皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
|
---|---|
平均点: 5.28点 | 書評数: 934件 |
No.214 | 8点 | ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 | 2019/06/03 18:22 |
---|---|---|---|
叙述トリックの素晴らしき傑作。 三津田信三「厭魅の如き憑くもの」もこれには及ばなかった。 |
No.213 | 5点 | 人形はなぜ殺される- 高木彬光 | 2019/06/02 11:59 |
---|---|---|---|
鍵のかかった箱という「密室」から人形の首が消失し、ギロチンにかけられた屍体から生首が紛失して、人形の首が代わりに残される。何故に人形の首は生首に入れ代ったのか・・・
「刺青」「能面」で描かれた「心理的誘導のための密室構成」という妙味は、この作品でも効いてはいる。が、そのトリックが「箱からの人形の首消失」って、「刺青」「能面」の密室殺人に比べれると、あまりにもちっちゃい。 で、肝心なメインの「何故に人形は殺されたのか」事件、イマイチつまらない。あれでは「トラベルミステリー時刻表アリバイトリック」ではあるまいか。 |
No.212 | 6点 | 呪縛の家- 高木彬光 | 2019/05/29 14:57 |
---|---|---|---|
「刺青」「能面」以上に機械トリックが不可能な完璧な密室での殺人。機械トリック密室構成でないのならば、当然、心理トリック=叙述トリックとなるわけで、注意して読めば読者への挑戦状のうちのフーの方は分かる。が、ハウの方は当てられなかった。結局、機械トリックだったし。でも、自分にしてはめずらしく挑戦状で犯人挙げられて気分良かった。
ところで、心理的密室トリックのできの良いのって、どうしても共犯者の存在か予期せぬ事故が不可欠なのね。 |
No.211 | 7点 | 能面殺人事件- 高木彬光 | 2019/05/27 12:45 |
---|---|---|---|
そのトリックが探偵に見破られること自体を目的とした「機械的密室」。見破られることによって、他者を冤罪に陥れるための密室。「手段としての密室構成」ってあたりは「刺青」の踏襲だが、密室構成の方法が「刺青」よりも遥かに分かりやすく、それ以上に「鬼女の能面」を密室構成に使用する趣が素晴らしい。 |
No.210 | 6点 | 刺青殺人事件- 高木彬光 | 2019/05/25 12:46 |
---|---|---|---|
密室バラバラ屍体から刺青を施したトルソだけが消えていた「首無し殺人」ならぬ「胴無し殺人」。そのトリックが探偵に見破られること自体を目的とした「針と糸トリック密室」。トリックが見破られてこそ意味を生じるっていう密室構成の目的がユニーク。残念なのは、この針と糸トリック、ちと分りづらい。 |
No.209 | 4点 | 僧正殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2019/05/23 18:57 |
---|---|---|---|
「マザーグース童謡」の見立て殺人。容疑者は(「爺やはイカン」を除き)6人・・4人の科学者とその家族の女2人。キャラのエキセントリック度(「常識的には怪しい」=「ミステリ小説的には無実」)の高い順にA>B>C>D>E>Fと容疑者がいれば、ミステリ的には、「一番まともそうな人」のFが「意外な犯人」となるべきところだろうが、「グリーン」の前例があるせいか、「二番目に普通」のキャラのEが犯人で終わる。この時代は、まだこんな「意外な犯人」で驚かすことができたんだろうなあ。読者もすれちゃったから作家も犯人造形大変だな。 |
No.208 | 6点 | 恐怖の谷- アーサー・コナン・ドイル | 2019/05/18 23:37 |
---|---|---|---|
首(顔)の無い死体ミステリの初出って、これではないかと密かに思ってた。子供の頃、ホームズ長編で唯一馴染めなかったのがこれで、多分、唯一「本格」のニオイがしたんだろう。でもこれ1915年の小説で「ビッグボウ」はおろか「黄色い部屋」や「ブラウン神父」よりも後なのね。顔の無い死体=死体入代りネタの元祖ってどの小説なんだろう。
ところでホームズていうかドイル、「モリアーティ」にこだわり過ぎじゃないか? 昔、コカイン中毒からノイローゼになったホームズが、フロイト(!)の診療を受けた結果、「モリアーティ」ってホームズの母親の愛人の名前で、そこからくるホームズの被害妄想と判明する・・ってな映画があった。 2022/1/1 訂正・追記 ハッキリしないがどうやら「顔の無い死体」物の源流(ディケンズにそんなのあるとか・・乱歩は紀元前からあるとまで書いてる)としても良さそうなので、「仮特許権」として6点に加点変更。 |
No.207 | 6点 | バスカヴィル家の犬- アーサー・コナン・ドイル | 2019/05/18 16:10 |
---|---|---|---|
子供の頃に「呪いの魔犬」とかいうタイトルで読んだ。なぜか登場人物の一人 ステイプルトンが気に入ってしまった。田村正和(古畑任三郎演じる以前の)やルパン三世の石川五右衛門がイメージにあった。(ちなみに執事バリモアは銭形警部。) あらためて新潮社文庫で読み返したら「あごのとがった やせた小男」という描写で、ちょびっとイメージと違った。でもずっとあいつが贔屓だったので点数はオマケ付き。 |
No.206 | 4点 | 四つの署名- アーサー・コナン・ドイル | 2019/05/16 21:13 |
---|---|---|---|
