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パメルさん
平均点: 6.14点 書評数: 572件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.212 8点 北の夕鶴2/3の殺人- 島田荘司 2018/06/29 13:50
濃い霧、鎧武者の亡霊、夜泣き石、心霊写真・・・伝説などを事件に絡ませて、胡散臭い雰囲気を漂わせながら、ストーリーは進み惹きつけられる。(雰囲気はとても好み)
事件の謎を解けば、摩訶不思議な現象の謎も解けるという構図になっている。犯人には目星がつき、フーダニットとしての楽しみは味わえないが、ハウダニットとして独創的で豪快なトリックが味わえる。(バカトリックですが)また、吉敷刑事の人間味あふれる魅力が存分に出ていて嬉しい。
建物を上から見た図から、トリックが何となく想像できたが、実際はそれを遥か上を超えていた。トリックが物理的に可能と証明できれば、9点いや10点でもいいです。

No.211 7点 硝子のハンマー- 貴志祐介 2018/06/21 01:12
この作者は、代表作の「黒い家」・「クリムゾンの迷宮」などホラー作家のイメージがある。しかし、この作品はガチガチの本格もの。(詳細な平面図も嬉しい)
暗証番号が必要なエレベーターに監視カメラ、非常階段はオートロック、窓は防弾ガラスと最新鋭の厳重なセキュリティーシステムの中での密室殺人。
推理すればするほど、不可能さが強まっていく。建物の構造を踏まえ、豊富な防犯知識で、ありとあらゆる仮説を立て検討されていく討論が読みどころでしょう。
前例のない斬新なトリックは素晴らしいが、専門知識が無いと推理が難しい点が残念。

No.210 5点 水族館の殺人- 青崎有吾 2018/06/10 01:08
何気ない小道具や手掛かりから、消去法で徐々に犯人を絞り込んでいき、犯人を特定する丁寧な推理は読み応えあり。アリバイ崩しがメインではあるが、ロジック好きには楽しめると思います。
しかし、不満な点も多い。動機には全く納得できないし、違った方法で解決できたはず。さらに、序盤の卓球大会の描写はなんだったの?何かしら事件に絡んでくるのかと思いながら、読み進めていったが、全く関係ないなんて酷すぎる。探偵役のキャラクターも、変なノリだしどうも気に入らない。

No.209 7点 三毛猫ホームズの推理- 赤川次郎 2018/05/31 01:16
数多くの作品を輩出している量産型作家でありながら、初期作品は良作が多いというのは、誰もが認めるところだと思う。
この作品も、猫が事件の手掛かりを主人公に導くなど、ユーモアの中に多くの謎を絡ませての伏線回収はお見事で、スケールの大きな独創的な密室トリックに驚かされる。
また、主人公の恋の行方や妹の不審な行動に疑心暗鬼になるなど、人間ドラマとしても読み応えがある。
世評では「マリオネットの罠」の方が評価が高いようだが、個人的にはこちらの方が好み。

No.208 8点 聯愁殺- 西澤保彦 2018/05/23 01:12
ミステリ作家・私立探偵・犯罪心理学者が集まる推理集団「恋謎会」が、連続無差別殺人の唯一の生き残りの梢絵をゲストに呼び推理合戦をする。
ほぼ全編に渡り、推理合戦が繰り広げられるが、飽きることは無かった。
内容的には古典的な多重解決ものですが、それだけでは終わらない。正統派と思わせておいて、最後には衝撃的などんでん返しが待っている。
大胆なミスディレクションと構図の技巧が光る作品。
再読をおすすめしたい作品のひとつで、初読時とは違った印象を持つと思います。

No.207 6点 十三番目の陪審員- 芦辺拓 2018/05/15 01:15
この作品は、裁判員制度が施工される十年以上前、「もし日本に陪審員制度が存在したら・・・」という発想から生まれたらしい。
弁護側と検察側の今まで経験の無い陪審員制度に四苦八苦しながら、心理的な駆け引きが繰り広げられ、惹きつけられる。
そして、結審により驚愕の真実が明らかになる。法廷ミステリでありながら、本格ミステリとしても楽しめる、一粒で二度おいしい・・・そんな作品。(古っ)

No.206 6点 法月綸太郎の新冒険- 法月綸太郎 2018/05/09 01:15
パズル・ロジックを重きをおいた作品ばかりで、さすが短編の名手と言われているだけあって切れ味が鋭い。
その中でも一つの事件からガラリと反転する「背信の交点」と語りの仕掛けとトリックが噛み合った「身投げ女のブルース」が好み。
ただ、登場人物に魅力が欠ける点と、ストーリー自体が地味な作品が多いため、パズル好き以外にはお勧めできない。

