皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
風桜青紫さん |
|
---|---|
平均点: 5.62点 | 書評数: 290件 |
No.50 | 6点 | 詩的私的ジャック- 森博嗣 | 2015/12/20 04:40 |
---|---|---|---|
必然性から犯人がかっちりと決まる密室。こういうのは、わりと嫌いじゃない。「理系の専門知識〜」などとおっしゃるかたもいるようだが、道具については真相が出る前に提出されるので、忘れたり読み飛ばしたりしなけりゃ大丈夫なはず。身体を傷つける理由については余計なことのように思えて、少々がっかり。それにしても萌絵が可愛くない。せこい恋愛描写(?)はなんだか興醒めしてしまうので勘弁してくれ(笑)。 |
No.49 | 4点 | 笑わない数学者- 森博嗣 | 2015/12/20 04:15 |
---|---|---|---|
もっぱら、しっきーより天王寺博士のが天才キャラっぽいんだけど、犀川的には(というか森博嗣的には)天才ってのはもっと神聖なもんらしい。風桜にはしっきーの十ケタ計算伝説とか萌絵へのしょっぱい講義のが俗っぽく見えてしまうが……。はやみねかおるがはずれ推理にするレベルのトリックを「逆密室」とかなんとか言って提出してしまうノリはどうにも受け入れらない。思考停止もなにも、博士の正体なんぞ「誰かが入れ替わったんだろ?」としか言いようがないやん。だって博士の中身候補の人たちがホントどうでもいいようなゲストキャラなんだもん。これで「天王寺博士の正体は、萌絵の父、国枝女史、山根さんのどれか」みたいな展開だったら、全力で挑みたくなるけど。話の筋はそこまでつまらくないから4点。 |
No.48 | 3点 | 冷たい密室と博士たち- 森博嗣 | 2015/12/20 03:55 |
---|---|---|---|
「これが最も安全なやりかたです」ってなクイーンみたいな謎解き部分は悪くないんだが、地味な印象がぬぐえない。プロットが単調でつまらないんだもの。『すべてがFになる』はいちいち大袈裟で萎えたが、なんだかんだで読ませる力はあったのよね。こっちは犯人の心理を予測していくって推理のシステムはよくできてるんだが、推理の基盤になってる部分が、「そんなことあったっけ?」レベルに印象に残らなかったから、該当部分を読み返さなくちゃいけなかったし、その後の推理もぼんやり聞くに終わってしまった。まあ、一作目だし、森も執筆に慣れてなかったんだろう。そのくせ、犯人の動機が金田一少年レベルに胡散臭いから完全に置いてきぼりをくらってしまった。後に森自身が養老氏との対談で「あの動機は書いてて『ないな』と思っていた」と語っていたのを見て、「ああ、作者自身もそう思ってたんだ」と妙に納得してしまった。長い目で作品を読むタイプの人は結構楽しめるかも。 |
No.47 | 5点 | すべてがFになる- 森博嗣 | 2015/12/20 03:29 |
---|---|---|---|
この世界での「天才」の言うことが名大の助教授がエッセイで書いているレベル(資源確保には移動しないことが一番だの)に月並みだったり、超速計算だの10桁の掛け算だの、なにやら大袈裟なワードがどんどん飛び出したり、色々鼻につくので、真面目に読むのは、なんていうか、不可能。まあ、流水や西尾と同じ感覚で「ああ、なんかすごい感じにしたいんだな」と読み流すのがベスト(メフィスト作品だし)。『頭の体操』で使い捨てにされてるレベルにみみっちい肉体派トリックだが、判明すると同時にストーリーが広がるって点では悪くない。犀川先生の、生徒や技術職の人たちを見る目は「ほほう」と楽しめることが多いので、ミステリというより、理系の助教授が悪と戦うライトノベルとして読むといいんじゃないかと思う。まあ、つまらなくはない。中学生ぐらいのときに読んでいれば、ハマったかも。 |
