皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ミステリ初心者さん |
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平均点: 6.20点 | 書評数: 388件 |
No.228 | 7点 | アリス殺し- 小林泰三 | 2020/08/17 17:19 |
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夢の中での不思議の国アリスでの殺人が、現実にも起こる…という風な感じで、ファンタジーやSF?の要素を取り込んだミステリです。 文章は非常に読みやすく、ほぼ一晩ですべて読み終えることができました(笑)。調べると、同作者の同コンセプト作品があるらしいので、いまから買うのが楽しみです(笑)。 実は私は、不思議の国のアリスのことを結構知りません(笑)。なので、細かいネタはわからないのですが、それでも楽しむことができました。 全く関係ないですが、アリス探偵局を思い出しました。 推理小説としても楽しめる内容でした。 まず、不思議の国での殺人事件についての謎があります。これについては、証言者である白兎の勘違いからアリスが濡れぎぬを着させられてしまうのですが、1ページ目から伏線があり、また物語中盤にも伏線があります。論理的にだれが犯人かわかると思います(私は当てられなかったが(笑))。 また、人物の入れ替わりが起こっていました。つまり、別のアーヴァタールと自称する人物が複数人いました。正直、この設定でこれは予想できたのですが、まさか主人公とペットも入れ替わっているとは思いませんでした。犯人の入れ替わりが強調され、主人公とハム美間の入れ替わりを隠しているようにも感じます。また、主人公とハム美の入れ替わりは、ほとんどの登場人物も読者とともに騙されている、変わったタイプの叙述トリックだと感じました。 不思議の国のほうが現実であり、現実と思われた世界が仮想世界という展開は予想できました(笑)。 余談ですが、非常に似た設定の漫画が存在するようですね。そちらは夢が前世?らしいです。見たことはないのですが。 読みやすさ、犯人当て、叙述トリックによる驚き、すべてそろった良い作品でした。しいて難癖をつけるとしたら、グロ表現が過激ということ(笑)。 |
No.227 | 6点 | 幽霊の2/3- ヘレン・マクロイ | 2020/08/16 17:21 |
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登場人物がまあまあ多く、やや読むのに苦労しました(笑)。 パーティでの毒殺があった後、探偵役ベイジルの調査によって被害者の正体が徐々に明らかになっていき、物語全体の謎が解けていくという流れです。ベイジルが出てきてからは物語が盛り上がっていき、読むスピードも上がっていきました。 本全体の”何が起こっていたのか?”系の謎に関しては、面白い2時間ドラマや映画のような趣があり、楽しめました。 一方で、毒殺トリックとしてはあまりに小粒で必要性を感じませんでした(笑)。私は面白い毒殺トリックをいうものをまだ見たことがなく、ただ殺害方法が毒殺だったという作品ばかりです。どうやって気づかれずに毒をいれたのか?や、どうやって特定の人物にだけ毒を飲ませられたのか?などを問う小説は、思い出しても3~4作品だけであり、しかもその小説のメイントリックではありませんでした。そのため、幽霊の2/3の帯に書かれた毒殺の文字に、勝手に心躍らせていました(笑)。 私の勘違いもありましたが、フーダニットや毒殺トリックとしては弱いと思います。 |
No.226 | 5点 | 『ギロチン城』殺人事件- 北山猛邦 | 2020/08/10 01:18 |
