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蟷螂の斧さん
平均点: 6.09点 書評数: 1668件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.588 6点 デス・コレクターズ- ジャック・カーリイ 2014/04/14 20:37
シリーズ1「百番目の男」、同4「ブラッド・ブラザー」と比べるとおとなし目。そういう意味だと物足りない。どちらかといえばフーダニットに重点か。囚人の画家が指揮をとっている(他人にはそう見える)描写が、なぜか印象に残りました。主人公はダリが好きだったんですね。

No.587 5点 血染めのエッグ・コージイ事件- ジェームズ・アンダースン 2014/04/12 09:21
高評価で期待し過ぎたのか、残念。まず題名が活かされていないというよりあまり意味がなかった。殺人までと解決篇、それぞれ長すぎる。単純な事件であるが、パズラーを喜ばすため、現場に多くの人物を登場させた?。複雑にし過ぎの感。登場人物が多すぎ覚えきれない(苦笑)、そして裏のある人物が多すぎる。1人で十分。探偵役の視点が3人以上に移ってしまっているため集中できなかった。過ぎたるは及ばざるがごとしの感。なお伏線がほとんどなく犯人像は唐突な感じを受けた。等々あまり感心するところがありませんでしたがユーモアセンスは買っています。「証拠が問題」が楽しめたので、「殺意の団欒」(ユーモアミステリー?)は読もうと思っています。

No.586 6点 画商の罠- アーロン・エルキンズ 2014/04/09 19:21
題名通り、画商が仕掛けた罠は?がストーリです。レンブラントとレジェの2枚の絵についての真贋が語られます。物語の構図は絵画の寄贈にまつわるもので「楽園のカンヴァス」(2012原田マハ氏著)と似ています。勉強になったのは、例えば画家Aの弟子が描いた模写(素晴らしい出来栄えでAの描いたものと見分けがつかない)が発見された場合、科学的分析(年代識別や絵具素材)では真贋の区別がつかないということでした。14.4.3イタリア発。ゴーギャン発見!!。盗難~列車に置き忘れ~競売~台所に40年間飾られる~15億円の価値~「事実は小説より奇なり」でした。

No.585 5点 真犯人- パトリシア・コーンウェル 2014/04/07 13:18
シリーズ4作目。1作目から読まないと背景(人物関係)が判らないのが欠点(説明が後付)。人物像描写(前回作より数年後?)で、主人公の姪、大学時代の教授の様子・変化は細かく描かれているが、肝心の相棒の刑事と元恋人のことがよくわからない。コンピュータ(指紋システム)の話が冗長であった。全体として死んだ人間の指紋が新たに殺人現場で発見されるという謎で引っ張り過ぎの感。主人公ケイが犯人として疑われる場面は盛り上がるが、真相部分はあっけない幕切れとなる。黒幕的存在は暗示されているので判り易い(動機は不明)が、真犯人の動機・心理などは触れられていないので、すっきり感がなく物足りない。結局次回作?へといった感じになり、単独で読むのはお勧めできない作品ですね。

No.584 8点 摩天楼の身代金- リチャード・ジェサップ 2014/04/04 14:33
1981年の作品です。同年、日本では「コンピュータの身代金」(三好徹氏著)が発表になっています。「コンピュータ」を”人質”にするアイデアでしたが、本作は「超高層ビル」をということで、日米での時代背景など、何やら興味深いものを感じます。緊迫感・スピード感では本作のほうが断然上回っているように思いました。”身代金”受け取り方法のアイデアは斬新ですが、回収にかなりのリスク(杜撰さ)があるのでは?。ラストはニヤリとしますが、西村京太郎氏の作品(1977)が先陣を切っていましたね。たまにはクライムサスペンスもいいものと思いました。

No.583 7点 証拠が問題- ジェームズ・アンダースン 2014/04/03 09:41
物語の展開は判り易いし、文章も読み易い。よって深読みをすることもなくスラスラ読んでしまいました。犯人はまったく判りませんでした(笑)。登場人物表で「?」のつく人物は初めてで、その人物かと思われる者が途中から登場するのですが、うまく騙されました。全体の印象はスマートということですね。また、物語とは全く関係ないのですが、警部をどのような呼称にすればよいのか?が全編を通して出てきます。こういったユーモアも好きです。

No.582 6点 偽りの名画- アーロン・エルキンズ 2014/04/01 18:25
絵画ミステリーで、どちらかといえばエンタメ系でした。ちょっと長いですね。もう少しコンパクトになればと思います。展示絵画のうちの贋作を調査する物語ですが、真相についてのアイデアは楽しめました。フェルメールと贋作については「フェルメールの闇」(田中純著)の方が詳しく描かれていると思います。シリーズ2作目の「一瞬の光」に期待。

No.581 6点 百番目の男- ジャック・カーリイ 2014/03/29 16:58
(タイトル・男⑫)4作目を先に読んでいたので、登場人物、背景はよく頭に入りました。しかし、シリーズものはやはり順番通りの方がよいかも。死体に書かれた意味不明の文字が、こうくるとは思いもよりませんでしたね(笑)。一面バカミスっぽい感じもしますが、やはり犯人の異常性を際立たせているものと解釈します。まあ、よくこのようなことを考えついたものと感心します。

