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ねここねこ男爵さん
平均点: 6.44点 書評数: 138件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.78 7点 中途の家- エラリイ・クイーン 2018/01/30 22:54
新訳版を強く強くおすすめします。新訳版のあとがきにもありますが、旧訳は趣旨を理解していないネタバレに近い迷訳が多く、魅力を大きく損なっています。

個人的には「災厄の街」よりこちらの方が上。必要十分条件でなく、必要条件を重ねに重ねた上十分性の検証は推理によってではなく実証にて行われるという点で違和感を感じる人は多いでしょうが、これはこれで。

以下ネタバレ。
特に説明無く単独犯ということになっているがこれはどうなのか。加えて被害者の一言がミスリードにすぎる。衝撃成分の確保のため仕方ないのかもしれないが…。贈り物の描写が見え透いているのでそれを汲んでくれということなのだろうが、「主犯男実行犯女、男の影響で女もアレを嗜む」でも矛盾しないのではと思う。

No.77 9点 あした天気にしておくれ- 岡嶋二人 2018/01/18 21:07
これは面白い!

倒叙ものとして始まるが、中盤から犯人グループに便乗する第三者の存在が明らかになり、それによって徐々に計画が破綻していくサスペンス、更に衆人環視のなか身代金を奪取する鮮やかさ、どんでん返し、そしてラストと一気に読ませる。
文章もテンポよしストレスなしで登場人物も整理されておりやたら読みやすい。文句なし。

No.76 7点 チョコレートゲーム- 岡嶋二人 2018/01/18 20:51
面白い。
本格ではなくサスペンス色が強い。読みやすく、テレビの2時間ドラマに最適かと。

「誰の協力も得られないまま死んだ息子の冤罪に立ち向かう孤独な父親」という話の都合上仕方ないのだが、チョコレートゲームがなんなのか生徒がひた隠しにする理由が無いのが最大の欠点。ゲーム参加者はクラスの一部だけだし、事件の最中なら巻き添えを警戒するだろうが、ある程度時間が経てば無関係な生徒は証言するだろう。人が何人も死んでいる上に証言しても何ら咎められることはない(むしろ感謝される)のだから。少なくとも口が滑ってからの「そんなこと言ってない!」は不自然。濡れ衣を着せられた生徒の彼女が黙ってるのはとても不自然。チョコレートゲームとは何なのか?を出来るだけ引っ張らないと間が保たないのでそうせざるを得なかったのが読者に伝わってしまうのはマイナス。無粋なツッコミなのは承知しているのだが。

No.75 3点 ペルシャ猫の謎- 有栖川有栖 2017/12/18 11:16
個人的にはかなり好きな短編集だけど、これに高得点をつけるわけにはいかない。
ファンブック的な性格が極めて強い。特に後半の話。この作者はあちこちの作品で登場人物の口を借りながら自身の推理小説観を少しずつ語っていて、たまにとても前衛的と言うか実験的なことをやる。それを踏まえていないと表題作は意味不明と言うか、読者は怒るんじゃなかろうか。前半の話はそれなりにミステリしているが、出来はどうにか水準といったところであり、高評価は難しいかな。

この作者の初めての作品が本作にならないことを祈るばかり。本作は避けて避けて、他作品で作者のファンになってから読んだほうがよいかと。

No.74 5点 8の殺人- 我孫子武丸 2017/12/18 10:58
最初にまとめると、ミステリマニアの学生がサークル活動で気合を入れて書いた(学生にしては)優秀作というところ。

ミステリのとりあえずの入門書ですかね。ノリが軽く長さもほどほどで謎がそれなりに興味をそそるので、ミステリ読みはじめの人は途中で挫折することはないんじゃないでしょうか。有名ミステリの名前が幾つか出てくるので、ミステリ初心者は興味を持って読んでみるということもあるでしょうし。
逆に、ある程度読み慣れている人はキツい…というか怒る人も多いんじゃ。『有名作のネタバレ多数』『密室講義のトレース』『偶然に次ぐ偶然』などなど。全く不要な密室講義のトレースにかなりのページを割いているあたりにマニア学生っぽさを感じます。それからネタバレは巻末の注釈だけでやればいいのに、本文で思いっきりやってるのが…「ボクはこんなに古典ミステリを読んで独自の見識をしっかり持ってます( ー`дー´)キリッ」というアピールがやっぱり学生っぽい。

