皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
レッドキングさん |
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平均点: 5.27点 | 書評数: 888件 |
No.23 | 8点 | キャサリン・カーの終わりなき旅- トマス・H・クック | 2023/12/19 00:10 |
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詩と奇怪な小説を残し行方をくらました女、失語症の息子を殺人鬼に殺された男、終末を迎えつつある早老症の少女。あまりにも悍ましい残酷な運命と、気休め慰め全てを拒否する澄み切った水晶の様な冷厳さ。それでも、絶望の深さを止揚するが如きの結末。アガサ・クリスティーの素晴らしいがミステリとは言えない短編「海から来た男」や「翼の呼ぶ声」を、辛うじてミステリに繋ぎ留めた様なメルヘン。 |
No.22 | 5点 | ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密- トマス・H・クック | 2023/07/07 23:21 |
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「青髭公」ジル・ド・レ男爵に、「吸血鬼」エルジェーベト・バートリ伯爵夫人の両伝説的大物の他、ウクライナの猟奇殺人鬼チカチーロ、ナチやアルゼンチン暗黒時代の恐怖・残虐譚をルポタージュし続けた作家の自殺。彼の自殺の真相を探る友人の文芸評論家と作家の妹。作家がアルゼンチンで出会い、行方不明となった先住民族の女を求めての旅路が、なぜ、彼は自殺を選んだのか、のWhyミステリ解決にも「行き着き」。でも、その「解決」は・・ミステリ的多重解決超えて、アンチミステリ超えて、もう、「文学」そのもので・・・。「子供は戯れにカエルを殺すが、カエルは真剣に死ぬ」 |
No.21 | 5点 | ローラ・フェイとの最後の会話- トマス・H・クック | 2023/06/01 21:39 |
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かつて神童と目され、偉大な歴史家となる将来を夢見たハーバード大卒の男。齢四十を前にした実像は、著作はパっとせず講義にも人気のない、離婚歴のある冴えない学者に過ぎなかった。父親の店の店員だった凡庸な見てくれの中年女との数時間の「対話」を通し、今は亡き不器用な田舎者だった両親と、女と、女の夫との間に起きた事件が回想され、男の生涯の痛い「真実」が焙り出される・・これが、クックのいつもの奴より地味に、でも、イタいんだなぁ(;O;)。
それでも、「人生の最後の希望は、己の犯した全ての誤りが、ふいになすべき良きことの全てを教えてくれること」てな救済エンドへ。最後の"Happy"割愛すれば、「惑星ソラリス」や「父、帰る」等、暗く美しいロシア映画。 一言で言えば、ミステリ妙味を犠牲にした・・もはや読者を釣るテクに過ぎず・・人生の「苦い文学」。 |
No.20 | 5点 | サンドリーヌ裁判- トマス・H・クック | 2023/04/22 19:49 |
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不治の難病に罹った才色兼備の妻の急死。妻殺し容疑で告発された大学教授の夫。妻との出会いからの重苦しい追想が、数日間の裁判描写に重ねて綴られて行く。ミステリと文学が、ほぼ、fifty-fiftyでリードし合うクックの小説だが、これは、ミステリ興味・・自殺か殺人かWhatダニットと無罪か有罪か評決・・を釣りにした、冷笑主義と自虐的高慢に硬化した男の精神を焙り出す苦渋の小説。言っちまえば、ミステリをダシにした「文学」に過ぎない。
が、最後の一頁の、「驚き」の・・文学にあるまじき・・ミステリ的Happyエンドに点数オマケ。 ※「カラマーゾフの兄弟」のゾシマ長老が言ってたな、「地獄とは、人を愛せなくなった心」って。 |
No.19 | 5点 | 七つの丘のある街- トマス・H・クック | 2023/03/28 20:44 |
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米国史上最年少の死刑囚少女と一回り年長の巨漢肥満男、二人の起こした残虐な連続殺人を、警察捜査と裁判で綴るノンフィクション。戦慄のサイコパスか滑稽なダメ人間か、心を持たないシリアルキラーか哀れな社会的敗残者か、狡猾な策略的知能犯か愚かな被洗脳者か・・・殺人者像の驚くべき相反する矛盾描写。結局、あいつら・特にあの少女・の本性って何だったのか・・悪魔?何かの犠牲者?Who(何者)?・・多重解釈エンドのミステリと評価してオマケの採点。
※肥満男の絵に描いた様な「ダメ白人」風貌ともかく、わが国にも、「ヒ素カレー毒殺事件」死刑囚や、近隣男児(たしか実の娘も)殺しの女等、その正体が分かりそうで分からない「ノンフィクション」女はおり・・・ |