No.580 6点 フェルメールの闇- 田中純 2014/03/27 18:32
イギリスの古城でフェルメールの「自画像」が発見される。鑑定結果は真画と思われた。難病に侵され、フェルメールを模写することだけが生きがいとなっている男がいた。その妻は「模写美術館」を夫のために建設しようとし、発見された「自画像」をその美術館の目玉としたいと考える。真画~模写~贋作~盗難品が絡み合い物語は進行します。フェルメールに関する薀蓄や天才的贋作画家メーヘレンの逸話など楽しめました。他の書評では、後半急いでいる感じでミステリー的には?が多いような気がしますが、私的には楽しめました。

No.579 7点 ブラッド・ブラザー- ジャック・カーリイ 2014/03/26 09:11
連続殺人鬼の殺害方法が強烈ですね。映像化は無理かも?。連続殺人犯の兄を持つ弟(刑事)の心理がよく伝わってきました。登場人物の因果関係が明らかにされるのですが、この辺の構築はうまいと思います。サスペンスフルでスピード感もあり一気読みできました。メッセージの翻訳で「わたしに必要なのは重大な・・・」より「わたしに必要なのはシリアス・・・」の方がよかったような気がします。

No.578 7点 古い骨- アーロン・エルキンズ 2014/03/24 13:59
裏表紙より・・・『レジスタンスの英雄だった老富豪が、北フランスの館に親族を呼び寄せた矢先に不慮の死を遂げた。数日後、館の地下室から、第二次大戦中のものと思われる人骨の一部が発見される。フランスを訪問中だった人類学教授ギデオン・オリヴァーは、警察に依頼され人骨を調べ始めるが、今度は親族の一人が毒殺された!骨を手がかりに謎を解く、スケルトン探偵オリヴァーの名推理。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。』・・・        不慮の水死は地文では、事故にしか思えない。どこに仕掛けがあるのか興味を惹かれます。そして骨から過去の事件を推理することに、最初は登場する警部と同様に疑問であったのですが、読むうちに段々と納得させられてしまいました(笑)。このような物語をよく思いついたものと感心します。モンサンミッシェルは美しい風景しか想像していなかったのですが、結構荒々しいことがわかりました。そしてル・ムートン・ブランでの食事風景を読んで訪れてみたい気分になりましたね。海岸の塩分の多い牧草で育った子羊は、風味豊かな微妙な味わいが評判とあります(笑)。

No.577 7点 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁- 島田荘司 2014/03/22 18:49
時刻表を見ないで済むトラベル・ミステリー(非常にありがたい・・・笑)。「なぜ被害者は顔の皮を剝がされたのか?」、「なぜ被害者は推定死亡時刻に寝台特急”はやぶさ”で目撃されたのか?」この2つの魅力的な謎で引っ張ってゆきます。双子?別人?・・・そして解決篇での逆転の発想はお見事!!。解説で綾辻行人氏がトラベル・ミステリーとして”格”が違うと評していますが納得です。

No.576 5点 覆面作家- 折原一 2014/03/20 19:12
作中作と現実が徐々に重なっていく様は不思議な気持ちになります。この試み(時間軸)は評価したいと思いますが、真相での「いつものやられた感」はあまりありませんでした。

No.575 8点 帰去来殺人事件- 山田風太郎 2014/03/18 10:26
出版芸術社(1996年版)で拝読。表題作+7短編集。『名探偵篇「十三角関係」』(光文社)は左記+十三角関係ですが、2、3版は表題作が削除されているとのことで、別枠で作品名を追加させていただきました。表題作については、動機、犯人像もさることながら、特にアリバイトリックが秀逸であり、中編ではもったいない気がしました。長編だったら最高点かもという感じです。このトリックで、大昔のテレビドラマ「泣いてたまるか」(渥美清、左幸子主演~雪の降る街に~)を思い出しました。ただし、こちらは感動物語です。

No.574 6点 大はずれ殺人事件- クレイグ・ライス 2014/03/16 19:29
裏表紙より『ジェークにとって、それはこよなく愉しい夢見心地の宵だった。以前から恋こがれていたヘレンとやっと結婚できたのだから。ところが、そのパーティの席上、シカゴ社交界のナンバー・ワン、モーナ・マクレーンが`「絶対つかまらない方法で人を殺してみせる」と公言したのである。よせばいいのにジェークはその賭けにのった。なにしろ、彼女が失敗したらナイト・クラブがそっくり手に入るのだ! その翌日、群衆の中で一人の男が殺された……。そもそもはたして、これはモーナ・マクレーンの仕組んだ犯罪なのか? 弁護士マローンとジェーク、ヘレンのトリオが織りなす第一級のユーモア本格ミステリ。       アメリカンユーモアはどうもピンときません。解説によると抱腹絶倒しない人は変な人らしい(苦笑)。ただし、時代の変化がユーモアの変化をもたらしているかもとはありますが・・・。内容の方は動機探しで楽しめました。ラストの会話が、題名、続編を暗示しておりセンスがいいと感じました。

