皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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斎藤警部さん |
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| 平均点: 6.69点 | 書評数: 1433件 |
| No.773 | 7点 | 満願- 米澤穂信 | 2017/12/29 12:09 |
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| 夜警
某神父の或る原理を精魂こめて変型増幅し、警察心理小説の肉付けも立派な一篇。 困り者の部下を抱えた警官が、暴力亭主の現場に来てみれば。。。 これは良作。 8点強。 死人宿 失踪人とその経緯捜しに絡めたフーダニットならぬフードゥーイット、これから自殺するのは誰だという変形犯人捜しの末、妄想考え落ちの余韻を残して終わるのはニクい。 6点 柘榴 今一歩の腹落ちが欲しかった。。折角のドロドロ家族ドラマが。。惜しい反転!全体のバランスもちょっとグラグラで、結末のインパクトを直に左右するリアリティってやつが微妙に不足。でも面白い。 5点強 ・・・ いや、え⁉︎ まさかこのエンディング、実は⚫️が一枚上手って言う考え落ち!? だとしたら... 仮に作者がそこまで考えてなかったとしても妄想炸裂で一気に 8点 へジャンプアップ!! 万灯 “新技術の話はいつでも胸躍る”いい言葉だ。 厚みが魅力の南アジア経済サスペンスの末に、まさかのクイーンばりロジック攻め尽くしで振り出しに戻る(?)趣向。結末呆気なさのアンバランスは確かに在るが、、、目をつぶろう。読後しばらーーーーーく冷却の時間を強いられました。 8点 関守 峠の古びた茶屋を舞台に、ミステリ濃度は薄いがなかなかの犯罪ホラァ小噺。骨格より肉付けで押し切り。相撲で言えば琴奨菊の様な体型の一篇。 「先輩」の物語的役割がちょっとオチてない気がするが、、 5点 満願 “予感せよ”との強く甘い圧力は絶壁級。むかし下宿で世話になった奥さんは殺人犯となり、弁護士になった「私」と再会する。結末を予想しつつ、なんだそっちだけか、で淋しく終わるって仮説を併走させてもみたが、、、、、 参った、これですよ、これぞ連城スピリットの継承。色恋だけじゃない、っていう色恋の陰画の強さだね。 或る小道具の使いっぷりとそこに至らす伏線にも唸る。 9点弱 |
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| No.772 | 3点 | 死のクリスマス- アルフレッド・ローレンス | 2017/12/25 12:19 |
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| アナハイムエンゼルスファンと思しき(本作にエンゼル試合チケットのくだり有り)コロンボは大谷翔平には間に合わなかった。。いや亡くなったのは俳優ピーター・フォークの方、幻想の中のコロンボは老いてまだ健在で、日本から来た若き大男を時々はスタジアムで応援するのかも知れない。
TVで放映されなかった事から「幻の名作」などと喧伝されがちな本作ですが。。ロシアンクラブ(?)の光景や、最後にコロンボへのプレゼントが手渡されるシーン等、クリスマスシーズンらしいキラキラした雰囲気は魅力、もちろんコロンボが魅力的、しかし結論を言うとこりゃ幻の名作って風情ではなく、むしろお蔵入りも納得の幻の失敗作では。トリックもロジックもツイストもサプライズも有りゃしねえ。。そこにコロンボがいるだけで私は好きな本ではあるけれど、高く評価は出来ませんね。そこそこの評価も無理。デパートで働くデザイン方面の才能が集まって、そこに昔馴染みが一人加わって、問題は発生した。。社員の殺害と、守衛のサボリーと、ファボリート、デスパシート、チアシード。。そんなお話。 |
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| No.771 | 7点 | 黒い福音- 松本清張 | 2017/12/23 11:02 |
