにえ』は著者の抑えきれない猟奇趣味をなんとか封印して、生み出された奇跡の作品だったようです。今作もあまりに容赦のないグロ描写と+α少女趣味が炸裂しています。が、そんなことは減点材料にならないほど白井先生のアイデアの豊富さに圧倒されます。

【ネタバレがあります】





少女教室 7点
挨拶代わりに20人の少女を亡き者にし、見事な消去法ロジックからの倒叙ミステリ。そして意外なwhyと意外な名探偵。一番作者らしい短編かな?

少女ミキサー 9点
理不尽脱出デスゲームの中に本格の香り。今後忘れられない短編になりますねぇこれは。
腸の強度ってこんなにあるの??

少女殺人事件 6点
余りにも斬新な犯人特定ロジック。唯一のメタミステリで1番笑えます。

少女ビデオ 7点
これは読んでて気持ち悪くなるくらいグロい。しかし耐えてでも読む価値あるどんでん返し。
ところで、腸の強度って・・・(以下略)

少女が町に降ってくる  8点
横溝&三津田先生の香り+荒唐無稽すぎる特殊設定。
犯人が○○を殺すために、大変回りくどい方法をとるのですが、「アイデアに酔ってたのよ」の一言で解決です。作者の自白が聞こえてきたような気がして笑いました。

No.3 8点 東京結合人間- 白井智之 2023/10/15 17:06
「白井智之、二十四歳。末恐ろしい書き手である」と綾辻せんせーが帯で賞賛しているが、なんか妙に腑に落ちる。こういうの好きそう。

【ネタバレあります】



プロローグから挨拶代わりの痛覚刺激型グロ描写。読んでるこっちもあそこがいてぇ。
ノーマルマンが2人だという前提から導かれるドミノ倒しロジックは発明的じゃないか?まあ…
大多数の作家がトリックのために特殊設定を作っているのに対して、白井智之は更なるグロを描写するために特殊設定を作ってるんじゃねぇかと疑っていた。が、著者の猟奇趣味で包み隠された奇想極まるトリック。まさに鬼畜設定パズラーにふさわしい。正直なんでこんなに評点が低いのか分からんくらい凄かった。まあ例によって私は1ミリも気付けませんでしたが、ミステリを読み慣れている方にはバレバレっぽいのが減点要素なのかな?乱歩の『孤島の鬼』のような不気味さもあって大変気に入りましたね。

結合人間のビジュアルに想像力を掻き立てられるが、文庫本表紙みたいに横に並んでいるのかな?だとすると身長が伸びるのはどういうことなんやろね。

No.2 7点 人間の顔は食べづらい- 白井智之 2023/10/06 17:49
白井智之のデビュー作。これほどの作品が最終候補作止まりって恐ろしい世界ですねミステリ界は。

【ネタバレがあります】


病気で家畜が死滅した世界で非自然人であるクローン人間を食すこと(食人法)が許される世界。そのSF的世界観をベースに複数の怪奇事件と多重推理をたっぷり楽しめる本格ミステリ。そして最終的には物理の檻と人間社会の檻の2つを超える物語だったのですね。素晴らしい作品だと思います。
新型コロナウィルスという言葉が出てきた時にはこの作品の刊行年度が2014年であることに疑問符がつきましたが、そういえば元々あるウィルスだったんだな。わざわざ新型って付くんだから当然か…

No.1 10点 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件- 白井智之 2023/03/18 03:04
信仰と現実の齟齬をテーマにカルト宗教内で起こる連続殺人事件。

【ネタバレあります】


犠牲者を最小化しようとするりり子・信仰者・余所者 すべての殺人が不可能犯罪であるにも関わらず、これらの3つの立場からそれぞれ3通りの真相を作り出す作者の引き出しの多さ。そして、複数の真相を示すことでカルト宗教を集団自殺に追い込むという怜悧さ。名探偵のいけにえというタイトルに隠された本当の意味。どんな頭脳を持ってすれば、ここまで洗練されたシナリオが思いつくのか…ひたすら作者の発想力に圧倒される作品です。もし「このミステリーの作者が怖い」大賞があれば堂々の1位です。

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採点傾向
平均点: 6.66点   採点数: 385件
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