No.18 | 6点 | 沼地の記憶- トマス・H・クック | 2023/03/13 20:56 |
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南部の朽ち果てた屋敷に一人暮らす名家の孤独な老人。半世紀前の、若き高校教師として「悪について」をテーマにしたゼミでの追想記述に、謎の裁判描写をカット挿入しながら、「何起きたの?」で読者を釣り、師と弟子・父と子・米国階級・スクールカーストロマン・血の宿命・「様々なる悪」・・のドラマが綴られて行く。
カズオ・イシグロがSF的に描いた英国同様に、自由でありながら、どうしようもなく非平等な階級社会米国を生きる若者たちの宿命の切なさが胸を打つ。※ミステリとしては3点、ブンガクとしては8点。で、間とってオマケ付けて。 |
No.17 | 7点 | 緋色の迷宮- トマス・H・クック | 2023/02/10 21:19 |
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小さな写真店を経営し、短大講師の妻と友一人いない「理想的でない」息子を家族に持ち、それなりの、決して敗け組と言えない人生を送る中年男。そして、男が生まれ育ち、脆くも崩れ落ちた過去の家庭・・病死した妹・事故死した母・残された狷介な父と「人生敗残者」の兄。少女行方不明事件の容疑が、ベビーシッターをしていた息子にかかり、男の堅固なはずの家庭を腐食し始めて、過去の家庭の追憶にも地獄絵図が追塗装されて行く。絶望的な結末を暗示する追想記述が、現在・過去二つの家庭悲劇文学を陰影深くリードして行くが、少女事件のミステリどんでん返し決着に併せて、鮮やかに、しかし、苦く収束する。
※親が愛するのが「理想の子」であって、自分でない事を知る子供の苦しみ。現前の子供の実像を愛することのできない親の地獄。取り繕われた紙細工の家庭・・米国男って、難儀そうだなア、家庭経営・・(どこも同じか) |
No.16 | 6点 | 蜘蛛の巣のなかへ- トマス・H・クック | 2023/01/24 22:43 |
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愛せなかった故郷を離れ、遠い地で暮らす齢四十前の孤独な教師。余命僅かな父親を看取るために一時的に帰郷した貧しい山間の故郷。誰からも愛されず誰も愛せず己自身も愛せない生涯を送った父親と、その男から愛されることのなかった母親と二人の息子。二十年を経た再会の後も互いに嫌悪憎悪しか抱くことのない老父と息子。二十年前に己に別離を告げた少女。帰郷後、偶然に疑問を抱く様になる二十年前に弟の起こした殺人事件を再調査するうちに、父親の固執と弟の事件と少女との別離が、別の絵画へと目まぐるしく変容収束し、暗く苦く辛い物語に、最後の最後に至って救いの光が差し込む。 |
No.15 | 5点 | 孤独な鳥がうたうとき- トマス・H・クック | 2023/01/09 21:46 |
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元末流クラブ歌手の女、女の夫、夫の父親で金貸し小物暴虐ボス、その手下、夫の会社の部下、ニヒルな一匹狼探偵、余命僅かな探偵の取次役、女の臨家の主婦、その母親、ジャズ酒場店主のピアニスト・・10枚のパズルの駒が、女の家出をきっかけに飛び交い始め、慌ただしく元絵・・絶望から諦念に至る元絵を描き換えて行く。メリーゴーランド方式どころか、十視点描写で、苦く滑稽なサスペンスが進行して、ミステリとしては「女の義父のこの異常執着は何?」に絞られ、結局は、それを焦点に、実に見事な拍手パチパチの「ハッピー」エンドに決着する。
ミステリとしては3点、小説としては7点、間とって、うーん、5点。 |
No.14 | 6点 | 闇に問いかける男- トマス・H・クック | 2022/12/13 21:33 |
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少女殺し容疑者の若き浮浪者。男の有罪確証を得るリミットの朝までは12時間、その一夜の群像劇。取調室で浮浪者と「対話」を続けるユダヤ人刑事、妻を亡くし病床の娘を気遣う清掃業者、殺された少女の母親、4年前に自身も娘を殺された刑事、理想ではなかった息子を拒否し駄目にしてしまった刑事部長、ジャンク品売買業者、病身の妻子を持つ「無能」な巨漢刑事、スラムから叩き上げ登り詰めた本部長、ノミ屋の男・・・ハードボイルドな「ニヒル」人物設定を超えた、ブンガクな「痛ましい」人物造形は相変わらずだが、それまで直接には交わらない清掃業男とユダヤ人刑事を、真実解明エンドで繋げる等、なかなかなミステリテクを披露してくれる。が、なんといっても「主役」の浮浪者・・半異形半妖精の様な・・がミステリで、映画「グリーンマイル」落ち予想を超えて、最後までブンガクしてくれてる。あとは、真犯人がちゃんとフクセン登場してくれていたら・・本格してた。 |