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買ったのは正月前後ですが、城シリーズ最初がクロック城だったことをしり、クロック城からよみました。しかし、wikiによると、作品毎に世界観が独立しているシリーズとのことなので、今回はギロチン城を読みました。 とても読みやすい文章であり、クロック城よりも専門用語もなく、とっつきやすいです。首切り人形の伝説から始まり、頼科のナコが登場してからすぐに城までたどり着きます。登場人物紹介はないですが(というか書けない)、認証システムでの表がその役割をしてしています。名前も覚えやすいですね(笑)。 推理小説部分に関しては、大掛かりな城の仕掛けを利用した密室殺人と、読者をだますために用意された叙述トリックがあります。 密室殺人に関しては、状況が完璧すぎたため、まるでわかりませんでした。回廊の廊下が円形になっていることが示される前まで、犯人との共犯を疑っていました(共犯でも密室の謎は解けませんでしたが…)。回廊の廊下が円形であるとわかってからは、動くことは予想できたのですが、やはり完全にはわかりませんでした。 叙述トリックに関しても全く予想できませんでした。確かに悠は存在が薄すぎましたが(笑)。頼科たちが藍と初めて会うシーンを読み返しましたが、なるほど藍はしゃべるが悠はしゃべったと書いてはありません(笑)。ただ、首から上と下とで名称が違うなんてことは、通常この世にありえないので、このページを読んで「同一人物だ!」なんて思う人間はいないでしょう(笑) 以下、好みではない部分 ・登場人物は人形を意識してなのか、大量殺人が起こっているにもかかわらず、あまり感情を表しません。一族の血なのでしょうか。そのため、クローズドサークル特有のサスペンス感や緊張感は感じられませんでした。 ・スクウェアの儀式を行う回廊での廊下が動く仕掛けですが、似たようなトリックの作品をいくつか見たことがあります。しかし、それを見るたびに、移動していたら体感でわかるのではないか?と疑問に思ってしまいます。トリックに必要な回転速度も完全にはわかりませんし、人間が動いていると知覚できないくらいの速度って結構遅いものだと想像しますが…? ・一人の人物を小説上二人に見せるという仕掛けもたびたび見ます。しかし、やや強引すぎる気がしますし、小説上効果的でもないと思います。 |
No.225 | 7点 | カササギ殺人事件- アンソニー・ホロヴィッツ | 2020/08/05 18:52 |
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上下巻分かれていて、かなり長い作品です。 まず上巻。その大部分が、アガサ・クリスティーのような雰囲気の古典作品のようで、単なる作中作品でおわらず単体でも楽しめるレベルの作りこみが深い作品です。が、楽しくなってきて、いよいよ事件の解決…というところでお預けをくらってしまいます(涙)。 次に下巻ですが、作中作品の解決部分が見つからず、その作者が死んでしまうという事件が起こります。出版社に遺書めいた文章が送られてきて、自殺ということで片付けられますが、アランの担当編集者(下巻の主人公)が疑問を持ち、事件を追っていく内容になります。 この遺書は偽造されたものであり、手書きで書かれた作中作品が利用されているというアイディアは非常に素晴らしく、かつ伏線も張ってあり、明かされた時にはやられた!と思ってしまいました(笑)。作中作品をうまく利用したトリックです。3ページ目が若干短いのがいいですね(笑)。 最後に上巻では明かされていない作中作品の解決部分が登場します。探偵によって事件の全容が明らかになると読者に別視点が与えられ、今まで見えていた事実が180度変わり、わからなかった部分が氷解していく快感は、まるでアガサ・クリスティー作品のそれでした(笑)。 以下、難癖部分。 ・長いです(笑)。あと、登場人物も多いです(笑)。上巻では探偵が登場するまでなかなか面白くならず、150pあたりまでは読むのに苦労しました。下巻では全体的に苦労しました(笑)。ややテンポの悪さを感じました。もう少し短くできたのでは…? ・アガサ・クリスティーのような作品と書きましたが、好みではない部分もアガサ・クリスティー並みでした。最後に伏線がきれいに回収され、驚きがあるのはよいのですが、それを隠すために大量のミスリードがあり、結局のところ探偵の解決も可能性でしかないと思います。ただ、下巻の、誰がアランを殺したか?についてはよりフェアだと思いました。 |
No.224 | 6点 | 使用人探偵シズカ 横濱異人館殺人事件- 月原渉 | 2020/07/19 13:03 |