No.73 8点 一の悲劇- 法月綸太郎 2017/12/15 14:00
素晴らしい。
法月氏は短編の人だとは思うけれど、その良さを長編でも発揮した傑作。登場人物が整理されていて、コリン・デクスター風の仮説→検証→否定のサイクルが効果的に回る。勘で真相を見抜くミステリ慣れした人も多いと思うけれど、最後まで緊張感と構造転換の衝撃を味わえる。
ダイイングメッセージなんて飾りです。

No.72 4点 交換殺人には向かない夜- 東川篤哉 2017/12/09 22:52
ネタバレ気味書評です。

こんな人間が何人もいるか…?まさかアレじゃねぇだろうな…と思ったらその通り、という。それだけなら読者に見破られるだろうからさらにひと工夫したろ!ってことなんでしょうが、ねぇ。
ユーモアは寒いというか(寒いけど)、ボケと勘違いと真実を混在させて読者を煙に巻くための作者に都合の良すぎる道具です。「なんでこれ調べねぇの?なんでこれ気付かねぇの?」と読者が思ったときに言い訳をするためのもの。なので作中人物の行動が異様にご都合主義であって、そこをどう思うかでしょうね。
この年代に山ほど出版された叙述トリックの凡作のひとつです。

No.71 8点 法月綸太郎の冒険- 法月綸太郎 2017/12/05 00:03
意図してかどうかは分からないが、ホワイダニット短編集とも呼べるもの。
出版順ではないが、『功績』『新冒険』からの本作の方が面白さを堪能できるかと。
やはり法月氏は短編の人。

No.70 7点 論理爆弾- 有栖川有栖 2017/12/04 23:09
ジュブナイルあるいはヤングアダルト向けの作品にコレをもってくるとは…
本作は本格ミステリをある程度読みこんだマニアが本来の対象でしょう。帯の煽り文句の最適具合では史上屈指。少なくとも本格物を二十冊以上読んで嗜好や思想が固まってから本作に取り掛かることを強くおすすめします。

No.69 4点 女彫刻家- ミネット・ウォルターズ 2017/11/25 20:30
なんというか、ツイン・ピークスっぽい。そういうのが好まれた時代の作品。
雰囲気を楽しむ小説。

No.68 7点 狩人の悪夢- 有栖川有栖 2017/11/13 21:40
安定と信頼の有栖川ロジック。
極めて限定された状況下なので、犯人の意外性は期待できませんが、とっ散らかった犯行現場に火村准教授が秩序をもたらしてくれます。学生アリスの探偵役である江神さんとは毛色の違う、リアリズムに満ちた狩りは見事。

火村英生シリーズは学生アリスシリーズと比べて量産型作品というイメージがあったのですが(超失礼)、『鍵の掛かった男』あたりからまさにツートップと呼ぶにふさわしいクオリティになった感じがします。しかもどちらもロジカルでありながら性格個性が異なりきちんと住み分けがなされていて素晴らしい。

ロジックよりトリック、フェアプレイより衝撃や意外性重視な人は読んではいけません。

No.67 8点 屍人荘の殺人- 今村昌弘 2017/11/13 20:46
これはなかなか面白い。斬新なクローズドサークル設定。

単なる目新しさだけでなく設定を完全に活かしきっている。フラグを立てる人物は分かりやすく犠牲になるw 第一の殺人の真相はすぐ見当がつくが、それすら作者の手のひらか。またフーダニット、ハウダニット、ホワイダニットとは何かを説明する場面があるのだが、それらをすべてカバー。お見事。作中で触れられている通り登場人物が覚えやすく、人数や役割が整理されていて非常によい。さらに文章が言い回しのみならず字数や読みのリズムまで考慮されているようでやたらと読みやすい。SNS世代の若い作家さんはここがいいですね。