No.205 7点 マツリカ・マトリョシカ- 相沢沙呼 2018/05/02 15:11
シリーズものと知らず読んでしまった。前2作を読んでから読めば、さらに楽しめたと思う。
過去の密室事件と現在の密室事件の謎を高校生同士が推理合戦する学園ミステリですが、殺人が起きているわけではない。殺トルソーという変わった設定。
二転三転する多重解決ものとしての面白さに、切れ味鋭いロジックから明かされるトリックと犯人の暴き方も実に鮮やか。犯人の動機も青春してていい感じ。青春ミステリが好きな方は、十分楽しめると思います。
余談ですが、「トルソー」って聞き慣れない言葉だったので調べてみましたが、服をディスプレイするときに使う、頭・腕・脚がないマネキンみたいなものらしいです。

No.204 5点 火の虚像- 笹沢左保 2018/04/25 01:14
コンパクトにまとめられた長編ながら、何気ない中に伏線を張り緻密に考えられた構成は好印象。
ただ、登場人物は少ない事もありフーダニットの楽しさは味わえないし、ハウダニットにしても・・・。自殺に見せかけた2つの殺人はどのように行われたのかという謎が、被害者の心理がもたらす影響と犯人の腹づもりが噛み合いトリックが成立するのだが、この真相はかなり実現性に乏しく好みではない。最後に明かされるもう一つの真実は、ひねりが効いていて良かったと思う分残念。

No.203 6点 ひとり芝居- 佐野洋 2018/04/18 01:28
212ページという短めの長編ですが、コンパクトながら複雑かつ意味ありげなことが重なるなど、構成全体が真犯人を隠すための仕掛けとして機能しており、フーダニットとして十分楽しめる。
緻密に計算された伏線や、登場人物ひとりひとりの心理描写も丁寧で好感が持てる。
ただ関係者同士が疑心暗鬼になっていく過程で、詰めの甘さを感じた点に不満が残る。

No.202 3点 浮気妻は名探偵- 梶龍雄 2018/04/09 12:57
推理小説に少しだけ官能小説風の味付けをした感じの8編からなる連作短編集。
推理小説としてこういう点に不満があるとか指摘する以前に、小説としてストーリーが面白くない。これはもう致命的。
夫の単身赴任で暇を持て余している主人公の女性が、刑事と浮気をしながら、様々な事件に顔を出し推理するという、不道徳にして愉快な設定。面白いと思ったのは、この設定だけだった。
余談ですが、この作者の一部の作品はとても高い価格で取引されている。以前、ヤフオクで「龍神池の小さな死体」が8000円で落札されたのを見たことがある。amazonでは、今現在9999円で出品されている。この作品は読んでみたいのだが、この価格では手が出ないし、かといって自分の住んでいる周辺地域では、図書館にも置いていないのが残念だ。復刊を望む作品の一つです。

No.201 6点 殉教カテリナ車輪- 飛鳥部勝則 2018/04/04 01:08
二重密室殺人の真相が、謎の自殺を遂げた無名の画家によって描かれた2枚の絵画に込められていたのかと、絵画から事件の背景を読み解いていこう(図像解消学)という着手方法が新鮮。また、この変態的な絵が作者自身が描いていたというから驚き。
推理合戦も楽しいし、読者を真相から遠ざけるミスリードも巧妙でお見事。ただ、密室トリックは偶然の産物と思われる点が残念。

No.200 7点 ジェリーフィッシュは凍らない- 市川憂人 2018/03/27 22:18
21世紀の「そして誰もいなくなった」という謳い文句に惹かれて読んでみました。
登場人物は外国人ばかり(カタカナ名前は覚えるのが苦手)だし、物理学、化学など理系ミステリなのかと思わせるような記述があり、読むのに苦労するかなと思ったが、専門的な知識は必要なかったため、楽しむ事が出来ました。
誰が犯人なのかと仮説を立てるが、誰を当てはめてみても矛盾が出てくるし、外部の人間かというとこれまた考えにくい。捜査を進めれば進めるほど、不可解になっていくところが読みどころでしょう。
大胆なトリックが解明した時の衝撃的な真相はミステリとして理想的だし、トリック自体も洗練されており、説得力もあった。
フーダニット、ハウダニットともに十分楽しめた。装丁も幻想的で美しい。

