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斎藤警部さん
平均点: 6.68点 書評数: 1243件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.16 6点 ら抜き言葉殺人事件- 島田荘司 2015/11/13 13:00
傍流作を思いっきり書き飛ばしてみたよな気配充満!とは言え赤川次郎風ユーモア・ミステリを想像するとちょい裏切られます。軽社会派?みたいな展開で風呂敷軽く拡げて、最後まさかのシリアス真相に唖然。。(ひょっとして後付けのハウダニウット?) しかしま、ミステリの形を借りて持論を世に問いたかったのではと見えるよな、ふとした言葉の欠片もちらほらですね。まいつもの事っちゃそうなんだけど。本作は特に。
いちおう言っときますけど「ら抜き言葉」ってのは「アイラブユー」が「愛撫ユー」になるとかの類じゃないんですよ。当たり前か。

No.15 6点 踊る手なが猿- 島田荘司 2015/10/05 23:59
表題作と「暗闇団子」のせいか、どこかしら人情ってヤツを漂わせる短篇集。
(他の二篇はそうでもないのに)

人情もありつつ表題作のトリックの微妙なバカっぽさ(実際の行為ならは頭イイの範疇だろうが、小説のネタとしては。。面白いけど)は「6とん」の人を思わせずにいられませんねw

No.14 6点 毒を売る女- 島田荘司 2015/10/05 23:53
島荘なのに、島荘ならではのこの軽さはいい。表題作の主題なんか現実世界なら怖ろしく重い脅威だけど、小説となるとこれがまた違う感触。 全体を通して、伏線もミスディレクションも意外な結末も揃ったファンサービスのエッセイ集を読んでいる様な気分になった。 あとやっぱり、他の作品群にも増して大音響の音楽が流れ続けているような気がしてね、文章に。

No.13 6点 展望塔の殺人- 島田荘司 2015/10/05 23:44
社会恐怖こそ最短最強のエンタメ・スイッチ! と割り切って世のダークサイドに寄宿している様にも見えますが、どうしても行間から滲み出す問題提起や絶望の味わいは島荘の高い当事者意識あればこそ。

都会的、かつ嫌な後味の作品が並びます。トリックは堅調、ぐっと来る結末の意外性は流石の冴え。
表題作の派手で突飛なスタートラインは昔の西村京太郎を思わせる。

でもやっぱり島荘は長篇がいいな。

No.12 9点 網走発遙かなり- 島田荘司 2015/08/27 20:10
この連作集が描く人間ドラマの深さには唸る。 「奇想、天を動かす」終了後の長い長いアンコール・ピースと言った趣がある。 「奇想」が社会派と新本格の奇蹟の融合だとしたら、そこにサスペンスの冷風を強く吹き込ませたのが本作であろうか。 

「奇想」があれ程の人気なら、「網走発」の方ももう少しばかり愛されて欲しいなあ、と切に思います。
(短篇集としてでなく、四つのパートに分断された長篇だと思って読むのが趣深くて良いのではないかと)

No.11 10点 奇想、天を動かす- 島田荘司 2015/08/27 19:57
読了直後「こりゃあ満点作だ!」と大いに感服したものであります。 私にとって島田荘司おじさんが特別の存在であるのはこの作品に出遭っていればこそ、かも。

冒頭より何やら社会の大きな問題を取り上げているようなオーラが漂うのですが、いったい「社会の何」が問題になっているのか相当読み進まないと見えて来ない、ってのがミソかも。この巧妙な作りが実に刺激的に知的興味を誘い、やがて明かされる「社会的問題」への関心もひとしお深まるというものです。

読了後、自然と「こりゃ社会派と新本格の奇蹟の完璧な融合だ!」との思いが湧きました。いや融合が完璧かどうかは分かりませんけど、完璧に面白いミステリ小説には間違いないと私には思えます。 何しろあの、規模の大小取り混ぜたバカトリックの数々(?)がごく自然な美しいものとして受け入れられたんですもの、大したマジックを掛けられたものです。 「手品が好き」の一言で全てをアリにする(全てを引っくり返すのではなく!)という大叙述トリック(?)にもやられました。   

それにしても、主人公の気の遠くなるような悲惨な過去、哀れな境遇は本当に強く記憶に留まりますね。

No.10 7点 暗闇坂の人喰いの木- 島田荘司 2015/08/09 00:31
薄気味の悪い、歴史が蠢く物々しい筆致が読ませます。
「巨人の家」の心理的物理トリックには頭の血がサーッと引く感動を覚えますが、最後に明かされる「横浜の家」の物理的物理トリックは、、突然のアホアホ大団円を迎えられても困ります。

No.9 8点 眩暈- 島田荘司 2015/08/09 00:14
冒頭から謎の巨大エネルギーに呑み込まれました。島田荘司ミステリならではの壮大なトリックに貫かれた、ただ謎とその解決にのみ捧げられる大河物語。

