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ミステリ初心者さん
平均点: 6.20点 書評数: 388件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.248 7点 鈴木ごっこ- 木下半太 2021/01/14 19:53
ネタバレをしています。

 個人的に、この本を読む前に読んだ本が非常に読みづらいものだったので、この鈴木ごっこはもう本ではなく漫画のごとく読みやすかったです。たぶん2日で読み終えました。
 文章は読みやすく、また無駄な部分が少なく、ページ数もあまりないです。それでいて、予想を超える大きな驚きが得られました。
 タイトルと導入部分から、初めはサスペンスかホラーを予想しましたた。しかし、若干のギャグ要素や、ハートウォーミングな要素もあり、鈴木になる前に家族とバラバラになっていた高額負債者が仮初の家族によって本当の家族を再認識(?)していきます(笑)。そして、感動のラスト…とは当然なりませんよね(笑)。

 推理小説的要素といえば、やはり2重の驚きがあります。
 まず、鈴木ごっこをして騙している対象が、二階堂家や近隣住民(まあ騙してるけど)ではなく、小梅以外の鈴木(男衆)だったことです。小梅には真の狙いがありました。小梅には序盤に主観の文章がありますが、明らかに秘め事がある様子でしたので、何かやっているとは思いましたが、話の展開的に自然とバッドエンドを拒否している自分がいました(笑)。終盤までの妙に明るい展開と、ラストの暗い展開の対比がいいです。
 あと、小説上のタケシ、カツオ、ダンはそれぞれ同じ時間軸にいなかった点です。カツオの娘の話は大きい複線であり、すくなくともカツオだけは違うというところまでは予想しました。しかし、全員が違っていたとは…。

 以下、難癖部分(笑)。
・小梅が毎回鈴木ごっこをするのに同じ名前を使わなければこのトリックが行えませんが、毎回同じだと他者からバレる危険性があるとおもいます。場所は動かしているようですが。二階堂家と鈴木家だけの世界ではないだろうし。
・タケシ、カスオ、ダンのそれぞれの時間軸のずらしは、その微妙な違和感を解消するよいトリックでした。しかし、その大技にしては若干地味だったかもしれません。

No.247 5点 ナイン・テイラーズ- ドロシー・L・セイヤーズ 2021/01/12 19:15
ネタバレをしています。

 文章の相性が悪く、本当に読みづらかったです(涙)。実は2020年最後の一冊のつもりで12月途中から読み始めたのですが、あまりにもページが進まないため、ビッグ・ボウの殺人に浮気しました(笑)。年間50冊目だったので(笑)。
 登場人物の多さや、文章の難しさ(個人的に)、なかなか事件が進まないテンポの悪さ、興味のない話がてんこ盛りで、正直苦行でした。

 推理小説的には、死体に謎が多くてそそります。死体は顔がつぶされ、両手が切られています。来ている服の産地が奇妙で、さらに死因がわからないという謎だらけです。犯人が誰かというより、なぜ死んでいるのかすらわかりません。
 実は、タイトルや冒頭のストーリーから、結末を予想してしまいました。当たるなよ~と思いながら読みましたが、当たってしまい残念でした…(涙)。
 この結末は事故死に近いですし、豆知識的な謎になるし、魅力を感じません。やはり私は、偶然な幸運や不運がかかわらない犯人が殺意を持って人を殺す話が好きです。探偵が殺人に関与してしまったのは面白いパターンですが。この結末だと、"顔をつぶされた死体"うんぬんが不要に思えます。

 いろいろ書きましたが、まあ要するに好みじゃなかったという話でした。

No.246 6点 ビッグ・ボウの殺人- イズレイル・ザングウィル 2020/12/28 19:38
 ネタバレをしています。

 長編としては最古の密室(たぶん)という作品だそうで、乱歩も絶賛していたとか。前から読みたかったのですが、なにやら復刻されていたようで購入(笑)。

 古典ですが読みづらさはないです。登場人物も適度で、割とすぐに密室殺人が起こります。途中、2回の法廷が挟まれ、簡単に事件の概要を理解できます。

 結末はかなり衝撃的…?というか、意外な犯人です。読者の裏をかく工夫がなされており、現代の読者でも退屈しない内容でした。
 私は、登場人物の少なさと密室の強固さから、一度はグロドマンを疑いましたが、ドラブダンプ夫人の存在のせいでグロドマンには犯行が不可能と思いました(笑)。