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| 斎藤警部なる人物が一瞬登場。坂口良子氏と、Roxanne(ポリースの歌でおなじみ)らしき人物も登場、特に後者は重要人物。新聞記者佐野はまさか洋チャンの事ではあるまいか。
時折神視点の作者目線が闖入する上、読者目線での憶測主役が不規則に入り乱れるドキュメンタリ風の造りがスリルを齎(もたら)している(元より実話ベースの作品ですが)。本格の味もほんの微(かす)かに掠(かす)るけどこれはやっぱり冷気吹き荒れるドサスペンス押しの一品。舞台はキリスト教某一派日本拠点。「われわれの歴史は迫害の歴史だ」ですってよ。。。作者の被害者意識も高く、告発に撓(たわ)み無しのストレートな社会派ですが、下ネタユーモア溢れる傍流逆伏線エピソードには微笑ませてもらいました。 |
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| No.770 | 10点 | カラマーゾフの兄弟- フョードル・ドストエフスキー | 2017/12/22 00:35 |
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| 「陽気にやってらっしゃい、泣くんじゃないのよ」「明日は修道院に入る身でも、今日は踊りましょう」「あたしたちは汚れた身でもこの世は素敵だわ」「一人のろくでなしだけでポーランドが成り立ってるわけじゃないんだ」「今すぐ、カラマーゾフ流の強引さで、みんなのために。。。」
冒頭数十行で10点超えが確定しました。奇蹟のハイパーテンション持続の底には悪魔の吹き込んだ命が跳躍しています。夥しい数の面倒臭い人々が跋扈する極太の大河イヤミスであり、言うまでもなく推理小説枠に収まり切らない大怪物ではありますが、と言うかもちろん推理小説のつもりで書いたのではないのだろうし、だが結果的に大ミステリと呼びたくて仕方のない作品に仕上がっているわけで..「罪と罰」をミステリとするのは牽強付会に感じますが、本作は充分にミステリと呼べるブツでしょう.. 日常の心理トリック拗(こじ)らせ玉虫模様は襲来するわ、手記の壮大すぎる配置の妙に舐め尽されるわ、長い長い伏線の妙味に搦め取られるわ、ある種の叙述欺瞞のインスパイア元になってそうな気配が点在するわ、もちろん、これは多岐に渉る犯罪的人間関係の紛糾と、ギラギラとモニュメンタルな或る殺人事件の謎とその解明を巡る物語であり、、、、、、、 「二つの深淵をいっぺんに見つめることができるのです!」「それは、父親を殺さなかったからなのです!」「話している時の様子が変ですよ」「ところでトルコ人は甘いものが好きだそうだ」「頭の中で考えて、憶えてしまったんだ」「もう一度言っておくが、すべては大洋にひとしい」「これもまた小説ではないでしょうか!?」「これでもキリスト教徒ですからね」「そんなのはローマです!」 かの『大審問官』の暴虐馬鹿力もさる事ながら、ミステリとして延々と濃密過ぎる裁判シーン。。。。しかもその章の名が「誤審」と来た!(ここで観られる論告合戦みたいなサッカーの試合はいいですね) ”総和による暗示”。。。 情緒的可能性の証明。。。 ”永遠の調和の瞬間”。。。。 作者の命が追い付かず実作されなかった続編で明かされる逆転真犯人、がいるのだろうか。。 (まさか、アノひとが。。) 「虚無への供物」が前半だけで乱歩賞に応募されたのは、後半執筆を待たずして作者が逝ったとする本作への、手の込んだオマージュではないのか。。。。 パンの耳。。雀たち。。 たとえ未完にしても、世に出版されたラストシーンは実に鮮烈、哀しくも眩しい希望に輝いているじゃないか!! だけどやっぱり哀しいよ! 全ロシア! 全日本! 全忍耐! 全歳月! 頑張ろう!! 頑張りたいじゃないか!!! ああベートーヴェンが聴きたくなる。 邦題は「カラマーゾフ」と「兄弟」の間に『の』が入るのが断然いいですね。 深みが違います。 |
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| No.769 | 7点 | 夜よりほかに聴くものもなし- 山田風太郎 | 2017/12/12 23:05 |
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| ※短篇集単体です。光文社文庫「傑作選サスペンス篇」の方ではなく。
