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弾十六さん
平均点: 6.10点 書評数: 446件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.166 6点 黒い金魚- E・S・ガードナー 2019/08/15 20:27
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第26話。1945年5月出版。文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
原題 Golddigger's Purse「金目当て女の財布」(なので動物タイトルではありません) 作者のまえがき(南アメリカの友人たちに感謝)付き。前話の続きでレストランから始まり、ヴェイルテイル・ムア種の出目金が発端。今回はツキのないメイスン、慎重に行動しても抜け目ないトラッグに追い込まれ、得意の強気なブラフにも失敗、理解ある予備審問の判事のおかげで何とか窮地を逃れます。解決はちょっと複雑、転写法の件は無理筋だと思います。次の事件の予告はありません。文庫版は、予備審問についてのわかりやすい解説(があとなあ・ほうだん/6)あり。銃は38口径 ダブル・アクション リヴォルヴァ、メーカー不明。
(2017年3月25日記載)

No.165 6点 殴られたブロンド- E・S・ガードナー 2019/08/15 20:07
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第25話。1944年11月出版。ハヤカワ文庫で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
雨の日のデラとの冒険、トラッグ警部との騙し合いは相変わらず、メイスンは荒っぽいのはやらないと言いながら、結局危ない橋を渡り、お久しぶり(お前のせいで殺人課から出された)ホルコム部長刑事に出くわします。法廷場面は予審で、これまたお久しぶりドラム検事が登場。矢継ぎ早に指示されるドレイクは夕飯の代わりに「一本で二倍の栄養がある」チョコレート・バーを勧められます。次回予告はトリオが集まったレストランに金魚で気の狂いそうな男が登場。
銃は38口径リヴォルヴァ、メーカー不明。他にも終盤に派手な銃撃戦がありますが銃の具体的な描写はありません。
(2017年3月21日記載)

No.164 6点 傾いたローソク- E・S・ガードナー 2019/08/15 20:00
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第24話。1944年5月出版。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
ジャクスンが久しぶりに登場、やせていて少し猫背、鼻は長く薄い唇(眼鏡かけてないのかな)冒頭と最後の方で活躍。メイスンの行きつけは九番街のレストラン、店主はピエール54歳。事件はアストラカン羊の交通事故から始まり、深夜のヨットでの冒険で終わります。Lieutenantトラッグは今回も抜け目ない行動でメイスンやデラと丁々発止。メイスンが無難なのに比べ、依頼人父娘の行動はメイスン顔負けです。タクシー不足による相乗り、このごろはガソリンが買えない、弟が酪農業なのでバターがたっぷり手に入る、などは戦時中の制限を意味しているのでしょう。法廷シーンは予審裁判で、判事の応援もあり、バーガーが悔しい結果を迎えます。次の事件の予告が久しぶりに復活、目にアザをこしらえたブロンドが次の依頼人です。
(2017年3月21日記載)

No.163 6点 弱った蚊- E・S・ガードナー 2019/08/15 19:41
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第23話。1943年9月出版。HPBで読みました。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
砂漠は一番親切な母、と言う砂漠大好きガードナー。これも一種の動物タイトル? 事務所のビルの窓には「ペリイ メイスン法律事務所」の文字。ガーティは馬に乗れない。事件の舞台はサン・ロバート市(LAから100マイル程度) 鉱山師には騾馬がつきもの。星が綺麗なキャンプ生活でデラは熟睡。メイスンとデラが大変なことになり、ドレイクは呑んだくれの日々。法廷シーンは無いが、口供調書をとる場面あり。砂糖は配給、配給手帳の券、若い男は皆いなくなった、など戦時中の話題がそこかしこに。メイスンの大胆な行動、狸寝入りも上手い。トラッグは管轄外だが義弟の助っ人で登場。解決の後、メイスンがデラに…
銃は古い45口径と錆びついたコルトのリヴォルヴァ(グリップに手彫りで1882年)と38口径 自動拳銃の薬莢(38スペシャル弾?)が登場。アウトドア風味あふれた作品。入り組んだペテンのネタも西部っぽいですね。
なお、ここに出てくる金鉱本、架空の本かと思ったらトリビア本Perry Mason Book(2014)によるとThe Miner’s Guide, compiled by Horace J. West(3rd ed.? 1929)という実在本だそうです。
(2017年3月20日記載)

No.162 5点 埋められた時計- E・S・ガードナー 2019/08/15 19:27
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第22話。1943年5月出版。グーテンベルク21の電子本で読了。(なお、以下はAmazon書評の転載です。ちょっと訂正しました。いずれ再読したらあらためて書きます。)
負傷した復員兵、タイヤの配給、戦時タイム(太陽時間より1時間早い)などの道具立てが時代を感じさせ、多少の法律違反はものともしない時期の行動派ペリーの活躍。でもペリー視点じゃ無い記載が途中にも混じっててちょっと興ざめ。銃は38口径コルト複動式(ダブルアクションのことですね)六連発リボルバー、シリアル14581が登場。約5年前に入手した、ということなので、シリアルで探したら1907年製ポリスポジティブ(38S&W弾)と1909年製ポリスポジティブスペシャル(38SP弾)が見つかりました。
(2017年2月25日記載; 2019-8-15訂正)

No.161 5点 そそっかしい小猫- E・S・ガードナー 2019/08/15 19:15
ペリーファン評価★★★☆☆
ペリー メイスン第21話。1942年9月出版。連載Sarurday Evening Post(1942-5-23〜1942-7-11) ハヤカワ文庫で読みました。(なお、以下はAmazon書評の転載です。いずれ再読したらあらためて書きます。)
この作品までの雑誌連載ものは動物タイトル(吠え犬、門番猫、びっこカナリヤ、例外: 奇妙花嫁)が多く、傑作揃い。(この作品以降の雑誌連載は逆に動物タイトルほとんど無し) メイスンは第4章 文庫p.49から登場。戦時中を思わせるものとして、陸軍で逞しくなった青年や、日本人を憎む朝鮮人の使用人コモ登場。「おじぎするように頭をさげて、顔にうす笑いを浮かべながら」日本人が書いたみたいな表現の手紙。
(A gentleman will call for me tonight. He is Perry Mason, lawyer. Please tell him I cannot keep appointment, but he is to come at once to place indicated. Circumstances have necessitated a change in plans. This is unfortunate. Tell him to drive, please, to reservoir near top of road back of Hollywood according to course traced on map enclosed here with. Once more excuse, please, change in plans. It is unavoidable. ここから日本人ぽさが読み取れるのか…)
ウォルサムの時計はヴァンガード23石と表示。ポール ドレイクは休暇から色仕掛けで引っ張り出されますが、仕掛けたデラが真っ赤になって可愛い。ジャクソン(久しぶり)、ガーティの登場は電話の向こう側だけ。今回も抜け目ない活躍のトラッグですが、バーガーとともにメイスンに挑んだ「重要被告人」の裁判で、大いに慌てさせられます。メイスンの綱渡りはほとんどありませんが、デラを非常に怯えさせたので失格ですね。銃は1932年1月以前購入の38口径ダブル・アクション六連発リヴォルヴァ スミス・アンド・ウェッスン製が登場。時代からミリタリー&ポリスでしょうか。
(2017年3月20日記載)

No.160 10点 詩人と狂人たち- G・K・チェスタトン 2019/08/14 23:22
単行本1929年。雑誌連載は断続的。創元文庫の新訳(2016)で読みました。
昔からずっと好きで、ブラウン神父ものより評価してた記憶があります。再読はとても楽しかった。(新訳非常に読みやすいです。) ただし1929年の2作はいささか理に落ちてる感じが不満。でも⑴⑹⑻が本当に素晴らしいので殿堂入り10点です。
雑誌発表順にGKCを読む試みで『知りすぎた男』と交互に発表されていることから、記録は飛び飛びになっていますが、発表順に読むと違った面が見えました。
以下、初出はFictionMags Indexで調べ。カッコ付き数字は単行本の収録順です。(結構、順番を変えていますね。) 献辞は無いようです。

⑴The Fantastic Friends (Harper’s Bazar 1920-11, 挿絵の有無不明) 評価8点
最悪の状況で実際家(practical men)は役に立たない!と叫ぶゲイル。逆立ちをしてこの世の秘密を伝えるゲイル。狂気成分満載でロマンチックなチェスタトンの復活宣言です。原題のFantasticは翻訳では伝えるのが難しいですね… (この作品を読んでいる途中、どうしても最近の狂気による大量殺人事件を思い出してしまいました。無意味な大量死はGKCや西洋人が体験したWWIと同様のものでしょう。実際家が解決出来ないことを解きほぐす可能性を感じられる作品になっていると思います。)
(2019-8-10記載)

⑸The Finger of Stone (Harper’s Bazar 1920-12) 評価6点
犯行現場を含む土地全体が一種の密室という壮大な設定。科学界と宗教界の間には、当時、化石化の年数に対する論争があったのでしょうね。(調査してません。) 科学性皆無な話なのですが、発見以上に素晴らしいもの、というテーマが心を打ちます。
(2019-8-10記載)