No.46 | 7点 | 盲目的な恋と友情- 辻村深月 | 2015/12/20 03:07 |
---|---|---|---|
ルリエール最高です。『恋』を読んだ時点では「ベタな恋愛ものだなぁ」と思っていたけど、『友情』が抜群に面白い。んもう、ルリエール自意識過剰すぎでしょ……。「どうして私が知らないの?」じゃねえよ。もう見てらんねえ、けど、すでに知ってる先行きが気になって仕方ねえ、となってしまう。ブスの自意識過剰ぶりを二つの視点で浮き彫りにするってシステムが良くできてる。あえていえば、『恋』のほうにも何か面白い仕掛けがほしかったかな。ほんと、がんばれよ、ルリエール。まあ自意識過剰なブスのルリエールより、明るくて胸が大きい(揺れすぎ)美波のほうが魅力的なのは言うまでもないから、また物悲しいんだけど。 |
No.45 | 8点 | 鍵のない夢を見る- 辻村深月 | 2015/12/20 02:48 |
---|---|---|---|
笑いと怖さは紙一重って話を聞いたことがあるけど、この作品はほんとうにこれ。登場人物(特に男たち)がどいつもこいつも阿呆みたいなことを言ってて笑いがこみあげてくるけど、自分では正しいと信じているのが伝わってくるから無性に気味が悪いの。たとえば『石蕗南地区の放火』のバックドラフト先輩なんてもう最高。絶対こいつ魔法使い。猫の写真を送りつけたり、電車で颯爽と注意したり、「俺かっこいいだろ?」みたいな空気がすごくゾクゾクくる。それを突っ込む主人公のスレっぷりがまた笑えるんだが、その当の主人公が売れ残りのアラフォーってのがまた「だめだこいつら」感を加速させてくれる。その他の短編でも『凍りのくじら』のわかおくんがさらにスマートになったような連中が暴れてくれます。自意識過剰な連中に笑いと共感と恐怖あり。辻村さんの作品ではこれがベスト。 |
No.44 | 5点 | 島はぼくらと- 辻村深月 | 2015/12/20 02:34 |
---|---|---|---|
島という閉鎖された空間での人間模様。辻村さんのお得意技。定期的に嫌な奴らが出てくるのもお約束通り。この作品の村長みたいに、いい人かと思ったら、実は嫌な面もありますっていうのが、実にうま味。多くの作家はわかっていても(プロットに引きずられて)書けないであろうところをうまくストーリーに絡めている。といっても、辻村さんの作品では平均的な出来映えかな。本屋大賞にノミネートされたのはただ辻村さんの知名度が上がったからと思える。これより面白い辻村作品は多いと思うし。 |
No.43 | 7点 | オーダーメイド殺人クラブ- 辻村深月 | 2015/12/20 02:18 |
---|---|---|---|
アン、嫌なリア充女なんだけど、ところどころ優しさが見えるのがいいんだよね。周りの人間を馬鹿にしつつも、なんとなく優しくするところ。作中のシーンでいえば、「あの子が泣く」な思想なんだろうけど、なんだかんだで子どもっぽい優しさが見えてくるから、嫌なリア充女でも憎めない。辻村さんはこのあたりのキャラ作りが良くできてるね。でもストーリーはどちらかといえば、いまいちな気が。掴みはいいんだが、結末がどうにも唐突な感じがして消化不良だった。とはいっても、中学生主人公の青春小説としてはかなり面白い部類なんで7点。しかし、アンのおかあさん、愉快でいい人だww。娘からするとうっとうしいかもしれないけど、ろくな奴がいない辻村ワールドの母親じゃ随一のいい人に見える。 |
No.42 | 5点 | サクラ咲く- 辻村深月 | 2015/12/20 02:06 |
---|---|---|---|
ジュブナイルって広告で出てると、こんなスイーツストーリーも普通に楽しんで読めてしまう(笑)。三話の韓流顔の先輩がわりと辻村的な嫌な男。主人公たちが「あんたキモいよ」とやり返すのはなかなか痛快。これ読んだオタク男子たちが胸をはって生きれるようになりゃいいと思います(最近は不良でもラブライブやるらしいけど)。 |
