皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
了然和尚さん |
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平均点: 5.53点 | 書評数: 116件 |
No.9 | 7点 | フローテ公園の殺人- F・W・クロフツ | 2016/03/09 21:48 |
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いつものパターンなのですが、王道とでもいうのでしょうか。楽しめました。
列車による轢死ということで、死体の身元が怪しく(いわゆる顔のない死体)、人物の入れ替わりはすぐわかりましたので、注意して読むのですが、巧みにかわされます。(写真の件など) 犯人とか、トリックとかが途中でわかったらつまらないとかいう話もありますが、本作では、ラストのご対面の場面が「ほら。キタキタ」みたいな感じで素晴らしい構成力で楽しめます。 クロフツのフレンチ以前ではベストだと思います。 |
No.8 | 5点 | 製材所の秘密- F・W・クロフツ | 2016/01/10 11:16 |
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巻き込まれ主人公の一部と警部による捜査の2部立てになっていますが、捜査にキレがない感じがして、もう一つでした。クロフツは元鉄道技師ということで鉄道トリックは多いのですが、船ものも同じくらい多いですね。最後の犯人追求の段階で鉄道トリックらしい小ネタがちょっと入るのは(図面付きで)サービスでしょうか。
本格ものとして、手がかりを多く示し論理で進めたり消したりするスタイルは、「樽」や本作では希薄なのでクロフツは非本格と思われているかもしれませんが、「死の鉄路」あたり以降の作品では、本作と近いスタイルながら本格ものにもなっていて、作者の技量に感動します。 ビッグ4の中ではなかなか作品が手に入りにくく、古本屋、オークションを日々チェックが欠かせませんねえ。 |
No.7 | 7点 | ポンスン事件- F・W・クロフツ | 2015/11/20 16:50 |
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クロフツと松本清張は似てますね。展開がわかりやすく、スリリングで読み飽きさせないのですが、その分、謎は出尽くしてしまうので、ラストはちょっとさみしくなりやすいです。また両者とも、時代の雰囲気や旅情の描写が得意で、作品の雰囲気の醸しだし方がうまいです。本作なんかは、まるで25年物のウイスキーを飲んでいるような熟成感があり、推理小説も時代を経て、味が出る作品もあるんだなと感心しました。 |
No.6 | 6点 | サウサンプトンの殺人- F・W・クロフツ | 2015/07/30 20:49 |
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ミステリーを構成で分類した場合、本書は歴史上唯一無二と言えるような実験作品でした。まず、本書は倒叙ミステリーではありません。倒叙ミステリの定義を(1)前半は犯人、後半は探偵の2部構成 (2)犯人は単独犯 従って前半は犯人の日記のように綴られる。 と勝手に定義してみました。本書は犯人と探偵視点の1、2部があり、続いて通常の犯人探し、探偵の解決と4部構成になっています。また、犯人も最初に2人、その後その上司、事情を知ったむしろ被害者側の3人が恐喝に加わると、どんどん増えていきます。大変興味ある構成なのですが、残念ながら全部がうまくいっているとは言えず、驚きや感動の要素は少なかったです。3、4部のフーダニットでは、皆殺しを図って1人とり逃すのですが(故に、この人物が犯人の線が残るのだが)、生き残った故に犯人のアリバイ工作が意味をなすことと、一人でも残ったら犯人破滅やろという矛盾が印象を悪くしてます。 |
No.5 | 6点 | クロイドン発12時30分- F・W・クロフツ | 2015/07/28 04:05 |
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「サウサンプトンの殺人」を入手したので、前書きを読んでみると倒叙物とのこと。本作と2つ続けて倒叙物を書いていたのかと思い、本書は2年前に読んでたのを再読。(あまり内容の印象は無かったので)再読で気がついたのですが、犯人の視点で犯罪の構成が描かれるというのに目が行きがちですが、本作では犯人がいきなり逮捕されて裁判で判決を待つ過程が楽しめますね。通常のミステリでは探偵が犯人に証拠を提示して、「まいりました」で終わるのですが、本作では状況証拠が示されるだけで、フレンチの解説は有罪判決の後になっています。(とってつけたようなインタビュー形式で)