 以下、好みではない点。
・密室物の"どうやって入った、どうやって出た"という魅力はイマイチでした。いわゆる、心理的密室というやつでしょうか。嫌いではないのですが。
・犯人にとっての密室がアリバイ工作などではなく、他人からみて必須ではない点。最近の密室のような理由が、最初期にあったとは(笑)。むしろ評価点か(笑)。
・ドラブダンプ夫人の行動は、すべて犯人の思い通りにいくとは思えません。ドラブダンプ夫人がグロドマンを呼ばなければ事件は起こりえないのですが、グロドマンが「呼ばれなかったら殺さなかった」とか言ってます。これを推理するのは難しい。そして、ドラブダンプ夫人の見ている前で殺しが起きてます(笑)。しっかり目撃される危険性だってあったはずです(笑)。結構運に頼ってませんか?
・また例の"世界最古の密室"のネタバレがされてらぁ。

No.245 6点 七度狐- 大倉崇裕 2020/12/23 18:15
ネタバレをしています。

 私の知らない落語の世界の話が物語にかかわってきますが、物語を理解するのに必要な知識はその都度解説が入るため、全くの無知でも読みやすかったです。
 また、クローズドサークルものであり、それほど場面が移動しないため、変に複雑でないこともよかったです。それでいて、驚きの真実やどんでん返しが楽しめ、解決編を読んだ後にすべての伏線がすっきり回収されるところは、横溝ものやアガサ・クリスティーもののような良さがあります。
 最初から重要な伏線がいくつかあり、素晴らしかったです。百目関連はもっとよく考えてみるべきでした(笑)。物語後半まで読み進めたところで、百目や幽体離脱系の話をすっかり忘れてしまっていました(笑)。

 以下、不満点。
・いくら昔のことであっても、亀山は自分の存在を隠し続けることが可能なのでしょうか?(笑) 
・露骨に怪しい夢風と亀山でしたが(笑)、やはり共犯というと好みではありません。

No.244 6点 『アリス・ミラー城』殺人事件- 北山猛邦 2020/12/16 21:22
ネタバレをしています。

 城シリーズを冠するだけあって、今回も非常に変わった城が登場します。さらに、"不思議の国のアリス"や"鏡の国のアリス"が物語全体にかかわっていて、見立て殺人もあります。ただでさえ読みやすいクローズドサークルですが、本作はとくに多いページ数を感じさせないぐらい読みやすかったです。

 多くの殺人が起きますが、推理小説的見どころは、鷲羽殺しの密室と、叙述トリックです。
 鷲羽殺しの密室は、トリックのためのトリックですが、割りきって考えたほうが楽しめます。主に"どうやって鍵を室内(被害者の口に)入れられたか"の問題なのですが、解決はなんだか狂気的方法で魅力的です(笑)。ちょっと強引さも感じましたが、本書で最も好きな部分でした。
 叙述トリックについては、わりかしスタンダードな"一人増えている"系です。正直、これについては他に3作品ほど見たことがあるため、既視感が強かったです。しかし、自己紹介の場で、物語中のアリスと物語で有名なアリスを混同させて読者を惑わすトリックは好きです。アリスが本によく絡んでいると思います。また、最初に探偵の数を表記していたり(私は名前をメモしていたのに気づかなかった(笑))、チェスの駒の数を表記したり、割とデカいヒントもあったのはポイント高しです(笑)。
 

 以下、難癖部分。

・探偵が集まった意味は?(笑)
 トリックが犯人にとって必要のないもの→探偵を騙すために仕掛けた…という言い訳にはなっている(のか?)のですが、そうすると今度は、読者に伏せられていたアリスの存在は探偵は知っていたにも関わらず、誰も言及しないのか? という不可解さがあります。海上なんて、目撃してアリスだと言っておきながら皆殺ししようとする(笑)。海上のバカさが最大のミスリードかもしれません。
 また、個人的に、"探偵が集まった"とくれば、毒チョコ並みの議論合戦を期待しました。しかし物語中の登場人物は探偵とは程遠い人たちでした…(現実世界の探偵かもしれないが)。