No.573 5点 猫柳十一弦の失敗- 北山猛邦 2014/03/15 18:44
裏表紙より~『成人するまでに嫁がねば一族を追放する―山に閉ざされた村にある名家・後鑑家のお嬢様に脅迫状が届いた。差出人は戦国時代の姫!?彼女の20歳の誕生日が迫る中、相談を受けた探偵助手学部の君橋と月々が超サプライズな方法で完全解決…したはずなのに、村に残る伝説を調べていた彼らのゼミ教官である女探偵・猫柳十一弦は惨劇が起きると推理。事件を止めるべく村へと急いだ。』                           金田一の逆バージョンで、シリーズ1作目は新鮮な感じを受けましたが、2作目となると、どうなのかな?といった印象です。ライト風なので、おどろおどろしさはありません。猫柳十一弦の恋心の方が前面に出ているように感じました。1作目のように、もう少し控えめにした方が好みだったのですが・・・。

No.572 7点 アリアドネの弾丸- 海堂尊 2014/03/13 22:38
前半は官僚小説のようです。後半はタイムリミット型エンターテイメント+本格で楽しめました。ロジカルで犯人を追いつめる場面は結構迫力がありました。皮肉で辛辣な会話がテンポよく、ニヤニヤしながら読むことができました。

No.571 7点 名探偵篇「十三角関係」- 山田風太郎 2014/03/11 16:43
十三角関係(廣済堂文庫)~短編集掲載なし~にて。『妓楼「恋ぐるま」の女主人、車戸旗江の死体が発見された。死後首と四肢を切断され、それらが店の看板に磔られた姿で。だが彼女の殺害には二重三重の不可能性が重なっていた。死体発見直前まで何人もの客が訪れ、どの客も彼女を殺害し死体を切断するだけの時間がなかったこと、そして調べれば調べるほど彼女が誰からも慕われ、殺害される動機が見当たらないこと……。』                     意外な真相には驚きました。探偵役・茨木歓喜(酒好きの医者)が魅力的です。ユーモアセンス(「探偵小説はいろいろと約束事があって・・・」と言わしめたり、嘘倶楽部(嘘をつかなければならない規則)へ容疑者・証人を連れてゆき発言させるなど)もあります。多人数の証言がありますが、各人の動向には不自然な点はあるものの、発言内容自体に伏線らしきものがなかったのでは?という点が、少し引っかかりました。

No.570 6点 猫柳十一弦の後悔- 北山猛邦 2014/03/10 13:06
「アリス・ミラー」「アルファベット」は期待はずれでしたが、本作はライト風で楽しめました。クローズド・サークルものが好みなこともありますが・・・。孤島ものでは、探偵役が何もできないうちに、次々と殺人が起こってしまうものがほとんどですが、本作はそれを未然に防ごうとするところに新鮮さを感じました。探偵・猫柳十一弦のキャラクターも一風変わっており魅力的でした。「さっきのって・・・・・助手としての答えですか?」「そうですよ」「そうですか」こういう会話って結構好きなんです(笑)。

No.569 6点 翼とざして- 山田正紀 2014/03/09 09:29
裏表紙より~各国が領有権を主張している南洋の島、海鳥諸島。その中のひとつ、鳥迷島に、右翼青年のグループ『日本青年魁別動隊』が上陸した。しかし、上陸早々、仲間のひとりが断崖から突き落とされた!わたしは、わたしが突き落とすのを見ていた…。グループの人間が次々と惨劇遭う。仕掛けているのは、わたしなのだろうか。わたしも、殺されるのだろうか。~著者のミステリーとの出会いは「僧正殺人事件」「Yの悲劇」「新車の中の女」三冊とのこと。「新車の中の女」のアイデンティティの揺らぎをモチーフにした作品です。60年代後半から70年代にかかる物語で、「東京流れ者」「ベンチャーズ(キャラバン)」「三島由紀夫」「007(ドクター・ノオ)」「太陽がいっぱい(アラン・ドロン)」「夕日が泣いている(スパイダーズ)」など青春時代を思い起こさせる言葉が出てきました。著者とほぼ同年代なので懐かしい(笑)。サスペンス色の強い作品ですが、幻想(揺らぎ)が回収されてゆく様は読みごたえがありました。この点は本格ものを意識していると思いますが、ややご都合主義といわれても仕方ないところもあります。しかし、「揺らぎ」の要因は初物と思われ評価したいと思います。挿入されている寓話「蠍とカワウソ」(蠍はこうするように生まれついている)→(わたしは、誰よりも愛しているのですから・・・)が印象に残ります。

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蟷螂の斧さん
ひとこと
ミステリーは、作家中心では読んでおらず、話題作や、ネットでのお勧め作品を読んでいます。(2013.6追加~本サイトを非常に参考とさせてもらっています。現在は、読後、類似なトリック・モチーフの作品を探した...
好きな作家
ミステリー以外で「石川達三」、短編で「阿刀田高」、思想家で「荘子」
採点傾向
平均点: 6.09点   採点数: 1668件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(53)
折原一(48)
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松本清張(28)
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西村京太郎(20)
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