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風桜青紫さん
平均点: 5.62点 書評数: 290件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.25 8点 超・殺人事件―推理作家の苦悩- 東野圭吾 2016/01/18 03:19
さすが売れない時代が長続きした東野圭吾だけあって、愚痴を言わせれば一流。しかしまあ、『名探偵の掟』のときに比べてユーモア感覚にはさらに研きがかかっており、どの作品も笑いながら読ませてもらった。『超税金対策殺人事件』の強引な結末がとにかく酷いwww。しかしまあ、東野圭吾は元売れない人(いまは売れる人)だけあって作品の本質を見てくれない読者にも批判の目を向ける。『超理系殺人事件』は、『すべてがFになる』のごとき荒唐無稽な話を読んで「頭が良くなった気がする」などとのたまうトンチキな読者たちをよく示しているし、『超長編殺人事件』は、『模倣犯』や『レディ・ジョーカー』やどこかの弁当箱のような、物語に不要な描写をだらだら繋げた作品を大作だと言ってありがたがる読者を痛烈に皮肉っている。結局そんな批判の行き着く先は『超読書機械殺人事件』で、東野圭吾からすれば、もはや読者たちが何をやりたいのかわからなくなってくるわけだ。推理小説の世界には、ジャンプの打ちきり漫画より売れてないくせして人様の作品を偉そうに「ゴミである」といい放つような「大御所作家」もいるわけだが、それに比べれば、こんな風に文章でうっぷんを晴らしながらもそれをエンタメ小説として昇華させている東野圭吾は実に書くことに真摯な作家だといえるだろう。

No.24 6点 名探偵の掟- 東野圭吾 2016/01/18 02:46
発想は文句なしの面白さで、『花のOL湯けむり温泉殺人事件』と『トリックの正体』には笑わせてもらった。しかしまあ、ところどころ登場人物の文句が風刺や皮肉というより、単なる文句になってしまっているのが残念なところ。『ある閉ざされた雪の山荘』でも思ったが、登場人物に作者の言葉を安直に言わせてしまっては、必死さが伝わってきて読む側がひいてしまう。それにしても、売れない作家の叫びのような作品で注目を集めた作者が、いまや売り上げナンバーワンのミステリ作家になってしまおうとは誰が予測しただろう(笑)。

No.23 6点 真夏の方程式- 東野圭吾 2016/01/18 02:35
映画版『砂の器』を意識したであろう、なんともお涙頂戴な物語。しかし『砂の器』の「オラそんな人知らねええええっ!」が作中人物の魂の叫びであったことに対して、作中の「このような方は知りません……」は単なる模倣の域を出ていないのが興ざめで残念なところ。そもそも不義の子どもを作った話に感動もクソもあるかというところだが……。しかしまあ、ガリレオと少年のなんだか心温まる交流によってこの作品は十分楽しめるものになっている。海洋開発に妙な理解を見せたり、大人の余裕というか、なんか今回の彼はかっこいい。これまで謎解き装置の一部な感じがしていた湯川だけども、今回はそのキャラクター性を存分に発揮してくれたといえるだろう。

No.22 6点 聖女の救済- 東野圭吾 2016/01/18 02:22
単純ながら強烈なインパクトを残すトリックはさすが東野圭吾というべきか。人間描写を作品の面白味にする一方で、そこから意外性をもたらす結末に着地させてくれる。「この人がこんなことを!?」という驚きは、トリックの骨格があるだけは演出できまい。綾音のいかにもな計算高さに終始ワクワク。東野作品って犯人サイドも頑張りが伝わってくるので、なんとなく応援したくなってしまう。草薙、胸を熱くさせんなよwww。

No.21 5点 予知夢- 東野圭吾 2016/01/18 01:31
テニスの王子様的な面白トリックを連発していた前作に比べて、今回は話の作りがミステリ寄りになった。「夢想る」や「霊視る」などは謎の不可解ぶりがなかなかいいんだが、その代わり真相はやや地味なところに着地してしまった感がある。「絞殺る」も「予知る」も絵的になんだか地味である。話の質は良くなったけども、前作のハッスルしたノリが好きだっただけに寂しい。その点、「騒霊ぐ」は終始ドドスコしていて気にいった。

No.20 5点 探偵ガリレオ- 東野圭吾 2016/01/18 01:20
初っぱなから「燃える」の真相に笑わせてもらった。想像するとものすごい光景だが、東野圭吾もこのように気にくわない不良を焼きつくしたい気分だったんだろうか。「爆ぜる」の「突然の死!」とでも言うべきとんでもない死に様も同様。科学トリックの面白味というのは、なんかバトル漫画の必殺技に通じるものを感じる。湯川も草薙も(この時点では)あくの強いキャラクターではないし、ライトな面白トリック短編集としてさくさく読めた。