・一人増えているトリックについて
 他作品は、あの手この手で読者を騙したり、また他のトリックと融合させたりしていました。それに比べ、本書はプラスアルファが少ないです。さんざん使われたネタをやるにしては物足りなさを感じます。

No.243 6点 猫間地獄のわらべ歌- 幡大介 2020/12/10 20:45
ネタバレをしています。

 全体的にギャグ調で明るく、難しい漢字なども使っていなく、物語を理解するのに必要な用語はそのつど説明が入るため、とても読みやすいです。読み終わるまで、一瞬のような感じでした(笑)。

 推理小説的には大きく3つの事件があります。密室(をでっちあげる(笑))事件、見立て事件、不可能犯罪。どれもダイナミックで、馬鹿ミスと呼べなくもないですが、本の雰囲気と歴史小説の雰囲気を味わえるものでした。
 密室については、初めに問題が提示され、最後に解かれるものでした。足跡問題と密室の鍵の問題を一気に解決する離れ業(?)であり、方法もその時代にしかできなさそうな物で面白かったです。
 見立て事件については、それそのものよりも、主人公=犯人系でした。講談だからいいもんというやり取りは面白かったですが、まあむりに推理小説としてフェアさを求めずに見たほうが楽しめそうです。
 屋形船内で殺される不可能犯罪は、いろいろ考えましたが、全くわかりませんでした(笑)。私も静馬と同じ田舎者なので、見当もつきませんでした。鐘の音の偽装や、館の偽装など考えましたが、どれもいまいちで(笑)。

 全体的に真相を外してきた私ですが、内侍之佑が女性であることだけわかりました(笑)。これは完全に個人的な理由ですが(またかよッ!)

 個人的な不満はないのですが、推理小説としてのフェアさや厳格さ、小説としてのまじめな雰囲気を求める人には向かないと思います。メタ展開が嫌いな人もダメですね。

※追記 どんなに古典でも、ネタが割れるようなことは書かないでほしい! この本でネタバレされている作品って、推理小説内で最もネタバレされている作品だと思います(笑)。ネタバレを回避してこの作品を読むことに成功する人っているんでしょうか(笑)。

No.242 6点 眠りの牢獄- 浦賀和宏 2020/12/05 00:29
ネタバレをしています。

 非常に読みやすい文章で、すぐに読了しました。割とページ数が少ないですが内容は薄くなく、楽しめました。

 物語中の事件は、過去の転落事件と、主人公を含めた3人がシェルターに閉じ込められた際の事件、交換殺人の3つあります。それが、浦賀によって小説化され、作中作のような感じで進んでいきます。
 過去の転落事件は、あまり考えることができないので、シェルター内の事件と交換殺人との関連を考えながら読み進めることになります。
 シェルター内での事件は、中に3人しかおらず、作中作を信じるならば犯人は明らかです。しかし、首をカニバった理由や、北澤の遺書を偽装した方法などは面白かったです。
 交換殺人との絡め方もよかったですが、匿名でのメールのやり取りや、小説内での名前の表記(名字だけや名前だけの人物や、"お兄さん"などの表記の人物)がいるため、ある程度展開が予想できてしまうのがマイナスでした。
 大きなどんでん返しとして、浦賀が女性であるということがありますが、○○シーンから予想できました(笑)。

 全体的に"彼女は存在しない"よりも好みですが、過去の推理小説の要素を少しずつ入れたような感じであり、もう一押し欲しい作品でした。

No.241 6点 Killer X- クイーン兄弟 2020/11/30 22:41
ネタバレをしています。文庫版を買いました。

 割と多いページ数であり、クローズドサークルでありながら事件が起きるまでが遅く、テンポの悪さがありました。しかし、文章が非常に読みやすく、頭にすっと入ってきます。決して長すぎるということはなく、むしろ短いぐらいに錯覚するレベルでした。