No.41 | 5点 | ツナグ- 辻村深月 | 2015/12/20 02:00 |
---|---|---|---|
頑固親父の話がけっこういい。辻村さん、根はいい人だなって思えるのは、こういう「嫌な人」にもちゃんと目を向けて書いてあげようと思うところなのよね。嵐やキラリちゃんの話も嫌いじゃない。歩の説得シーンはいかにもすぎて興ざめしたけど、まあ、初期の名残というところか。辻村さんの作品では平均的。吉川新人って期待が大きすぎたかも。なんだかんだで楽しめはしたんだけどね。 |
No.40 | 6点 | 水底フェスタ- 辻村深月 | 2015/12/20 01:40 |
---|---|---|---|
絡み付いてくる幼馴染みをうっとうしがる厨二主人公……。と思いきや、本当にうっとうしがってて笑える。おせっかいなおかあさん、ひょろいけど理解のあるおとうさん、診療所の頼れるアニキ、不良だけど純心なトモダチ。少年マンガの主人公みたいな悪くない家庭だけど、オリバーが新しい価値観を持ってくることで一気に身近な人間が恐ろしくなってまう。正直下手なホラー小説よりぞくりとくる。辻村さんのたくらみにまんまと乗せられたと言えよう。しかし幼馴染みの「門音」って名前……ww。これは一種のブラックジョークなんだろうか。 |
No.39 | 5点 | 本日は大安なり- 辻村深月 | 2015/12/20 01:20 |
---|---|---|---|
非道だけどなんだか親近感が持てる奴らが多いです。前から疑問に思ってたんだが、どうして辻村さんの描く美男美女はこんなに他人に対して風当たりが強いのよ(笑)。辻村さんが美形に偏見を持っているのか、それとも世の美形は実際にこういうやつらなのか。スターサイドシステムで狐塚と恭司が出るけど、なんだか浮いちゃってる。初期とは作風がけっこう違うから、恭司の月並みな不良っぷりがギャグになってまうんだな。そろそろ恭司が誰かからバンチを食らうべきでは。 |
No.38 | 4点 | ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。- 辻村深月 | 2015/12/20 01:10 |
---|---|---|---|
うーん、いまいち。辻村さんは聡明な人だと思うから、安直に「文学」を意図したわけじゃないんだろうけど、読んでて退屈だった。みずほのおかあさんの虐待とか読んでて「ひええ」となるし、こういう身近なトラウマを書くうまさはさすが辻村って感じがするけど。ストーリーの枠組みが地味なんだな。しかしこの世界のおなごはよく壁(今回はロッカー)を蹴るなあ……。辻村さんも腹をたてたときは壁キックを決めるんだろうか(ちょっと想像しづらいww)。 |
No.37 | 6点 | 太陽の坐る場所- 辻村深月 | 2015/12/20 00:56 |
---|---|---|---|
島津くんの絶妙なキモさがたまらん。この昆虫系男子め。ハゲのヒョロ男がタカビーのゲス女(男の前だと性格違うww)に惚れてしまうありさまが痛快すぎてニヤニヤが止まらないです。高校生ってもっと純粋で阿呆な生き物のような気がするけど、辻村ワールドの人間たちはたとえ小学生でも自意識過剰だからなあ……。ミステリとしては薄味(というかミステリ成分いらん)だけど、依田いつかも苦笑いのドロドロした人間模様は、まあ、面白いです。 |
No.36 | 4点 | V.T.R.- 辻村深月 | 2015/12/20 00:43 |
---|---|---|---|
十七歳してはよく書けてると思うが、こんな手作り感満載の作品で読者(というか俺)をあざむけるかと思ったら大間違いだぞ、コウちゃん。現実(?)ではあんなに素朴でいい奴なのに、小説を書かせれば、こんなセックス三昧の性欲タンクだったとはがっかりだ。少しは辻村深月の作風を見習ったらどうだろうか。 |
No.35 | 6点 | 名前探しの放課後- 辻村深月 | 2015/12/20 00:37 |
---|---|---|---|