証言/精神安定剤/法の番人/必要悪/無関係/黒幕/一枚の木の葉/ある組織/敵討ち/安楽死 もしもドストエフスキーが(文章を短く纏める訓練をして)短篇ミステリ集を書いていたら、みたいな、人生思想犯の話がいっぱい。題名から薫って来るうらわびしさやブルージーな苦味は意外と薄く、犯行に至る背景はやるせなさってよりギラギラした狂気をより強く感じる。そこへ来て最後の(地の文含めてちょっと長い)決まり文句に何度も出て来られると不謹慎にも笑っちゃう。だんだんギャグに見えて来て。。 さて本作、重い主題を扱う割にはとても読みやすいブツですね。一篇一篇が短く、結末到着がちょっと早過ぎ、アッサリし過ぎの感さえあります。また光文社の文庫全集では「サスペンス篇」の表題にもなっている本作ですが、さほどサスペンで勝負というガラでもありません。本作の良さは、もう少し柔らかく悩ましいところにあります。 余分なツイスト無しでストレートな動機解明で締める、ようでいて、その動機の肝の所が実は読者が安易に憶測してしまうものより更に一押し、心の内側に釘の頭をねじ伏せた、より切実濃厚なものだった。。という風太郎らしい人間派力炸裂の作品が並びます。より表層近い所に大きなツイストをかませた本格ミステリ押しの作品もいくつかあります。一篇だけ、絵に描いたような本格興味のトリック解明で攻める作品があります。でも結末の動機大暴露はどれもこれも統一感有りの人間派シュプレヒコール慟哭劇。 各話のタイトル並びがデコボコ感満載(あるものは出落ちネタバレ、あるものは仄めかし、あるものは現象)なのは美しさを損ないますが、それはまあよかろう。 読んでる間は意外と軽い感じがしたもんですがね、後からじわじわ浸み込んで来るのですわ、これが。 |
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| No.768 | 4点 | ガラス張りの誘拐- 歌野晶午 | 2017/12/07 01:27 |
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| 目次にある 第二の事件⇒第三の事件⇒第一の事件 って構成が目を引く。新本格で、ホームズ長篇みたく最後に第一の事件って事は、大きな逆時系列反転が仕込まれているのは自明で構わんのだが、それを承知で更なるミステリ跳躍が翻弄してくれれば最高なんだけど、本作が最後に明かす全体真相がツイストしきってない所為か何んとも印象に残ってくんない。折角のトリッキーなパズルピースの組合せも無理を感じる要素が強くて(無理を感じさせない要素が弱くて)今一押しワクワクしないんだよ、となると文章の青臭さ&こなれてなさが相乗効果の致命傷に。。途中まではそこそこ面白いんだけどね。まあ歌野氏大飛翔前の作品ですからね。 | |||
| No.767 | 4点 | 誰彼- 法月綸太郎 | 2017/12/06 23:48 |
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| 小説というより、ある類のトリックに関する学術論文のような一篇。そこに密室/消失ガジェットだのなんちゃって社会派要素だの気前良く盛り込んでるもんだから焦点が定まらないこと老眼の如し、由って物語の骨格がさっぱり印象に残らず。完成度は低かろうが、本格ミステリ(素材集?)として中身は充実。若書きという事もあり青臭く粗雑な文章は好きになれないが、このチャレンジ精神は貴重と思います。無闇に低い点はあげられません。が、やぱァこんくらい。すまーん。 | |||
| No.766 | 7点 | 悪いものが、来ませんように- 芦沢央 | 2017/11/29 02:02 |
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| ●●トリックが二つ。お互いがぶつかり合う(●●交叉点のような)衝撃波を撒き散らす類ものではなく、先にバラされる方をもう一方が補完する形だが、この補完のフェミニンなきめ細やかさがドラマ性を大いに高めている。 思わず心に特筆したのが、上記二種の●●トリック「主役受け渡し」を挟んで 伏線⇒ミスディレクション⇒再び伏線 とその形相を変えるある小道具。その小道具を巡っての真相解明プロセスがまた前述のドラマ性の起爆剤でもあり、ミステリとしても物語としても実に巧妙かつ感動を呼ぶ構造。若くてきれいなイヤミス。 | |||
