皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
蟷螂の斧さん |
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平均点: 6.10点 | 書評数: 1679件 |
No.559 | 5点 | まほろ市の殺人 秋- 麻耶雄嵩 | 2014/02/20 15:39 |
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「神様ゲーム」(ミステリーランド)と同様、著者らしい終わり方なのでしょう。本格部分は、サブメイン事件で若干味わえますが、メイン事件(サイコ系?)の取り扱いが中途半端で、オチだけを狙ったようにしか感じられませんでした。中編という縛りがあるので致し方ないのか?。動機の内容にはあまりこだわらない方ですが、なにも触れられていない点は納得性に欠けると思います。 |
No.558 | 5点 | 殺意は必ず三度ある- 東川篤哉 | 2014/02/19 13:04 |
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(ネタバレあり) アリバイトリックのある動作は秀逸です。しかし、好みでない点が1つあり、残念ながらこの評価。ユーモア(ギャグ)については、天藤真氏を読んだ後なので、比較してしまい、ほとんど笑えませんでした。大人?のユーモアと高校生のギャグを比較してはいけませんが・・・(苦笑)。見立て殺人、アリバイトリックは高評価です。 |
No.557 | 7点 | 皆殺しパーティ- 天藤真 | 2014/02/18 08:52 |
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あとがきに、「この図太く、あくどく、そして純粋な悪党たちに、ほとんど愛情を感じていたことである。」とあります。読者にもそのことが伝わってきます。描かれていることはドロドロで醜いものですが、ユーモアでオブラートし、爽快感さえ感じさせるところに、著者のセンス(最大の特徴)があると思います。性豪の主人公が語り部になっており、すべて自分の都合のいいように書いているところも面白い。なお主人公の家族からの手紙を載せることで、そのことは相殺させていますが・・・。「アクロイド」を連想させるところ(刑事の推理)もうまいと思いましたし、複雑な家族関係をうまく料理していました。しかし、秘書・早苗の性感覚は?(笑)。 |
No.556 | 6点 | 戌神はなにを見たか- 鮎川哲也 | 2014/02/15 18:13 |
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地道なアリバイ崩し(著者の特徴でもある)のですが、やや冗長な感も無きにしも非ず。2つのアリバイトリックがありますが、一つは前例(1963)があり、いかがなものかと・・・。もう一方のトリックはよく考えられていて評価できると思います。逮捕された犯人?の従姉が、後半描かれていないのがやや不満点でもあります。 |
No.555 | 8点 | 館という名の楽園で- 歌野晶午 | 2014/02/14 08:31 |
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館の主人に「夢が叶ってよかった・・・」と言ってあげたい気持ちになりました。自分が登場人物以上の年齢であるから、感情移入ができたのでしょう(苦笑)。ラストの描き方をみると、著者の原点(館)から、その後の変貌(ミステリーの多様性)にかかる過渡的な作品のように思えます。トリックと伝説がうまく融合していました。余談「夢」について・・・野球少年が甲子園の土を踏みたいのと同様に、サッカー好きの私は天然芝の球場で試合をしたいが夢でした。この歳までサッカーを続け、やっと最近念願が叶いました。なので次の夢は「ハット・トリック」(笑)。評価はトリック6+物語性(夢)2と甘くしました。 |
No.554 | 8点 | 兄の殺人者- D・M・ディヴァイン | 2014/02/13 14:14 |
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トリック自体はそれほどでもないのですが、それを解明する鍵(主人公が感じた違和感)が秀逸だと思いました。人物像もよく頭に入りましたし、構成もかなり凝っていて、非常に読みごたえがありました。今までの著者の評価は「悪魔」5、「ウォリス家」6「災厄」7でしたが、本書(デビュー作)を最初に読んでいれば、前者の評価も違ったものになっていたかも?。当初、作風がどうも・・・といったイメージを持ってしまったためです。物語全体のリーダビリティからすれば9点以上としたいのですが、トリックが好きなので、ポリシー通り8点としました。 |
No.553 | 5点 | コンピュータの身代金- 三好徹 | 2014/02/11 12:03 |
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①あまりにも簡単に共犯者になっているのでは?②なぜ、警察を早く呼ばないのか?(犯人対警察の構図の方が緊迫感が出るのでは?なんとなく甘い感じがしてしまいました。)③分配受け取り後、その処理の具体性は?等の疑問点はありますが、まあ、スラスラと読むことはできました。後半の犯人同士の疑心暗鬼部分とそれを追いつめる警察の部分を前面に打ち出せば、もっとサスペンスフルな仕上がりになったような気がします。当時としてのアイデアは評価したいと思います。 |