スターサイドシステムが妙に楽しいです。このスピードで時間軸が進むとすぐに教授が老衰しちまうんじゃないのか(笑)。高校生たちの胡散臭い友情物語としても結構面白い。いつかは出ると思っていた嫌なイケメン、いつかくん(いつかだけに)。この上から目線と、情けなさがたまらんのだよ。あとシュートがところどころ狩野英孝みたいなキャラに見えて笑える。おまえ、こんな奴だったのか。ラストのどんでん返しは新鮮味がにから素直に驚けなかったけど、読者をほっとさせるって点ではよくできてる。初期作の集大成みたいな感じかな。 |
No.34 | 6点 | スロウハイツの神様- 辻村深月 | 2015/12/20 00:25 |
---|---|---|---|
冷たい校舎や夜と遊ぶほど盛り上がらんので、普通に読む分には単調。スロウハイツの連中の生き様をつづった『史記列伝』として読もう。美男子ばかり作ってきた辻村さんがコウちゃんみたいなブサ男を出したのは意外と衝撃的。しかもこのラノベ作家、やけにかっこいいぞ。見た目はどうあら、趣味に身体はれる人ってなんだか憧れちゃうのよね。「恋愛もの」とか「感動もの」とかレッテル張りしてしまうと一気にせこい作品になっちゃうけど、オタクたちの楽しげな日常生活を描いた作品としては十分に楽しめた。しかし、すみれのダメ女っぷりが絶妙にむかつく(笑)。環はこやつにもキックを食らわせるべきではないか。 |
No.33 | 5点 | ぼくのメジャースプーン- 辻村深月 | 2015/12/20 00:08 |
---|---|---|---|
こんな思慮深い小学生がおってたまるかい。SFっぽい設定にワクワクしながら読んだけど、最後はまあ、なんていうか、優等生のオチかな。そこまで驚きはしなかった。納得はできるけど意外性はないのよ。ふみちゃんはいい奴。いい奴が胡散臭くはならないのは子どもの特権。スターサイドシステムも結構楽しめたし、なんだあんだで面白く読めた。教授、紳士ってかスケベじじいに見えてくるな……。 |
No.32 | 6点 | 凍りのくじら- 辻村深月 | 2015/12/20 00:01 |
---|---|---|---|
厨二病女子の上から目線ストーリー。似たようなタイプの語り手が出る作品なら同じく辻村さんの『オーダーメイド殺人クラブ』のほうが良くできていると思うけど、こっちも嫌いじゃない。なんか主人公のドラえもんLOVEに共感してしまうのよ。ファッションとかじゃなくて真にドラえもん好きってのがよく伝わってくる。たぶん辻村さんもドラえもん好きなのだろうな。わりと嫌な女であろう主人公にすら共感させてしまうあの青ダヌキ……さすが、と言っておこう。 |
No.31 | 7点 | 子どもたちは夜と遊ぶ- 辻村深月 | 2015/12/19 23:43 |
---|---|---|---|
我孫子武丸の『メビウスの殺人』のパクり。辻村さんは我孫子読者なので、偶然話が似たということはまずないでしょう。それでも7点と(風桜的な)高得点をつけるのは、単純に作品が面白いから。我孫子より辻村さんのがストーリー書くの上手なんだもん。主人公である浅葱の月並みな美男子キャラぶりと、不良学生(?)恭司のこれまた月並みな不良ぶりは、前作同様胡散臭さMAX(まあ辻村さんも女の子だから……)だが、彼らを囲む脇役が良くできている。月子も狐塚もいい人っぷりがにじみ出てるし、(iと浅葱に)殺される人たちも妙に共感できる連中ばかりだから、美男子たる浅葱の「俺やっちまったよ……」的な心情になんだか説得力が生まれてくる。浅葱って一人称だけなら絶対好きになれないだろうけど、月子たちの視点があるから不思議といい奴に見えるのね(笑)。あとトリックが明らかになるあたりから、無性に話は盛り上がっていく。トリックについてはずるいといっちゃずるいけど、面白いから許す。こういう話を盛り上げるトリックってのが風桜的には理想です。なんだかんだで問題点も多いけど、パワーがあるうんぬんで7点。 |