| No.765 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖- 三上延 | 2017/11/24 00:29 |
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| 実家に帰ってみると図書館本「ビブリア古書堂の事件手帖7」があった。てっきり妹が借りたんだろうと思っていたら、意外にも我が老父だと言う。それも第一巻から全巻制覇で、きっかけはTVドラマ(剛力彩芽主演)だったとか。
第一話、古書堂店主が入院中といういきなりの変則設定にやられた。独立短篇だったらちょっとした小味だが連作の頭となると途端に重い主題、という切なくもヒネリ有る趣向が読書のスピードを増す。北鎌倉の穏やかな雰囲気を最初から読者の目前に敷きつめる作業にも成功。 第二話、存外に早い段階で探偵役のアンバランスな斬れ過ぎを憂慮する、まるで騎士(ナイト)的アドバイザーの存在誇示が良い! ミステリとしては相当に薄い真相だけど、見せ方読ませ方が上手で、ワクワクさせますね。これがラノベ力というものか? 第三話、ちょっとしたもんではあるが暖かい「心理のロジック推察」にほっこりだぜ。これがいちばん好きだな。 第四話、風雲急を告げるいきなりのアクション展開サスペンス付き。こんな温かい連作のここでこう来られると微妙に時ならぬイヤミスの雲行きが生じちゃうけど、、これでいいんです。 探偵役の二段底、更にはワトソン役の二段底が見え隠れするよな全体構造もなんだか楽しみで、父の後を追い続篇もいずれ読んでみようと思います。 |
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| No.764 | 4点 | 清張ミステリーと昭和三十年代- 評論・エッセイ | 2017/11/23 01:19 |
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| どんな山奥の田舎町でも駅から映画館が何軒か見渡せたとか、振り返って見るには魅力の昭和三十年代。高度経済成長をバックボーンとした様々な社会様式変化、すなわち人口集中に伴う交通網拡充と首都圏の拡大だとか、性倫理柔軟化だとか、流通業態の変遷だとか、医学の発展/未発展だとか、を端的に示す要素を清張魅惑の作品群中からそれぞれ引っ張り出して、政府系等第三者データと照らし合わせ「ああそうだったねえ」と納得し合う本。内容は緩いうえ面白味に欠ける。 半端に学識ぶってないで、ノスタルジー面白本に徹してガツンと決めてくれたら良かったのに。まあ、著者がそういうタイプの方ではないって事でしょう。 | |||
| No.763 | 8点 | 誰にも出来る殺人- 山田風太郎 | 2017/11/16 01:01 |
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| ケレン味に、ジットリ情緒が纏わりつくをカラッと揚げて、永遠の新感覚。こりゃチョっとした本格。人気を集めるも納得だね。
途中からミステリってより物語の面白さが引っ張り過ぎるきらいはありますが、、悪いモンじゃありません。 |
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| No.762 | 6点 | アルキメデスは手を汚さない- 小峰元 | 2017/11/11 19:00 |
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| 義父より借りパク積読しておった一冊。読前の浅はかな憶測を裏切る、分厚く丁寧なミステリ内容の序盤~中盤にどっぷり魅了された。人間ドラマとしてもなかなかシビレる。最終章の独白羅列による構成が素敵。だけどね、その最終章の役割が、既に看破ないし推理されたトリックやら犯人やら事件全体像のおさらいにほぼ過ぎないものになっちゃっててね、わざわざページ数喰ってんだから更にもう一押し二捻りの真相深掘り、或いはロジック構築のミッシングリンク発表でもいいですよ、何らかの付加価値展開で驚かせて欲しかったねえ。