No.552 | 6点 | 動く家の殺人- 歌野晶午 | 2014/02/08 17:31 |
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題名からして、トリックはあまりにも簡単すぎるので、その裏に何かあるのか?と期待してしまいました(笑)。別の意味で裏があったわけですが・・・。名探偵・信濃譲二シリーズを読む初めての読者にもわかるような伏線があればよかったのでは?と思います。登場人物が出演する舞台のドタバタ喜劇?部分は笑えないのですが、なんとなく不思議な魅力がありました。 |
No.551 | 6点 | 人それを情死と呼ぶ- 鮎川哲也 | 2014/02/07 17:18 |
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あとがきに『600枚の長編を書き下すよりも、わずか数字の題名を考えるほうが困難である。』とあります。その通り、本題名は秀逸ですね。ラストでその深い意味が分かるというものです。読書中は、動機、アリバイよりも、なぜこの題名なのか?の方に興味をそそられました(笑)。 |
No.550 | 6点 | 灰色の仮面- 折原一 | 2014/02/05 10:23 |
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オリジナル版で読了。改訂版とは結末が異なるらしい。本オリジナル版は、発表当時、結末がわかりにくいとの比評が多く、改定したとのこと。現在では叙述ものを、多くの作者が手掛けており、読者も免疫ができていると思うので、それほど難しくはないのでは?との感想。暴行摩は誰?だけではなく、最初の事件の真相も明かされ、楽しめました。 |
No.549 | 7点 | 丸太町ルヴォワール- 円居挽 | 2014/02/03 20:27 |
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ルージュ(謎の女)とのやり取り、私的裁判(騙しありの何でもありルール)場面、ラストのどんでん返し、それぞれ十分楽しめました。あえて言えば、伏線なしの叙述部分(片方です)は感心しなかった。というより唐突で無駄なような気がします。私的に騙されたと感じるのは、読後、あれが伏線だったのかということないと・・・。まあ、気が付かなかっただけなのかもしれませんが。あとはルージュの○○。妖艶過ぎませんか?(苦笑)。 |
No.548 | 7点 | 十二人の手紙- 井上ひさし | 2014/01/31 14:40 |
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騙しのテクニック・・・『葬送歌』ある高名な作家に送られてきた下手くそな戯曲、その意図は?『ペンフレンド』ペンフレンドを募集したところ、返信が。その相手は囚人なのか?『鍵』山へこもった画家へ、妻から自宅で殺人事件が起こったので至急帰れとの手紙。画家のとった行動は?『里親』有名作家のアシスタントとその恋人。先生に自分の作品が盗作されたのではと疑い『泥と雪』高校時代の片思いへの女性(今は人妻)へのラブレターとプレゼント攻勢、その結果は。サイコ系・・・『隣からの声』新婚早々の夫が海外出張。妻は隣家の異変に気付く。『シンデレラの死』演劇学校に通う娘がオーディションに合格し、主役を獲得するが・・・以上、おもわずニヤリとしてしまいました。6点か7点か迷いましたが、全体のアイデアに敬意を表しました。 |
No.547 | 5点 | エッシャー宇宙の殺人- 荒巻義雄 | 2014/01/29 18:57 |
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裏表紙より『物見の塔、無窮の滝、版画画廊、球形住宅…天才画家エッシャーの描き出した超建築の街カストロバルバの不可解な連続殺人、幻想の都市を訪れた夢探偵万治陀羅男はこの白日夢的世界に事件の謎を追うが。』モチーフの原画が挿入されていれば、もっと楽しめたかも。著作権の問題で無理であったのか?。現在ではネットで調べられるので、確認できますが・・・。ミステリー部分は、やや反則的なところや、古典のネタバレなどがあります。エッシャーの作り出した世界(夢の集合体ということらしい)での殺人事件ですが、事件そのものや解決篇は、荒唐無稽なところはありません。不思議な世界を楽しむ作品だと思います。 |
No.546 | 5点 | 六人目の少女- ドナート・カッリージ | 2014/01/28 17:09 |
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裏表紙より~『森のなかで見つかった六本の左腕。それは、世間を騒がせる連続少女誘拐事件の被害者たちのものだと判明する。しかし、誘拐された少女は五人だった。六人目の被害者は誰なのか。失踪人捜索のエキスパートであるミーラ・ヴァスケス捜査官は、高名な犯罪学者ゴラン・ガヴィラとともに特別捜査班に加わることになる。だが、警察の懸命の捜査を嘲笑うかのように、犯人は少女の遺体を次々と発見させて…。フランス国鉄ミステリ大賞、バンカレッラ賞など数々のミステリ賞を受賞した息もつかせぬ傑作サイコサスペンス。』~
