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蟷螂の斧さん
平均点: 6.09点 書評数: 1668件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1008 6点 殺人四重奏- ミシェル・ルブラン 2017/03/29 11:46
皮肉なラストは、フランス・ミステリーらしいと言えるのではないでしょうか。なにしろ、フランス推理小説大賞受賞作ですから(笑)。前半に告白があります。題名から、そのパターンがずっと続くのかと危惧しましたが、後半ではひねりが加えられており一安心。200ページ余りの作品で、「最後の一行」的な作品でもあります。気楽に読めるフランス・ミステリーといったところ。

No.1007 6点 ラスト・ウィンター・マーダー- バリー・ライガ 2017/03/23 22:11
三部作の完結編とは知らずの読書。前作からの完全なる続き物でした。前二作の読者からも「今までの話を少し復習してくれないと、読んでる側は辛いなぁ」との声あり(苦笑)。訳者あとがきを読み、何とか人物相関図を把握するという具合でした。リーダビリティはありますし、親子の対決も読みどころでした。またサプライズも用意されています。まあ、シリーズを読んでいる人にとっては、ある程度予想はつくのかも?。青春ミステリーというより、シリアルキラーものといってよいと思います。ただ、ある重要人物のその後が不明で、完結編としては?マークがつきます。

No.1006 6点 秘密の友人- アンドリュー・クラヴァン 2017/03/19 16:35
法月綸太郎氏の「ミステリー通になるための100冊(海外編)」で紹介された一冊で、我孫子武丸氏の推薦本とのこと。精神科医のコンラッドは殺人罪で起訴された少女エリザベスを看ることになる。彼女は二重人格で「秘密の友人」が現れるという。この辺まではエログロ描写のあるサイコキラーものか?と思いきや、途中から物語は全く違う展開となって行きます。タイムリミット系エンターテイメントと言っていいのでは。犯人は犯行を否認するのですが、ある人物が言う印象的な言葉でラストを迎えます。

No.1005 4点 夜は千の目を持つ- ウィリアム・アイリッシュ 2017/03/14 20:07
法月綸太郎氏の「ミステリー通になるための100冊(海外編)」で紹介された一冊。いまなら「ホラー」に分類されるかも・・・とありましたが、まったくその通りでした(苦笑)。タイムリミットものの著者らしさは垣間見れたのですが、嗜好と一致せず、この評価。

No.1004 6点 そして医師も死す- D・M・ディヴァイン 2017/03/07 16:35
本作のトリックは、パトリック・クエンティン氏のパズルシリーズで一度お目にかかって以来です。結構気に入っているプロットの一つです。主人公、婚約者、未亡人の色恋沙汰に気を取られ過ぎてしまいました。それが作者の罠だったのか?(笑)。

No.1003 5点 システィーナ・スカル- 柄刀一 2017/03/03 09:44
表題作~ミケランジェロの「最後の審判」を見てショック死した老婦人。その老婦人が持っていた人骨から過去の首切り事件の謎を追うというものです。首切りの根拠は、今一つ説得力がないような・・・。また、ショック死の原因は「最後の審判」が○○○に見えるというもの(新説?)ですが、私にはこじつけのようにしか思えませんでした(苦笑)。

No.1002 6点 複雑な殺人芸術- 評論・エッセイ 2017/02/21 22:32
1997年から2006年の評論集。「ミステリー通になるための100冊(海外編)」1ミステリー幼年期、2探偵小説の黄金時代、3アフター・ザ・ゴールドラッシュ、4アメリカ探偵小説の自立、5フレンチはお好き?、6あいつの名はポリスマン、7スパイ・ストーリー、8追憶のネオ・ハードボイルド、9一発屋(?)たち、10ミステリーは進化する?と各項目10冊程度の作品と2、3行の簡単な紹介文。気になったのは「夜は千の目を持つ」ウィリアム・アイリッシュ~今ならホラーに分類されるかも。「殺人四重奏」ミシェル・ルブラン~女優殺しの四段返しの真相をロンド形式で描いた。「秘密の友人」アンドリュー・クラヴァン~我孫子武丸が絶賛しているのでリストに追加。の3冊です。
続いて14作品の評論。本書を手に取ったのは、「わが子は殺人者」パトリック・クェンティンの解説文を読みたいがためのものでした(笑)。「騙し絵の檻」ジル・マゴーンは著者と森英俊氏が絶賛していますが、さてどうでしょうかといったところ。
次の「初期クイーン論」は難解でした。探偵小説を数学定理に当てはめ説明していると思うのですが、なんとなくこじつけのような気もします。いわゆる後期クイーン的問題「「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できないこと」も、そもそも証明してくれなくても読者は困らないのでは?。読後感は、評論家気質(多読で良く分析している)のほうが作家気質を上回っているような気がしました。お気に入りの作家の1人なので創作活動(本格長篇)で頑張ってもらいたい。