⑵The Yellow Bird (Harper’s Bazar Feb 1921-2) 評価5点。
全ての旅の終着駅としての家。(『マンアライヴ』を思わせます。) 自由の意味。小品です。探偵小説への言及あり。
(2019-8-10記載)

※⑵と⑶の間はホーン フィッシャーもの3作を発表。

⑶The Shadow of the Shark (Nash’s and Pall Mall Magazine 1921-12): 評価5点
魅力的な不可能犯罪の設定(JDCの大好物)なのですが、解決はなーんだ、となります。GKCの興味は現代人の冷たい心情なのでしょう。ゲイルの不安定な心は作者の投影か。
ところで冒頭の「今は亡きシャーロック ホームズ氏(the late Mr. Sherlock Holmes)」というのはHis Last Bow(ストランド誌1917年9月号)の後、しばらく新作が発表されてなかったからでしょうね。(『マザリンの宝石』が1921年10月号に発表されてますが、どう見ても過去話で三人称という変則作ですからね…) もしかしてNash’sの挿絵はSteeleだったのかも。
(2019-8-12記載; 2019-8-14追記)

⑹The House of the Peacock (Harper’s Bazar 1922-1): 評価9点
全てが噛み合った素晴らしい構成。作者の目は被害者にも加害者にも同様に注がれています。ある種の鎮魂歌になるような作品だと思います。(今日の嫌なことが一気に吹っ飛びました。) でも孔雀って不吉だったんですね… 英初出はNash's and Pall Mall Magazine 1922-7と思われますが挿絵Frederic Dorr Steeleなんですよ。Webで見つけてビックリ。
(2019-8-12記載; 2019-8-14追記)

※間にフィッシャーもの2作、ブラウン神父もの3作。

⑻The Asylum of Adventure (MacLean’s 1924-11-1): 評価8点
いい話だな〜。心が洗われます。最高の締めくくり。初出はカナダの雑誌。英米誌には掲載記録がないみたい。何故だろう。
(2019-8-14記載)

※この間にブラウン神父もの、連作『法螺吹き友の会』、長篇The Return of Don Quixote。

⑺The Purple Jewel (The Story-teller 1929-3): 評価5点
作者的には5年前に一度幕を降ろしてるので、熱気が薄い感じです。でも穏やかな幸福感が良いですね。(単行本にするは枚数が足りないと言われたのかなぁ。)
p224 アプサント(absinthe): 飲みたいと言ったらレストランの主人にやめておけ、と言われました。味が酷いらしいです。ここでも「酔い心地がまことに異常」と言われてます…
p252 二千五百ポンド: 英国消費者物価指数基準(1929/2019)で63倍、現在価値2024万円。
(2019-8-14記載)

⑷The Crime of Gabriel Gale (The Story-teller 1929-9): 評価4点
その気持ちわかる、と言いたくなりますが… 解決後の長い説明がブラウン神父みたい。作者も咀嚼不十分なのでしょう。蛇足のエピソードがとても不気味です。(『アークトゥールスへの旅』のアレを連想しました…) ところで「詩人」ゲイルが詩を吟ずるのはこれが最初で最後ですね。
p120 雨男と言われている: that cloudless day having so rapidly overclouded, with the coming of the one man whose name was already associated with itがそのあたりの原文。「雨男」と言う概念は無い?
p132 小さな水滴が/小さな砂粒が/魂をよろめかせ/星々をも立っていられなくなる(Little drops of water,/Little grains of sand,/Make the soul to stagger/Till the stars can hardly stand.): "Little Things" is a 19th-century poem by Julia Abigail Fletcher Carney, written in Boston, Massachusetts. 原詩はLittle drops of water,/Little grains of sand,/Make the mighty ocean/And the pleasant land. ここではチェスタトン流に3-4行を変更。
(2019-8-14記載)

読み終わりましたので、短い概論。
「狂気」という言葉を軽々しく扱うのは甚だ危険なのですが、理性の枠からどうしてもはみ出してしまう人間性、とでも言いかえたら良いでしょうか。理性と人間性のバランスがミステリの本質なのだ、と(たまには)大げさに宣言しておきます。

No.159 6点 知りすぎた男- G・K・チェスタトン 2019/08/14 02:40
1922年出版。無邪気な男が地獄(WWI)を見て、知りすぎてしまった… と嘆いてる、ということか。でも神ならぬ人の身で「私は知りすぎてる」なんて傲慢以外の何ものでもありません。作者GKCの心の退廃を感じるのは深読みしすぎか。主人公は冷たく静かな感じのホーン フィッシャー。
連載の途中で作者は『詩人と狂人たち』の連載をスタート(1920-11から)させてます。そちらと本書の各作品を雑誌発表順に読んで行くので感想は交互に書くことになります。
この論創社の本に創元文庫の旧版『奇商クラブ』収録の2篇(初出1920&1918)を含む全12作が原本The Man Who Knew Too Muchの構成。1918-1922のチェスタトンの探偵小説集成(ゲイル除く)というわけです。1922年カトリック改宗時(訳者あとがきによると本書出版の少し前)の作品集でもあります。
以下、タイトル表記はFictionMags Indexによる初出時のもの。カッコつき数字は単行本収録順。原文はGutenberg等で簡単に入手出来ます。初出誌Harper’sの挿絵画家は「不信」シリーズでMcClure誌の挿絵を描いてたWilliam Hatherell。Webで作風を見るとかなり繊細な描線、でも柔らかなタッチです。

(1)The Man Who Knew Too Much, I.—The Face in the Target(Harper’s Magazine 1920-4, 巻頭話, 挿絵W. Hatherell): 評価6点
大戦前の無邪気さは影を潜め、諦めの境地。絶望感すら感じさせます。ゴタついた感じの語り口。やはり映像の人ですね。この作品にも強烈な絵画的イメージが登場します。

(2)The Man Who Knew Too Much, II.—The Vanishing Prince (Harper’s Magazine 1920-8, 挿絵W. Hatherell) : 評価6点
地元民とロンドンっ子の対比が面白い。こちらも終末的な話。

(3)The Man Who Knew Too Much, III.—The Soul of the Schoolboy (Harper’s Magazine 1920-9, 挿絵W. Hatherell): 評価6点
手の込んだ語り口。犯罪心理を語らせたらGKCの右に出るものはいません。
(以上2019-8-10記載)

⑶と⑷の間に『詩人と狂人たち』シリーズを三作発表。

⑷The Man Who Knew Too Much, IV.—The Bottomless Well (Harper’s Magazine 1921-3, 挿絵W. Hatherell): 評価5点
「若者をなお悪い方向へ」向かわせてしまう反論の仕方、というのは思い当たるなあ。お馴染み「浅黒い(dark)p81」「色黒の男(dark man)p87」は、多分髪の色のこと。話としては面白いけどGKCの偏見丸出しの世界情勢分析がどうもね… この作品には、新しい世代への希望めいたものが見られるような気がします。(絶望感を通り越したのかな)
(2019-8-10記載, 2019-8-11追記)

⑹The Man Who Knew Too Much, V.―The Fad of the Fisherman (Harper’s Magazine 1921-6, 挿絵W. Hatherell): 評価6点
大物たちの人物描写が興味深い。モデルがいそうな感じ。ストーリーはやや複雑ですが、巧みな語り口です。知りすぎた男にふさわしい内容。
(2019-8-11記載)

⑸The Hole in the Wall (Cassell’s Magazine of Fiction 1921-9; 米初出Harper’s Magazine 1921-10, 挿絵W. Hatherell, タイトルThe Man Who Knew Too Much, VI.―The Hole in the Wall): 評価4点
この作品だけ英Cassell’s誌が一月早く掲載。冒頭からダジャレが多い作品。懐疑論についての発言は禿同。(禿げと言えばフィッシャーは生え際がかなり後退してるようです。年齢はマーチの15歳ほど歳上) でも犯行方法がよくわかりません。(確実性をGKCの寓話でいうのはアホくさいのですが…)
ところで翻訳は⑸⑹だけ雑誌発表順と逆になってるのですが、Dover版(2003)やMysterious Press版(2015)などは雑誌発表順で収録されています。翻訳の底本The Collected Works of G.K. Cherton Vol. 8 (Ignatius Press 1999) をみると英初版Cassell版による、となってました。
(2019-8-12記載; 2019-8-14訂正)

⑸と⑺の間にガブリエル ゲイルもの2篇を発表。

⑺The Man Who Knew Too Much, VII.―The Temple of Silence (Harper’s Magazine 1922-5, 挿絵W. Hatherell) 英初版The Fool of the Family: 評価6点
ホーン フィッシャーの兄登場。ホーンの主張する「伝統ある小地主の復権」はGKCの長年のテーマですね。選挙戦と不都合な真実。いかにもな話ですが気に入りました。ラストの思いがこの短篇集の総括なのでしょう。「有力候補(win the seat)p199」は普通に「当選する」で良いのでは?
タイトルはDover版等、現行出版されてる大抵の版では雑誌掲載時のThe Temple of Silenceが採用されてますが上述の底本を見ると英初版Cassell版はThe Fool of the Family。(ということはこちらの題がGKCの意向か。)
(2019-8-14記載)