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この本の前に読んでいた本が、海外の古典で割と古い訳の本で読みづらかったためか、横濱異人館殺人事件はほぼ一瞬で読み終えられたような気がするほど読みやすかったです(笑)。 推理小説ファン垂涎のツボを押さえられた良い作品です。時代背景、クローズドサークル、見立て殺人、過去の事件、消える死体やよみがえる死体(笑)。わくわくが止まりません。それでいてテンポが非常によく、無駄なところがありません。 推理小説部分も楽しめました。自分は大体のことは推測できたのですが、氷神が久住だと予想できませんでした(笑)。見立ての絵の問題から、犯人は絵をかける人物だとは分かったのですが、なぜか氷神=久住というところまで考えが及びませんでした(涙)。頭が悪すぎますね。дурак(ばか)。 以下、難癖点。 ・この小説全体的に、テンプレート感が強いです。推理小説の魅力たっぷりな構成ではありますが、犯人が自分を殺されたように偽装するトリック(行為自体もおもりを使ったことも)は前例があるものだし、氷神=久住のような最初から入れ替わっていた系もまあよく見るものです(笑)。この小説に個性的なアリバイトリックやどんでん返しがあったならもっと良い作品になったと思いました。 難癖をつけましたが、雰囲気が最高で本格度が強い作品です。探偵のキャラクターがほんの少しだけアニメチックではありますが、やりすぎてないと思います。よいシリーズです。 |
No.223 | 6点 | 僧正殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2020/07/15 03:03 |
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推理小説を読んでいると、さまざまな本で名作として紹介(?)されている僧正殺人事件。一度は読んでおかなくてはと思い、本棚から引っ張り出してきました(笑)。うちにあったのは、どうやら1959年の創元推理文庫のもの。印刷が薄いページがあったり、字が変になっていたり、字が小さかったり、訳が古かったり、とにかく読みづらかったです(笑)。 内容は非常に本格色が強いプロットで、楽しめました。以前読んだグリーン家がいまいちだったので期待していませんでしたが、やはり見立て殺人はワクワクしますね。元ネタのマザーグースは一切わからないのですが、知っている人が読めば。なおワクワクすることでしょう(笑)。wikiを見てみると、見立て殺人部分が横溝やクリスティーの名作にも影響を与えているようなので、そういう意味でも評価できます。また、チェスの話はかっこよかったです(知らないのでよくわかりませんが(笑)) 推理小説部分はというと、今読むとさすがに少々物足りなさを感じます(笑)。キャラ的にはアーネットソンが露骨にあやしい…がアリバイがある(たぶん)。次に怪しく、はっきりとしたアリバイがない(たぶん)教授があやしいのですが(というか、登場人物が死に過ぎていて自動的にわかってしまうが)、王位を窺うものの話をヴァンス達にした時点で、いよいよ役満でした(笑)。 個人的には、もうすこし論理的に犯人が当てられる問題形式のフーダニット要素か、アリバイトリック要素があるとよかったです。 ところで、ヴァンスは間接的に人殺ししちゃっていますが、最後は犯人の自殺でよかったのでは(笑) |
No.222 | 5点 | 彼女は存在しない- 浦賀和宏 | 2020/06/30 00:31 |
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途中、すこし不快な描写がありましたが、文章が読みやすく、すぐに読了しました。 文章の感じから、叙述トリックであり、物語の展開から大まかな仕掛けを予想しました。外れてほしかったのですが、そのまんまでした(笑)。今日、多くの叙述トリックの作品があるので、もうひとひねり欲しかったところです。アリバイトリックものや論理的な犯人当ての作品は、たとえ推理が当たっても外れても、それにかかわらず良い作品と感じることは多々ありますが、叙述トリックに関しては本の序盤で予想が当たると損をした気分になりますね(笑)。 愚痴っぽくなってしまいましたが、蒲田の本が新刊と勘違いさせるところのミスリードは見事でした。 |
No.221 | 5点 | 聖アウスラ修道院の惨劇- 二階堂黎人 | 2020/06/24 23:56 |