「・・モルヒネかい?コカインかい?」「コカインさ。~%水溶液。君も一本どうだい?ワトスン君・・」じつに痺れる会話だ それにしても宝箱が空っぽで本当に良かったねえワトスン君。「僕はおかげで妻まで得るし・・・それで君はいったい何を得るんだい?」「僕か?僕にはコカインがあるさ」 |
No.205 | 5点 | 緋色の研究- アーサー・コナン・ドイル | 2019/05/16 17:00 |
---|---|---|---|
あらゆる小説の中で最もカッコいいタイトルの一つ。かつ記念碑的なホームズ処女作。この二点だけで5点献上。
でも手元にあるのは延原謙という訳者の昭和二十八年刊行版。「ふふふ、驚いてらあ」「おもしろいですな」「さんざ悩まされましたが、私はもうすっかり筋道がわかったです・・・」 シャーロック・ホームズに、こんな日本語セリフを吐かせてはいかんだろう、やっぱり新訳で読まんと。 |
No.204 | 7点 | 屍人荘の殺人- 今村昌弘 | 2019/05/12 19:06 |
---|---|---|---|
このサイトで知って読み、期待以上に面白かった。「二重の密室」の外壁を構成しているのがゾンビの群れって・・・少年漫画「進撃の巨人」を連想した。トリックとしては第一の不可能殺人が面白い。というよりこの部分だけをもっと徹底的に「密室=不可能」に作り込んでもらえたら、第二第三の不可能事件は別にいらないとさえ思った。
ところで、あの第一の殺人のエピソードで、子供の頃に見た円谷プロ「怪奇大作戦」の、吸血鬼になってしまった女とその恋人の男の切ないラストを思い出した。 |
No.203 | 5点 | 扼殺のロンド- 小島正樹 | 2019/05/12 18:48 |
---|---|---|---|
何で死体から腸が丸ごと抜き取られたのか。「猟奇的」「耽美的」「宗教的」・・・一言で言えば「非合理的」ホワイダニットへの連想から「合理的」意味付けへの解決。ここらあたり師匠島荘の「切り裂きジャック百年の・・」を思い出す。 |
No.202 | 5点 | 九尾の猫- エラリイ・クイーン | 2019/05/11 11:26 |
---|---|---|---|
ニューヨーク連続絞殺事件。関連性がなさそうな九人の被害者の「環」は何か、絞殺犯はだれか・・・。容疑者がパクられても残りの頁数がだいぶあって「真犯人」が分かってしまう。もう二捻りくらいほしい・・・。 |
No.201 | 5点 | 災厄の町- エラリイ・クイーン | 2019/05/04 12:31 |
---|---|---|---|
クイーン版「カラマーゾフの兄弟」(大げさ)かな。陪審員(わが国では裁判員)に選ばれてしまったら、誰しもが有罪を選ばざるを得ない様な、「AはBであり得て」「A以外はBではあり得ない」という「絶対的」な状況証拠の中での裁判。しかし、もし、「Bそれ自体」が「B」ではなく、「C」であったならば・・・
作者自ら(半分だけだが)も、クイーンの専門家も「最高作レベル」と評価したという作品・・その評価については「半分」だけ賛成。 |
No.200 | 7点 | 白馬山荘殺人事件- 東野圭吾 | 2019/04/29 08:41 |
---|---|---|---|
東野圭吾版「黄金虫」かな。でも、きちんと「密室」も作り込まれてて、「いかにも『意外』な真犯人」「露骨にダミー」「多分ダミー」ってな容疑者もタップリ揃ってて、メインディッシュの事件解決の後に、デザートみたいな「人物設定トリック」、さらに前菜に「叙述トリック」まで用意してあって、実によくできてる。東野や道尾秀介ってこのレベルをいくらでも維持できるんだろうな。すげえな。ただ、小説として「面白い」かっていえば、そんなに面白くないし魅力がない。 |
No.199 | 6点 | 女王国の城- 有栖川有栖 | 2019/04/28 16:27 |
---|---|---|---|
個々の「ロジック」よりも、過去の「密室トリック」解明に感心してしまった。 |
No.198 | 5点 | 双頭の悪魔- 有栖川有栖 | 2019/04/28 16:24 |
---|---|---|---|
ヒロインが山道を歩いて行く冒頭の場面が実に素晴らしい。ひょっとして「湖底のまつり」の冒頭場面や、「匣の中の失楽」の雨の夜道描写のオマージュなんかな。 |
No.197 | 6点 | レーン最後の事件- エラリイ・クイーン | 2019/04/25 21:47 |
---|---|---|---|
こんな言葉が許されるのならば「蛇頭龍尾」。十代の頃の初読では「アクロイド」より衝撃的だった。これ読んで初めて「Y」のラストが理解できた。 |
No.196 | 4点 | Zの悲劇- エラリイ・クイーン | 2019/04/22 18:46 |
---|---|---|---|
「竜頭蛇尾」その一言。それも「龍」でなく「竜」。 |
No.195 | 7点 | ホワイト・ジャズ- ジェイムズ・エルロイ | 2019/04/21 13:08 |
---|---|---|---|
ジェフリー・ディーヴァーとジェイムズ・エルロイ。「明朗」「軽快」なディーヴァーと「暗鬱」「シニカル」なエルロイ、「民主党 能天気派」みたいなディーヴァーと「共和党 無頼派」の様なエルロイ、ミステリの伝統的な諸要素を材料に、アクロバティックに「ミステリ遊園地」を構築するディーヴァーと、物語の最重低音部に、吐き気を催すまでの暗く濁った「ミステリの真相」の汚水を澱ませるエルロイ・・・。
「ブラック・ダリア」の二視点叙述から「ビッグ・ノーウェア」「LAコンフィデンシャル」の三視点叙述を経て、この最終作は一人称視点で物語が語られ、その分、描写の「狂気」も一際荒れ狂っている。 「ホワイト・ジャズ」・・「白人」の「まがいもの」のジャズ。こんなカッケータイトル見たことないから、それだけで1~2点のオマケ。 |