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斎藤警部さん
平均点: 6.70点 書評数: 1358件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.98 6点 フレンチ警部と紫色の鎌- F・W・クロフツ 2015/06/08 22:39
序盤から登場する主役級かと思えた若い女子があっけなく殺されてしまうサイコ効果(?)にはびっくり。その後も起こる連続殺人の裏側に徐々に見えて来る、不可解な、しかし奇妙に地味とも思える何らかの詐欺事件のようなもの。。 明かされる「悪事トリック」に拙者は「占星術殺人事件」のメイントリックに一脈通じるものを嗅いでしまったのだが、、考えすぎですかな。 だけど本作の主たるトリックを別角度から根気良く煎じ詰めて行くと、実は島荘サン的驚天動地の心理的大物理トリックに行き着くのではないかと、どうにも妄想してしまうのでございます。。 既に誰か何かやってるかも知れませんがね。

No.97 8点 眼の壁- 松本清張 2015/06/08 13:00
詐欺、暴力、差別、謀略と残酷なトリックの渦中を疾走するサスペンス、サスペンス、怖いほど強烈なサスペンス、、、にがっちりと抱き留められた本格推理の力作! 人間社会に棲み付く、事件を産み出した諸々の暗黒要素があまりに生々しく息づいているため、人それを社会派と呼ぶのもごもっともで異論無し!! 壮年期とは言え駆け出し時代の筆に拠るせいか、時折蒼い草の匂いが漂うのも素敵だ。

No.96 9点 理由- 宮部みゆき 2015/06/08 11:48
「黒死館」に寄せた乱歩の序文じゃないが、壮大なこの一篇に埋め込まれた膨大な創作ドキュメンタリー資料の数々から幾つもの硬派な社会派推理小説群が解(ほど)き出されるのではないか、とそんな愉しくも少し苦い妄想をせずにいられない市民物語の巨大集積塔。。。。 の圧倒ぶりに較べて結末だけ意外にあっさりしてしまったか。
とまれ必読の風格漂わざるを得ぬ、重みの一冊。

No.95 8点 大滑空- 佐野洋 2015/06/08 11:33
アウトドア・スポーツを通しテーマに置いた、これは本格ミステリの隠れた傑作短篇集。代表作に数えられていないのがあまりに勿体無い。
大胆な伏線が思いも寄らない場所に音を立てて引っ掛かり、崩れる様にまさかの結末へ。。 言うまでも無く文章は洒落ている。お洒落は通奏低音、主旋律はストーリーと謎解きのデュエット、中盤の分厚いハーモニーがサスペンス、時々エロスのアタックが入っては消える。 「世の中には頭のいい奴がいるんだなあ」という後味を残す。

大滑空 /血滴る矢 /心を読む馬 /絶対本命 /空の蛇 /赤い点が光った
(講談社文庫)

No.94 8点 一本の鉛- 佐野洋 2015/06/08 11:21
都会派佐野洋、初期の佳品。 表題の意味は最後の最後に明かされ、同時に事件の真相も一気に収斂します。
秀れた技巧が悪目立ちせず、ひたすら作品の完成だけに貢献する、フランス音楽で言うラヴェルのようないい香りのする若き熟練の一品。事件は女性ばかり暮らすアパートにて、バーのホステス殺し(昭和!)。容疑者は現場で確保。一見ごく当たり前の事件の様ですが。。

それにしても、これだけ洒脱で明るいムードなのに、ここまで強いサスペンスと深い謎めき度合い。かなり踏み込んだエロティック描写を爽やかに描き切る手管。天性と育った環境の存在を感じさせずにはいられません。日本共産党も惜しいシンパを無くしたものです。

No.93 6点 四十八時間の告発- 笹沢左保 2015/06/07 16:56
暗めの男女関係を基調に置いた本格/サスペンス短編集。 消えた犯人ならぬ「消えた被害者」の謎を追う『幻の殺人』が秀逸。 『雪の女』の、藤沢周平を思わす甘く優しいエンディングも心に残ります。 他もまず良作ばかり。

No.92 6点 三人の登場人物- 笹沢左保 2015/06/07 15:09
主要登場人物を限界ぎりぎり三人まで絞ったサスペンス。芸能界を引退したばかりの清楚な新妻は、マンション階下で殺人事件が起きて以来、人が変わった様に不良化する。疑惑を抱いた夫は旧友の雑誌記者と再会し、調査を依頼するが。。

登場人物が少ないだけに、否が応にも妄想先読みしてしまうが故のサスペンス。その終結は、果たして。。

No.91 5点 シャーロック・ホームズ最後の挨拶- アーサー・コナン・ドイル 2015/06/04 19:16
薄味の感はありますが、、異色の面白さが全篇通して目を引き、長きに渡り間を置いて書かれた作品達ならではの内容の散らばり加減も手伝って、そう退屈って事も無い。
最後の「最後の挨拶」の風雲急を告げる終わり方はちょっとシビれます。(時代背景もあったでしょう)

No.90 6点 シャーロック・ホームズの帰還- アーサー・コナン・ドイル 2015/06/04 18:56
「回想」より派手めの印象なのは「踊る人形」等の超有名作比率が増えているせいだと思いますが、出来不出来のムラも見えます。 「冒険」「回想」と並べて格段に点は辛くなりますが、、やはり必読でしょう。

No.89 2点 毒薬の輪舞- 泡坂妻夫 2015/06/04 18:45
妻夫さんの長編だから期待したんだが、こりゃ詰まらなかったな。 精神病棟を舞台に面白い登場人物、印象深い人も出て来るんだが。。 琴線に触れそうで触れません。

