皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
風桜青紫さん |
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平均点: 5.62点 | 書評数: 290件 |
No.30 | 7点 | 冷たい校舎の時は止まる- 辻村深月 | 2015/12/19 23:23 |
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辻村さんは若手でもトップクラスの実力だと思ってるけど、良くも悪くもこれはデビュー作。青春ストーリーぶりが実にスイーツ的というか、うさん臭い。作者と同じ名前の主人公で逆ハーレムをつくっちまうのはどうよ。それでも、ただの妄想スイーツ小説で終わらないと思えるのは、現実に根差した悪玉キャラクターの存在ゆえか。ハルちゃんとか、昭彦の友だちを自殺させた奴とか、「こういう奴おるわー」となる。しかも悪玉だからときって完全に悪い人間でもない(ハルちゃん、清水さん擁護しちゃうし)。だから登場人物がいらついて、そこから、なにやら話がふくらんでいく。辻村さんはこのタイプの話運びが実に上手。人物の視点ごとにけっこうテイストが変わってくるから、宮部みたいに単調な引き延ばしにはならず、見ていて楽しい(それでも無駄に厚いというあるようだが、まあ、そこは趣味の問題でしょう)。いろいろ問題点はあるものの、それ覆すほどのパワーも持った作品。でもやっぱスイーツだな(笑)。 |
No.29 | 6点 | 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人- 倉阪鬼一郎 | 2015/12/19 21:58 |
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そもそも小説としての面白さを求めるなら、本格ミステリなんてものは最初から読まないのが精神衛生上よろしいんだ。作者が下手に「人間を書く」などとくだらんことを意識した結果、ミステリとしても文学としてもどうしようもない作品が生まれてくる。そんな中、遊び心に全力をかけようっていう倉阪鬼一郎の創作姿勢は見事だ。マグロだ。黒人だ。最高だ。この作品、倉阪鬼一郎のバカミスでも随一の執拗さとインパクト。読者に語りかけるような神の視点といい、冒頭の大袈裟さをうまく反転させた脱力感といい、オタク話の飯のタネには最適の一冊。 |
No.28 | 3点 | 波上館の犯罪- 倉阪鬼一郎 | 2015/12/19 21:50 |
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一ページ目でトリックがわかるというある意味すごい小説。内容は実につまらないが、ここまでネタに全力をかける倉阪鬼一郎の作家魂に拍手を贈りたい。でもやっぱり、この内容はどうにかならなかったんだろうか。美波、完全に阿呆の子じゃないか! |
No.27 | 1点 | 死亡フラグが立ちました! - 七尾与史 | 2015/12/19 21:39 |
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トリックは『遊☆戯☆王』でも出てくるレベルの実にしょうもないもの。しょうもなさが売りの作品はいくらでもあるが、これはそれ以上に退屈すぎて、なんか、あくびが出てしまう。小学生のころなら、ラスト近くのゴミのごとく死んでいく人間たちの有り様に笑えたかもしれないけど、ぼくは小学生ではないので、うとうとしてしまった。キャラも、設定だけはやけに大袈裟だけど、動きが月並みで退屈。ピーナッツクリームを妙に食べたくなったこと以外に特記するところはないし、なんていうか、時間の無駄になってしまった。知人(この作品を薦めてきたせいで友人と思わなくなった)は「続編がさらにつまらない(エビスビール片手に)」と言っているので、この一作でおさらばしようと思う。米澤と違って文学賞をとってるわけでもないし。こんな作品でもタイトルのインパクトがありゃベストセラーなんだよなあ……。 |
No.26 | 4点 | 眠り姫とバンパイア- 我孫子武丸 | 2015/12/19 21:28 |
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ロリコン小説。……ってほどでもないか。軽く読めるアットホームなライトミステリ。結末は、意外性を求めた結果の着地点なんだけど、素直に納得できかねる。優希のおとうさんLOVEもいまいち伝わってこない。あいつ、ダメ親父じゃん。この年頃の子どもにもなれば、親に対して無条件にLOVEってわけにもいかんだろうし、ページ数的にきつかったかも知れんが、もっと読者がおとうさん好きになれるようなエピソードがほしかったかな。そこまでつまらんわけでもないけど、面白いわけでもないので、4点。 |
No.25 | 7点 | 殺戮にいたる病- 我孫子武丸 | 2015/12/19 21:17 |
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ラストは確かに驚くんだが、だからと言って、「だまされたー」と痛快な気分に浸れたわけでもなかった。真相が明らかになったところで、頭で描いていた絵の全体図が変わらなかったせいかも。どちらかといえば、違和感がすーっと解消されるので、「そっかぁ……」というような読後感。あと、蒲生稔による殺人模様が面白かった。わりと読んでいてゾクゾクする。描写が上手いというよりは、作者の楽しげな筆運びが伝わってくる感じ。我孫子らしい作品かと問われれば微妙だけど、まあ、完成度は随一だと思う。 |