イタリア版「羊たちの沈黙」と称されている旨(訳者あとがきより)。ラストで判明する犯人の動機(目的)は、初物ではないかと思い、この点は大いに評価します。ただし、不確定要素は多分にありますが・・・。物語の構成上やむを得ないが、登場人物の行動に納得できない部分が二点ほどありました。全体的には長く、事件に関連はあるのですが、脇道へそれているきらがあり、散漫な印象を受けました。サービス精神がおおせい?、もっとコンパクトであればとの感想です。 |
No.545 | 5点 | Zの悲劇- エラリイ・クイーン | 2014/01/26 12:48 |
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サスペンス的な観点からは物語は楽しめました。本格的には今一つといった印象です。物足りない点は以下の通り。アリバイ・動機にほとんど触れていない。○○の伏線は弱すぎる(読者は推理不可?)。右手・左手は納得性がない(陪審員と同様)。消去法の推理(この部分は高評価)がメインとなるので致し方ないのか? |
No.544 | 5点 | ひまわりの祝祭- 藤原伊織 | 2014/01/24 17:08 |
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ストーリーの展開はスピード感もあり、また純文学的な香りも漂い結構楽しめました。しかし、ミステリー要素の2つの主題に疑問符がつき、後味はあまりよくありません。一つは妻の自殺の原因~いまひとつ妻の心情(必然性)が理解できないこと、また究明場面も曖昧のままですっきりしない。あえてそのようにしているのか?・・・。二つ目はラストシーン~大いに疑問です。美術に関する価値観が相違していると言われればそれまでですが・・・。 |
No.543 | 8点 | 俳優パズル- パトリック・クェンティン | 2014/01/23 09:55 |
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主人公はアル中依存症を克服し、プロデューサーとしての復活を目指す。離婚歴があるアル中気味?の主演女優、事故の後遺症に悩む主演男優等の問題を抱えながらもリハーサルが開始される。しかし、そこには悪意が存在した。果たして興行の初日を迎えられるのか?というストーリー自体に魅せられました。舞台裏や人物像も丁寧に描かれており、好感が持てます。ラストの幕切れは劇的であり、まさに劇場ミステリーですね。主人公ピーターとアイリスの恋が同時進行しますので、前作「迷走パズル」を先に読んだ方が楽しめると思います。なお、解説は法月綸太郎氏です。 |
No.542 | 5点 | このミステリーがすごい!2014年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2014/01/22 10:27 |
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国内ベスト10に投票者の誰が最も的中しているのかを見てみました。68名の投票者中、第1位は、筑波大学ミステリー研究会の5冊(6冊投票中)以下、京都大学推理小説研究会4冊、ワセダミステリクラブ4冊、個人では3冊が最大、0冊が15名との結果。海外篇では、第1位が、立命館大学ミステリー研究会の5冊、個人では最大4冊との結果。大学サークル(部員の投票結果?)が強いのは、やはり多数決の原理が働くという証明?(笑)。復刊希望・幻の名作では、「炎に絵を」(陳舜臣)「オイディプスの刃」(赤江瀑)「私という名の変奏曲」(連城三紀彦)「龍神池の小さな死体」(梶龍雄)「冷蔵庫より愛をこめて」(阿刀田高)「心ひき裂かれて」(R・二ーリィ)等々、好みの1冊が投票されていてうれしくなりました。未読分では、「コンピュータの身代金」「エッシャー宇宙の殺人」「十二人の手紙」に興味を惹かれ、今後のリストに入れます。 |
No.541 | 5点 | ひとたび人を殺さば- ルース・レンデル | 2014/01/19 17:33 |
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療養休暇中の警部による地道な聞き取り調査が淡々と続きます。途中での仮説・推論の方が、真相より面白くインパクトがあるという皮肉な結果でした。「ロウフィールド館」もそうでしたが、どうも相性はよくないようです。 |
No.540 | 5点 | だれもがポオを愛していた- 平石貴樹 | 2014/01/16 18:02 |
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トンビが油揚げをさらったような印象です。プロット自体があまり好みではありませんでした。ポオを読んでいれば、もう少し楽しめたのかもしれませんが・・・。伏線の回収がロジック的とのことですが、重要なダイイングメッセージ「ユーラルーム」も解決篇を読んでもよくわかりませんでした(苦笑)。動機をあえて排除し、物証のみでの推理・展開なので、物語としての深みを感じることができませんでした。残念。 |