No.13 | 7点 | 心の砕ける音- トマス・H・クック | 2022/12/08 00:40 |
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" もしも地獄の光景が冬ならば、メイン州の冬景色そっくりに違いない・・・"
凄惨な過去を持つ緑色の瞳の女、理知と冷血の兄、浪漫と熱血の弟・・いったい、誰が何を行い何が起きたのか、そもそも消えた幻の女は誰なのか、北部メイン州港町を舞台に、人物トリックを巻き込んだ、痛ましく陰惨な「カインとアベル」物語のミステリ展開・・と思いきや、クックにしては珍しく救いある終末に決着。 怒涛の救済解明は良いが、「家族Commedia大団円」は、行き過ぎかな。あれは「毒親・闇落ち」のままにしとかなきゃ。 " 忘れる事のできない痛い記憶の数々で、己自身が己自身を蝕まみ、さいなみ、苦しめて・・ " 身につまされるな |
No.12 | 6点 | 夜の記憶- トマス・H・クック | 2022/11/30 19:03 |
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十三歳の時に、二人暮らしの姉を殺人鬼に嬲り殺されたミステリ作家。一晩中、少年の目の前で行われた言語に絶する凄惨な拷問。三十数年を経て、殺人鬼とその従者、彼らを追う探偵警官のシリーズ物を書く事で、辛うじて生きる糧と世界への繋がりを得ている中年作家。彼のおぞましい追想・・これ以上に念入りな残酷描写となったら読むの止めよか躊躇するが、綾辻行人「殺人鬼Ⅱ」みたいな悪趣味には陥ることなく筆は止まる・・に、小説内の世界と、ある過去の少女殺害事件の「探偵」仕事が重なり合って、物語は進む。メインテーマは依頼された少女殺害事件の方だが、その真相解明よりも、姉の事件の真相暴露の方が、どうしてもどぎついアクセントで心に疼く。
※痛さ・・わが「ジュン文学」同様に・・が売りのクックだが、ここまで鬱に痛いと、彼自身の生い立ちに何かあったんじゃないか?て疑いたくなる。 |
No.11 | 6点 | 夏草の記憶- トマス・H・クック | 2022/11/22 19:32 |
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深南部州アラバマの小さな町、五十路を迎えんとする開業医。妻と娘を持ち、地元でそれなりの地位を得ている彼の脳裏にフラッシュバックするのは、三十年前ハイスクール時代の悲恋。シングルマザーに連れられた、不思議な情熱に焼かれた転校生少女への失恋物語が、少女の「痛ましい事件」の裁判描写をカットバックしながら語られる。米国スクールカースト・・「ジョック」「クイーンビー」etcキャラ達の数十年の変容譚もチラつかせながら、黒人問題もの?思わせて、「ドクターモロー」ネタへ捻じられ、実に痛いWho・・いやWhatダニット解明に終わる。
※三島由紀夫が、鴎外の「雁」の主人公は・・「青年」の主人公とは違い・・将来、俗物男になっただろう、て書いてたが、漱石「三四郎」なんかどうなんだろう。美穪子が俗物肥満オバサンと化した戦後譚とか読みたいな。 |
No.10 | 7点 | 死の記憶- トマス・H・クック | 2022/11/11 20:32 |
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母と兄と姉を射殺して失踪した父、一人生き延びた末っ子の少年。数十年後、彼の前に現れたのは、同様の"父親による家族皆殺し事件"の研究に情熱を抱く美女ジャーナリスト。記憶に潜む事件想起の産婆役を彼女に委ねながら、現在の妻・息子との日常に、かつての家族の絶望的な情景が塗り重ねられて行く。物語は、女が下した結論・・灰色の日常に復讐する男の狂気的浪漫発作・・に絡み取られる文脈と見せかけて、アッと驚くような・・と言うより、ウぅーと呻かせられるような・・だまし絵的反転を遂げて終わる。ミステリとしては見事で、家庭悲劇としては破滅的に痛い。 |
No.9 | 7点 | 闇をつかむ男- トマス・H・クック | 2022/11/07 17:03 |
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40年前の死体無き少女殺し事件。犯人として電気椅子処刑された男の裁判を追う犯罪ルポライター。40年後の追調査に、猟奇殺人鬼達とのおぞましき交流が甦り、彼自身の生い立ちと、彼以前に事件を追い、死んだ幼馴染への追想が絡み、挙句の果てに、驚くべき事件の真相が明かされる。彼が追い求めた少女の屍体と真犯人は・・・
「謎」=ミステリとは、「答」という「生の停止」を延命させる救済装置に過ぎない。それでもミステリは解決され「わかったほうがいい、だろ?」・・まあ、たぶん・・ |
No.8 | 6点 | 熱い街で死んだ少女- トマス・H・クック | 2022/10/20 16:37 |
