皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
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平均点: 5.27点 | 書評数: 888件 |
No.468 | 2点 | 高い窓- レイモンド・チャンドラー | 2021/06/10 20:31 |
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フィリップ・マーロウ第三弾。人好きのしない未亡人から、紛失した奇貨コインの探索依頼を受けたマーロウ。関連先を訪ねては次々殺人死体に出くわして・・・。第一作同様、依頼本筋が横ズレして終わるホワットダニット展開だが、面白い場面は、脇役キャラ・・ニンジン男、用心棒電柱男、エレベーター爺さん・・達のユニークな描写。
第一作の「ソルジャー」に始まり「ブラザー」「ジャック」「ビッグ・ボーイ」と続く、半敵半味方キャラのマーロウの呼び方がよい。そのままカナにした春樹訳・・他者訳いざ知らず・・あの辺のセンス、グッドね。 ※ところで、第二作の「Farewell, My Lovely」ってタイトル、この作の方にこそふさわしくね? |
No.467 | 7点 | 疑惑の影- ジョン・ディクスン・カー | 2021/06/07 20:00 |
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「密室」に毒殺被害者と二人だけでいた容疑者の女。毒物容器の指紋は被害者と容疑者の二種だけで、他に犯行可能な者はいなかった・・・圧倒的に不利な状況から、「密室」を破り、無罪を勝ち取る弁護士バトラー。だが、一人の女の「無罪」は、別の毒殺事件に絡んだ、もう一人の容疑者の女を作り出してしまい・・・弁護士の分際で、血沸き肉躍るスーパーアクション繰り広げる熱血バトラー。フェル、メリヴェールには逆立ちしても不可能なアグレッシブなハードボイルド展開実に楽しく、点数オマケつき。 |
No.466 | 3点 | さらば愛しき女よ- レイモンド・チャンドラー | 2021/06/04 09:46 |
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「愛しき人(My Lovely)」とは、ヴェルマでもグレイル夫人でもなく、巨漢ぬりかべ男:マロイのことであろう。偶然に彼と出会い、一目惚れして追い求め、そして「さらば(Farewell)」を告げた「眠りホモ」フィリップ・マーロウ。彼の「無自覚の同性愛」が、対女関係の隠喩で、ドライに切なく描かれるハードボイルド浪漫。
※古代ギリシアでは「戦士の雄姿」として公然と驕られた同性愛。我が国近世においては乱歩三島等の「禁色の耽美文学」として表現を得られたが、禁欲ピューリタニズム米国では「ハードボイルド」という無意識の表現領域とならざるを得ず・・・ジェイムズ・エルロイ「ビッグ・ノーウェア」に至ってこのテーマの窮極に至り・・・ |
No.465 | 2点 | 大いなる眠り- レイモンド・チャンドラー | 2021/06/03 07:28 |
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世界で二番目に有名な探偵、フィリップ・マーロウ第一弾。老富豪から娘の恐喝者と話をつける仕事を引き受け、乗り込んだエロ本屋のオカマ店主が殺され、富豪のお抱え運転手は死体で見つかり、恐喝屋の蜘蛛男が現前で殺され、店主の美形稚児、賭博元締の白イタチ男、情報屋の小男、さらには峰不二子級のエロい女が三人四人跋扈して、筋だけ追うとまるでハードボイルド・・・ん? が、春樹チャンドラーの、修飾過剰な一人称語りとキザに凝り過ぎたセリフが、疾走感にブレーキかけて、「ブンガク(全然やぶさかではないが)」してしまうのね。
※「Go ○○○○ Yourself!(テメえで××××しな!) 」・・・当時はモザイクだったのね、あの四文字言葉。 |
No.464 | 6点 | 墓場貸します- カーター・ディクスン | 2021/05/30 21:18 |
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プール水中からの人物消失トリック・・・短編ネタレベルなんだろが、やはり見事。
「野球場の土埃の匂いは、コカインの様に人を酔わせる」か、英国人以前に、米国ヤンキーだったなあ、カーさん。 |
No.463 | 5点 | 時計の中の骸骨- カーター・ディクスン | 2021/05/27 22:02 |
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タイトルがいい。舞台装置も素晴らしい・・廃墟刑務所の死刑部屋、移動見世物小屋、鏡の迷路・・ミステリ大道具はかくありたい。ホラーとドタバタの結合、グロテスクな滑稽風味、実によい。犯人像もなかなか。ただ、転落殺人トリックは・・この作より20年前の「孤島の鬼」や10年前の「曲がった蝶番」に半歩劣るかなあ・・刺殺時間トリックは、もっとショボいかなと。 ※メリヴェール卿と伯爵未亡人のバトル大爆笑に、1~2点おまけ付けちゃう。 |
No.462 | 4点 | 煽動者- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/05/24 18:12 |
