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いいちこさん
平均点: 5.67点 書評数: 541件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.11 5点 名探偵の掟- 東野圭吾 2015/02/16 16:26
ミステリのコードを揶揄する作品群を通じて、安易なトリックの濫用と、それが無批判に受け入れられる風潮への問題認識を提示。
本格に対する愛情・愛着と自作に対するプライドが強く感じられた。
ただ同じパターンが12回続くため、後半は正直食傷気味。
同様の趣向の「超・殺人事件」と比較すると、一段も二段も落ちると言わざるを得ない。

No.10 7点 秘密- 東野圭吾 2015/01/19 14:47
作品の前半部分では進行している事態の重大性にもかかわらず、夫の動きが鈍くヌルい対応にかなりイライラさせられるのだが、その弱さ・至らなさ故に不条理な現実に翻弄され、却ってその誠実さを印象付けられる。
夫にのみ共感が集まっているようだが、自分の人生を途中で断ち切られ別人として生きていくことを余儀なくさせられた無念さ、娘への愛情から学業とスポーツに打ち込みながら家事と両立させていく妻の真摯な想いも胸を打つ。
どんでん返しは仕掛けとしてはそれほど傑出したものではないが、ささやかな伏線からタイトルの持つ重大な意味に収斂させた手際は流石

No.9 7点 超・殺人事件―推理作家の苦悩- 東野圭吾 2014/09/19 19:56
下世話な楽屋ネタといってしまえばそれまでだが、示唆に富んだ作品だろう。
ミステリの本質から外れた記載が延々と続く長編群、ミステリ・ランキングの一位だけが売れて後は死屍累々というミステリ界の現状に一石を投じる作品。
パロディとしてはほぼ最高級の評価で、ミステリを愛する方ほど読む価値のある作品

No.8 6点 聖女の救済- 東野圭吾 2014/07/23 12:00
Xと同様、倒叙形式のハウダニット。
メイントリックの着想は見事。
ただ現実性に乏しい弱点を補強するために話を膨らませた分、拡散して密度が低下しているのが難点。
それでも長編として破綻なく持たせきる構成力、読ませきるリーダビリティはさすがだが。
「虚数解」も素晴らしい。
Xの「幾何の問題に見せかけて実は関数の問題」には及ばないにしても、作品の本質を一語で言い当てている。
一方、タイトルは疑問。
「聖女」にはかなりの違和感があるし、(他の方も指摘されているように)この真相を「救済」とは言わないと思う。
この著者、あまりに上手すぎるため何を書いてもヒットにしてしまう。
本作もインハイの速球を華麗なテクニックでヒットにしたが、外野の間を割る長打という印象はない

No.7 7点 ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 2014/04/04 18:49
動機の納得性、考え抜かれた伏線の妙、トリックの鮮やかさなど、さすがの出来映え。
ただし、よく比較される「仮面山荘殺人事件」とはプロットの堅牢さで確実に差があり、一段落ちると言わざるを得ない。

No.6 4点 殺人の門- 東野圭吾 2014/03/20 18:49
リーダビリティは相変わらずでさすが。
ただ作品の狙い・主題が途中でわかると、その後の展開が一定程度読めてしまい、緊迫感が殺がれるのが難点。
ラストも悪くはないのだが、救いのない物語はカタルシスが感じられない分、読後感が重苦しい

No.5 6点 宿命- 東野圭吾 2014/03/20 18:14
ミステリとしては作りこみに甘さを感じる
作者のすばらしいリーダビリティとテクニックが上乗せされてこの評価

No.4 8点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2012/05/03 17:07
強盗が侵入し軟禁された後も今一つ緊迫感に欠けた描写が続く。
違和感を感じながらも焦点は消されたSOSや壊されたタイマーに移り、作者らしからぬ凡作ムードが漂いはじめたところで驚愕の真実が明かされる。
確かにありふれたトリックだし、アンフェアとの指摘も理解できる。
しかしタイトルを含めたすべてがミスディレクションとして機能している鮮やかさ、トリックの必然性を深く納得させる堅牢なプロット、適度なボリュームと高いリーダビリティから生まれるスピード感が素晴らしい。
やや甘めかもしれないが納得の8点