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前作とは打って変わって、インディージョーンズのようなトレジャーハンターっぽい趣(?)がありました。頭を切られた神父の正体とその娘を追う警察の視点はやや退屈でしたが、蘭子パートの殺人事件についてと修道院の謎と宝探し(?)は面白く、読了まで時間がかかりませんでした。 推理小説的には2つの大きな事件があり、5~6人ぐらい殺されます。犯人当てというよりかは、密室トリックものという印象です。 私は、第一の密室は皆目見当がつきませんでした(笑)。第二の密室についてはわかりました。ただ、ページ数の割には小粒なトリックであり、前作からボリュームダウン感が否めません。 全体的な印象としては、本としては面白かったですが推理小説としてはいまいちといった感じです。 |
No.220 | 7点 | 三本の緑の小壜- D・M・ディヴァイン | 2020/06/16 23:49 |
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海外翻訳ものには登場人物の覚えにくさを感じてしまいます(笑)。100pぐらいを過ぎてから、それほど苦にはなりませんでしたが。 マンディの1人称視点の文章が、やや冗長に感じることもありましたが、恋愛小説要素には必須であり、最後の感動(?)につながっていてよかったです。 推理小説部分でも非常に良かったです。 なかなか論理的に犯人を断定していて、好感が持てます。それゆえに、犯人の条件が限定されていくので、驚きは少ないかもしれません。しかしそれはフェアであるということだと思います。 犯人のセリフ、「一度危険な目にあったら懲りるのに」的な発言はよい伏線だと感じました。ちょっとヒント過剰だったかもしれませんが。 私は、グウェンは怪しいとは思いましたが、あまり真剣にいかにして殺せたか=どうやって被害者のいる場所を知ることができたのかを検証していませんでした(笑)。そのため、犯人を当てたとはいえません。レスリー殺害周辺はヒントがちりばめられていて、素晴らしいですね。 以下好みでない部分。 非常に不満点が少ない作品ですが、あえて挙げるとすると、シーリアの目撃情報があやまっていました。しかし、これはシーリアの性格や健康状態を思えば察することができますし、文中でも警部やベンおじさんが示唆(多分)していましたし、フェアだと思います。 |
No.219 | 6点 | 漂流者- 折原一 | 2020/06/10 01:29 |
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500ページを超える力作です。風間と美智代の漂流の件はやや長いと感じることもありましたが、サスペンス色の濃く、全体的にはすいすい読めました。とくに風間が三田村夫妻と佐伯と美智代をあつめた、そして誰もいなくなった風復讐劇が始まってからは先の展開が気になって仕方がなかったです(笑)。 推理小説的には、しょっぱなから風間の口述テープから始まり、三田村の復讐ノートという作中作のような複雑な構造でいろいろ妄想させられます。しかし、肝心の叙述トリックの肝が、真っ先に思いつく類のものであり、やや拍子抜けしました。推理小説的にはいまいちな印象です。 |
No.218 | 6点 | 『クロック城』殺人事件- 北山猛邦 | 2020/06/02 01:29 |
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”城”や”館”や”荘”などにめっぽう弱い私は、クロック城をチェック済みだったのですが、なかなか手に入りませんでした(笑)。ブックオフにはギロチン城?が売っていたので購入しましたが、城シリーズ(なのか?)ものは1作目から読みたいですよね。 ちなみに今wikiをみたところ、本ごとに独立した物語のようですね! じゃあギロチン読んじゃおうか(笑) 文章は非常に読みやすいです。登場人物のしゃべり方の癖やキャラクターなんかも差別化できていて、誰がしゃべっているのか混乱することはありませんでした。 また、終末世界であり、専門用語や幽霊的な存在、軍事勢力や真夜中の鍵(結局これなんだったの(笑))と、スクウェアのRPGなみの雰囲気でした。