 推理小説的には、冒頭部分の"誰がシゲルちゃんを殺したか"の密室と、"誰がシゲルちゃんを転落させたか"がメインに話が進んでいきます。アナザーストーリーに連続突き落とし犯の話が出ますが、これはそれほど絡んできませんし、ちょっと予想がつきました。
 大きな謎とは関係なく、もうこれでもかというくらいに読者を欺く叙述トリックが盛り込まれています。推理小説家が日記を書いているならば、絶対叙述トリック説ありますねぇ(笑)。いちおう嘘は書いていないし、主人公は目的があってしたことですが…。叙述トリックのにおいを隠そうともしない小説でしたが、私はまるでわかりませんでした(涙)。服部のシゲルちゃんに対しての応対から、ほんのすこしだけ女性を感じたのですが、もう少し考えるべきだったかもしれません…とはいえ、赤子を使ったアレは、到底気づくのは不可能でしょうね(笑)。

 以下、好みではなかった部分。
・冒頭で密室を期待したのですが、残念でした。
・読者に登場人物の性別を錯覚させることはすでに前例があるし、割とよく出てきますよね(笑)。出産した赤子を死んだ人間の代わりにさせるのはさすがに今回初めて見ましたが、それに近いような叙述トリックは前例があるし、もう少し大トリックに絡めてほしかったです。この小説ならではのものが欲しかったです。

 読者をだまそうとしたどんでん返しは、そのほとんどが何かしらのアンフェアさを使わないといけないし、すべて推理可能という小説はありえないかもしれません。なので、この小説も、魅力的などんでん返しのある多重解決ものとしてみたらよい作品です。ただ、どんでん返しや叙述トリックを許容するならば、もっともっと奇想天外でまるで見たことのないようなものを求めてしまいます。あと、結末が暗すぎるのがちと堪えました(笑)。

No.240 6点 琥珀の城の殺人- 篠田真由美 2020/11/20 22:11
ネタバレをしています。

 1775年のハンガリーが舞台のミステリです。雰囲気が良く、それでいて全く読みづらくなく、時代も国の知識がなくてもすいすいページが進みます。
 クローズドサークルというわけではありませんが、一つの城で物語が完結するため、クローズドサークルばりの読みやすさがあります。
 他にも、当主の死亡、伯爵の後継者争い、遺産争い、過去の事件性のある出来事、伝説、手記パート、意外な犯人など、ミステリファン垂涎の要素がてんこ盛りです。
 私はほとんどわかりませんでした。ベアトリーチェが怪しいこと、アンドレアスが女性なこと以外はさっぱりです(笑)。
 
 以下不満点。
 不可能犯罪が2つあります。どちらも密室…?なのですが、これがいまいち(笑)。伯爵殺しは大多数の人間がかかわっており、イザーク殺しは助手の考えが一部当たってしまうほど他愛ないものです(ビリビリを使って~というのは魅力がありません(笑))。
 どんでん返しがあるのはよいことなのですが、どんでん返し系ミステリって多少無理をしないとどんでん返せないんですよね。あと、ミスリードも過剰になりがちです。まあそんなことを言っていてはアガサは読めませんが(笑)。

 全体的に読みやすく、物語面では楽しめましたが、推理小説としては好みとは違いました。
 

No.239 6点 犬神館の殺人- 月原渉 2020/11/12 19:40
ネタバレをしています。

 旧作の本格推理小説の雰囲気と、すらすら読める文章で、個人的に好きなシリーズです。本の厚さはそれほどでもないですが、それほど変に軽くなくていいです(?)。
 今回はシリーズ過去作よりももっと変わったシュチュエーションです。3年前と非常に似た事件で、3重の密室であり、最深部には凍った死体があります。興味を引く要素が満載です。
 また、シリーズ過去作品よりも、もっと"なぜやったのか?"がストーリー面でも語られている気がします。
 あとは、シズカの特徴"満月の夜にへべれけ"、"猫が嫌い"、新ロシア語罵倒の"アホ"が登場しました(たぶん初のはず?)。

 以下、あまり好みではなかった部分。
・3重の密室はかなり特異な設定の密室ですが、結局は犯人の自殺で終わっており、密室というよりかは狭いクローズドサークルみたいな感じでした。結末も"まあ、そうだろうな"の範疇であり、少なくとも犯人がどうやって入りどうやって出たのか?という問題を楽しむことではありませんでした。
・シズカの隠した3年前の情報は、叙述トリック的演出ですが、とくに大きくトリックにはかかわってきませんでした。バッドエンディングを予想していた読者を裏切ってのハッピーエンドという演出には貢献しています。
・地図が欲しかったです(笑)。

No.238 7点 霧に溶ける- 笹沢左保 2020/11/06 18:21
ネタバレをしています。

 文章は読みやすく、また多くの殺人事件が起こるため、テンポが良く、読了までにそれほど時間がかかりませんでした。また、話の構造が複雑ですがわかりやすく、衝撃の展開ですがそれほど無理がないです。非常に満足度が高いです!