No.19 7点 容疑者Xの献身- 東野圭吾 2016/01/18 01:05
パーツひとつひとつは古典的なものでも、演出によっては傑作足りうる好例。他人の命をゴミのように扱っておいて愛もクソもあるかという話だが、そのような「いい子ちゃん」の思考の裏をかいて、ポンとトリックを仕掛けていくところに東野圭吾の嗅覚の鋭さがうかがえる。これを読んでて手放しに「感動した!」だの「純愛!」なんて言う人間はちょっとどうかと思うけども、ミステリ小説としては確かに切れ味のよい一品だ。どっかの人工美が好きなハゲも、「本ミス1位としてふさわしくない〜」なんて騒いでる暇があったら、こういう作品に挑戦してはいかがだろうか(仮にも手塚治虫のファンなんだから、プロットでインパクトを与える術を学ぶべきである)。

No.18 7点 白夜行- 東野圭吾 2016/01/18 00:54
『砂の器』と『白昼の死角』を足し合わせたような作品だが、完成度はこの二作品を上回っているのではないかと感じた。桐原と雪穂の関係を当人たちの口から語らせないことで、むしろその結び付きが強固になっている。簡単に口で表せるものじゃないからこそ品位があるのよね。桐原も雪穂も作品が進むにつれどんどんグゥの音もでないような悪党になっていくんだけど、二人の成長を幼少期から見れている分、「なんて悪いやつなんだ!」ってな腹立しさより、「どうしてあなたは変わってしまったの……」というような物悲しさが生まれてくる。理想的な悪党小説の形を東野圭吾は絶妙なアイデア力で成し遂げたといえるでしょう。不感症(?)の桐原が死体に出しちゃってるあたり、桐原→雪穂は間違いないのだろうけど、逆はどうなんだろうか(笑)。

No.17 5点 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 2016/01/15 03:45
『ゼロの焦点』と『砂の器』をごちゃ混ぜにした感じ。いいちこさんのおっしゃる通り、既読感が強かったので、どうも作品に乗れなかった。父と娘のやりとりについてもそう上手いとは思えないんだよなあ。『赤い指』は、犯人親子と加賀さん親子にいい対比が生まれてて、味のある結末が印象に残ったんだけど、今回の犯人親子の人生ってそんな加賀さん自身の人生とだぶってるてわけでもないのよね。たぶん加賀さんママンの人物像が作品の焦点になっているんだろうし、長ったらしい犯人の逃避行(?)も、ラストシーンでの加賀さんママンを印象づけるための手法だったんだろうけど……、うーん、うまく決まらなかったように思える。ババアの凶悪なキャラクターといい、パパンの理不尽な不幸ぶりといいストーリーの道具はそんなに悪くなかったと思うけど、なんか、まあ、鋭さが足りなかったように思えた。まあ、なにはともあれ、加賀さんはお疲れさまでした。

No.16 5点 麒麟の翼- 東野圭吾 2016/01/15 03:33
親と子の葛藤とその解決。東野圭吾がシリーズ最高傑作と太鼓判を押したくなる気持ちはわからないでもないが、そこまで上手く決まった作品だとは思えない。だって事件の解決がなんだか投げやりなんですもの。やっぱ東野圭吾の本領は本格チックなプロットの構成であって、こういう人間模様に焦点を当てた作品を書くとなれば宮部先生とかもっと上手いのがたくさんいるんだよね。まあつまらなくはないんだけど、あまりカタルシスを得られない作品だった。それにしても、加賀さんは水泳の先生を堂々と叱れる身分じゃないよなあ……。

No.15 7点 新参者- 東野圭吾 2016/01/15 03:16
うーむ、上手い。このような日常ミステリの形式でも下町情緒を演出できるのは、東野圭吾の筆力と取材力の高さがあってこそだろう。しかし何よりも目を引くのはストーリーの構成。章が進むごとに、少しずつ被害者の動きを追うことができ、それが各章に妙なリーダビリティを生み出している。それを追う加賀さんのキャラクター性(飄々としたかっこいいおっさん)もまた絶妙で、それが本作をただの「下町を舞台にした短編集」にとどまらない面白さの作品として成立させている。おそらく現時点では東野圭吾のアイデアと技術が惜しみなく発揮された最後の作品。

No.14 6点 赤い指- 東野圭吾 2016/01/15 03:00
ストーリーテラーとしての実力はもはや疑いようもないだろう。社会派ミステリとしては宮部桐野に比べれば随分と踏み込みが浅いようにも思えるが、東野圭吾にとって家庭問題なんていうのはプロットを盛り上げる一部分にしかすぎないのである。それにしてもダメな親子だことで……。しかしまあ、加賀さんの熱いキャラクターが定着したという点で重要な一作。露骨なお涙頂戴なんだが、余韻を残すラストシーンもなかなかいい。やっぱこのシリーズは加賀さんの成長物語なのよ。