でも読中とにかく愉しかったからね。7に迫る6点で余裕の合格。思わせぶりな表題の意味する所が、あまり有機的に真相の中核を貫いていないのは少し残念。 高安(たかやす)関と同じ読みと思われる名前の重要登場人物が出て来るので、その人が登場するたびに高安関のテッポウ姿をいちいち連想せずに読み進める事も重要です。「俺の若い頃と歌謡曲は一向に進歩しておらん」なる当時の中年刑事のつぶやきには笑いました(波止場とか女の涙とかそんなんばっか、ってことらしい)。 ところで田中はなかなか面白い奴だ。演じるなら若造りで山田孝之だな。主役喰うべな。 | |||
| No.761 | 4点 | 透明な同伴者- 鮎川哲也 | 2017/11/08 00:53 |
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| 透明な同伴者 /写楽が見ていた /笑う鴉 /首 /パットはシャム猫の名 /あて逃げ
(集英社文庫) 軽い軽い、なかなかに弱っちィ倒叙ミステリ短篇集。四十年代後半モノ中心。自分は鮎川さんの文章世界が好きだから読めるけど、人にはとても薦められない。最後の「あて逃げ」が物語としてちょっと面白いくらい、でもミステリ興味は薄い薄い。「写楽」の指紋や「パット」の遺書エピソードあたり、もう二捻りの余地は充分にあるでしょう、って思うんだけど。なんでそこでチャンチャンで終らせちゃうの、ズッコケるよ~。「あて逃げ」だってこんだけ面白いシチュエーションなんだから更に磨きを掛けりゃ相当の傑作に化けられたろうに。。んで言及しなかった残りの三作はどう捻っても叩いてもどうしようも無さそうなポンコツ共。 ま、こんな鮎川さんも嫌いじゃないさ。 |
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| No.760 | 7点 | 死者の木霊- 内田康夫 | 2017/11/07 01:25 |
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| 振り返れば、真犯人は見え透いているし、では早々に犯人決め打ちで強固なアリバイ粉砕に心血を注ぐのかと言えばそんなことは無い、アリバイトリックの核心は単純極まりない●●だし、主役の若刑事が犯人に気付くタイミングもじれったいほど遅い。なのに、きめ細やかさと胆力とを併せ持つ流石の筆力にほだされて一片の退屈も無く、心地良い読書体験を完遂出来ました。 やはり真髄はバランスですね。 何気にいっぷう変わった人物造形配置のたくらみも見事です(たぶん本作充実の肝はそこ)。 もう少し彼の初期作を読んでみたいと思わせる、人気作家内田康夫のデビュー作でした。 | |||
| No.759 | 5点 | 傾いたローソク- E・S・ガードナー | 2017/11/04 19:42 |
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| 仄かな社会派要素を匂わす”言えない事情”の中にアリバイ乃至逆アリバイ(とは違うか?)の興味が芬々。会話の粋もジャスト・イット。メイスンとデラの関係がS&Mっぽくなるシーンもあったりして(←誤解を招く書き方ですが)。犯行現場と目されるボート内の細やかな物証捌きは宇宙(の一画)規模のダイナミズムがバックボーンとなり(何しろ地球と月が相手だ)、裁判所と犯行現場を股にかけ実にプラグマティックなロジックと直感のマリアージュ劇を見せてくれるわけですが。。。。
時折トライしてみるペリー・メイスン、やっと、初めて、出だしから興味深く中盤を面白く読み進める事が出来ました。結末の真相暴露だけ、微妙に期待ほど踏み込み深くなく、ちょぃとササッと通り過ぎて行きました。いっそクイーンばりに一本の”傾いたローソク”から超絶論理演算をスルスルと紡ぎ出してくれて構わなかったのに。。ともあれ、個人的に初めてのメイスン(というかガードナー)合格点(5.0点超え、5.3程度)です。まだほんの数作しか手を付けてませんけどね。 |
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| No.758 | 5点 | 犯罪交叉点- アンソロジー(国内編集者) | 2017/11/03 01:03 |