なんだかヒロイン候補(?)もいっぱいいましたね(笑)。 推理小説部分について。城を冠するだけあり、大掛かりなトリックが楽しめます。いくつかヒントも出ており、フェアさもあって良いです。 私はなんとなくい時計の針を移動するトリックはわかりました。位置的に鈴が犯人だとは思いました。しかし、未音が覚醒し、真探偵として真犯人を指摘するシーンで語られた菜美の推理に対しての反証の”鈴は時計を読めない”という指摘に戦慄しました(笑)。なんでこれに気づかなかったのか…。ただ、菜美によって否定されてましたが(笑)。 以下不満点。 ・鈴は時間がわからない→からの、法医学の知識によって時間を計っていたというアイディア自体は狂っていて最高なのですが、時計が読めないのならどう動くかわからないのでは…? 読めはすれど、時間の感覚だけがないということでしょうか? ・未音の推理に対する菜美の反証は、可能性の域を出てない気がします。でも深騎犯人よりはいいかなぁ…。 ・結局真夜中の鍵ってなに(笑)。誰? 世界はどうなったの? |
No.217 | 5点 | the TEAM- 井上夢人 | 2020/05/29 21:24 |
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裏表紙の紹介文から、変わった設定に惹かれて購入しました。しかし、期待したよりも普通の短編推理小説でした。非常に読みやすくて悪くはなかったですが、それほど心に残らなかったです。 |
No.216 | 6点 | 丹波家の殺人- 折原一 | 2020/05/21 18:30 |
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光文社文庫の割と新しいのを購入しましたが、シリーズ④と書いてあります。wikiをみると黄色館の秘密よりも早く出版されているのですが、この順番で正しいのでしょうか(笑)。 ちょっと間抜けでおもしろい黒星警部が魅力のシリーズで、本作もとても読みやすかったです。丹波家の人々が竜造の遺産を巡って争い、その中での連続殺人という、横溝作品のような良い雰囲気があります(笑)。こういう展開は何度読んでも飽きませんね。 今回も密室が多数存在します。末子殺しの密室はなかなか考えてしまいました。私は神谷が犯人かと思い、ミスリードに引っかかってしまいました(笑)。千春と共犯や、リエの本当の父親なのかと妄想していました(整合性とかの検証は全くしてません(笑))。末子殺しの足跡のトリックは、他の作品で見ました。その作品は大好きなのですが、本作のほうが早く世に出ているということに驚きました! また、途中に挿入される殺人者の独白もよいヒントと伏線であったと思います。 好みではなかった部分 ・虹子が出ない(涙)。部下の竹内も悪くないのですが、やはり黒星警部とのコンビは虹子が一番です。探偵役は最終的にリエということになるのでしょうが、リエは丹波家であり、まじめな性格なので作風もまじめになってしまいました。個人的にこのシリーズにはユーモアも期待していたので、ここは残念です。 ・密室事件は多かったが、末子殺し以外はあまり価値を感じませんでした。健太郎殺しについては、電気による外部からの犯行…という密室をたびたび見ますが、これって本当に殺せるものなのでしょうかね(笑)。まあ本作はいたずら程度だったようですし、それが犯人の独白で明らかになっているのですぐわかりましたが…。そして涼はただの自殺。 この作品でシリーズ長編が出てない…ということは黒星警部シリーズはもう出ないのでしょうか(涙)。 |
No.215 | 6点 | その可能性はすでに考えた- 井上真偽 | 2020/05/18 22:15 |
