皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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いいちこさん |
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平均点: 5.67点 | 書評数: 557件 |
No.97 | 8点 | 折れた竜骨- 米澤穂信 | 2014/07/10 17:23 |
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「インシテミル」が自分にはあわず、敬遠してきた著者だが、本作はスマッシュヒット。
特殊設定を活かしつつも、魔法の効果を限定的にしてみせることで、ロジカルなフーダニットとして成功。 謎解きのプロセスはオーソドックスだが、各所に巧妙に配された伏線を余すところなく回収する手際のよさは圧巻。 探偵の誤導の後に示された真相はありがちだし、伏線が丁寧すぎることもあり正直想定の範囲内なのだが、誤導させたこと自体がプロットと連結しており、必然性がある点が見事。 未来に希望を持たせたラストも好印象。 語り口が平易でリーダビリティが高いため、各局面の状況が明瞭である反面、難易度が低く食い足りない向きもあろうが、それが広くヒットした要因であるのは間違いない。 コンパクトでも完成度は高く、キレイな右打ちでスリーベースといったところか。 |
No.96 | 9点 | メルカトルかく語りき- 麻耶雄嵩 | 2014/07/07 16:36 |
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あとがきによると「答えのない絵本」のプロットを最初に思い付いたらしい。
これ自体が奇想なのだが、この作品を発表するにあたり、中途半端に中長編に増量せず、かといって短編集に混ぜる遊びの変化球ともせず、手を変え品を変え魔球を投げ続ける短編集にしてしまう。 このあたりが余人の追随を許さない、著者ならではのド奇想と言える。 「答えのない絵本」の徹底した論理性もさることながら、本作の白眉は「収束」。 アイデアとしては思い付くのかもしれないが、ミステリとして昇華し切った巧みなプロットと、高い構成力には脱帽。 ミステリに対する相当な問題意識と深い洞察がなければこのような作品は出てこない。 本作はアンチミステリのある分野における極北というべき作品であり、同様の趣向のミステリで本作を超える余地はまずないのではないか。 評価がわかれる作品であるのは間違いないが、その存在価値に鑑みて9点を献上 |
No.95 | 6点 | セカンド・ラブ- 乾くるみ | 2014/06/30 19:34 |
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叙述トリックの気配を濃厚に漂わせるプロローグからの二段底。
上手さはあるのだが、見えないところからのハイキックとでも言うべきイニ・ラブの衝撃には遠く及ばない。 致命的なのは主人公の心情変化が急激すぎること、行動が合理的でない、場当たり的に感じられる局面が多すぎることで、読者としては途中からついていけなくなってしまった。 敢えて描ききっていないプロットであることは承知しているが、あれだけの大仕掛けを演じきったヒロインの動機も明かされず。 読者が「セカンド・ラブ」という高いハードルに求めるカタルシスやサプライズはなかった。 局所的なテクニックを認めても、それ以上の評価はあげられない。 |
No.94 | 6点 | 厭魅の如き憑くもの - 三津田信三 | 2014/06/09 20:01 |
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力作ではあるが微妙・・・
作風からしてリーダビリティの低さはある程度やむを得ないが、このプロット・真相ならもう少しボリュームダウンできたと思う。 メイントリックは既に有名作品に前例のあるもの。 巧妙な伏線が張り巡らされており、使用方法の完成度は高いが、それだけでは評価することはできない。 最終盤では恒例のどんでん返しが連発されるが、最初に示された真相の方が却って衝撃は大きかったように思う。 6点の上位 |
No.93 | 7点 | 向日葵の咲かない夏- 道尾秀介 | 2014/05/26 14:00 |
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特異な設定である時点で読者を選ぶ作品であるのは間違いない。
にしても、本サイトでの評価がここまで低くなるのは、本格ミステリ読みが集まっているからだろう。 確かにアンフェアな部分があるうえ、全体に荒削りな印象は否めないが、著者の後日の飛躍に通じる伏線のうまさ、騙しのテクニック、解法のロジックは存分に発揮されている。 救いのなさ過ぎるラストの残す印象も強烈。 プロットの稚気や野心を堪能する作品 |
No.92 | 7点 | OUT- 桐野夏生 | 2014/05/26 13:44 |
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犯罪小説の佳作。
全編を通じて、主人公の心情を赤裸々に描き出し、粘度の高い空気を吸っているかのような息詰まる展開。 筆力の高さは疑い得ない。 それだけに主人公たちを待ち受けるラストは、もっと破局的なものが似つかわしかったように思う。 無難な着地に思えて残念 |
No.91 | 5点 | ジョーカー・ゲーム- 柳広司 | 2014/04/30 14:24 |
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合理性を重んじるスパイの論理と、第2次世界大戦前夜の日本陸軍の葛藤がプロットの機軸。
この点では舞台設定が見事に機能。 ただご都合主義というか、登場人物がスーパースターすぎるというか・・・ リーダビリティは高いが、リアリティや緊迫感の点で今ひとつ。 世評ほどの満足は得られなかった |
No.90 | 8点 | 隻眼の少女- 麻耶雄嵩 | 2014/04/28 14:34 |
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この著者、ミステリのあり方や限界に対して非常に自覚的で、その問題意識を作品の主題とすることが多い。
ただ決して声高に主義主張するのではなく、作品を提示し読者の評価に委ねてくる。 本作ではいわゆる「後期クイーン問題」がテーマ。 散りばめられた「偽の手がかり」と「本物の手がかり」を峻別するため、再三にわたってロジカルなアプローチが試みられる。 それでいて、犯人による誤導の後に示される、この問題に対する回答としての真相は、問題自体を無効にするような、皮肉極まりないもので実に秀逸。 確かに物語のクライマックスでは、荒唐無稽なトリックや無理筋と言わざるを得ない真相が明らかになるが、敢えて無難な落とし処を選ばなかった点を、作者ならではの稚気と解したい。 以上、他の作品とは異なる評価軸から採点してこの結果 |