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| カサックの「殺人交叉点」と間違えちゃいそうですが、こちらは良い意味でぐっと緩めの鉄道ミステリ集。編者は鮎川哲也。
急行しろやま(中町信) /歪んだ直線(麓昌平) /殺意の証言(二条節夫) /急行十三時間(甲賀三郎) /鬼(江戸川乱歩) /轢死経験者(永瀬三吾) 《徳間文庫》 たしか甲賀さんの作でしたかね、夜汽車に乗って紙袋入りのピーナツをボリボリするってシーンが妙に忘れられません。 |
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| No.757 | 7点 | 終着駅- 森村誠一 | 2017/11/01 04:25 |
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| 別々に田舎から出て来た女一人と男二人は中央線内で知り合い、新宿駅で別れた。 二年後、男の一人は屍体で見つかり(高層ホテル密室殺人!)、もう一人は行方不明。。 その後も事件は連発、都合五件!!!!! 錯綜する事件の連関性には偶発事項もちょィと目立つが。。 熱い人間ドラマと相当に複雑な謎解き興味が堂々ぶつかり合った力作である事は確か。 機会があったら、読んでみるといい。 | |||
| No.756 | 8点 | セカンド・ラブ- 乾くるみ | 2017/10/29 15:05 |
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| そりゃ私も読み返しましたよ、アノ部分。。(セックスシーンじゃないよw) だけど、ァんだよそんダケのオチかよ。。。と悪態ツイてからよぉく考えてみたら、フィードバック回路になってんじゃねえか。。(だからこそ最終章、古風なほど丁寧なドンデン返しの説明を。。。)イッセーさんやのりちゃんさんがその様な主旨の評を書かれる意味がよおく分かりました。こりゃ確かに、「イニシ」より悪どく手が込んでるかも知れない。 ※これ言うと微妙にネタバレ&逆ネタバレかもですが。。。。「イニシ」が仮に日常の謎・叙述ミステリだとしても「セカン」の方は日常の域からはみ出してるってか、はみ出してるかも知れないってか、、、(あのオチの事じゃないよ)、、そこにこそ、本作の怖ろしい秘密が蠢いていますよね。。。。ヤバそうだなあ、乾さんって。もっと読もっと。
そうそう本作は「イニシ」に較べると表面的によりミステリっぽいというか、割と早い段階からミステリらしい怪しいエピソードが出て来たり、積極的に疑惑を生むストーリーの流れになっていたりします。ので、恋愛小説なんてカッタリーという人にもさほど苦にはならないかも。 でもやはり私は、まるで「叙述トリック版 黒いトランク」とでも呼びたくなるほど緻密で美しい企みが網羅された「イニシエーション・ラブ」に軍配を上げます。それでなお「セカンド・ラブ」は素晴らしい作品だと思います。 ところで本作、こう見えて意外と戦後の名作「●青殺人事件」を思わせる所があったりしますよね。。 |
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| No.755 | 7点 | 少年探偵ブラウン- ドナルド・J・ソボル | 2017/10/28 09:05 |
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| ジュニア向けオリジナル短篇ミステリの代名詞であり金字塔である本シリーズはThe Rolling Stonesと同期の’63デビュー。