No.24 | 6点 | 弥勒の掌- 我孫子武丸 | 2015/12/19 21:01 |
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パーツひとつひとつを見ていけば実にベタな作品。しかしまあ、二人の視点人物の背景がつながる瞬間の苦々しい痛快さや、ラストシーンのやっつけっぷりは嫌いじゃない。盛大なブラックジョーク小説とでも形容するのがいいかも。実に我孫子らしくてよろしい。 |
No.23 | 5点 | 人形はライブハウスで推理する- 我孫子武丸 | 2015/12/19 20:44 |
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シリーズ一作目の『人形はこたつで推理する』と同じく短編集。一作一作トリックの切れ味がなかなか良く、人形シリーズではこれがベスト。『ママは空に消える』や『ゲーム好きの死体』は難易度が高いわけでもないけど、我孫子の目の付け所の鋭さを感じさせられる。なるほど、そう来るかって感じで。ミステリとしては『腹話術志願』が一番よくまとまってたけど、インパクトではこの二作品。朝永くんとおむつは嫌いじゃないけど、二人の空気読めないイチャイチャ&ノロケには興ざめ。やっぱり我孫子にはとは趣味が合わないのかも……。続編出たらなんやかんやで読むだろうけどね。 |
No.22 | 5点 | 人形は眠れない- 我孫子武丸 | 2015/12/19 20:31 |
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軽いものを読みたいときにいい。……以外の言葉はとくにないかな。科学トリックだけは妙に印象に残るけど、なんせ事件に巻き込まれてる側の人間のありかたがまったく描かれないから、いまいち事件に興味がもてない。まあ、気分転換には悪くないライトミステリってところ。恋愛小説っぽいみたいな意見もあるけど、大して良くできた人間模様でもないと思う。こち亀にたまに出てくる恋愛話ぐらいの感覚で読むといいかもしれない。 |
No.21 | 2点 | 人形は遠足で推理する- 我孫子武丸 | 2015/12/19 20:20 |
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いい人なのかただのチンピラなのか安定しないバスジャック犯(たぶん両方)に終始イライラさせれた。言ってしまえばバスジャックをやったり、人を殺そうとしたりする人間は大いに人格に問題があるので、共感しようといわれても無理な話。まりおをバスから投げ捨てやがって。そのバスジャック犯に無理に共感しようと四苦八苦するおむつにもイライラ。途中の謎解きも我孫子にしては薄味だし、結末もあまり後味がいいものじゃない。こんなんダメだ! |
No.20 | 5点 | 人形はこたつで推理する- 我孫子武丸 | 2015/12/19 20:14 |
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トリックは『人形はテントで推理する』がよく出来ていて、あとは小粒な感じ。でも、読み心地がライトだし、謎解きもクイズをやっている感覚で挑めたから、十分に楽しめた。これを一般受けさせようと思って書いてた我孫子のセンスにはちょっと問題があるけど……。ライト調な本格ミステリといったところか。 |
No.19 | 3点 | ディプロトドンティア・マクロプス- 我孫子武丸 | 2015/12/19 20:11 |
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我孫子武丸の学生っぽいテイストは好きなんだけど、それはアイデアに関してのことであって、キャラ立てや作風のことじゃないのよね。ただ馬鹿馬鹿しいだけじゃ面白くない。書いてて楽しいんだろうなってイキイキさが伝わる(獣医とかバイトの子とかいいキャラしてるし)のはいいけど、ハチャメチャな設定で引きつけようって魂胆ではそこらの三流ライトノベルと同じになっちゃう。我孫子はちょっと米澤から小説の書き方を教わるべきじゃないかな、とすら思えてしまった。 |
No.18 | 6点 | 探偵映画- 我孫子武丸 | 2015/12/19 19:59 |
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アイデアの面白さに関しては文句なし。途中の「犯人になりたがる推理合戦」もドタバタしていて笑えたし、それぞれの提出する推理もよく出来てる。『毒入りチョコレート事件』のオマージュと称してくだらんパクりの詰め合わせをやらかしていた米澤穂信の某作品を圧倒してるのは確か。けどまあ、アイデアが良くても、登場人物のやりとりにさして魅力があるわけでもないので、中盤は妙にぐだぐたして読み進めづらかった。アイデアが枯渇したあと我孫子が失速した理由もたぶんここ。できりゃゲームにはまってる間にそのあたりを磨いてほしかったかな。 |
No.17 | 4点 | メビウスの殺人- 我孫子武丸 | 2015/12/19 19:42 |
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辻村深月にアイデアを持ってかれてしまったあたり、着想は悪くないと思う。でも、結末は前二作ほどインパクトがないし、途中の謎解きもしょうもなくて首を傾げたくなるんだよね。我孫子はある種のしょうもなさがウリとは思うが、それにしたってもう少し驚きが欲しかった。慎二、探偵役だけどいまいちキャラ薄いよね(兄と妹と比べても)。そういうところも学生的っちゃ学生的なんだけど。 |