 推理小説的部分も、密室があったり、海を使った時限装置的仕掛けがあったり、とても濃厚です。それでいて、変に馬鹿ミス調ではなく、現実に成功率が高め(と思わせてくれる)なトリックであり、それでいてしっかりと読者に解く余地をもたらすヒントも十分あります。
 小河内殺しの密室は、本格的な密室であり、時計のヒントも好印象ないい密室でした(笑)。普段、全く当てられない私ですら時計のヒントから気づきましたが、フェア度が高いという裏返しかもしれません。
 逆に川俣殺しはよくわかりませんでした。海の満ち引きを利用したところまでは予想しましたが…(笑)。
 殺人を計画し、教唆した共謀者が2人いて、さらに殺人者が3人…そして殺人未遂者が一人と、かなりの人物が殺人にかかわってしまっています。本当なら私の好みではなく、単独犯のほうが好きなのですが、ちゃんと伏線も張ってありまり、読後感としては「ありだな」と思いました(笑)。私は、"川俣を殺せたとしたら穂積"→"穂積は殺されている"ということから、被害者3人がお互いを殺しあったところまでは予想できました。ただ、新洞の主観の文から、新洞を首謀者から外してしまいましたし、波江が出てくるとは思いませんでした(笑)。今思うと、静子が新洞を狙っていたことはミスリード的効果がありますね。

 どうやって殺したか? 誰が殺したか? 何が起こっているのか? 全て楽しめる良い作品だと思いました。カーとアガサが一体となっているような(というと言いすぎか(笑))。

No.237 5点 望湖荘の殺人- 折原一 2020/10/29 19:13
ネタバレをしています。

 よくみるクローズドサークルの流れを踏襲している作品です。館に集まった男女が一人ずつ殺されていき、外に出る事も連絡を取ることもできない…系です。非常に読みやすく、私の大好物です(笑)。本作品は、そのなかでもサスペンス色が強めであり、テンポが良く、読了までに時間はかかりませんでした。

 以下、難癖部分。
・太蔵への脅迫者と協力者の女の名前を伏せる意味があまりわからなかった(笑)。
・誰が殺したのか?や、どうやって殺したのか?といった要素はなく、かといってどんでん返しも微妙…。手だけ持って行った話は、ジョジョを読んでいた私には察しがつきました(笑)。
・最後のエピローグは別になくてもいいとおもいます(笑)。

 この程度なら、もうちょっと軽めの文にして、黒星警部シリーズにしてもよかったのでは(笑)。

No.236 7点 法月綸太郎の功績- 法月綸太郎 2020/10/24 18:52
 ネタバレをしています。文が長くなりがちなので、なるべく一言ずつ書きます(笑)。

 不可解で変わっている興味深い状況から、納得度の高い結末に至るスタイルの短編小説です。

・イコールYの悲劇
 頭パープリンの私でも"風見鶏"がメモされているとは気づきましたが、後のことは全く分からず、結局ミスリードの円谷朱美説に引っかかってしまいました(笑)。ダイイングメッセージにしては余裕のあるメッセージでしたが、なかなか面白かったです。

・中華蝸牛の謎
 推理小説家の密室のアイディアが用いられた事件で、その前の蝸牛と鏡のうんちくと相まって、私のハードルが上がり過ぎました。ちょっとイマイチ。

・都市伝説パズル
 非常に興味をそそられる状況です。あとがきで書かれていたように、難易度は高くなく、考えればわかるようになっているところが素晴らしい。やたら難解にすれば名作というわけでもないですしね(笑)。犯人から外された容疑者は心理的アリバイによって外されていますが、まあ短編なんで良しです(笑)。

・ABCD包囲網
 明らかに嘘の出頭を繰り返す鳥飼の真の狙いが意外です。私はちっともわかりませんでした(笑)。ただ、警察に出頭すること自体が結構危険だと思います。