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1963年アラバマ。キング牧師指導の黒人運動と白人治安部隊の争乱下、射殺死姦された黒人少女の事件を追う白人警官。左翼イデオロギーにもリベラル主義にも無縁の、既に心朽ち人生を半ば諦めた・・この作者お馴染みキャラの・・警官が、主義からでなく情動から引きずり込まれる黒人への執着。それでも「想像はできるが、わかる事はできない」壁の向こう側の情景。悲惨な黒人スラム描写とキング牧師の熱いアジと白人達の残忍な言動、読者の心象に煙幕を張りながら、その裏で運動を利用して進行する連続殺人犯達の思惑。冷え切った心を焼く黒人への思いと、犯人を追う冷めた捜査が、事件の真相解明へと反転収束する。
半世紀以上が経過し、黒人差別はタブーとなり、右派・保守的発言がウリの前大統領でさえ「この私に人種差別の血は一滴も流れてない」とアピールせざるを得ない現在の米国。それでもなお根底において変わる事のない、恐怖・嫌悪と建前・偽善の錯綜混乱・・そして我が国、外見では識別できない隣国民族を侮蔑して来た我らにしたところで、邦内に「白人」「黒人」等、肌の色が違う人間が多数混入して来れば、似た様な状況となる事に違いなく・・・ |
No.7 | 6点 | 神の街の殺人- トマス・H・クック | 2022/10/04 08:32 |
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ユタ州ソルトレイクシティ。モルモン教と呼ばれる教団・・カルトと見なすにはメジャーすぎるが、耶蘇教一宗派と言うには異端すぎる教団が、残酷な弾圧と過酷な逃亡の末にたどり着いた約束の土地。驚異的な労苦の末に打ち建てた、「美しく穢れなき」街。そこでは起こるはずのない、起きてはならない血に汚れた連続殺人が起きて・・。黒人娼婦、老人記者、教団幹部、モルモン教史学者・・被害者達の「環」を追うのは、ニューヨークから移住して来た、心は既に朽ち果てつつある警官。荒廃した東部の大都会も、美しき南西部の神の街も、彼にとっては、いずれも、それぞれに冷酷な絶望の光景に過ぎなかった。 |
No.6 | 6点 | 鹿の死んだ夜- トマス・H・クック | 2022/09/24 19:28 |
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クック処女作。定年を前に妻を亡くし、弁護士の息子一家とのワザとらしい親交ごっこと、心底の静謐な絶望に辛うじて耐えて生きるアラシクス(<60)のニューヨーク刑事。任された事件の被害者は、体中57ヶ所を斬られ惨殺された二頭の鹿と、同じく57ヶ所を斬られ惨殺されたレズビアンのカップル。サイコホラーの如きWhoダニット物語が・・不思議な事に・・リアリティを持った真相解明と、変に説得力ある苦い結末で終わる。ウディ・アレンにビル・クリントン、ドナルド・トランプを加味した如きキャラが、如何にも分かり安いラスボス風味で登場。 |
No.5 | 7点 | 夜 訪ねてきた女- トマス・H・クック | 2022/09/19 21:14 |
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フランクシリーズ第三弾。第一弾で南部警官だったフランク、二でニューヨークへ引越し転職し、この三ではすっかり薄汚れ私立探偵が板につき、昼は、富豪よりの依頼仕事で挙動不審の妻の尾行、夜は自身の情念から、ジプシー女殺人事件の真相捜し。二つの事件は重なることなく、それぞれに真相解明へ・・が、出来過ぎた決着にも、「タクシードライバー」狂気エンドともならず、そこはトマス・H・クック、苦い結末かな・・と思わせといて・・ウァっと驚く技巧的な連結決着。思わずウーンと唸って拍手パチパチ・・
同じ警官あがりのニューヨーク探偵、ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・・住まう部屋の窓外に居を構えるのは、カッコいいハヤブサ一家。一方のフランク、事務所兼用の半地下部屋の外の階段下に寝てるのは、悪臭漂うホームレス老婆。フランクと一言の交流もなかった老婆の突然の死が、一番痛かったりする・・・ |
No.4 | 6点 | 過去を失くした女- トマス・H・クック | 2022/09/12 19:41 |
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フランクシリーズ第二弾。ニューヨークのしがない私立探偵に転身した元南部やさぐれ刑事。請け負った依頼は、殺害されたファッション業界老嬢の遺族捜し。極貧の移民ユダヤ少女が、縫製女工から労働運動の女神となり、謎の二十年の歳月の後に、手首切断惨殺死体に変じるまでの轍。世界恐慌30年代の苛烈な米国労働争議。縫製工場の娘達の過酷な労働環境が、わが「女工哀史」「あゝ野麦峠」に微妙に重なり、物語は、清張・「火車」・「白夜行」にホンワリかすり・・ |