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ダンスシリーズ第四弾。言葉とトリックで群衆パニックを引起こし、凄惨な事故に至らせる美形男。犯人の内面サイコ描写からして、お馴染みのメンヘラ殺人鬼キャラのダミー設定で、さて、今回はどんなツイスト?て思っていたら・・あらら、特に捻りという捻りもなく終わってしまい・・まあ、それが肩透かしツイストだったりして。むしろ、ダンス自身の、捜査官として母として女としてのツイスト展開・・ちと、ご都合よろしすぎるが・・の物語が魅力かと。
原題の「Solitude Creek」=「孤独の小川」、主筋の流れから離れた、日系移民の強制収容所エピソードに関する言葉で、何でこれがタイトルに?て思った。 ディーヴァー、日本マーケットでも意識してんのかな? |
No.461 | 4点 | シャドウ・ストーカー- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/05/20 19:22 |
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ダンスシリーズ第三弾。天才シンガーソングライターと彼女に付きまとう超絶ストーカー。歌詞見立て連続殺人?と思わせて、いつものツイスト・・と陽動して、十八番の二重返し・・で終わるはずが、何と今回、驚きの「三重」返し。が、そんだけ、面白いかというと、うーん・・そうでもないんだなあ、ダンスの「透視力」全然冴えないし。
「犯人の名前書いてあんの?」「ジョン ポール ジョージ リンゴてある」・・笑った。 ※ライムトリオがゲスト出演。 |
No.460 | 5点 | ロードサイド・クロス- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/05/17 22:59 |
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ダンスシリーズ第二弾。人気ブログのレス書込みでサイコ殺人鬼に仕立られ、逃亡しながら復讐を繰返すオタク少年。「ロードサイド・クロス」て題、何かカーチェイスみたいの連想したが、道路沿いの手作り十字架・・我が国なら路肩の地蔵か野仏・・の事で、犯人のサイコキラー性宣伝の象徴だった。貧困家庭に育ち、スクールカーストでも最下層のニキビ面少年のヒール風味は、「エンプティ・チェア」の「昆虫少年」焼直しで、当然ツイスト展開はミエミエだが、十八番の二重どんでん返しに、ヒロイン母殺人犯疑惑ネタのオマケも付き、期待通りの面白さ。ただ、ダンス「透視力」の必殺具合がいまいち・・・ケムラーともかくベムラーに効かないスペシウム光線て如何なものか・・ |
No.459 | 5点 | スリーピング・ドール- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/05/13 17:45 |
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キャサリン・ダンスシリーズ第一弾。脱獄したカルトファミリーのカリスマと手助けする信者の女。対するは、仕草や表情から相手の本性を見抜く「人間噓発見器」のヒロイン捜査官。手に汗握る追いつ追われつのサスペンスで、奥のある人間ドラマもなかなか。でも、ライム物期待しちゃうとねえ。目的‐手段‐主体‐対象の全体性としての物語それ自体を、多重に捻って楽しませてくれるライム「物証分析」推理に比べて、ダンスの「キネシクス」推理、せいぜい、Who(犯人誰?でなく、この人の本性は?)ネタとWhyネタにこじんまり纏まってしまうかな。一つ二つ、模範的古典的な人物トリックあるんだけどね。 |
No.458 | 4点 | 複数の時計- アガサ・クリスティー | 2021/05/09 07:34 |
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仕事の依頼を受けて、盲婦人の家を訪れた派遣秘書が発見したものは、刺殺死体とあるはずのない複数の時計だった。婦人の家と両隣り・向い及び斜め両向い、都合六家の位置関係と人物描写から、「赤毛連盟」発展系期待したが、中途半端に・・ポアロの言う「極めて」て程ではない・・単純な真相だった。 |
No.457 | 5点 | 鳩のなかの猫- アガサ・クリスティー | 2021/05/07 05:21 |
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卓越した知性感性意志を持ち、冷静な判断力と強かな営業力政治力までも兼ね備えた、スーパーウーマン校長が運営する超高級女子校。女教師連続殺人が、遠いアラブでの宝石紛失事件と絡めて語られる。連続殺人は、犯人が○○となると推理難しいなあ。まして舞台が、屋敷の一族でなく学園にまで広がっちゃうとねえ。
※オリヴァて女作家が作者の「自虐自画像」ならば、あのバルストロードていう女校長、「理想自画像」てとこかな。 てことで、アガサ・クリスティー50年代の長編ミステリ全12作の採点修了したので 私的「50年代アガサ・クリスティー」ベスト3 第一位:「予告殺人」 第二位:「葬儀を終えて」 第三位:「マギンティ夫人は死んだ」 |
No.456 | 6点 | 死者のあやまち- アガサ・クリスティー | 2021/05/02 23:40 |