・縊心伝心
 ホットカーペットのスイッチが、本来と使わない"下"に入っているところから推理がすごかったです。ただ、被害者は盗聴器を仕掛けられていることがうっすらわかっていた…というのはちょっと私には難易度が高過ぎました(笑)。犯人が、偽装工作としては下策の首吊りを選択した理由には感心しました。

 個人的には、都市伝説パズルが、シンプルながら犯人を考察する楽しさで最も上でした。

No.235 6点 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 2020/10/15 19:57
ネタバレをしています。

 前情報を調べずに買いましたが、なかなか衝撃的な主人公と登場人物たち、衝撃的なストーリーでした! 
 まず、主人公・御子柴が死体を処理するというところから驚きでした。次第に御子柴が弁護する事件について明らかになっていき、それと同時に御子柴が処理をしたと思われる記者の存在も語られていきます。
 さあこれから…というときに、結構なボリュームの御子柴過去編が始まります。これがまた衝撃の過去です。どう受けてめていいかわからない話ですが、個人的には面白かったです。
 法廷での御子柴の鮮やかな勝利と、意外な犯人。どんでん返しもあり、推理小説的な"読者の裏をかく"こともしっかりとしています。

 以下、難癖。
・御子柴の過去編は、推理小説的には無くてもいい。
 欲を言えば、この過去編がなにか結末への伏線なりヒントになっているのが理想でした。
・ちょっと意外性のない犯人。知識のいる殺害方法。
 私は論理的なことは全くわかりませんでしたが、実は、幹也を露骨に疑っておりました(笑)。父殺しについては不確実だと思いますし、電気による殺しは個人的に好きではありません(笑)。ただ、この殺害方法は幹也犯人を示唆するような気がします。

 御子柴のダークヒーローさはかっこいいですが、渡瀬もいいですね。全体として後味が悪いのですが、次回作にも出そうなキャラクターに魅力たっぷりです。

No.234 6点 致死量未満の殺人- 三沢陽一 2020/10/09 23:10
ネタバレをしています。

 文章は非常に読みやすく、また登場人物も最低限なので、すぐに読了しました! 
 毒殺トリックをディスカッションする場面があるのですが、丁寧に書かれているために混乱なく頭に入ってきます。
 後半までは倒叙形式のような趣があります。最後にはどんでん返しもあり、ページの割には厚い内容でした。

 推理小説部分では、まずは龍太の毒殺のトリックがあり、登場人物ほとんどが殺人者になりえた驚きの展開があり、最後には金巻のどんでん返しがありました。
 龍太の毒殺トリックの致死量の毒を2回に分けて与えることについては、単純ながら私にはわからなかったし、驚きました。
 登場人物全員が毒殺を行っていた展開は、なんとなく読めました(笑)。ただ、いくら金巻の暗示があったにせよ、全員同じ毒を使用し、同じタイミングで殺人するとは限りません。金巻にとっても予想外だったのでしょうが、どんでん返しにはいいですが、推理を楽しめるものではありませんでした。

 以下、好みではない部分。
 ・龍太の独白部分が長い。
特に、バイトをしながら毒を盗むシーンは手に汗握る展開ですが、やや長いと感じてしまいました。
 ・致死量なら必ず死に、半分なら副作用が出ない…?はリアリティがあるのか?
また、そうだとしても、やや専門知識がいると思います(笑)

No.233 7点 鍵孔のない扉- 鮎川哲也 2020/09/26 19:15
ネタバレをしています。

 鬼貫警部シリーズは毎回そうなのですが、とにかく読みづらく、ページがなかなか進みませんでした(笑)。読者がアリバイトリックを解こうとあれこれ考えられるまでに必要なページ数が多いですね。短編を無理やり長編にしたような印象があります。

 文章の相性は悪かったのですが、推理小説としての質は非常に高くて満足しました。
 犯人のアクシデントに対する神がかり的なアドリブ(?)、そしてアリバイトリックは緻密で考え抜かれています。なおかつ、読者はよ~く考えたらわかるような気にさせられれます(私はわかりませんでしたが)。
 読者にもヒントや伏線が提示され、なかでもシデ虫のヒントはとても好きです。