「手記」に、ある種の悪魔的アリバイトリックめいた秘密が隠されていた事には全く気付きませんでした。 手記内容の異様さも然ることながら、異様なマンションの構造、光景も記憶に残るなあ。。

読後振りかえれば、全ては謎とその解決の為に建築され破壊された幻の楼閣がそこに。 眩暈無しにはとても立ち去る事が出来ません。。

No.8 7点 Yの構図- 島田荘司 2015/07/01 18:39
最後の「           」に唖然愕然騒然!! しかしどちらかと言うと肩透かしに近い、バカ結末の一種と言っても過言では無い。。のではなかろうかあ。。

アリバイ崩しのハード本格にハード社会派を継ぎ足し損ねた感はある。 作者の意気は買う。 言い遅れましたが、かなり面白い。

No.7 7点 火刑都市- 島田荘司 2015/07/01 17:58
何を措いても動機にびっくりの一品。決してバカ動機ではありません(たぶん)。スケールで圧倒する物理的大動機(??)とでも呼びたくなっちまう。
無理を感じる所もあるが、ミステリ小説として充分アリでしょう。
「ブラタモリ」と「宮部みゆき」が一緒になったような趣も。 こういう勉強させてもらう本はいいね。

No.6 8点 北の夕鶴2/3の殺人- 島田荘司 2015/06/09 00:57
私にとって「斜め」とは似て非なる(とは言えバカはバカですが)壮大なトリック解明に辿り着くまでの魅力的な謎と謎解きこそがこの小説の美点の中核。

それにしても、御手洗でなくまさか吉敷警部がこんな事件に遭遇するとは! 彼が主人公のせいで幾分抑制の効いた渋い雰囲気で進む物語が、最後のトリック究明で一気に大バカ大会に突入、しつつも微妙にまだダンディズムの薫りを残している(のか?ww)というまるで泉昌之のマンガを思わせるクスクス笑いの感覚はお笑い的は大好きだけど推理小説としてはどうだかなあ。でも島荘さんの作品(ご本人も?)ってそういう何というか「モテそう+可笑しい」みたいなムウドがどこかしら付いて回りますよね。。
とにかく、面白いです。 長い間、御手洗ものと勘違いしてました。

No.5 9点 異邦の騎士- 島田荘司 2015/06/04 15:28
長い長い恋愛ストーリーは最後に熱い友情物語の裏打ちとなり、また自らの輝きを留めました。でもやっぱりこれは、ひどくトリッキーでスリルに満ちた本格推理小説。 ある「ゼロ時間へ」向かって進んで行く救済と出逢いの物語でもありますね。。

No.4 7点 死者が飲む水- 島田荘司 2015/06/02 18:40
手堅い中にも荘司さんらしい華がある、社会派寄りアリバイ崩しの秀作。
記憶しているのはそれだけ。トリックから何から忘れてしまった。いつか再読したい。

No.3 5点 確率2/2の死- 島田荘司 2015/05/19 23:24
スッパリ楽しいB級サスペンス。子を誘拐されたプロ野球選手が犯人の指示でいっぱい走らされます。 読んだそばからストーリー蒸発しちゃいそな軽さですが、本当に忘れちゃって途中まで初読のつもりで再読しちゃった事があったもんで、ある程度憶えてしまいました。 悪くない。

No.2 6点 斜め屋敷の犯罪- 島田荘司 2015/05/15 12:12
この大バカトリックは、、、 何ですかねえ、動物にたとえると。 物語の筋もすっぱりと忘れてしまった。 動機が結構ドラマチックなんでしたっけ? 本当?? 「占星術」と並び賞する事は、私の嗜好では出来ません。でも読んでいてつまらなくはなかった。ドタバタしてて面白かったかな。 しかし本当にこの大仕掛けで攻められたら、それも意識があるところでやられたら、途中で事に気付いたら、その怖ろしさは半端じゃないですよねえ。。

No.1 9点 占星術殺人事件- 島田荘司 2015/05/08 12:15
有名なメイントリック、原理だけ取れば昔からあるシンプルな数学パズルの様なものだが(だからこそ某所であっさり剽窃されたのかも?)それを連続殺人ミステリー小説の枠組みにしっかりと嵌め込み、伏線やら手掛かりやらで補強してシラッとミスディレクションの粉を振り掛け、人間を中心に据えたストーリーで八方包み込むとこれだけ驚天動地、空前絶後の新古典大作に仕上がるのだなあ、参った、こりゃあ凄いぜ。
メイントリックは先に知ってしまっていたものの「最後に○○が真犯人として登場する筈だ!」とハラハラしながら読み進めるスリルは相当なもので、全くタレる所が無かった。だが文章は意外と弱い所もある(シリアス部分とオチャラケ部分のツギハギ感など)。そこで0.55点減点、9.45点は四捨五入で9点だ。

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.68点   採点数: 1243件
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