人と人との接触が禁止された世界とか、架空の交通機関のある世界での殺人などこういった前例はあるが、ここまで設定を活かしきった作品は稀有かと。推理もロジカルでアンフェアな事もなし。それゆえ大きな世界の転換ということはないが衝撃成分もしっかり確保されていて好印象。

若い作家さんらしい圧倒的リーダビリティと職人芸的上手さを感じさせる優秀作。続編を期待させる人物設定ですし、作者さんもそのつもりでしょうから是非。続篇ではどうにかしてあの人を生き返らせて下さい。

ちなみにタイトルと宣伝文で公開設定だと思っていたので、「設定か?ネタバレか?」議論の存在を知って驚いた(何の事かは皆さんご存知でしょう)。巷では「○○だと思ってたのに読んだら理屈っぽい小説だった!低評価!」という逆転現象も起きたりしているらしい…今思うと、隠すつもりならこんなタイトルにしないでしょうから、最初からネタバレ狩りによる宣伝を狙っていてあからさまなタイトルにしたのかな、とも思います。商売上手?

No.66 6点 ハサミ男- 殊能将之 2017/11/12 23:03
仕掛けやそのための描写がよく出来ている部分と雑な部分が混在していて、相殺してこのくらいの評価。衝撃を味わいたいなら。

コレが流行った時期の作品なんでしょうがないですが、日常描写が延々続く作品は間違いなくコレですねぇ…ワタクシは知らずに読んだのですがすぐに気付いてしまいました。『コレだけ』ではない作品ではあります。

No.65 7点 星降り山荘の殺人- 倉知淳 2017/11/12 21:34
これは面白い。
この作者の本は好きか嫌いかでいえば大っ嫌いでしたがこれは良いです。

とにかく古典的なクローズドサークルもの。解決もロジカルで衝撃の真実や意外な犯人はなし。クローズドサークルですからね。そのかわり不快な強引さもなし。衝撃成分は各章の前フリが担っており、読者は当然仕掛けを警戒するため効果は今一つか。コレがうまくいっていたらもっと良かった。あ、本作を叙述トリックと言っている人は叙述トリックを間違えています。それから低評価をつけている人でレビュー本作のみってのが多くてなんとなく…ねぇ…

ちなみに、同作者の「過ぎ行く風は〜」と本作どちらが好きかが嗜好のベンチマークになります。「衝撃!意外!トリック!」な人は前者、「推理小説らしい推理小説」を求める人は本作となるでしょう。どちらの人も反対側は読まない方が精神衛生上オススメ。

No.64 7点 罪の声- 塩田武士 2017/11/10 23:21
元新聞記者である作者が綿密な取材活動のもとグリコ森永事件を元ネタに書いた小説。犯行に用いられた『子供の声のテープ』の声の主と新聞記者のダブル主人公が真実を追う。

いわゆる社会派ものなので、証人や秘密を握る人物が都合よく次々とあらわれるのはお約束。ただ、情報が出揃ってからの中盤以降はスピードもありテンポよく面白い。新聞記者の経験を多く盛り込んだそうで、取材の生々しさを感じとることができます。文章も読みやすく、無駄に引き伸ばすこともなくストレスなし。

真相は当時色々推理されていたものの一つに近く意外な真実というわけではありません。ただ、実際の事件でもあった不可思議な点などもきちんと説明されており、「犯人は架空だが、真相や犯人グループの役割などはそれほど外していないと思う」とのことで未解決事件マニアも納得の作品。

普段は本格マニアの自分ですが楽しかったです。
作品の性格上、まとまった時間を用意して一気読みをオススメします。

No.63 5点 密室の鍵貸します- 東川篤哉 2017/11/10 15:11
なかなか面白いです。
色メガネで見てしまいそうなタイトル装丁で、文体かなり軽いですが、ちゃんと本格ミステリしています。ユーモアって書くの大変(ギャグ漫画家は必ず病む)なのにあえてこれで行こうとした作者はすごい。一時期、難しい漢字のおどろおどろしいタイトルと文体を用い、中身はミステリより雑学知識多めで黒い表紙の作品が流行り、そういうのが格調高いという出処不明の価値観がありますが、ユーモアのほうがずっと好感が持てます。読みやすいし。
惜しむらくは、長編としてはネタが薄いこと、それを引っ張るためのドタバタ劇になっていることでしょうか。
それから、死体発見時に発見者が自分の首を絞めるような行動を「ついやってしまう」のですが、本筋にあんまり影響無いにしろ、今時の読者にとっては発見者に同情する気持ちより「何やってんだよ面倒くせぇな…」とストレスになるだけなのでやめた方が。