No.232 7点 RPGスクール- 早坂吝 2020/09/14 20:36
 ネタバレをしています。

 かなり変わった設定のミステリでした。その名の通り、学園RPGアクションゲームのような剣と魔法のミステリ(?)。学園RPGはペルソナぐらいしかやったことありません(しかも2まで)。
 文章は非常に読みやすく、漫画を読むかのように進んでいきます。最初にイマワが殺され、それがモンスターの者ではない=誰かが殺した殺人事件の謎が提示されて以来、長いページ学園アクション小説になっています(笑)。しかし、その中で超能力についての説明があったり、魔王が仕掛けたRPGゲームの説明があったり、かつその要素が"誰がイマワを殺したか?"のロジックにかかわっていて、全体として無駄な文が少なかったです。非常に本格度の強い作品だと思います。

 以下、不満点。
・誰がイマワを殺したか?については、校長が殺したというのが読者にたどり着ける唯一の答えだと思います。どんでん返しとしてミラがそれを助けた形ですが、これはさすがに推理不可能だと思われます。すべての伏線が回収されている点は素晴らしいですが、ミラを犯人役としてみた場合は都合のよ良い偶然がありすぎています。さらに、若干の悲しい最後(笑)。

No.231 7点 葬儀を終えて- アガサ・クリスティー 2020/09/11 01:27
ネタバレをしています。

 今回は少し読みづらさを感じました。非常に多くの登場人物にくわえ、事件としては地味な(個人的に)展開が続きます。殺された方法を議論するでもなく、登場人物もたいていアリバイがない。みんな金が欲しいので、誰がリチャードを殺したとしても不自然ではない。盛り上がり所がよくわからず、なかなかページが進みません。しかし、もう私はアガサ・クリスティーの術中にはまっていたわけです(笑)。

 ポアロが犯人を明かしたとき、これまであった伏線が見事に回収され、視点が180度変わってみえる快感はアガサ作品特有のすばらしさですね。思えば作品の雰囲気の遺産争い的なもの(家系図なども含めて)も、ミスリードだったわけですね。本当に殺人事件だったのは第2の事件であり、口封じに見せるなんてかなり大胆です。

 以下、不満点。
・犯人の行動は大胆で虚を突かれましたが、かなり賭けなのではないでしょうか? 私もうっすら"誰もコーラを認識できないのでは?"と思いましたが、誰が覚えているかもしれません。いまいち成功するとは思えないのですが。
※追記:コーラに化けた人間が、またその家族の元へ行くのっておかしくないですか(笑)。
・ヒ素入りケーキは結構怪しいと思ってました(笑)。それでも私は犯人から外してしまったわけですが。致死量以下の毒を飲んで容疑者から逃れるという展開は、ミステリにおいてよく見ます。しかし、これも致死量の表現があいまいですよね。せめて、すべて食べたら絶対に死に、半分残したら絶対に死なないぐらい書いてほしいです(実際にはそうではないにしても、ミステリ的ヒントとして(笑))

No.230 7点 medium 霊媒探偵城塚翡翠- 相沢沙呼 2020/09/01 20:56
ネタバレをしています。

 剣崎比留子ではなく、二階堂蘭子だった(笑)。じつは蘭子よりも適当な人物を思い浮かべましたが、そっちの作品のネタバレになってしまうので、蘭子にしておきます(笑)。

 非常に読みやすい文体ですいすいページが進みます。登場人物が限られていて、言葉遣いなどから簡単に誰がしゃべっているかがわかります。翡翠と香月のイチャイチャに腹が立ちますが、衝撃ラストには必要なものです(笑)。

 推理小説部分は、3つの本格短編と、1つの叙述的な仕掛けと、全体を通しての仕掛けがありました。なかなか濃厚です。
 まず、3つの短編から。短編顔負けの論理が展開され、この3つの話だけで終わっても(香月翡翠ともに前半のキャラクターのままでも)評価できるぐらい端正な推理小説となっています。私は香月の推理を当てる事が全くできませんでした(涙)。翡翠に馬鹿にされている香月の推理ですが、私は見事だと思いました(笑)。翡翠のそれより説得力を感じます。
 次に1つの叙述的な仕掛け。香月=シリアルキラーです。これは正直予想できました。におわせるヒントがたくさんあり、作者はあえてここまではバラしている感じがありました。
 最後に衝撃の翡翠詐欺霊媒師(笑)。実は私は、翡翠がそれほど圧倒的な能力がないことと、香月の推理は翡翠の霊力が必須ではないほどのヒント程度なことから、翡翠が推理の先回りしている→霊能力なしでも成立するのではないかと疑っておりました。しかし、第2、第3の翡翠のいろいろな出来事を読み、論理だけでは予想しえないと思い、翡翠の霊能力が嘘であるという確信が持てませんでした。まあ、ラストの翡翠の推理はあまりにも難易度が高く、頭パープリンの私には当てる事ができなかったでしょう。