No.199 6点 闇に香る嘘- 下村敦史 2018/03/20 22:24
全盲の主人公からの視点で描かれ、ほとんどの人の言動に疑心暗鬼になり、揺れ動く心理状態とスリリングな展開を楽しめる。また、細かく散りばめた伏線を回収していく過程も素晴らしい。(こんなことまで伏線だったのかというのもありました)
視覚障碍者の苦労や中国残留孤児の問題も考えさせられたし、感動的な場面もあった。
ただ、人物造形が今一つだし謎に記憶障害を絡めてくる点は不満が残る。

No.198 6点 体育館の殺人- 青崎有吾 2018/03/20 22:24
平成のクイーンと呼ばれるだけあり、現場に残された物証から次々とロジカルに推理し、消去法で犯人を特定する過程は、パズラー好きには十分楽しめると思います。
探偵役が、アニメオタクでノリが軽いためラノベ風な作品に仕上がっている点は好みが分かれるでしょう。(何を言っているのかわからない時があった)
巻末の選評で北村薫氏が、あることを指摘し、可能性をひとつにあっさりと切り捨てるのは乱暴だと述べていたが、この点は同感でした。

No.197 6点 マリオネットの罠- 赤川次郎 2018/03/07 14:03
ユーモアミステリで有名な作者だが、この作品はそのような特徴は皆無で、ダークな雰囲気を存分に味わうことが出来る。サスペンス調に物語は進行しスピード感があり、意外性のある展開、そして終盤のどんでん返しと楽しませてくれる。
ただし、ある記述にアンフェアさを感じるところが残念。

No.196 6点 倒錯の死角−201号室の女−- 折原一 2018/03/01 14:43
「騙されないぞ」と気合を入れて読んでみた。
まず、登場人物が奇人変人ばかりで魅力的。三人の視点で書かれた日記、独白による構成でサスペンス調にストーリーは展開し、最後まで飽きさせないし、真相に辿り着かせない点は見事。ある人物が語ったことに違和感を覚えるが、全体に仕掛けられたトリックは、見えそうで見えてこず最終的には騙されてしまった。
最後に明かされる叙述トリックの真相(オチ)は、人それぞれ意見があると思うが個人的には納得できない。
最後まで楽しませてくれた分、落胆も大きい。

No.195 6点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2018/02/16 00:59
読者への挑戦を掲げた遊び心たっぷりの叙述トリック短編集。
アンフェアのように思わせておいて、地の文には虚偽の記述は無くフェアに徹している点は好印象。
ただし、「フェラーリは見ていた」は真相は完全に推理不可能だしオチも今一つ。
表題作では「十角館の殺人」でもおなじみの海外の有名作家が登場してくるし、「伊園家の崩壊」では、あの陽気な家族で有名な漫画がパロディ化されホラー色たっぷりで楽しませてくれる。

No.194 7点 時鐘館の殺人- 今邑彩 2018/02/10 00:58
6編からなる短編集。
ガチガチの本格もの、サスペンス、ホラー、SFと様々なジャンルが楽しめる。
展開も二転三転したり、切れ味抜群揃いなのも嬉しい。
冒頭作品は山口雅也氏の、表題作は綾辻行人氏の作品を意識して書かれたのだろうが、単なるパロディに終わっておらず、作者らしい雰囲気に仕上げ緻密なパズルとして組まれており読み応えがあります。

No.193 7点 私という名の変奏曲- 連城三紀彦 2018/02/05 13:22
七人の人間が、自分が犯人と確信しているという状況とはどういう事か?少し考えれば、思いついてしまうトリックだし綱渡り的で感心できないが、文章が流麗なため物語に引き込まれてしまう。
奇妙な状況の裏には、何か途方もない仕掛けがあるのだろうと読み進めるが全体像がなかなか見えてこないような描き方も上手い。
結局、加害者は誰なのかは、最後まで明かされず、それでいて謎があり解決があるというアクロバティックな趣向が巧妙。

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パメルさん
ひとこと
7点以上をつけた作品は、ほとんど差はありません。再読すればガラリと順位が変わるかもしれません。
好きな作家
岡嶋二人 東野圭吾 
採点傾向
平均点: 6.14点   採点数: 572件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(30)
岡嶋二人(20)
有栖川有栖(19)
綾辻行人(18)
米澤穂信(16)
歌野晶午(15)
西澤保彦(15)
松本清張(14)
法月綸太郎(14)
横山秀夫(14)