⑻The Man Who Knew Too Much. The Vengeance of the Statue (Harper’s Magazine 1922-6, 挿絵W. Hatherell): 評価5点
戦間期の不安が表現されてる作品。最終話にふさわしい作品。1922年の戦闘行為なんて現実にあったのかな?(調べてません。)
(2019-8-14記載)

フィッシャーもの以外の2篇が収録されてるのに今更気づきました。いずれも1919年発表。これを先に読むべきでした… (両方とも一作きりの探偵。色々模索中だったということでしょうか。)

①The Garden of Smoke (The Story-Teller 1919-10, 巻頭話) 評価5点
雑誌の表紙絵には薔薇と帽子の髭男。Hearst’s 1920-1掲載時の挿絵(Walter Everett作)がWebにありました。いつものもってまわった展開ですが、ネタは単純です。古い船乗りの歌「スペインの女たち」は"Spanish Ladies" (Roud 687) is a traditional British naval song.(wiki)
(2019-8-11記載)

②The Five of Swords (Hearst’s Magazine 1919-2, 巻頭話, 多分挿絵あり) 評価5点
語り口が巧みで複雑なプロット。あちこちに連れ回される感覚が良い。決闘って当時フランスでは合法だったのか。ところでGKCの反ユダヤは1919年ごろから悪化してるような感じ。(このタイトル、JDCの長篇の元ネタ?)
(2019-8-11記載)

全て読み終わったので全体的な感想を。
無邪気な世界を信じてた作者はWWIの悲劇(弟も戦死しています。)を経て、知識が解決の基礎だと感じたのか。でも知識(=真実)で世界を変えられると信じるほど未熟ではなかったGKCはこーゆー主人公を設定したのではないか。
途中でガブリエル ゲイルが登場するのは、実は世界はまともではなく、元々狂っているのだ、という確信を得たからではないか。狂った世界なら実際家たちには解決できない。寄り添えるのは狂人だけである。そこで救いは宗教になる。
単純な図式ですが、今のところ、こんな風にGKCを捉えています。
『詩人と狂人たち』の次は『ブラウン神父の不信』です。こちらもとても楽しみです。

No.158 5点 EQMM日本語版 1957年2月号 <8>- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2019/08/13 23:32
広告は裏表紙1ページ色刷り「住友海上火災保険」、裏表紙の内側1ページ白黒「三共ルル」、表紙裏1ページ白黒「元々社 最新科学小説全集」
カットは表紙と同じく勝呂 忠。特集は5つの中篇傑作。
まだ途中ですが、暫定評価5点として、読んだら追記してゆきます。
以下、初出はFictionMags Index調べ。

⑴The Wrong Problem by John Dickson Carr (The Evening Standard 1936-8-14) 喜多 孝義 訳: 評価なし
EQの解説なし。翻訳がこなれてなくて残念。元々わかりにくい話なのにさらにダメになってます。内容の詳細はカー『パリから来た紳士』の書評参照。
⑵A Dog in the Daytime by Rex Stout (The American Magazine 1954-12 タイトルThe Body in the Hall) 森 郁夫 訳:
ウルフもの。
⑶No Cry of Murder by Mignon G. Eberhart (This Week 1952-6-25) 福島 正実 訳:
⑷A Matter of Justice by Hugh Pentecost (Collier’s 1953-5-2〜5-9 二回分載 タイトルThe Case of the Killer Dogs) 青田 勝 訳:
⑸The Mathematics of Murder by Cornell Woolrich (Dime Detective Magazine 1944-3 タイトルWhat the Well-Dressed Corpse Will Wear) 村上 啓夫 訳:

No.157 5点 EQMM日本語版 1957年1月号 <7>- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2019/08/13 23:26
広告は裏表紙1ページ色刷り「三共ヨゥモトニック」のみ。カットは表紙と同じく勝呂 忠。
まだ途中ですが、暫定評価5点として、読んだら追記してゆきます。
以下、初出はFictionMags Index調べ。
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⑴ If the Dead Could Talk by Cornell Woolrich (初出Black Mask 1943-2 掲載二番目)「死者もし語るを得ば」 コーネル・ウールリッチ 高橋 豊 訳:
⑵ Sing a Song of Sixpence by Agatha Christie (初出不明 単行本1934) 「六ペンスの歌」 アガサ・クリスティー 妹尾 韶夫 訳:
⑶ Mom Makes a Wish by James Yaffe (初出EQMM 1955-6 二番目) 「ママは祈る」 ジェイムズ・ヤッフェ 西田 政治 訳:
⑷ A Woman of Plinciple by Roy Vickers (初出EQMM 1956-2 最終話) 「主義の女」 ロイ・ヴィカーズ 文村 潤 訳:
⑸ The Assassins’ Club by Nicholas Blake (初出?John Rhode編 “Detection Medley” 1939 タイトルA Slice of Bad Luck) 「暗殺者クラブ」 ニコラス・ブレイク 村崎 敏郎 訳:
⑹ Two Sharp Knives by Dashiell Hammett (初出Collier’s 1934-1-13) 「二本のするどいナイフ」 ダシェル・ハメット 中田 耕治 訳:
⑺ The Man Who Explained Miracles by Carter Dickson (初出The Housewife 1956-1(+2)) 「奇蹟を解く男」 カーター・ディクスン 宇野 利泰 訳:
H.M.卿もの。初出は三回分載。詳細はカー『パリから来た紳士』の書評参照。

No.156 5点 EQMM日本語版 1956年12月号 <6>- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2019/08/12 11:21
広告は裏表紙1ページ色刷り「三共ヨゥモトニック」、表紙裏1ページ白黒「元々社 最新科学小説全集」(なんかワクワクします…) カットは表紙と同じく勝呂 忠。
まだ途中ですが、暫定評価5点として、読んだら追記してゆきます。
以下、初出はFictionMags Index調べ。
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第6号は「特集: アガサ クリスティー」(スタウト、イネスにEQの解説なし。クリスマスだからクリスティーなんですが、ポアロ特集ですね。都筑さんが本国から怒られた特集ってこれだっけ?)
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⑴ Chinoiserie by Helen McCloy (EQMM 1946-7 巻頭話) 「燕京畸譚」 ヘレン・マクロイ 田中 西二郎 訳:
⑵ Santa Claus Beat by Rex Stout (What’s New 1953-12 タイトルTough Cop’s Gift) 「サンタクロースの受持区域」 レックス・スタウト 森 郁夫 訳:
⑶ The Ghost of a Ghost by Michael Innes (EQMM 1955-12 巻頭話) 「影の影」 マイケル・イネス 深井 淳 訳:
アプルビーもの。
⑷ The Blind Spot by Barry Perowne (EQMM 1945-11 掲載六番目) 「穴のあいた記憶」 バリイ・ペロウン 稲井 嘉正 訳:
⑸ Murder on the Waterfront by Bud Schulberg (Collier’s 1954-10-1 三番目) 「波止場の殺人」 バッド・シュールバーグ 清水 俊二 訳:
⑹ The Black Ledger by Ellery Queen (This Week 1952-1-26 タイトルThe Mysterious Black Ledger) 「黒い台帳」 エラリイ・クイーン 青田 勝 訳:
⑺ The Six China Figures by Agatha Christie (The Sketch 1923-3-7 タイトルThe Grey Cells of M. Poirot I. The Affair at the Victory Ball) 「六つの陶器人形」 アガサ・クリスティー 村上 啓夫 訳:
ポアロもの。
⑻ Shadow in the Night by Agatha Christie (The Sketch 1923-11-7 タイトルThe Grey Cells of M. Poirot, Series II VII. The Submarine Plans) 「消えた設計図」 アガサ・クリスティー 妹尾 韶夫 訳:
ポアロもの。
⑼ The Girl in Electric Blue by Agatha Christie (The Sketch 1923-4-4 タイトルThe Grey Cells of M. Poirot V. The Mystery of the Plymouth Express) 「プリマス急行」 アガサ・クリスティー 中田 耕治 訳:
ポアロもの。
(10) Beware the King of Clubs by Agatha Christie (The Sketch 1923-3-21 タイトルThe Grey Cells of M. Poirot III. The Adventure of the King of Clubs) 「クラブのキングに気をつけろ」 アガサ・クリスティー 福島 正実 訳:
ポアロもの。

No.155 6点 EQMM日本語版 1956年11月号 <5>- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2019/08/12 11:17
やっとクイーン・マガジン(愛読者ハガキに書かれてた雑誌名)に他社広告が。裏表紙に「日本勧業銀行」と「野村証券」が各々半ページ色刷り、裏表紙の内側に「三共ミネビタール」が1ページ白黒。
カットは表紙と同じく勝呂 忠。J.M. ケインは小実昌さんの翻訳デビューだったんじゃないかな。
まだ途中ですが、暫定評価6点として、読んだら追記してゆきます。
以下、初出はFictionMags Index調べ。