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地方の古豪邸で催された「殺人事件ゲーム」の最中、被害者役の少女が絞殺死体で発見され、館主の妻の幼女の如き女が失踪する。何故に誰に少女は殺されたのか。真相の多重入れ替りネタ、なかなかに良い。トリックのリュック使用方法がカー「妖魔の森の家」方向だったらなお良く。※女作家オリヴァの「アガサ自虐ネタ」風味、相変わらずGood。 |
No.455 | 4点 | 死への旅- アガサ・クリスティー | 2021/05/01 12:09 |
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今は昔、まだ共産主義が、楽園幻想と恐怖対象の相半ばの存在だった50年代。失踪する科学者達の謎解明の駒として、西側スパイに仕立てられた自殺志願女。流れ着いた先は砂漠の巨大医療施設・・怪しげな組織とキャラ達・・起と承のミステリアス感は良い。が、転と結が・・・。美味しいがオードブルとスープで終りのフルコースてとこかな。 |
No.454 | 6点 | エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件- ジョン・ディクスン・カー | 2021/04/26 17:18 |
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英国にとって「プロテスタントvsカトリック」てのが、信仰の問題ではなく、権力闘争の問題だと言うのは分かるが、この小説でミステリなのは「何故に、単なる一判事の死が政治利用され得る程に、民衆レベルの熱狂を得られたのか」ダニットにとどめを刺す。(英国は、ナチスドイツのユダヤアレルギー程は極端なカトリックアレルギー発作に至らず、幸運だった。) 歴史事件に正面から立ち向かったアイデアに敬意を表し2~3点加点。
でもやはり、英国歴史ミステリ言うんなら、「Who was Jack the Ripper?」の方に興味が行く。 ※法的手続きと証拠証人の「論証」で進められる近代西洋法廷。一見、理性的客観的に見える有罪無罪審判も、こういう(クイーン「フォックス家」「ガラスの村」等含め)の読まされた後では、わが江戸奉行「カンと見込み」捕物と比べ、さして良い物とは思えず、それどころか、「大岡裁き」「遠山金さん裁き」の方がまだマシにさえ見え・・・ |
No.453 | 4点 | 魔術の殺人- アガサ・クリスティー | 2021/04/25 17:27 |
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少年院を運営する富豪一族に起きる連続殺人。またも出ました、アガサ・クリスティー必殺技「人間関係トリック」!「十八番」超えて、もはや「伝家の宝刀」と言うべきにあらずや? ちと抜き過ぎだが・・ |
No.452 | 5点 | バグダッドの秘密- アガサ・クリスティー | 2021/04/23 19:29 |
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操りとラスボスWho(見え見えだが)、およびWhatダニットのミステリが、まるでジェフリー・ディーヴァーツイストの源流の様な明るいオプチミズムで泳着する。本来3~4点だろうが、奔放にして聡明なヒロインのエネルギッシュな魅力と、見事なる異邦イラク描写に加点したく。 |
No.451 | 4点 | 仮面荘の怪事件- カーター・ディクスン | 2021/04/21 21:29 |
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莫大な資産価値ある名画を飾った屋敷。忍び込み瀕死の重症を負った怪盗の正体は、屋敷の主人だった。当然に保険金目当ての狂言盗難疑惑呼ぶが、絵画に保険は掛けられておらず、主人の経済状態も悪くなかった。Why自分の絵画狙った? Who主人に暴行働いた? いったいWhat起きた?
※ギデオン・フェル博士とヘンリー・メリヴェール卿の違い。クスりとさせるのフェル、爆笑させるのメリヴェール。 |
No.450 | 4点 | 震えない男- ジョン・ディクスン・カー | 2021/04/18 16:19 |
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「幽霊屋敷」を購入した裕福な男が催す幽霊パーティー。「見えない手」がシャンデリアを揺らし、女の足首を掴み、壁に掛かった銃を宙に浮かして殺人を起こす。「それをやっちゃあ、おしめえよ(これ使っちゃあ、どんな「密室殺人」もありだ)」て位のスーパー機械トリック出しちゃって、本来3点だが、操りネタも面白いんで1点加点。 |
No.449 | 3点 | N・Aの扉- 飛鳥部勝則 | 2021/04/16 15:00 |
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フェデリコ・フェリーニ「8 1/2」や三島由紀夫「鏡子の家:創作日記」みたいに、「芸術する芸術家(要するにこの俺様)」テーマに半フィクション拵えちゃうと、どんな「手厳しい」自己批判・自己嫌悪も、所詮、自己陶酔・自虐的感傷の垂れ流しになる。ましてや、新人賞後翌年にこんなもん書いちゃあねえ。
数年・・十年になるか・・待ってはみたが、もう「電撃復活」ないと見限って、 私的、飛鳥部勝則ベスト3(4) 第一位:「殉教カテリナ車輪」 第二位:「誰のための綾織」 第三位:「ヴェロニカの鍵」 同三位:「レオナルドの沈黙」 |