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なんとなく難しく読みづらい作品なのかなと思っていましたが、非常に本格度が高く、またキャラクターも適度に漫画チックで読みやすかったです。主要キャラクターが全部でた感じがあり、続編もあるみたいなんで今から楽しみですね(笑)。 本全体を見ても無駄なページがあまりない印象です。相談者である渡良瀬が過去に体験した事件について語るのですが、それほどページ数がなく、それでいて多くのトリックを考えられる伏線とそれを否定する論理の伏線が同時に張られています。 多くの登場人物が出るのですが、それぞれのトリックを披露するさいに同時進行でキャラクターの説明もされている感じで、読者に対して変に流れを切らずにテンポよく進行しています。 物語は、探偵は奇跡を証明したい…なので、それ以外の可能性を全て否定する、といった話の流れです。続々現れる敵のトリックと、それを否定する流れが、どこか毒入りチョコレート事件を思わせます(?)。敵一人一人の語る可能性はそのままアリバイトリックものとして楽しめる上に、それを探偵が否定するところは非常に論理的であり、端正なフーダニットの消去法を読んでいる感覚で楽しめます。1冊で二度おいしい。 以下、好みではなかった部分。 ・トリック部分がやや馬鹿ミス的。さらに、可能性があった程度。これは、本の中では、奇跡を否定するだけのためのトリックでいいことになっているためですが、本格ファンとしてはもうちょっと必然性があるトリックが見たいところ。また、物語終盤に明かされる、探偵による事件の解決は、最も無理の無くかつ読後感がよい結末ですが、これも本格ファンとしては悪意のある殺人事件がみたかったところ(笑)。 ・探偵によるトリックを否定する論理の難易度が高すぎる。これは私の頭がパープリンのためかもしれません(笑)。 ・5章の、探偵の反証が互いに矛盾している問題は、矛盾しているから奇跡なのでは?と思ってしまいました(笑)。なんで奇跡を証明したい側が現実世界の論理性を保たないといけないのか(笑)。頭の悪い私には理解できません(涙)。 なかなか気に入ったので、続編も楽しみです。 |
No.214 | 7点 | 倒錯のオブジェ 天井男の奇想 - 折原一 | 2020/05/11 17:37 |
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江戸川乱歩の短編?を思わすような、天井裏にひそむ男がいる話です。穴から毒薬を垂らして口を狙うシーンなど、オマージュ的な要素があります。序盤の天井男は、時子の妄想なのか実在するのかがはっきりとはわからず、その正体をいろいろと妄想するのが楽しいです。 また、登場人物もキャラクターが濃くて惹き込まれました。ボケているのかボケていないのか、あるいはとても賢いのか、しかし意味不明な行動をとる時子。夫からDVを受け、かわいそう…だが出会った男を即利用する直美。DV糞夫。そして小野寺(笑)。登場人物が全員どこか狂っていて、おもしろ(?)かったです。途中、ややダレる展開もありましたが、全体として読みやすかったと思います。 推理小説的要素は、いくつかの叙述トリックがありました。 " まず大きなものが、時子の主観の話と直美の主観の話では同じ時間軸ではありません。プロローグに、飯塚家2階で女性の密室殺人が起こり、それを時子が発見し、自分でそれを解き明かすことを決意します。そして天井男の主観となります。これを最初に入れることで、このシーンが物語の時系列の最初にきていると勘違いしてしまいます。また、このシーンの天井男の文章を太字ではなく、本の後半に登場する時子によって書かれた天井男ノートではないことが示唆されていて、よいミスリードと伏線になっています。 小野寺は時子と直美の両視点に登場し、それがまた同時系列と混同させるように書かれています。それだけのために登場させただけでなく、天井男の正体にするところも大きな驚きであり素晴らしいと思いました。 時子が密室を解けないでいることも伏線であると思います。読者にはプロローグや(天井裏)のパートの文章で天井男の存在を知らされているし、時子もまた天井男を挑発するシーンが多々あり天井男を認識しています(いるように読めます)。読者には、密室にした犯人が天井裏に逃げたに決まっているとわかりきっているので、なぜ時子が密室を解けないでいるのかが疑問だと思います(笑)。時子のボケ具合と推理能力はどうとでも取れるのですが…。これは物語前半の太字部分には天井男がいなかった伏線だと思うのですがどうでしょう??" その他の叙述トリックとしては、時子の正体はその娘の春江でした。これは味付け程度の叙述トリックでしたが、この小説に厚みをもたらす意味ではよかったです。正直、時子にはその伏線も多く、また時子の物語の文章では時子のことを”彼女”と表記しているし、春江しかないと割と早い段階で思っていました(笑)。