第5号(1956年11月号)の内容は
⑴ The Perfect Plan by James Hilton (Britannia and Eve 1933-9 掲載四番目) 「100パーセント・プラン」ジェームズ・ヒルトン 大門 一男 訳:
⑵ The Black Kitten by A.H.Z. Carr (EQMM 1956-4 巻頭話) 「黒い小猫」 A・H・Z・カー 田中 融二 訳:
⑶ Taste by Roald Dahl (The New Yorker 1951-12-8) 「味」 ロアルド・ダール 田村 隆一 訳:
⑷ Once Is Once Too Much by Anthony Gilbert (EQMM 1955-12 最終話) 「一度でたくさん」アンソニー・ギルバート 深井 淳 訳:
EQの解説なし。
⑸ Cold Money by Ellery Queen (This Week 1952-3-20) 「匿された金」 エラリイ・クイーン 青田 勝 訳:
⑹ By a Single Hair by Nick Carter (New York Weekly 1894-10-13) 「髪ひとすじ」 ニコラス・カーター 阿部 主計 訳:
ニック カーターもの。 ニューマン・レヴィ(Newman Levy)作の詩「ニック・カーターをたたえる」付き。
⑺ The Baby in the Ice Box by James M. Cain (The American Mercury 1933-1) 「冷蔵庫の中の赤ん坊」 ジェイムズ・M・ケイン 田中 小実昌 訳:
EQの解説なし。
⑻ The Earring by William Irish (Flynn’s Detective Fiction 1943-2 二番目, Cornell Woolrich名義 タイトルThe Death Stone) 「耳飾り」 ウィリアム・アイリッシュ 中村 能三 訳:

No.154 7点 EQMM日本語版 1956年10月号 <4>- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 2019/08/11 16:44
正確な雑誌名は「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」なんだけど、長いし、本国版と紛らわしいので「EQMM日本語版」で登録しました。(早川書房公式は「日本語版」の表記らしいので…)
この号は古書店で20年くらい前に350円で入手。特約期間が終わり他社広告解禁号のハズですが、残念ながら早川書房の広告しか見当たりません…
さて目次は「特集: 本格中篇探偵小説」となっています。カットは表紙と同じく勝呂 忠。
まだ途中ですが、豪華なメンツなので暫定評価7点として、読んだら追記してゆきます。
以下、初出はFictionMags Index調べ。
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⑴ A Study in White by Nicholas Blake (The Strand 1949-2 タイトルThe Snow Line, 挿絵L.G. Illingworth 巻頭話) 「白の研究」 ニコラス・ブレイク 峯岸 久 訳: 評価6点
読者への挑戦付き(ストランド誌及びEQMMも同様)。挿絵のIllingworthの作風はWebで見るとコミカルなタッチです。列車のコンパートメントに6名が乗車、外は大雪。典型的なクローズドサークル。謎解きは明確な手がかりの提示があり、挑戦にふさわしいものでした。「半クラウンをカウンターに放るような調子で投げやりに」(=2シリング6ペンス)英国消費者物価指数基準(1949/2019)で35.04倍、現在価値563円。ジョージ6世の半クラウンは1947年以降、材質が.500 SilverからCupro-Nickelに変わり安っぽくなったのでこういう表現なんでしょう。(直径32mm、重さ14.1g) 2万5千ポンドは現在価値1億1千万円。
(2019-8-11記載)
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⑵ Off the Face of the Earth by Crayton Rawson (EQMM 1949-9 掲載二番目) 「天外消失」 クレイトン・ロースン 阿部 主計 訳:
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⑶ Lesson in Anatomy by Michael Innes (EQMM 1946-11 巻頭話) 「解剖学教程」 マイケル・イネス 野村 一郎 訳:
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⑷ I Can Find My Way Out by Ngaio Marsh (EQMM 1946-8 巻頭話) 「出口はわかっている」 ナイオ・マーシュ 村崎 敏郎 訳:
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⑸ Double Your Money by Ellery Queen (This Week 1951-9-30 タイトルThe Vanishing Wizard) 「あなたのお金を倍に」 エラリイ・クイーン 青田 勝 訳:
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⑹ The Moment of Decision by Stanley Ellin (EQMM 1955-3 巻頭話) 「決断の時」 スタンリイ・エリン 中田 耕治 訳:
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⑺ Wild Goose Chase by John Ross Macdonald (EQMM 1954-7 最終話) 「骨折り損のくたびれもうけ」 ロス・マクドナルド 砧 一郎 訳:

No.153 8点 復刻 エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン No.1-3- アンソロジー(出版社編) 2019/08/11 15:24
相変わらず1920年代あたりをウロウロしてるのですが(おかげでE.S. ガードナー書評全集が止まったまま…) たまにはいろんなのを読みたくなって、それなら雑誌が一番、そうそうJDC『妖魔』は乱歩先生訳でEQMM日本語版創刊号の巻頭を飾ったんだよね… というわけで、ここにたどり着きました。
創刊号から第三号までの全てのページを復刻した夢のような本。当時、古本屋で安いバックナンバーを漁ってた私にとって素晴らしい企画でした。(特にバークリーが掲載された号が無かったんですよね… ) ところで今気づいたのですが広告が早川書房のものしかありません。雑誌最終ページにその理由が。「マーキュリー社との特約で創刊号から三カ月は他社の広告を掲載出来ません」なぜそーゆー特約が設定されたのでしょうか…
雑誌の復刻としてみればエッセイや広告やミステリ界の時事ニュースがほとんどないのでアンソロジー的な本になっています。当時のタイムカプセルとしては物足りないですね。
初出は例によってFictionMags Indexで調査。
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まずは創刊号(1956年7月号)から。表紙はお馴染み勝呂 忠、カットは北園 克衛。ところで勝呂さんが最初に描いたHPBは何?EQMM表紙の方が先なのかな?(確かミステリマガジンの何周年か何百回かの記念号にご本人が経緯を書いてたような記憶が…) ネットで調べてみると初期の具象画ポケミスも勝呂さん作が結構あるようです。(2019-8-12訂正)
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①The House of Goblin Wood by Carter Dickson (英The Strand 1947-11, John Dickson Carr名義 掲載二番目 挿絵Steven Spurrier; 米EQMM 1947-11, Carter Dickson名義 巻頭話) 「魔の森の家」カーター・ディクスン 江戸川 乱歩 訳: 評価7点
乱歩の主張で翻訳者の名前が作者名と並んで印刷された、という伝説。作者名よりやや小さめの活字ですが、目次や各作品の扉に翻訳者名が明記されてます。ミステリマガジンはずっとその扱いを踏襲。翻訳家にとっては実にありがたい前例となったようです。
或るWebに乱歩の「抄訳」と書かれてたので、最初の数ページを調べましたが省略は一切なし。EQの熱のこもった長い解説が短篇の次に収録されてるのも良いですね。(当時のEQMM日本語版はほぼ全篇にEQの楽しい解説がついてる贅沢仕様です。)
他、作品自体の評価はカー『妖魔の森の家』の書評をご参照ください。
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②House Party by Stanley Ellin (EQMM 1954-5 最終話) 「パーティーの夜」スタンリイ・エリン 田中 融二 訳: 評価6点
昔、読んだときは結構面白かった記憶があるのですが、今読むとなんだか考え方が古めかしくて… 時代のムードとぴったり合いすぎた作風だったのかも知れません。(でも良く考えるとこの時代特有の閉塞感を感じる作品ですね。当時のP.K. Dickもこんな感じ。マッカーシズムが顕著な例ですが、当時から徐々に始まった管理社会の圧迫感なのでしょうか。)
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③De Mortuis by John Collier (The New Yorker 1942-7-18) 「死者を鞭うつ勿れ」ジョン・コリア 青木 雄造 訳: 評価7点
ちぐはぐな会話が収斂するところが素晴らしい。(冒頭の医者の態度が理由づけられてないのはちょっと残念か) 米国が舞台なのでニューヨーカー初出で間違いないでしょう。ところで英国ではsix feet underが基準のようですが、米国ではfour feet平均らしい。
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④Driver’s Seat by Ellery Queen (This Week 1951-3-25 タイトルLady, You’re Dead!)「運転席」エラリイ・クイーン 青田 勝 訳: 評価5点
サスペンス溢れる発端。昔の車の知識が無いと意味不明な解決かも。本作のネタは1960年代初頭まで一般的だったようです。登場するのはキャディラック51年型タウン カー、中古のロールスロイス、シボレー。
結婚許可証の手数料20ドル、治安判事に支払った5ドル(罰金?)は10年前の価格。米国消費者物価指数基準(1941/2019)で17.42倍、当時の1ドルは現在価値1842円。
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⑤Autopsy and Eva by Stuart Palmer & Craig Rice (EQMM1954-8 二番目) 「三人目の男」スチュアート・パーマー&クレイグ・ライス 砧 一郎 訳: 評価7点
ウィザーズ&マローン第3作。凸凹コンビの掛け合いが楽しい話。ストーリーも短いながら起伏に富んでます。
軍用ピストル…制式は45口径: オートマチックならM1911、リボルバーならM1917。
新聞広告の賞金2000ドルは、米国消費者物価指数基準(1954/2019)で9.52倍、現在価値201万円。定食1ドル25セントは現在価値1259円。
歌がたくさん登場。
トラリーのバラ(The Rose of Tralee)はアイルランド民謡。
マザー マクリー(Mother Machree)もアイリッシュ系の歌。ブロードウェイオペレッタBarry of Ballymoore(1911)の一曲。Rida Johnson Young作詞、Chauncey Olcott & Ernest Ball作曲。
マローンが歌う「女の子のキレイなダブリンの町で」は、In Dublin's fair city/Where the girls are so prettyという歌詞で始まる"Molly Malone" (also known as "Cockles and Mussels" or "In Dublin's Fair City")か。
(以上2019-8-11記載)
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⑥House Dick by Dashiell Hammett (The Black Mask 1923-12-1 タイトルBodies Piled Up 二番目) 「雇われ探偵」ダシェル・ハメット 鮎川 信夫 訳: 評価5点
コンチネンタルオプ第5作。いきなりショッキングな始まり。派手な展開ですが推理味はあまりありません。ポーキーが登場しててちょっとびっくり。他にも出てるのかな?
(2019-8-12記載)
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⑦True or False by Michael Innes (The Evening Standard 1954-8-10 タイトルThe Scattergood Emeralds) 大久保 康雄 訳: 評価5点
アプルビーもの。首飾りが登場する小品。EQの解説なし。
(2019-8-12記載)
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⑧The Comic Opera Murders by James Yaffe (EQMM 1946-2 四番目) 「喜歌劇殺人事件」ジェイムズ・ヤッフェ 西田 政治 訳: 評価5点
ギルバート&サリヴァンのコミックオペラが背景。書簡で語られる物語。いかにもな感じが平凡な作品。
(2019-8-12記載)
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⑨Count Jalacki Goes Fishing by T.S. Stribling (EQMM 1946-9 最終話) 「ジャラッキ伯爵釣りに行く」T・S・ストリブリング 高石 三郎 訳:
ポジオリもの。前後篇の前篇。
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第2号(1956年8月号)この号まで作品は田中 潤司セレクト。カットは川端 実。
❶Dream No More by Philip MacDonald (EQMM 1955-11 掲載二番目) 「夢みるなかれ」 フィリップ・マクドナルド 荒 正人 訳:
❷Lamb to the Slaughter by Roald Dahl (Harper’s Magazine 1953-9) 「おとなしい兇器」 ロアルド・ダール 田村 隆一 訳:
❸The Accused by Ellery Queen (Today’s Family 1953-2 挿絵Al Moore タイトルThe Robber of Wrightsville) 「被告」 エラリイ・クイーン 尾坂 力 訳:
❹How Does Your Garden Grow? by Agatha Christie (Ladies’ Home Journal 1935-6 挿絵Mead Schaeffer 三番目) 「お宅のお庭はどうしたの」 アガサ・クリスティー 村上 啓夫 訳:
オグデン ナッシュによるポアロ讃付き。
❺The Body in the Pool by Rufus King (EQMM 1955-2 三番目) 「水中の死体」ルーファス・キング 峯岸 久 訳:
EQの解説なし。
❻A Note to Count Jalacki by T.S. Stribling (EQMM 1946-10 最終話) 「ジャラッキ伯爵への手紙」T・S・ストリブリング 高石 三郎 訳:
ポジオリもの。前後篇の後篇。
❼For Men Only by Roy Vickers (EQMM 1955-9 巻頭話) 「男子専用」 ロイ・ヴィカーズ 砧 一郎 訳
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第3号(1956年9月号)から巻末に編集後記が登場。筆者(M)は都築道夫編集長ですね。他にも「ぺいぱあ・ないふ」「MYSTERY GUIDE」「望遠レンズ」を開始、都築さんが前面に出た雑誌になります。カットは難波田 龍起。
⑴Dark Journey by Francis Iles (The Sunday News 1934-??-??) 「暗い旅路」 フランシス・アイルズ 村上 啓夫 訳:
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⑵William Wilson’s Racket by John Dickson Carr (Carter Dickson名義, The Strand 1941-2 挿絵Jack M. Faulks 掲載三番目) 「ウイリアム・ウィルスン事件」 ジョン・ディクスン・カー 高橋 豊 訳: 評価5点
マーチ大佐もの。
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⑶The Riddle of the Twelve Amethystes by Stuart Palmer (EQMM 1945-3 四番目) 「十二の紫水晶」スチュアート・パーマー 峯岸 久 訳:
⑷The Gambler’s Club by Ellery Queen (This Week 1951-1-7) 「賭博クラブ」エラリイ・クイーン 青田 勝 訳:
⑸Murder at the Poe Shrine by Nedra Tyre (EQMM 1955-9 二番目) 「ポウ廟の殺人」ネドラ・タイア 中村 能三 訳:
⑹The Case of the Emerald Sky by Eric Ambler (The Sketch 1940-7-10) 「エメラルド色の空」エリック・アンブラー 杉山 季美子 訳:
⑺I Always Get the Cuties by John D. MacDonald (EQMM 1954-11 十一番目) 「悪者は俺に任せろ」 ジョン・D・マクドナルド 中田 耕治 訳:
⑻Don’t Look Behind You by Fredric Brown (EQMM 1947-5 三番目) 「後ろを見るな」 フレドリック・ブラウン 曽我 四郎 訳:
⑼The Wagstaff Pearls by Mignon G. Eberhart (This Week 1952-9-21) 「ワグスタフ家の真珠」 ミニヨン・エバーハート 都築 道夫 訳:
⑽Hunted Down by Charles Dickens (The New York Ledger 1859-8-20 三回分載) 「追いつめられて」 チャールズ・ディケンズ 村上 啓夫 訳:

No.152 6点 二銭銅貨- 江戸川乱歩 2019/08/11 05:21
初出: 新青年大正12年(1923)4月増大号(Webに表紙絵があるものと思ったら全然見当たらない…) 青空文庫で読みました。
愉快な話なんですが、探偵小説なんでしょうか… メタ探偵小説には違いありませんが…
週刊日本の貨幣コレクション2019年7月31日号(99号)のレプリカは二銭銅貨。1000円出す価値があるかは微妙な出来。 (明治六年銘、直径32mm、厚さ2mm、重さ11g。全体的にエッジがちょいボケ)
日本のインフレ率計算が出来なかったので、金基準(1923)換算すると1円=0.485ドル、米国消費者物価指数基準(1923/2019)で14.98倍なので当時の1円=現在価値768円となりました。ただし当時の先進国と途上国の物価の違いは大きいと思います。なお都市部の日本国消費者物価指数(1925/2015)で1388倍というデータがありました。(以下の換算は1388倍を採用。そば一杯10銭=139円なので安め。)
二銭: 現在価値28円。
五万円: 現在価値6949万円。
按摩賃60銭: 現在価値832円。
十円札: 現在価値13880円。当時流通は旧十円券(1885, 大黒札)、改造十円券(1890, 表猪10円)、甲号券(1899, 裏猪10円)、乙号券(1915, 左和気10円)の4種類あり。甲乙は和気清麻呂の肖像。
最後の文章はxx罪になっちゃうからです。(最近では2017年10月に逮捕された例あり)

No.151 6点 妖魔の森の家- ジョン・ディクスン・カー 2019/08/07 20:54
JDC/CDファン評価★★★★☆
私が読んだのは1978年4月の16版。『カー短編集2』はカー名義の短篇集The Third Bullet(1954)から4作に『軽率だった野盗』をプラス。ストランド誌1940年初出の3篇と『妖魔の森の家』、それとダネイが20%ほど刈り込んだ中篇『第三の銃弾』の全5篇。
以下、初出は『カー短編全集5』の著作リストをFictionMags Index(FMI)で補足。原文はGoblin Woodだけ入手出来ました。

⑴ The House in Goblin Wood (英初出The Strand 1947-11 挿絵Steven Spurrier; 米初出Carter Dickson名義, EQMM 1947-11) : 評価7点
H.M.卿もの。ストランド誌は何故かJ.D. カー名義、EQMMではC. ディクスン名義になってます。この作品は特に挿絵が見たいなぁ。(画家Steven SpurrierをWeb検索するとIllustrated London Newsの挿絵が結構出てきました。描線が太めです。)
この作品、読み返すのをとても楽しみにしてました。「堂々たる語り口」と巧みなストーリー回しが素晴らしい作品。でももっと大傑作な記憶が残ってたんだけど… (メイントリックが現代ではもう心にさざなみすら残さない程度になってしまった、ということなのかも。) 最後のセリフが駄目押し。(何であろうと同じだと思うけど読者に生々しく想像させる手です。)
p10 大戦に先立つこと三年(three years before the war): 1936年ごろの設定か。H.M.の年齢(当時65歳)を考慮したのでしょう。
p12 バナナの皮(a banana skin): banana peel-slipping jokes date to at least 1854 (wiki)
p21 ジェイムズ バリー『メリー ローズ』(Barrie's Mary Rose): 初演1920年4月Haymarket Theatre, London。ヒッチコックが若い頃観て心に残り1964年に映画化を試みたという。
(2019-8-7記載)