No.89 | 7点 | 半落ち- 横山秀夫 | 2014/04/22 15:27 |
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本作の評価が世評と比較しても異様に辛いと感じる。
やはり投稿者の多くがミステリ読みであり、ミステリとして評価されているからなのだろう。 確かにミステリとしては脆弱な構造で、致命的な欠陥も存在しているのだが、1個の読物としては出色のデキ。 犯人を取り巻く人々を描き、犯行の筋を追いながらも、警察と検察の立場と利害や、職業倫理と組織の論理のコンフリクト・葛藤を抉り出す筆致は見事。 一本道のプロットと美しいラストは、素直すぎる、キレイすぎる印象は否めないが、抜群のストーリーテリングで爽やかな読後感を残すのも確か。 一言で言うとミステリ初心者向けの佳作ということだろう。 中級者以上には食い足りないかもしれない |
No.88 | 7点 | ユージニア- 恩田陸 | 2014/04/21 13:47 |
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存在するのは登場人物の人数分の主観的事実であり、客観的事実など存在しないという主題自体はありふれたもの。
しかし、物語のほぼすべてが手記風に語られるプロットが斬新。 読者に少しずつ見せていく真相が、事実なのか虚偽なのか幻惑しつつ、ミスリードの罠に嵌めていく手腕は見事。 ただ惜しむらくはラスト。 最終的にはぼかされるとしても、一旦キレイに着地してくれれば8・9点も望みえたのだが。 残念 |
No.87 | 6点 | 花と流れ星- 道尾秀介 | 2014/04/14 17:31 |
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「流れ星のつくり方」は短編のオールタイムベストで上位常連の名作だが、評判に違わぬラストのキレ。
その他の作品については、世評どおり冴えない内容だが、子供(特に少年)の心理描写の鋭さには改めて感心。 |
No.86 | 6点 | 新宿鮫- 大沢在昌 | 2014/04/14 17:20 |
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個性的な登場人物たちの活躍を活き活きと描き出す筆致で、リーダビリティは高い。
ただミステリとしての仕掛け・企みは希薄。 |
No.85 | 9点 | スイス時計の謎- 有栖川有栖 | 2014/04/07 17:29 |
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表題作以外の3作は見るべきものがない「凡作」。
表題作はロジックの比類なき切れ味と、無駄を削ぎ落としたストイックなプロット・構成が光る傑作。 中途半端なボリュームだけに、長編にも短編にもカテゴライズされず、随分と損をしているだろうが、長編に水増ししてもクオリティが低下するだけだろうから、やむを得まい。 それでも短編のオールタイムベストの常連にランクインしている事実は伊達ではない |
No.84 | 7点 | 第三の時効- 横山秀夫 | 2014/04/07 17:19 |
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文章は決して上手い方ではない。
しかし、非常に短い各センテンスが訥々とした独特の語り口で読ませる。 各話ともプロットは緻密で合格ラインを超えているが、とりわけ最終盤で二転三転する表題作が抜群のデキ。 |
No.83 | 7点 | 叫びと祈り- 梓崎優 | 2014/04/04 18:54 |
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各話とも舞台設定を活かし切ったプロットが素晴らしく、テクニカルな筆致が光る。
特に「砂漠を走る船の道」の真相の美しさ・衝撃度は別格で、ホワイダニットとしては最高級。 それだけに、随所で用いられる●●トリックのぎこちなさ、そして何より最終話「祈り」の結末が蛇足に感じられて残念。 |
No.82 | 7点 | ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 | 2014/04/04 18:49 |
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動機の納得性、考え抜かれた伏線の妙、トリックの鮮やかさなど、さすがの出来映え。
ただし、よく比較される「仮面山荘殺人事件」とはプロットの堅牢さで確実に差があり、一段落ちると言わざるを得ない。 |
No.81 | 6点 | 館島- 東川篤哉 | 2014/04/04 15:40 |
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犯人特定に至るプロセスはロジカル。
メイントリックは豪快ではあるが、意外性に乏しく実現性にも無理を感じる |
No.80 | 8点 | 貴族探偵- 麻耶雄嵩 | 2014/03/22 10:13 |
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舞台設定や、トリックの奇抜さではなくロジックで勝負している点など、骨格は「謎解きはディナーのあとで」に非常に似ている印象。
ただ事件の真相や登場人物の性格付けには、この作者らしい稚気やエキセントリックさが発揮されている。 収録作品では「こうもり」が断然。 読者をあざ笑うようなアクロバティックな逆●●トリックは前代未聞で驚くべき奇想。 反則スレスレだが唯一無二のキレ味 |
No.79 | 4点 | 殺人の門- 東野圭吾 | 2014/03/20 18:49 |
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リーダビリティは相変わらずでさすが。
ただ作品の狙い・主題が途中でわかると、その後の展開が一定程度読めてしまい、緊迫感が殺がれるのが難点。 ラストも悪くはないのだが、救いのない物語はカタルシスが感じられない分、読後感が重苦しい |
No.78 | 4点 | 成吉思汗の秘密- 高木彬光 | 2014/03/20 18:44 |
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純粋に読み物として楽しむべき作品だが、内容にかなり無理を感じてこの点数 |