直美が時子になる展開も妄想しましたが、30代が80代になるのはやはり不可能ですね(笑)。勝男を天井裏に住まわすというのも、なかなか狂っていて好みだったのですが(笑)。 私は割と早い段階で、密室殺人の被害者が直美であり時系列がずれていることに気づきました。しかし、天井男の正体に気づけませんでした(涙)。登場人物の中であり、飯塚家の中を知ることができたのは小野寺ぐらいなので、よく考えればわかったはず。非常に悔しかったです(笑)。 以下、好みではなかった部分。 ・時子の妄想天井男がないとこのトリックは成立しませんが、一方でボケてはいないので、やや作者に都合がよい妄想と頭脳をもったキャラクターだと思いました。 ・小野寺の犯行後の行動は意味不明だと思います(笑)。それも狂っていてまた良しですが。 ちょっと甘めかもしれませんが7点にしました。 長ったらしい文章を書いてしまってすいません(笑)。 |
No.213 | 6点 | 水の迷宮- 石持浅海 | 2020/05/02 01:02 |
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水族館のなかで始まり、そのまま水族館の中で終わります。やや特殊な状況での事件です。 序盤は水族館の説明や、登場人物の説明があり、すこしだけ読みづらい感じがありましたが、電話での脅迫が始まってからはテンポが良かったです。 胸を打つ感動…というほどでもないのですが、読後感は非常に良いものでした。タンカーを丸々水族館化し、地球を再現するアイディアは、私も見てみたいと思いました。 推理小説としても、論理的に真相を予想できるようなヒントがちりばめられており、なかなか面白かったです。大島殺害の際に処理をしなくてはならなくなったボラから犯人を推測するところが一番よかったです。 ガチガチの本格推理小説としてみた場合は少々軽い印象もありますが、広義でのミステリーとしては質が高かったです。 |
No.212 | 5点 | 黄色館の秘密- 折原一 | 2020/04/20 17:40 |
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ネタバレをしています。
黒星警部と虹子の掛け合いが楽しいシリーズです。クローズドサークルでもあり、非常に読みやすく、読了までに時間はかかりませんでした。 また、私が気づかなかったのかわかりませんが、前作にあったような他作品のネタバレはなかったように思えます。 ユーモアミステリということで、本格推理小説として評価するのはナンセンスかもしれませんが、いちおう不満点を書きます(笑)。 ・竹内警部が記述者として潜んでいる叙述トリックのようなしかけは必要なのでしょうか(笑)。このトリックを用いた他の素晴らしい推理小説を見たときに驚きが半減してしまいそうです。 ・いろいろな人が、いろいろなところで、いろいろなことをしているため、真相の推理は不可能に思えます(笑)。 ・密室が2つあります。しかし、よくあるパターンとはいえ、好みのものではありませんでした。滝村明美の死は特に… ・黒星警部が目立っていたのはよかったのですが、虹子があまり出てこなかったのは残念です。 |
No.211 | 6点 | 向日葵の咲かない夏- 道尾秀介 | 2020/04/13 00:45 |
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さわやかな表紙とタイトル?のわりに、意外にも読みづらい要素が多い作品でした。悪いという意味ではなく、ホラー感特有の不安感や不快感がありました。 明らかにおかしな主人公とその母親。それだけでなく、ほぼすべての登場人物がどこか変な感じであり、読んでいて漠然とした違和感や不安感におそわれます(笑)。私が、ミステリ以上にホラー初心者だからかもしれません。ジャンルは本格/新本格となっておりますが、個人的にはホラー7:3本格な感じがします。 途中まで、S君が探偵、主人公がワトスン役のような感じで進んでいきますが、中盤あたりからS君の様子もおかしくなってきます。嘘を隠しているような感じです。S君の蜘蛛化はなんだかかわいらしくて、唯一の清涼剤だったのですが…(涙)。 私はS君の登場から、S君だけでなく他の人物も人間ではないやつがいるだろうと高をくくっていました(笑)。 