No.13 6点 嘘をもうひとつだけ- 東野圭吾 2016/01/15 02:53
トリックは小粒ではあるものの、なかなか楽しめる短編集。ワンアイデアの短編書かせれば、演出力もあって、島田荘司や有栖川有栖より質がいいんじゃないだろうかと思えてくる。その代わり島田や有栖川のようなインパクトのある仕掛けの短編はなく、適度にうまい作品が固まっていた印象。話し運びの上手さと妙にデカダンな後味が余韻を残す『冷たい灼熱』が印象に残った。それにしても『友の助言』に限らずどうも東野圭吾の書く人妻には悪どいのが多い(笑)。東野圭吾にとって別れた奥さんは雪穂のようにでも見えていたのだろうか。加賀さんを結婚させないのもそんなところにあるんじゃないかと妄想してみる……。

No.12 6点 私が彼を殺した- 東野圭吾 2016/01/15 02:41
二番煎じであるから『どちらかが彼女を殺した』のようなインパクトはなかったものの、なかなか充実した内容だった。容疑者三人の妙な後ろ暗さがなんだか面白い。「せまいベットでひとつになった――」というのは東野圭吾の新たな趣味なのかと思ったが、後の作品を見る限りそうでもないようだ。

No.11 7点 悪意- 東野圭吾 2016/01/15 02:35
「アイデアは豊富だがぎこちない」というのが東野圭吾の初期作品に通じる感想だったが、初期のアイデアと『秘密』以後の演出力の高さが組み合われば、このような強力な作品が出来上がるわけである。構造としては単純であるにも関わらず、絶妙な構成によって、トリックがかなりの切れ味になっている。さらにそのトリックによって犯人の顔が見えてくるという仕掛けが見事。加賀さんの過去にも絡んでかなり燃えるラストシーンとなっている。東野圭吾の技術がふんだんに用いられた充実した一冊。

No.10 7点 どちらかが彼女を殺した- 東野圭吾 2016/01/15 02:23
なかなかスリリングな展開で一気に展開していくストーリーに引き付けられた。倒叙ミステリとしてもなかなかよくできており、加賀さんの恐ろしさには舌を巻くばかり。このあたりになると文章もずいぶん平易で、話し運びも上手いので、リーダビリティも高い。しかしなんといってもあのとんでもないオチである。ネタバレ(?)をされている人も多いようだが、あのように落としてくるとは予想外だった。犯人当てについてはなんだかしょうもないんだけども、初見のインパクトはなかなかのものだ。東野圭吾の技術の鍛練が色濃くでた作品といえるだろう。

No.9 6点 眠りの森- 東野圭吾 2016/01/15 02:12
『悪意』や『新参者』での加賀さんの名探偵ぶりを目にしている人は、気のいい兄ちゃんである『眠りの森』の加賀くんに違和感覚えてしまうだろうが、いやいや、加賀恭一郎は成長していくタイプの探偵なのだ。本作での試練的な何かを乗り越えてこそ加賀恭一郎は東野圭吾を代表する名探偵となりえたのである。トリックもまだまだがぎこちなさが残っているが、なかなか野心的な仕掛けで、どこか余韻を残すラストとうまくからみあっている。ストーリー作りに関しても『卒業』のころから少しずつ進歩していっているのではないかと思えた。加賀恭一郎及び東野圭吾の成長物語として評価。

No.8 8点 ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 2016/01/15 01:56
かなり衝撃的な作品だった。クイーンの『十日間の不思議』を読んだ頃から、神の視点による描写には神経質になっていたし、(後の作品だけど)『白夜行』で桐原が偽名をなのるときの記述にも不満を持っていたので、こんな落とし方をしてくるとは完全に予想外だったわけである。『十字屋敷のピエロ』ではうまく決まってないように見えたメタトリックがこんなところで鋭い切れ味を持つとは。作品自体はなんともぎこちない出来だが、アイデアの鋭さがそれを埋め合わせた結果といえるだろう。『仮面山荘殺人事件』に続き、クローズドサークルがトリックを支える構成がよく出来ている。しつこい生理ネタや貴子の乳など、せこいスケベ描写も初期の名残として楽しめた。東野圭吾の本格ミステリではこれがベスト。

No.7 6点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2016/01/15 01:42
このあたりから東野圭吾はなかなかお話が上手くなっていったように思える。似たような例が多く見られるトリックではあるものの、それを行う必然性がクローズドサークルの成立にからんでいるという構成が見事。このクローズドサークルがまた変化球でなかなかスリルがあり、エンタメ小説としての面白さに付与している。東野圭吾のなかではマイナー作品であるが、なかなかの掘り出し物といえるでしょう。

No.6 5点 回廊亭の殺人- 東野圭吾 2016/01/15 01:35
メイントリックは悪くないとは思うものの見せかたがぎこちなく、小粒な感じが否めない。叙述トリックに関してもやや切れ味がにぶい。くどいような肩透かし感をかかえたまま読み終える。ブスがばあさんに化けるという妙なスリルがあるシュールテイストを楽しむ作品だろう。美人にさりげなくおもらしさせるあたり、東野のなんともチープなスケベぶりがうかがえる。

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