No.16 | 6点 | 0の殺人- 我孫子武丸 | 2015/12/19 19:38 |
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文章は稚拙でストーリーは手作り感全開。でもまあ、この作品はむしろそこが味になっている。なんていうか作者の遊び心満載で、実に新本格らしい作品。犯人候補が次々と姿を消していくから、「どうなってんだこれ?」って先行きが気になったし、そこから飛び出す苦笑いが出るオチもいい。小説を形作ろうと変に気合いを入れるより、自分のアイデアを見せつけてやりたいって思いで書いたほうが良作ミステリを生み出すって典型じゃないかと。 |
No.15 | 5点 | 8の殺人- 我孫子武丸 | 2015/12/19 17:00 |
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軽いタッチの本格小説。カーみたいなメイントリック、どうも好きになれないんだよね。我孫子はカー好きみたいだから、たぶん趣味の違いだろうけど。どちらかといえば、軽いタッチのやや寒くてほんわかするギャグ(犯人指摘シーンの緊張感のなさとか)がいい味出してて好感が持てた。不遇のあまりか単なる頑固親父と化してしまった現在の我孫子には悲しくなるばかり。 |
No.14 | 6点 | 秋期限定栗きんとん事件- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:59 |
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最後のひとことで妙に盛り上がっているかたもいるっぽいけど、ゆきの「小動物っぽいけど、実は狼みたいに凶暴、でも処女」みたいな胡散臭い設定にはほとほと嫌気がさしてるので、「あほ臭い」という印象しかなかった。逆にファッション彼女を作ったジョーゴロは今回好感度がずいぶん増した。馬鹿馬鹿しくても彼女ラブはやりたくなるよね。くだらんことを大真面目に推理する系でいえば、『あたたかな冬』はなかなかの出来。『おいしいココアの作り方』や『シャルロットだけはぼくのもの』よりか出来がいいような気がするけど、はて、どうして短編オールタイムベスト100みたいな企画だとこの二作品に押されちゃうのかな(もとより米澤の作品がオールタイムベストレベルかはかなりの疑問なんだけど)。 |
No.13 | 7点 | 折れた竜骨- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:43 |
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ファンタジーものとして面白いという意見が多いけど、世界観といい、ストーリーといい、ものっそいベタだし、登場人物たちも月並みなキャラ設定なので序盤は読んでいて退屈だった(フィッツジョン殿とかコンラートみたいないかにもって感じのキャラは嫌いじゃなかったけど)。最後の犯人当ては倉知淳から持ってきた臭いがぷんぷんするが、まあ、カッチリした犯人当てになってるし、嫌いじゃない。犯人当ての道具をファンタジー世界の道具立てにするってのも、短絡的といえば短絡的だけど、違和感なく話に溶け込んでるから鼻につかないし。米澤の長編では今のところこれがベスト。 |
No.12 | 6点 | インシテミル- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:34 |
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嫌いじゃない。子どもや阿呆に人気のデスゲームものだが、そのガジェットを利用して謎解きの骨格を組み立てるって発想が良かった。デスゲームものとしては王道……っていうかベタで、そこまで楽しめるわけでもないけど、道具仕立ての上手さにはなかなか感心させられる。結末の盛り上がりも良し。しかしヒロインらしき女には終始腹立った。こいつにはトイレにいるところを、おはしで襲われるみたいな展開が必要だった。 |
No.11 | 7点 | 儚い羊たちの祝宴- 米澤穂信 | 2015/12/19 09:24 |
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宣伝文句のように「最後の一行に驚かされる!」というのは大してなかった。『玉野五十鈴の誉れ』など、いかにもオタク男子が好きそうな女同士のにゃんにゃんが書かれていて嫌気がさしてしまった。『身内に不幸がありまして』も多小なりとも本に触れてりゃすぐに共通モチーフに気づくし、気づいたところで「だから何だ」としかならん。キャラクターの動きも飛ばしすぎ。しかしまあ、ブラック童話めいてる『北の館の罪人』と『儚い羊たちの晩餐』は割と面白かった。ミステリーとしては弱くとも話の流れだけで楽しめる。個人的なベストは『山荘秘聞』。前二つでなめてかかったから、あっさりと作者の手のひらに乗せられた。結末にも素直に驚く。てか、守子が米澤作品でもトップを争うかわいさ。ハチャメチャさと健気さがたまらん。年増なのもいい。ということで『山荘秘聞』単体なら7点。総合で6点といったところ。『満願』より上。
(2016.3.19 追記) 6点→7点。雰囲気の演出に関して再評価。 |