 以下、難癖部分。
・最終盤の翡翠の推理は可能性の域を出ていない気がします。そして、解決編とよぶには明らかに読者へのデータが足りないような。
・エピローグでどちらの翡翠が本当なのかわからないように書いてましたが、ぶっちゃけ詐欺霊媒師であってほしい(笑)。続編は翡翠主観文章で男を騙しながらってのもいいですね(笑)。続編があるのなら。

 叙述トリック一本の作品かと思いきや、実は最小限の叙述トリックしか使われておらず、それに頼らないどんでん返しは見事でした。やや既存小説を揶揄した表現がなくはないですが、"男性の理想が詰まった女性キャラクター"が苦手な私にとっては不快な表現ではありませんでした(笑)。鮎川さんも"真のフェミニストは女性の汚い部分も書く"的なことをおっしゃってましたし(笑)。

No.229 8点 中途の家- エラリイ・クイーン 2020/08/25 18:26
ネタバレをしています。

 "国名○○+秘密"というタイトルではなかったため、なんとなく読んでいませんでした(とはいえ、国名シリーズを制覇しているわけではなく、つまみ食い的に読んではいますが)。しかし、国名シリーズでも屈指のフェアさと論理性を兼ね備えた名作でした! ページ数が結構あり、ビルとアンドレアの恋愛パートが冗長に感じられるところもありましたが、全体的に読みやすく、不満はあまりありません(下に書いてますが(笑))。

 非常にフェアなため、やや犯人がわかりやすすぎるとは思います。しかし、論理的な犯人当てというのは犯人が犯人臭いことよりも、犯人以外が犯人ではない理由のほうが大事だと思っています。犯人ではない理由も読者に推測が可能で素晴らしいです。不満点もありますが(笑)。意外な犯人を演出しようとし過ぎる他作品より100倍は好みです。青崎有吾さんの小説もこれぐらい論点をわかりやすく書いてくれるとよいのですが(笑)。
 私は何回か読み直し、ほぼほぼエラリーの推理を当てる事ができました。実は、犯人が一番犯人らしい犯人すぎて絶対に外していると思い、フィンチ以外の人物の検証をしまくりました(笑)。

 以下、好みではなかった部分。
・犯人が女性でない理由がやや不満。"犯人が女性であれば自身の口紅をペン代わりに使っただろうし、アンドレアの口紅を使うという発想も出たはず"というのはどうでしょうかね? また、女性がパイプをやったっていいはずです。さらに、ギンボール夫人がパイプをやらないという描写はなかったような…?(勘違いならすいません)。
・アンドレアの犯人でない理由は、心理的アリバイだと思います。クロロホルムを嗅がされたとき、近くにクロロホルムがしみ込んだハンカチ的なものが落ちていない(たぶん)ので、狂言ではないとは思いましたが。まあ話の流れ的に犯人ではありえないのですが(笑)。
・題名は"スウェーデン燐寸の秘密"のほうが絶対に良いとおもう(笑)。

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ミステリ初心者さん
ひとこと
 有名な作品をちょこちょこ読んだ程度のミステリ初心者です。ほとんど、犯人やどう殺したかを当てることができません。


 高評価・低評価の基準が、前とは少し変わってきました。
 犯人を一人に断定で...
好きな作家
三津田信三 我孫子武丸 綾辻行人 有栖川有栖 鮎川哲也
採点傾向
平均点: 6.20点   採点数: 388件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(16)
三津田信三(14)
歌野晶午(13)
綾辻行人(11)
エラリイ・クイーン(11)
東野圭吾(10)
東川篤哉(10)
鮎川哲也(10)
西澤保彦(9)
アンソロジー(国内編集者)(8)