⑵ A Guest in the House (The Strand 1940-10 挿絵M.B. Critchlow) 別題: The Incautious Burglar : 評価4点
フェル博士もの。気の抜けたシャンパンのような話。ずさんな企みですよね…
p59 三万ポンド: 英国消費者物価指数基準(1940/2019)で55.52倍、現在価値2億2千万円。レンブラント2枚とヴァン ダイク1枚の価値。
(2019-8-7記載)

⑶ The Locked Room (The Strand 1940-7 挿絵M.B. Critchlow) : 評価5点
フェル博士もの。掛け合いは足りませんがハドリーが出てくるとなんだか安心。なかなか上手なトリック。でも手がかりがよくわかりません。
p94 三千ポンド: 現在価値2243万円。
(2019-8-5記載)

⑷ The Clue of the Red Wig (The Strand 1940-12 挿絵Jack M. Faulks) : 評価6点
意外と面白い作品。女探偵もの?と思ったら… でも、ここで使われてるトリック(?)は「いーかげんにしろ」(バシッ!)とJDCにツッコミたくなりますね。
懐中電灯ネタ(p173)は今となっては解説が必要かも。もちろん雑誌発表時1940年11月の英国人には自明のことです。(私の『猫と鼠の殺人』の書評参照。)
(2019-8-7記載)

⑸ The Third Bullet (Carter Dickson名義, Hodder & Stoughton 1937; 短縮版[こちらを翻訳] John Dickson Carr名義, EQMM 1948-1) : 評価7点
非常に上手く構成された作品。なのでハヤカワ文庫の[完全版]をさっそく発注してしまいました。評価詳細はカーター ディクスン『第三の銃弾』を参照願います。
(2019-7-28記載)

No.150 5点 蠟人形館の殺人- ジョン・ディクスン・カー 2019/08/04 11:37
JDC/CDファン評価★★★☆☆
バンコラン第4話。出版1932年。よく考えたら、ポケミスは入手してなくて初読。ずっと『爬虫類館』と間違えてて、読んだものと誤解してました。創元文庫の新訳で読了。
冒頭から謎が次々登場してあっと言う間に頭が痛くなります。蝋人形館の見取り図もないので混乱に拍車がかかるのはいつものJDC。でも敵役が登場したら一気にわかりやすくなるので安心してください。その後は推理というより、ちょいエロ香る冒険物語。忠実な助手マール君がバンコランの手のひらで踊ります。(かなり杜撰な計画ですが… ) 解決後、ヘンテコな終幕。何の意図なのか、さっぱりわかりません。
以下、トリビア。原文は入手出来ず。
作中時間は、発端が「1930年10月19日(p160)」と明記。舞台はパリ。
p9 タンゴ: この作品のバックグラウンドミュージックはタンゴ、でも具体的な曲名はありません。フランスでは1910年代に流行、とのこと。
銃は「10年前…ピストルに消音装置をつけて…」「消音装置つきの四四口径」(こちらは現在)が登場。Maxim Silencers社は1912年設立。ライフル用の消音器の会社でセオドア ローズベルトが気に入って早朝の狩用に使ってたらしい。調べてみると1920年くらいから犯罪にサイレンサーが使われだして問題視されMaximは1930年に販売を中止。ただし「四四口径」だと回転式拳銃なので、消音効果は低いはず。
p11「(米国人なら)複雑な心境とでも呼ぶもの」: 原文が知りたいですね。
p30 病的なものに健全な興味がわかなくなったら死人も同然… というのがフランス人なのだ: 見習いたい態度です。ミステリ好きは間違いなく「生きてる」ってことですね!
p36「(婚約)してます」: マール君のセリフ。相手はあの女?
p60 百万フラン: 仏国消費者物価指数基準(1930/2019)で388.5倍、当時の1フラン=現在の0.59ユーロとのこと。100万フランの現在価値は7136万円。
p75 バンコランの大型ヴォアザン: Avions-Voisin。堂々たる大型車。座席の天井が低いのが特徴か。
p107 (アンヴァリッドの)礼拝堂…オルガンの音: Eglise Saint-Louis-des-Invalides à ParisのオルガンはAlexandre Thierry製(1686)、現在オリジナル部分がどのくらい残ってるかは調べてません。このオルガンが聴けるCDあり。
以下の曲目はオデットが好きだったと言う曲。キャラづけ成功してるかな。
p120 月の光(Claire de lune): ドビュッシーSuite bergamasque(1905)の第3曲。
p120 わたしのそばなら(Auprès de ma blonde): 17世紀の軍隊行進曲Le Prisonnier de Hollandeが発祥。「僕のブロンド娘」が「わたし」になってる訳題はいただけないなあ。(よく調べると歌詞は男のセリフと女のセリフがごたまぜになってるのですね…)
p120 マダム、あなたの可愛いお手にキスを(Ce n’est que votre main, madame): Rotter Fritz, Erwin Ralph作のIch küsse ihre Hand, Madame(1928)にAndré Mauprey, Pierre Delanoëが仏語の歌詞をつけたもの。1929発表。日本語版「奥様お手をどうぞ」はディック ミネや菅原洋一が歌ってます。
p120 蛍の光(Auld lung syne): お馴染みのスコットランド民謡。
p137 徽章からするとあなたはフリーメーソンの会員: バンコランはメイソンだった!
p186 懺悔: いつも尊大なバンコランが珍しく弱音を吐いています。JDC/CDの本音でもあるのか。
p197 絹ネクタイ… 5フラン: 大道商人が売る品。現在価値357円。
p201 盗聴器: 当時は大掛かりな細工が必要。ポータブル式録音機の普及は米国でも1953年。(ペリー メイスン調べ)
p202 黒人ジャズバンド… シンバル、バスドラム、ブラスが主体… ホットな音楽: Louis Armstrong and his Hot Fiveは1925年から。ジャンゴとグラッペリのQuintette du Hot Club de Franceは1934年から。フランスのJazz Hot誌は1935年創刊。
p204 ミスタンゲット… ラケル メレ(訳注: スペインの歌手、女優): Raquel Meller(1888-1962)のことは知りませんでした。某TunesStoreで試してみたら声質はミスタンゲット(『天井桟敷』でお馴染み)に似ています。歌はメレさんの方がずっと上手い。

No.149 7点 第三の銃弾<完全版>- カーター・ディクスン 2019/08/03 01:54
JDC/CDファン評価★★★★☆
単行本はCarter Dickson名義で1937出版(Hodder&StoughtonのNew-At-Ninepenceシリーズ)、短縮版はJohn Dickson Carr名義でEQMM 1948-1掲載。短篇集(1954)収録時には短縮版が採用されました。(創元『カー短編集2』はこちらを翻訳) 英米版の出版経緯は森英俊さんの解説に詳しく書かれています。
タイトルはバークリーのThe Second Shot(1930)を意識? (先にそっちを読みたいと思ってるのですが、何故か本が見つかりません…) 本作の探偵は痩せて背の高いマーキス大佐。不可能興味の入り組んだ筋で、かなり上手く出来た構成。でも説明がスッと頭に入ってこないところが残念。足跡発見後の見取り図も欲しいところです。人間関係もなかなか上手に配置されてるのですが、ペイジ警部の主観で感情を込めて再構成したら小説的にも面白いのに…と思いました。(そこに興味が薄いのがJDC/CDらしいところ)
私は先に短縮版を読んで、非常に良かったので[完全版]を発注しました。本当は先にこっちを読むべき良作ですね。
以下、トリビア。原文は入手できませんでした。
銃が沢山登場するのでマニアには楽しい話。一挺は「アイヴァー ジョンソンの三八口径リヴォルヴァー」Iver Johnson Safety Hammer DA又はSafety Hammerless DAが候補。いずれも1909-1950製作、トップブレイクの拳銃で38S&W弾使用。二挺目は「ベルギー製ブローニング型三二口径のオートマチック」多分FN M1910(32ACP弾)です。(同じFNのM1900やM1922という可能性もありますが…) 山田維史さんの表紙絵は、銃弾は上が38S&W(実物30.5mm)、下が32ACP(実物25.0mm)のつもり?サイズが変で、形もひょろ長すぎです。描かれた拳銃も小説には登場しないFNブローニングハイパワー(9mm=38口径。絵にある正面バレル下の丸いパーツは間違い。そしてフロント周りのシャープさが足りない!) 表紙絵には内容に沿ったものをカッコよく描いて欲しいところです。
ところで「エルクマン」というドイツの銃器メーカーが見つかりません。「戦時中、銃を大量生産し、今でもイギリスではいくらか出まわっています。」とあるので有名な会社だと思うのですが… 架空名だとしたら候補はBergmann, Mauser(モーゼル), Waltherあたりでしょうか。
p9 一ポンド札: 英国消費者物価指数基準(1937/2019)で67.56倍、現在価値9097円。当時の1ポンド紙幣は緑色のBritannia series(1928-1948)、151x85mm。
p33 非常の世界とも現代主義とも: 創元『カー短編集2』で「ハードボイルド、モダン」と訳されてるところ。戦間期はドライな時代になった、という自覚が世間にあったのでしょう。
p75 ほぼ十フィート離れたところから撃たれて: この推定は無理筋だと思います。(至近なら身体や服の火薬跡などから推定出来そうですが…)
p84 乱暴に帽子をかぶるので… ガイ フォークスのような風貌: Guy Fawkesに訳注がついてるのですが、ここは案山子人形のイメージだと思います。
p99 意外とロマンチックなところがあり… 推理小説を年じゅう読んでいて: メタ探偵小説であるのはラストではっきりします。
p115 ふたりとも手に拳銃を持って… 何年もまえの写真… いわゆる軍用銃: Service Revolverが原文か。だとしたらWebley拳銃だと思います。
p126 五百ポンド: 現在価値455万円。
p127 ヴォクスホール社の大型セダン: Vauxhall Sedan、背の高い車です。
p134 死刑囚のエズモンドは言った。“見たままの世界を受け容れるしかない。”: 調べつかず。
p160 頭の足りない少年が、いなくなった馬を見つける… “おいらが馬だったら、行きたい場所はどこかな…”: どこかで見たような… 出典が思い出せません。
p162 セブンリーグブーツ(訳注: おとぎ話『一寸法師』に出てくる): Hop-o'-My-Thumbはペロー童話(1697)で有名。
p167 私には犯人はもうわかっている。: マーキス大佐がこんな爆弾発言をしてるのにペイジは無関心。JDC/CDは小説を盛り上げるのが下手だと思います。