No.88 8点 乱れからくり- 泡坂妻夫 2015/06/04 18:41
眞犯人と大まかな全体像は最初のほうでピンと来てしまいましたが、、 それでも物語の力と文章の技、何より作者の愛情が滲み出る「からくり」の臨場感溢れる描写と流れ出る様な薀蓄で、たいへん面白く読みました。

No.87 8点 11枚のとらんぷ- 泡坂妻夫 2015/06/04 17:13
こりゃあ面白い! マジックとミステリー、そこにユーモアを注入、まるでドラマ「TRICK」の様な世界ですね(ユーモアはこっちが良い意味でぐっと緩いけど)。 殺人に使われたトリックは何気に記憶が曖昧ですが、作中作「11枚のとらんぷ」で何気無く触れられる犯人特定の”手掛かり”は印象深く、忘れられません(すぐピンと来ちゃいましたが)。 コージーなのも、こういう腹に一物ありそうなやつは好きだ。 最後の、国際マジックコンベンションでのシーンもなんだか心に残ります。謎が解けても放り出さず、小説をやさしくきちんと締めていますね。

No.86 6点 興奮- ディック・フランシス 2015/06/04 16:09
エキサイティングな展開ながら適度なリアリティがあり、面白く読みました。
主人公のタフな善人ぶりがいいですね。依頼人の娘とか、頭のおかしい貴族とか、忘れえぬ悪役(大小問わず)もいました。 潜入した厩舎の仕事仲間にも、心に残る奴がいたなあ。甥に鉄道模型を買ってやるんだって言ってた頭の弱い男とか。違ったっけ? 
事件の解決した後、最後にもう一つ又別の急展開を見せる所はなかなかの名場面。何気にハラハラします。
例のシンプルなトリックは、特に驚きはしませんが、記憶に残ります。
そういや最初は英語教材の朗読テープで聴いたんだった。この小説。

No.85 9点 異邦の騎士- 島田荘司 2015/06/04 15:28
長い長い恋愛ストーリーは最後に熱い友情物語の裏打ちとなり、また自らの輝きを留めました。でもやっぱりこれは、ひどくトリッキーでスリルに満ちた本格推理小説。 ある「ゼロ時間へ」向かって進んで行く救済と出逢いの物語でもありますね。。

No.84 6点 蠟人形館の殺人- ジョン・ディクスン・カー 2015/06/04 13:15
雰囲気勝負でしたね。真犯人も真相もなんだかすっかり忘れてしまいましたが、忘れえぬ妖しいロケーション(暗闇社交場)。。。 それだけで1点半アップ。

No.83 7点 変身- 東野圭吾 2015/06/04 12:41
話の展開に「そう来るか!」的な意外性は薄い。 が、予感した通りに進んで行ってもサスペンスは強烈で全く飽きさせない。このへんは(わざと次々に予感させるのが得意な)松本清張の長編に通じるかも。
「宿命」の続編的イメージで読んでみましたが、同じく先端医学をテーマにしても全く別種のストーリー。しかし何かしら繋がっていますよね。

No.82 9点 消えたタンカー- 西村京太郎 2015/06/04 12:15
京太郎さんが鉄路へ行く前、海洋期の雄大なる傑作。
世界の海を相手にする、手に汗握る冒険性が魅力ですが、そこに本格推理興味溢れるスケール大きな謎解きがガッツリ組まれているのだから尚更堪りません。
タンカーを消したトリックは。。物理的とも心理的とも割り切れない(海の広さあってこその部分もあるから、物理的要素も多少認められるのではないか)、盲点を突いた、そしたまた雄大なもの。唸らせます。

No.81 6点 破戒法廷- ギ・デ・カール 2015/06/03 12:29
粗野な三重苦の青年が、客船で起きた殺人容疑で起訴されます。彼は死刑を望んでおり、弁護を拒否します。仕事が回って来たのは半分隠居の老弁護士。その設定に惹かれ若気の至りで読みました。
詳細の記憶は朦朧としておりますが、キリスト教に基づいたスピリチュアルな癒しの物語だった事と、生まれつき盲目の青年がとある女性の導きで「色」(赤とか青とか黄色とか)とはそれぞれどんなものかを理解するというくだり、そこが印象的でよく憶えております。
推理小説的に仰天するような終わり方はしません。 穏やかに安らかに、救いをもって幕をおろします。
作者唯一のミステリ範疇作品だそうです。

No.80 5点 偽のデュー警部- ピーター・ラヴゼイ 2015/06/03 10:49
私もてっきり、旧い時代を背景にしたモダンな本格推理小説、それも本物のデュー警部がまさかの誰かに化けていて。。。 ある種の叙述トリックが盛られていて。。 冒頭から登場する偽夫婦が大きなミスディレクションになっていて。。 誰か記憶喪失の奴がいて、その事を隠してて、ところがそいつは船旅の途上で記憶が戻って、船上に因縁の人物が乗ってる事に気付いて、だけど何も無いよな振りを続けて。。 果たして遺体女性との関係は、そもそも遺体の正体は。。  などと妄想全開で読ませていただいたお蔭で、楽しかったです。文章練れてますね。

No.79 9点 皇帝のかぎ煙草入れ- ジョン・ディクスン・カー 2015/06/02 18:47
セイガク(中学生)の時、その表題の異様な物々しさに惹かれ、ある種怖いもの見たさで手に取った一冊。
中身は決しておどろおどろしいものではありませんでしたが。。 見事に最後まで騙されました。クリスティ女史が脱帽したのも頷けます。 こりゃ自分が書きたかったでしょうなあ。
メイントリックは日常生活でチョイチョイ使わせてもらいました(えっ??)

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.70点   採点数: 1358件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(59)
松本清張(54)
鮎川哲也(51)
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