主人公、エンサイクロピディア(百科事典=博学の象徴)ことリロイ(ロイ)・ブラウンは磯野カツ夫と同じ小学五年生だが学業成績や性向はずいぶん違う。そのパパはフロリダ州アイダヴィルなる小地方都市の警察署長。ママはたぶん美人。相棒のようで用心棒のようなガールフレンド、サリー・キンボールは腕っぷし自慢の大柄美少女。仲間にチャーリー・スチュアートやハーブ・スタイン(なんか名前が格好いい)等々。少し年上の不良グループ「タイガーズ」を率いる敵役は陰険系いじめっ子のバグズ・ミーニー(日本語で言うと「陰険クソ野郎」みたいな酷い名前。この名のせいでグレたんでなかろうか!)はいつも最後はグループともどもリロイの頭脳とサリーの腕力にとっちめられる運命。しかし本当の不良は、より年長のハイスクールドロップアウト、いつもインチキ商売でガキどもから金を巻き上げようと企んでは結局エンサイクロピディアに窘(たしな)められるウィルフォード・ウィギンズ、こいつはヤヴァい、だが魅力的だ。マニア向けでは「タイガーズ」をビビらせる年上の「ライオンズ」なる半グレ(?)集団も稀に登場(だがやはりリロイの詭計に討たれて退散)。んでパパが警察から持ち帰った未解決事件や、身の回りで起きた不可解な現象やらバグズの陰謀やらウィルフォードのセコい投資詐欺やらを次々暴きに暴いて、、まァなんともカラフルに愉しいお話がいっぱいなのですよ。 謎と解決の核心は推理クイズ的ちょっとした知識頼みのものがほとんどなわけですが、それがそのまま少年少女の知識欲に訴えるという側面も見逃せず、また何より超若い読者を「謎と謎解き」の魅力の前に晒すという社会的使命(?)に真正面から応えんとするその心意気や如何! おっといつもの癖で美辞麗句でした。 便宜上、シリーズ全体(まだ続いてんのかも知んないが)を評価対象と致しました。(一巻ずつ評したいというコアなファンの方は別途是非どうぞ。私も強いて言えば”ENCYCLOPEDIA SAVES THE DAY”が特に好きです。) 同著者「2分間ミステリ」の評でも同様のこと書きましたが、本作の原書群も英語学習のテキストに最適! 私も、幼少の頃に翻訳も読みましたが、むしろいい大人になってから原典で読んだほうの比重が高いです。 蛇足: Roy Brownというと旧いR&Bというかロッキンブルーズというかジャンプというか、とにかくイカした音楽の人と同姓同名でもあるです。 |
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| No.754 | 5点 | 殺人鬼登場- ナイオ・マーシュ | 2017/10/25 21:38 |
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| 物語は「意外な被害者」から発動! ここでグイッとつかまれたんだが、そこ以外は全般的に古式ゆかしくも軽~ぃ調子でぶっ通し、最後まで使命感(俺には、日本で埋もれたこの小説を掘り返す義務がある! 的な)も無く、ほんのわずかな倦怠を引き摺りながらもスタスタ読み終わってしまいましたよ、ってな感じで。詰まらなくはないですだよ。たしかに犯人設定は意外っちゃ意外なんだが、その暴露に行き着くまでの経緯ってか伏線なりレッドヘリングなりロジックってか何だか、あと最後に犯人に仕掛られけたトラップもね、グッと来ないんですよ、浅くて、ちっとも驚けないしミステリ的な感動もないんだもん。。まあその分ちょっとしたメロドラマ要素で当時の読者のご機嫌を伺ったってとこか。そうそう、ユーモアはやっぱり悪くないですよ! んだども現代日本のミステリ者に必読って事もなかろう、が、前述した「被害者の意外性」に限って言えば個人的に読んで良かったと思います。そいや「目つきに関する証言」だったか、あれはちょっとグッと来たな。私が読んだのは大叔父から譲り受けた旧ゥ~い新潮文庫(第二版、白帯紛失)なのですが、奥付を見ると初版からの間に結構な年月が経っており、当時(昭和三十年代)からあんまり日本人受けしてなかった事が偲ばれます。訳が旧過ぎるんでしょうが「シャネル第五号」ってのは笑いました。なんかマリリンとコント55号が時空を超えてコラボしてるみたいで。 「辻褄の合わない調子で鳴り止む電話のベル」ってのも妙に心に残った訳文。大久保康雄。
しつこいけど、この犯人設定、たとえば調子いい時のアガサだったら、大き過ぎて見えないくらいの豪快なツイストを噛ませて見事に最後まで目くらまし、いやポイントは単に真犯人に気付く/気付かないじゃなくて、如何に真犯人暴露に深みを見せるか、その結果として驚かせるか、そこんとこ上手くやって傑作に仕上げてたんじゃないかな、なんてねえ。まあ本作はジャンル的に軽本格で、そんな重い内容を求める事も無いんでしょう。ただ私の個人的好みにジャストフィットと行かないだけ。 |
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