森さんの解説の最後にあった戯曲Inspector Silence on the Air(1942)[ヴァル ギールグッドとの共同執筆]がとても面白そう。ぜひ翻訳して欲しい!

No.148 5点 パリから来た紳士- ジョン・ディクスン・カー 2019/08/02 22:16
JDC/CDファン評価★★★☆☆
私が読んだのは1975年10月の4版。『カー短編集3』は短篇集The Third Bullet(1954)から3作、The Men Who Explained Miracles(1963)から6作という構成。
まだ全部読み終わっていないのですが中間報告。
以下、初出は『カー短編全集5』の著作リストをFictionMags Index(FMI)で補足。

⑴The Gentleman from Paris (EQMM 1950-4) : 評価5点
独特の迫力がある歴史もの。舞台は1849年4月のニューヨーク。でも謎の解明が何だかすっきりしない…と一度書評に書いたのですが、よく考えると晴雨計って将来の天気を予報するもの。それなら、近いうちに『雨と寒気』が来るよ、という意味は明白。残念ながら翻訳はニュアンスを伝えきれていない感じです。
ついでに本作の映画化The Man with a Cloak(1951)を見ました。当時の雰囲気が視覚化されていて満足。でも英語版なのでほとんどセリフが聞き取れず。登場人物の設定など結構変更されてましたが、目配せと晴雨計(かなりデカイ)はきちんと登場してました。
(2019-8-7記載; 2019-8-8追記)

⑶The Proverbial Murder (初出不明 1941以前) : 評価5点
フェル博士もの。初出が1941年以前と推定されているのは、戦時色が強い内容(プロパガンダっぽいセリフあり)だから、ということと、見つかってる一番早い掲載のEQMM 1943-7でhere published for the first time in the United Statesとなってるためらしい。内容は、ことわざの必然性が感じられない話。でもグロスってそんなにポピュラーだったのか。(ドイツ系科学者の家には必ず一部あるはず!)
p103 軍用ライフル銃…256口径: .256インチ(=6.5mm)と表示していた当時のライフル弾は見あたらず。弾丸径.257インチの.25 Remingtonや弾丸径.258インチのWCF(Winchester Center Fire, .25-35 Winchester)のことか?6.5ミリ表示ならイタリア軍用の6.5×52mm Carcano、オーストリア軍用の6.5×54mm Mannlicher–Schönauerなどがあります。(いずれも弾丸径.26インチほど)
p106 三◯三口径の軍隊用ライフル銃: .303 British(=7.7×56mmR)は大英帝国の軍用ライフル弾(1889-1950s)。
p110 旧型の16内径の散弾銃: 16 boreですね。米国のgaugeと同じ。口径16.83mm(=0.66インチ) 日本では「16番」という表記です。
p113 人種が違う: チュートン系の男がルドヴィッヒ マイエル(Ludwig Meyer)博士に対して言うセリフ。87分署のマイヤー マイヤー(Meyer Meyer)ってユダヤ系でしたよね…
(2019-8-2記載)

⑷The Wrong Problem (The Evening Standard 1936-8-14) : 評価7点
フェル博士もの。1901年以降の話。チェスタトン風の冒頭。ストーリーの雰囲気もGKC流。ある状況が語られるのですが、ポイントとなる情報が隠されてるので良くわからない話になっています。p160の地名がヒント。翻訳も微妙なところが伝わってこない表現になっています。私の想像が合ってるなら、よく出来た話。(当時はそーゆーのを考慮して判決が下ったのか) せっかくハドリー登場なのにコンビネタが乏しいのは残念。ちゃんとニュアンスが伝わるように翻訳し直すべきだと思いました。
p141 次男が父親と同じ名前でジュニアと呼ばれていました。: 今まで意識したことがなかったのですが、普通、長男にジュニアと名付けるものだと思ってました。実際はどうなのでしょうか。
p145 ジェロームの小説『ボートの三人男』: ここに登場することに何か意味はあるのかな?
(2019-8-2記載)

⑸Strictly Diplomatic (Carter Dickson名義, The Strand 1939-12 挿絵H.A. Seabright) : 評価6点
語り口が見事な小品。FMIでは誤ってマーチ大佐ものとして計上されてました。
p166 過労に女や冒険を勧める医者: 実に素晴らしい。とは言え現実にこんなのがいたら嫌ですね。
p187 千フラン紙幣: これがフランスフランなら金基準(1939)で1フラン=0.0057ポンド。英国消費者物価指数基準(1939/2019)で64.82倍、1000フランの現在価値は49751円。フランスの千フラン札は茶色に青主体でセレスとマーキュリーのデザイン。
ベルギーフランの場合は金基準(1939)で1フラン=0.00766ポンド、1000フランの現在価値は66856円。ベルギーの千フラン(二百ベルガ)札は緑主体でアルバート王とエリザベス女王の肖像。
(2019-8-4記載)

⑹William Wilson’s Racket (Carter Dickson名義, The Strand 1941-2 挿絵Jack M. Faulks) : 評価5点
マーチ大佐第9話。(最終話) このタイトルでアラン ドロンを思い出す人が結構いるのでは?あのオムニバス映画の雰囲気でJDC/CDを映像化してくれたら嬉しいなぁ。(ハマープロ風味の方が適切か。) この作品自体は小ネタ。確かに無駄な行事って多いです。
(2019-8-7記載)

⑺The Empty Flat (Carter Dickson名義, The Strand 1939-5 挿絵H.A. Seabright) : 評価5点
マーチ大佐第6話。なかなか魅力的な導入。JDC/CDを読み慣れた人ならイニシャルでその後の展開がわかりますよね… 解決は手がかりの提示が不十分なので消化不良。
p222 二千ポンド: 上述の換算で、現在価値1746万円。
p223 電気メーターに料金を入れる: 通常は個々のメーターに料金を入れる電気供給システムだったのか?この小説のモダンなアパートではその心配がないようなので、集中管理方式もあったのでしょう。
p242 紙幣で8ポンド、銀貨と銅貨が10シリングと9ペンス: 現在価値74517円。当時の5ポンド以下の流通紙幣は5ポンド、1ポンド、10シリングの三種類。10シリング以下の流通コインは当時なら肖像がジョージ五世(1911-1936)のものとジョージ六世(1937以降)のものが混雑してると思われ、種類が豊富なので省略。
(2019-8-4記載)

⑻The Black Cabinet (Twenty Great Tales of Murder 1951, ed. Helen McCloy & Brett Halliday) : 評価5点
なかなか読ませる歴史もの。ナポレオン三世時代のフランスが舞台。情熱的な美女が主人公。でも幕切れが全く意味不明。(知識のない私だけ?) 銃はデリンジャー拳銃(リムファイア式Remington Double Derringer1866ではない、パーカッション式のやつ。有名なのはHenry Deringer作フィラデルフィア デリンジャー1852)が登場。「大型の銃弾と火薬と詰め綿が元込めにしてあったが」は多分「装填してあった」の誤り。(詰め綿を使うのは先込め銃)「撃発栓に雷管」はnippleとcapですね。
(2019-8-7記載)