ミカは真っ先に人間ではなさそうだと思いましたが、ミチル君の母親が服を着せたり、化粧をさせたりしているため、ここが難点でした…。猿なのかと一瞬考えました(笑)。しかし、母親も狂っている描写が十分にあったので、やはり人形ということに気付くべきでした(涙)。 スミダさんが人間ではない(金魚かとおもった(笑))のは何となく予想がついたのですが、トコお婆ちゃんが猫なのは完全に予想外でした(笑)。小父さんは狂ってはいないと思うのですが、小父さんの言動はよいミスリードでしたね。 ラスト数ページのシーン、私はあまり理解できないのですが…。ミチル君の母親の「ミチルもミカも助かった」とはどういうことなのでしょうか? ミチル母の視点では、ミチルがトカゲをミカだと認識しているのを認めつつ、人形をミカと思っていたはずなのですが、ラストではトカゲをミカと認識しているのでしょうか? それとも、助かったミチルによる幻覚なのでしょうか?? ※追記:解説サイトを閲覧しました。伸びている影が一つ=ミチルのみが助かり、ミチルが自分の都合の良い世界を作っているようですね(笑)。お爺さんとの会話はなんだったのか…(涙)。 追記2:さんざんミチルって書いたんですが、ミチオだったみたいですね(笑)。これは恥ずかしい(笑) 以下、推理小説としてみた場合の不満点。 ・非常に多くの登場人物が嘘をついている…あるいは、精神に異常がある…あるいはミチル君による幻覚幻聴?の可能性があり、すべてを推理するのは不可能に思えます。 ・S君だけ頭文字のみの表記のため、なにかトリックがあるのかとおもいきや、そんなことはなかったですね(ですよね?)。 なんだか悲しさが残る作品でした(涙)。 |
No.210 | 5点 | 遭難者- 折原一 | 2020/04/01 20:34 |
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ネタバレをしています。
追悼集という、作中作的な文章が2つ入った、凝った趣向でした。地図はもちろん、はがきや登山届など手書きで書かれたものが載っています。 笹村雪彦の死に疑問を持った母親が、その真相を調べるために慰霊登山へゆき、また死んでしまう。それを今度は笹村雪彦の妹千春と南が事件を調べなおす…そしてまた死人が~という構成で、あまり無駄なところがなく読みやすかったです。 ただ、雪彦・時子の死について、登山記録と登場者のインタビューが細かく書かれている割にはあまり読者が考える点が少なかった印象です。 そして、本の内容のうちの大部分を占める、N子とSは誰か?という謎の存在もそれほど本筋とは関係なく、肩透かしを食らった感じでした。 凝った趣向のわりに、内容は普通だった。全体的にはそんな感想でした。 |
No.209 | 6点 | マリオネットの罠- 赤川次郎 | 2020/03/13 18:53 |
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ネタバレをしています。
三毛猫ホームズシリーズ以来の赤川次郎氏の本を読みました。三毛猫のほうでもそうだったのですが、作品の雰囲気には関係なく非常に読みやすい文章で、2章の街以外はほぼ一瞬で読み終わりました。 サスペンスとホラーの色が濃い作品でした。2時間ドラマ的楽しさがありました。 まず、トラック運転手の謎の殺人事件に始まります。この時点でかなり不気味さがあります。 1章では修一が家庭教師に向かいますが、その館と住民が異様です。地下に幽閉されている女性がいたり、それをバレないように助けようとしたり、いざ助けてみると事件を起こしたり、小説的魅力がたっぷりでした。 後半では主人公が美奈子となり、精神病院へ潜入します。この章では、よりサスペンス性とホラー性が増しました。西尾みどりの死は、どんなホラーより恐ろしかったです…(ホラーはあまり読んでいませんが) 最後の章ではどんでん返しがあり、推理小説としても楽しめる構成になっていました。私は、タイトル名(マリオネット)と、推理小説のお約束から、雅子を操っている真犯人がいることは予想できました。しかし、修一の家庭教師は偶然だと思い、真相にはたどり着けませんでした(涙)。修一の計画は、計画と偶然によるアドリブが5:5ぐらいの比率であり、そこがうまく前半の文章の矛盾を無くしています。いいミスリードだと思いました。 |