No.3 5点 白夜行- 東野圭吾 2012/04/12 22:01
東野圭吾の数ある作品の中でも1、2を争う評価の高い作品だが、私にとっては残念なデキと言わざるを得ない。
敢えて主人公の内面描写をせずに周囲のエピソードから迫っていくというプロットはわかる。
しかしいくらなんでも説明不足が過ぎる。
主人公がなぜあれほどまでに献身的に振る舞わなければならなかったのかが本作の主題である。
しかし、その核心に迫るものが何もない。
複数解釈を許す柔軟構造との反論もあるかもしれないが、それにしても圧倒的に説明不足すぎるだろう。
従って、あっけなさ過ぎるラストも単に置いてけぼりを喰らっただけで終わってしまった。
私の読解力不足かもしれない。
読む人によっては言い知れぬ余韻が残るのかもしれない。
だとしたら、これほどのボリュームが必要だったのかは大いに疑問。
広げるだけ広げた風呂敷が一気に畳まれるカタルシスが一向に感じられないまま、徒労感と消化不良を感じる読後感だった

No.2 8点 悪意- 東野圭吾 2012/02/05 16:13
世評の高い作品だが冒頭が手記である時点でこちらも身構えている。
真犯人は容易に想像がつくので後はミスディレクションを探すだけ。
案の定、犯人はすぐに逮捕され悲しい背景と恐るべき悪意が見えてくると思ったら一転・・・
殺人自体が真の目的ではないという斬新なプロットを評価。
救いがなさすぎる真相だが共感を感じる部分もある。
まとまりが良すぎてややパンチ力不足の感もあるが、類稀なテクニックと完成度の高さを評価

No.1 10点 容疑者Xの献身- 東野圭吾 2012/01/15 15:06
(以下ネタバレを含みます)
メイントリック自体は古典的でありふれたものだ。
しかも、●●の記載の不在、犯行直後のXの発言、死体の状況、Xの勤怠表と弁当購入の事実、技師の存在、娘の友人の証言等、決定的な伏線がごまんとある。
とりわけ「幾何の問題に見せかけて実は関数の問題」は極めて秀逸な含蓄のある伏線である。
にも関わらず見事に騙されてしまったのはひとえに倒叙形式によるところが大きい。
何と言っても我々読者にとって犯行経緯はすべて明らかになっているはずだから。
その先入観と、崩れそうで崩れない映画館のアリバイ、平々凡々とした下町の描写、そしてタイトル自体が強烈なミスディレクションとなり真実を隠蔽してしまった。
これほど倒叙形式が遺憾なく効果を発揮しているケースは寡聞にして知らない。
ただこれだけでは古典的なトリックに新たな光を当てたテクニックは賞賛できるとしても、スケール感はそれほど感じない。
衝撃を受けたのは本作の主題である。
どう考えてもXは通常の倫理観から逸脱した精神異常者であり、歪み肥大化したエゴの持ち主である。
彼の行為は自己中心的な卑劣極まるおぞましい犯罪行為であり、献身や自己犠牲などでは断じてない。
最大の犠牲者は無論技師である。
それを探偵には「とてつもない犠牲」と呼ばせ、ヒロインには「底知れぬほどの愛情」と呼ばせ、作中のどの人物もXの異常性を弾劾しない。
そしてタイトルには「献身」の2文字。
これは一体どういうことだろうか?
断っておくが私は倫理観をもってXの行為を断罪しているのではない。
そんなことを問題にしていたらミステリは読めない。
問題はXではなく筆者だ。
Xの行為を賛美していると理解されかねない作品を描いた筆者の真意に思いを馳せるのである。
本作のラストは様々な解釈と感慨を許容する柔軟構造になっている。
Xの行為への感動、Xの行為自体への非難、Xの行為が結果としてヒロインをより苦しめたことに対する非難、Xの人間・女性理解の乏しさへの指摘・・・
どれもが正解になり得る。
この問題作を様々な批判を覚悟のうえで敢えて描ききった著者の凄みを感じざるを得ない。
本作の素晴らしいストーリーテリング、巧緻極まるテクニック以上の衝撃がそこにある。

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いいちこさん
ひとこと
評価にあたっては真相とトリックの意外性・納得性を最重視しつつ、プロットの構想力・完成度、犯行のフィージビリティ・合理性に重点を置いています。
採点結果が平均6.0点前後となるよう意識して採点するととも...
好きな作家
東野圭吾、麻耶雄嵩、京極夏彦、倉知淳、奥田英朗。次点として島田荘司、有栖川有栖、法...
採点傾向
平均点: 5.67点   採点数: 541件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(31)
麻耶雄嵩(21)
島田荘司(20)
奥田英朗(15)
宮部みゆき(15)
倉知淳(15)
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東川篤哉(11)