No.62 3点 競作 五十円玉二十枚の謎- アンソロジー(出版社編) 2017/11/09 17:47
日常の謎としておそらく日本一有名であろう表題のアンソロジー。
謎の答えが知りたくて読むと肩透かしを食らう。

謎に真正面から取り組んだもの、謎はあくまで踏み台で実質別の話がメインになっているもの、身内のウケのみを狙ったものなど足並みがそろっておらず、クオリティもバラバラ。なので評価点は低めです。

作家さんは完全な創作料理は得意でも、グルメ漫画の料理対決のようにテーマという名の縛りを与えられると戸惑ってしまうんだなぁと感じられる。
あと、やがてプロになる人はやはり最初から化け物だ。

No.61 9点 スイス時計の謎- 有栖川有栖 2017/11/09 17:37
ほぼ表題作のみの評価。ロジックもの短編の国内ベスト。

ロジックものはどうしても複雑な状況を作り複雑に解説するという形式になりがち。容疑者を一人ひとりふるい落とす根拠を用意せねばならず、そうすると容疑者の数が増えるほど長く複雑にせざるをえなくなる。さらに面白みを加えるためか、関係ありそうで無関係な事象を平行して走らせる小説が多く(出来の悪い長編あるある)、そうするともう何がなんだかとなりがち。
この作者は論理のために無理やりオーダーメイドされた世界を作ることをせず、ぱっと見意味のないような些細な状況から論理を構築するのが異様に巧みで、文章力もあいまって読ませる。特に表題作の見事さは『孤島パズル』に匹敵。

ちなみにその他の3短編も悪くなく、標準的なレベルにはあるかと。『女彫刻家の首』は首切り死体はなぜ首を切られるか?のバリエーションのひとつ。

『ロジックよりトリック』『どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!』な人は読んではいけません。

No.60 7点 犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題- 法月綸太郎 2017/11/09 17:20
『冒険』や『功績』などと比べるとやや落ちますが、それでも相変わらずの巧さと構造転換の妙味を味わえます。

一話目:そんなこと考える人間はいないと思うが、親からそう聞かされて育ったならまぁ…分からんこともない行動か
二話目:ミステリと暗号って相性よさそうで実はかなり悪い

が正直微妙でどうなることかと思いましたか後半から本気出します。
らしさを感じられたのでちょっと甘めの採点で。

No.59 5点 ふたたび赤い悪夢- 法月綸太郎 2017/11/08 22:02
面白いことは面白いが、他の長編群と比べてだいぶ落ちる。特別な属性を持つ人物が狭い範囲に集中しているなど人間関係が好都合すぎることと、これまでの法月作品と違ってトリックが推理小説的リアリティ(とでも言えばいいのかな)に欠けるというか…普通気付かんか?と思ってしまった。あとゴシップ記者超有能。
さらに、三箇所ほどやたら冗長な部分があり、正直かなり苦痛だった。この退屈な中に伏線でも張ってんのかなと思い歯を食いしばって読んだが、そんなこともなかった。アイドル論の下りって要るのか…?
『頼子のために』の後日談プラスアルファですね。

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アンケートをよく作成する仕事柄、評価に『普通』はつけません。なので本サイトでめったに5点はつけません。

偶然が二回以上あったり、糸や機械を多用した現実味のない物理トリッ...
好きな作家
エラリー・クイーン 有栖川有栖
採点傾向
平均点: 6.44点   採点数: 138件
採点の多い作家(TOP10)
有栖川有栖(12)
法月綸太郎(12)
笹沢左保(10)
鮎川哲也(7)
岡嶋二人(6)
東川篤哉(5)
東野圭吾(5)
高木彬光(5)
エラリイ・クイーン(4)
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