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[ 本格/新本格 ]
密室館殺人事件
名探偵の証明
市川哲也 出版月: 2014年11月 平均: 4.60点 書評数: 5件

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東京創元社
2014年11月

東京創元社
2021年07月

No.5 8点 虫暮部 2022/09/14 13:23
 繰り返されるどんでん返しが本作では鼻に付かず、“然るべき形” だと感じられる。トリックを生み出せないなら、トリックが稚拙である必然性を有するプロットを考えればいいんでしょ、と言うわけだ。文庫版に解説を付けないこだわりも良し。

 でも結局、人を人とも思わない犯人のキャラクターに惹かれたのが大きいかも(先日読んだばかりのアレにちょっと似ている)。
 更に、挿入された感傷的な恋話が効く。終わりを決めたのに好きになってしまい、しかし決定は覆らず――読み返すと非常に腑に落ちる流れで、ゆえに狂おしく切ない。

 ババ抜き勝負で、語り手が “(カードにマーク等の)差異はないように見える” と記述しているのに、実は単に見落としただけ、と言う真相はつまらない。机上にガラス製品がありそれに映っていた、とかどう?

No.4 5点 nukkam 2022/05/29 10:02
(ネタバレなしです) 2014年発表の「名探偵の証明」三部作の第2作である本格派推理小説です。本書では名探偵(蜜柑花子)のせいで家族を殺されたと逆恨みする人物を登場させて名探偵の役割と責任を考えさせる趣向があるのが「名探偵の証明」である所以でしょうけど、それ以上に「推理小説の犯罪と現実の犯罪の違い」についてを蜜柑に語らせているのが印象的です。とはいえデス・ゲーム要素を織り込んでいるところからして非現実的な作品世界なのは避けようもなく、ごく一部の要素だけ「現実的」にこだわってもあまり意味がないように思います(極端すぎな非現実も困りますけど)。これでは名探偵ジャパンさんのご講評で指摘されているように面白い謎解きを創作できなかった言い訳に感じられてしまうのではないでしょうか。本書のタイトルでリアリティー重視の社会派推理小説を期待する読者はそうはいないと思いますので、もっと羽目を外した謎解き(少なくとも密室には何かこだわりの工夫)に挑戦してほしかったです。

No.3 3点 ボナンザ 2022/03/18 22:57
一作目同様、名探偵をテーマにするのはよいが、肝心のミステリ面は微妙。

No.2 2点 ねここねこ男爵 2018/02/04 20:40
あまりにも酷くてちょっと悲しかった。作者はオタク的というか、「読者全員が作者と同じバックボーンや読書経験を持っているワケではない」のが分かってないっぽいというか。

作者は多分「従来のミステリの欠陥というか矛盾を生じる一側面に注目したろ!オリジナリティ!」と思ったのだろうが、「そこに注目できたんだからミステリ要素はいい加減でもOK」となったらしく、本作の推理部分は酷いの一言。ミステリを装った別のジャンルだったらともかく、登場人物の口を借りて推理の論理性について偉そうに語った挙げ句のコレでは批判されて当たり前。しかも探偵役の推理ターンでは「これは推理ではなく憶測」と保険をかける始末。あのなぁ…。(この酷さが天然なのかツッコミ待ちなのかがよく分からないが)

ワタクシはラノベというものをほとんど読まないのだが、この作者がラノベの影響下にあるのは分かる。問題は、ラノベやミステリの表層だけパクって本質を分かって無い感じが漂うこと。一大ジャンルを築いたラノベというものがこんなに安っぽいはずがないと思う。
例えば主人公の言動はネットのまとめサイトのコメント欄を見ているようで、多数によって形成されるネット人格と言えるものを個人に集約させたのであろう薄っぺらさが酷い。全方位に批判的かつ短絡的で、過去の悲劇を盾に正当化を図るなど幼稚すぎて読むに耐えない。

で、当初は作者が読者層に合わせて文章のレベルを下げているのかと思っていたが、どうもコレが天然らしい。それが本当に悲しい。

本格ミステリ作家をこころざしながら挫折したとき、かつてはユーモアミステリに逃げる作家が殆どだった。この作者は自覚してかどうか分からないが、自分だけが気づいていると勘違いしているメタ的テーマに逃げ、ミステリ部分は言い訳をしながら先人たちの遺産を劣化コピーして平然としている。若い作家に期待したのだが非常に苦い経験になった。

No.1 5点 名探偵ジャパン 2014/11/20 17:50
まさかのシリーズ化。
主人公は新世代探偵の蜜柑花子に。

ベテラン推理作家が自作に登場させた建築物をそのまま作った「密室館」語り手を始め、蜜柑ら数名がその館に集められる。そこでメンバーらは推理作家の企てる恐ろしい計画を聞かされるのだが……

同じようなテーマで二作続けて書くとは思わなかった。
作中で「現実(この小説の中の現実)にはミステリに出てくるような凄いトリックを使った事件などありえない」と再三語られているが、それを言ったらもうこのシリーズで「凄いトリック」を出せなくなってしまうよ。まさかそのため(作者がトリックを作れないこと)の言い訳なのかと勘ぐってしまう。
事実、本作に出てくるトリックは、そう驚かされるものではなかった。
蜜柑自身にも前作ほどの魅力を感じられなかったし、いまいち萌えなかった。
ラストからするとこのシリーズは続くようだが、次こそは「名探偵の業」みたいなテーマから離れるべきではないだろうか。せっかくの蜜柑花子というキャラクターが、これでは持ち腐れてしまう。名探偵は自らの業よりも、謎や怪奇と戦うべきなのだ。


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市川哲也
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