裁判では、状況証拠しか無く、弁護側の反対尋問が強烈で、なんか無実の結果を予想させますが、ちょっと意外な有罪判決でした。本件は無罪で、手ぬかりが多そうな執事殺害の方で有罪(実際にフレンチは可能性を語っている)というオチもあるかと思ったのですが、他の有名作と同じになってしまいますね。では、サウサンプトンの殺人に取り掛かります。 |
No.4 | 6点 | ホッグズ・バックの怪事件- F・W・クロフツ | 2015/07/19 21:16 |
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内容の採点の前に、創元推理文庫に−10点。ハヤカワの昔のクリスティーの表紙でもいきなりのネタバレが幾つかありましたが、本作もやってしまいました。ドールハウスの組み立てが出てきた段階で犯人とアリバイ工作確定です。しかも、有力容疑者の1人が最初の登場人物一覧に載ってません。本作も新表紙(あまり手にしたことはないが、かっこいいですね)に変わって、修正されていることを望みます。 で、内容ですが、動機の面で工夫されていて、複数の要素が見事に組み立てられています。この時期のクロフツは絶好調なのかなと思います。減点は、複数犯であることで、アリバイの相互補完というアイデアは良いのですが(実に細かく記述されている)、それならもう一人加えて3人でアリバイ補完がおもしろいのでは(その一人が登場人物に抜けてる人ですが)、なら何人でも。。。 となってちょっと話が台無しになってしまいますね。 |
No.3 | 9点 | 死の鉄路- F・W・クロフツ | 2015/07/10 13:06 |
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これはクロフツの中でも最高に面白かった。背景が鉄道工事であったり図面に関する複写の細かいことが出てくるので、馴染みにくい点が多いが、ミステリーの組み立ては優れてました。一人称に近い人物が犯人で叙述物の感じもあるのですが、その近くに読者的に最有力容疑者が燻製ニシンになっていて、この人物のアリバイが固いが故に(退屈なくらいに丁寧にアリバイが検証される)よけいに引っ張られるのが、作者にしてやられた感があります。最後の勘違いー>活劇展開というのもクロフツらしくて、意外な犯人を盛り上げて良かったです。 |
No.2 | 7点 | 二つの密室- F・W・クロフツ | 2015/05/07 17:39 |
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他の方のご指摘のように、クロフツっぽくない作品で、クリスティー的かと思います。
前半は叙述物のような展開で、犯人は推測できます。あと100ページ余りというところで、とんでもなく都合の良い証言が後出しで飛び出して、真犯人と作者の真の意図が推測できます。本作はトリックがしょぼいので、評価が低いようですが、構成としてはかなり楽しめると思います。フレンチがいちおう前半の主役の家政婦も疑うあたりは、作者の創作意欲を感じます。アクロイド的展開もいちおう考えてみた名残かと思います。 |
No.1 | 5点 | 英仏海峡の謎- F・W・クロフツ | 2015/05/04 13:11 |
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今までに何冊か読んだクロフツのパターンそのままで、ちょっとスケールが小さい気がするので−1点です。クロフツのパターンは、(1)最初の方に登場したアリバイのある人物が、実はアリバイ工作していた (2)消去法で有力な容疑者を追いかけるが、捕まえてみると無実だった (3)真犯人をおびき出して逮捕しようとするが乱戦(活劇展開)になるって感じです。 ま、このパターンはわかっていても、ちゃんと考える余地があり、飽きずに読み進められるところはクロフツの偉大なところでしょう。
本作のトリックはイマイチな感じですが、船舶知識がないので、最初に計画されたヨットの失踪トリックを含めて実感が薄いところが残念です。当時のイギリスの読者はこのへんがピンとくるほど皆さん船舶知識があったんでしょうね。 |