No.147 5点 不可能犯罪捜査課- ジョン・ディクスン・カー 2019/07/28 18:51
JDC/CDファン評価★★★☆☆
昔は『カー短編集』1〜3という表記だったけど、今や全6巻の堂々たる短篇全集に昇格。私が読んだのは1977年6月の24版。『カー短編集1』はカーター ディクスン名義で出版されたThe Department of Queer Complaints(1940)の翻訳です。(「見知らぬ部屋の犯罪」だけ収録されず。) マーチ大佐もの(シリーズ全10作中6篇収録)が中心、最後の3作はいずれもクリスマス特集号が初出。
以下、初出は『カー短編全集5』の著作リストをFictionMags Indexで補足。ストランド誌初出時の挿絵画家Seabrightの絵がひとつだけWebで見つかりましたがソリッドな感じ。(SF小説の挿絵だから?) 誰かこーゆー雑誌の挿絵を発掘して見せてくれないかなぁ。原文はSilver Curtain以外、入手出来ませんでした。

⑴ The New Invisible Man (The Strand 1938-4, Carter Dickson名義, 挿絵H. A. Seabright) : 評価5点
マーチ大佐が雑誌に初登場した作品。室内の描写が頭に入りにくいのでパッとしない感じ。雑誌掲載時には、挿絵で補ってる可能性ありか?
銃は「大型のオートマチック ピストル、三八口径」が登場。英国なので9mmパラのハイパワー(1935, 全長197mm)あたり?米国なら38スーパー仕様のコルトM1911(全長216mm)が有力候補か。ところでMorrow初版(New York 1940)のカバー絵を見ると、空っぽの手袋に握られてるのはレヴォルヴァです。(ウェブリー拳銃のようだが、38口径ならエンフィールド拳銃か) オートマチックと異なりレヴォルヴァなら××(p36)の細工が不要なので、実はカバー絵の方が正解かも。

⑵ Clue in the Snow (The Strand 1940-1, Carter Dickson名義, 挿絵H. A. Seabright) 別題: The Footprint in the Sky : 評価5点
マーチ大佐第8話。夢遊病ネタって今は流行らないですね… ワンアイディアストーリー。靴のサイズは英国、米国、EUで違うということを今回調べてみて初めて知りました。UKサイズの4号は22.5cm、9号は26.8cm、10号は27.8cmとのこと。
p65 ソヴェリン金貨… 1500ポンド: 当時のジョージ6世Sovereign金貨は8g, 直径22mm。英国消費者物価指数基準(1940/2019)で55.52倍、1500ポンドは現在価値1121万円。

⑶ The Hiding Place (The Strand 1939-2, Carter Dickson名義, 挿絵H. A. Seabright) 別題: Hot Money : 評価5点
マーチ大佐第4話。「四五口径のレヴォルヴァ、消音装置つき」が登場するのですが、回転式拳銃の場合、銃口以外からも発射音が出てしまうことから、効果的な消音装置は無いはず。JDC/CDはデリンジャー(回転式弾倉なし)をレヴォルヴァと書いた前科ありなので、ここは自動拳銃(オートマチック)のつもり?(WebにSuppressed M1911A1 from WWIIという記事[写真付き]あり。亜音速の45ACP弾だと消音効果が高いようです。)
23000ポンドは英国消費者物価指数基準(1939/2019)で64.82倍、現在価値約2億円。「額面5ポンド以上の紙幣番号は勿論わかっている」ということは、銀行にはそういう記録制度があったのか。(1939年当時の最高額面紙幣は1000ポンド札。当時の英国高額紙幣は結構でかい211x133mmで、白地に文字だけのシンプルなデザインです。)
マーチ大佐は「オーギュスト デュパンの≪盗まれた手紙≫以来の最上の事件」と喜んでいます。偽装××(p94)が出回ってたというのはちょっと驚き。

⑷ Death in the Dressing-Room (The Strand 1939-3, Carter Dickson名義, 挿絵H. A. Seabright) : 評価5点
マーチ大佐第5話。ナイトクラブが舞台。「未来派スタイル」とマーチが賞賛する新しい犯罪の手口がやや面白いが、単純な話。映像化すると割と良くなるかも。
p106 バイ バイ ブラックバード: Bye Bye Blackbird(1926) 曲Ray Henderson、詞Mort Dixon。
p109 五十ポンド紙幣: 上述の通り、白地に文字だけのデザイン。White-note-50-poundsで検索すると見られます。現在価値43万6千円。

⑸ The Silver Curtain (The Strand 1939-8, Carter Dickson名義, 挿絵H. A. Seabright) : 評価5点
マーチ大佐第7話。不可能犯罪なんですが、あまり構成が上手くない。ラジオ向けに脚色した「死の四方位」(1944)の方が出来が良い感じ。イギリス海峡に面したラ・バンドレット(La Bandelette)は架空地名?主人公がやったギャンブルはバカラ。
p130 六千フラン: 仏国消費者物価指数基準(1939/2019)で319.16倍、ユーロ換算で1(旧)フラン=0.49ユーロ、6000フランは現在価値355583円。
p132 アルマニャック ブランディを注文して、最後の100フランをカウンターの上においた。: 原文では「100フラン札」(hundred-franc note) 上記の換算で現在価値5926円。当時の100フラン札は182x112mm、多色刷り、表にミネルヴァの絵、裏は鍛冶屋と豊穣の女神?(1937〜1939発行)
p132 一週間分の部屋代(His hotel-bill for a week)は四千〜六千フラン: 上記の換算で23万5千円〜35万6千円。原文の感じでは飲食費なども込みか?値段は結構高い感じです。賭博街だからでしょうか。

⑹ Error at Daybreak (The Strand 1938-7, Carter Dickson名義, 挿絵H. A. Seabright) : 評価5点
マーチ大佐第3話。「ライオンの手」(The Lion’s Paw)の地形はどこかに実在しそう。全体的にゆるい感じの話。大佐は「よく使う手」(p183)と言うのですが、現実にそーゆー事件が沢山あったとは信じがたいです…

⑺ The Other Hangman (『探偵小説の世紀』1935) : 評価7点
切れ味の良い作品。もっと犯人がシャーシャーとしてても成立しそう。
舞台は1892,3年のペンシルヴァニア。電気椅子による米国最初の処刑はニューヨーク州1890年。
p193 ホテル代は週ぎめで2ドル: 米国消費者物価指数基準(1893/2019)で28.46倍、現在価値6131円。
p204 ジョン リーの故事: 絞首刑執行時(1885-2-23)、三度吊るされても死ななかったJohn "Babbacombe" Lee(c1864–1945)のこと。(原因は絞首台の不良らしい)
p219 日当50ドル: 上記の換算で現在価値153283円。

⑻ New Murders for Old (The Illustrated London News 1939 Christmas number, 挿絵画家不明) : 評価5点
読者には正体があかされない相手に語り手が物語って行く、という構成が良い。(途中で台無しにするんですが。) 主人公がなに考えてるのか全然共感出来ない無理筋なプロット。
銃は「自動拳銃、ベルギー製 38口径ブローニング」が登場。候補は小型のFNブローニングM1910か大型のブローニングハイパワー(1935)。尻のポケットに入れて身につけていた、という描写があるのでFN1910(全長153mm, 重さ約700g)の方か。
p233 ヨコハマ: 税官吏が銃を没収しようとした…

⑼ Persons or Things Unknown (The Sketch 1938 Christmas number) : 評価5点
JDCが大好きな王政復古時代、事件発生は1660年11月26日、金曜日と明記。なんだかコレじゃない感がするイマイチな話。(過去話に現代感覚を接ぎ木したような感じが変。)
p267 五百ポンドの年金: チャールズ2世時代の20シリング金貨は9gなので、金基準(1960)で5310円。英国消費者物価指数基準(1960/2019)で22.84倍、500ポンドは現在価値6064万円。

⑽ Blind Man’s Hood (The Sketch 1937 Christmas number) : 評価5点
クリスマス ストーリー。1870年の昔話が語られる。雰囲気は良いのですが、ちょっとピント外れな感じがJDC風味。
p301 大道の影絵師が6ペンスで切る細工物: 英国消費者物価指数基準(1870/2019)で118.04倍、現在価値397円。

Colonel March of Scotland Yard(1954-1956)というボリス カーロフ主演の英テレビシリーズがあり、某Tubeでep17: Silver Curtain(殺しの位置関係がわかりやすい)とep18: Error at the Daybreak(舞台が「ライオンの手」じゃないのが残念)が見られます。英語が得意でないのでチラッと見ただけですが、片目が眼帯のマーチ大佐でちょっとコミカルな感じ。(探すと他の動画サイトでep25: New Invisible Man[Margali’s Mysteryシリーズの一作になってます]があり、無料で見ることができました。銃はやっぱりレヴォルヴァでした…)

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弾十六さん
ひとこと
気になるトリヴィア中心です。ネタバレ大嫌いなので粗筋すらなるべく書かないようにしています。
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