No.1001 5点 赤い橋の殺人- シャルル・バルバラ 2017/02/19 17:27
裏表紙より~『19世紀中葉のパリ。急に金回りがよくなり、かつての貧しい生活から一転して、社交界の中心人物となったクレマン。無神論者としての信条を捨てたかのように、著名人との交友を楽しんでいた。だが、ある過去の殺人事件の真相が自宅のサロンで語られると、異様な動揺を示し始める。』~

1855年の作品で、「罪と罰」(1866)への影響があった作品かも?ということで拝読。共通点は主人公の思想が似ていること、貧しさからの殺人があること、そして苦悩といったところです。まあ比べてもあまり意味はない?。200Pの中編ですが主人公の幻想や苦悩は結構濃いめに描かれていました。本作や、初のミステリー長篇といわれる「ルルージュ事件」(1866)がフランス生まれであることが興味深かった。

No.1000 8点 罪と罰- フョードル・ドストエフスキー 2017/02/14 17:28
アメリカ探偵作家クラブが選んだミステリBEST100(1995)の第24位。初の長編ミステリーといわれる「ルルージュ事件」と同じ1866年の発表です。いやはや、かなりストレスがたまる読書となりました。第一点は登場人物表がないのでよくわからない。さらに主人公「ラスコーリニコフ」が「ロジオン・ロマーヌイチ」になったり「ロージャ」になったり(笑)。第二点は一人一人の会話が非常に長い。ロシア人はおしゃべりなのかな?。ミステリー要素の観点からは、予審判事ポルフィーリィとのやり取りが読みどころでしたね。まあ刑事コロンボよりも得体が知れず、ねちっこいかもしれません。


(ネタバレ)純文学的な意味合いは、さておき、動機について裁判では「病的な偏執狂の発作」と結論づけています。それが妥当なのかもしれません。あと、印象に残ったのは主人公のソーニャへの告白で「自分のために、自分一人だけのために殺そうと思ったんだ。」「婆さんでなく自分を殺したんだ」に対し、ソーニャの言葉「殺す権利があるの?」でした。

No.999 6点 ポアロのクリスマス- アガサ・クリスティー 2017/02/04 18:06
裏表紙より~『聖夜に惨劇は起きた!一族が再会した富豪の屋敷で、偏屈な老当主リーの血みどろの死体が発見される。部屋のドアは中から施錠され、窓も閉ざされているのに、犯人はどうやって侵入したのか?休暇返上で捜査にあたるポアロは被害者の性格に事件の鍵が隠されていると考えるが…』~

著者にとっては珍しい密室物!。メインはやはり例のごとく意外な犯人像ですかね。結構楽しめたのですが、今一歩高評価にできなかった点は、ポアロの心理的何とか。これは駄目とは言いませんが、まったく面白くない(笑)。あと、怪しそうで怪しくないとか、怪しそうではないがなんとなく気になるとか、著者の作品では必ず感じることができるのですが、本作にはそれがなかった。読者はあるイメージを植え付けられるのですが、それがミスディレクションとして機能しなかった。悪く言えば嘘をつかれた感じ。伏線はたくさんあるのですが、前記と反作用を起こしてしまい驚きに繋がらなかったということです。残念。

No.998 4点 鬼警部アイアンサイド- ジム・トンプスン 2017/01/28 12:21
裏表紙より~『何者かが放った一発の銃弾がサンフランシスコ市警察の敏腕刑事ロバート・アイアンサイドから下半身の自由を奪ってしまった。だがその手腕を見込んだ警察は、彼を顧問として迎え、手足となる三人の部下を与える。車椅子を駆り、卑劣な犯罪との闘いの日々は続く…謎めいた脅迫事件、有力者の息子が起こした轢き逃げ事件、そしてアイアンサイドの部下マークが関わる傷害致死事件。鬼警部を窮地に追いこむ事件の連続、その背後でほくそ笑む黒幕とは?』~

謳い文句にノワールの巨匠が人気TVシリーズのオリジナル・ストーリーを書き下ろしたとありますがイマイチでしたね。アイアンサイドの「善」を前面に出したため、著者の特徴である「悪」が引っ込んでしまった感じ。プロット、キャラクターもいま一歩といったところ。動機、犯行方法もすっきりしない。

No.997 7点 江戸川乱歩傑作選(新潮文庫)- 江戸川乱歩 2017/01/22 21:40
「二銭銅貨」(評価5)「D坂の殺人事件」(評価5)「心理試験」(評価6)
以上3作品は書評済。
「二廃人」(評価8)湯治場で出会った二人の老人。意気投合し過去の犯罪を告白する。意外な結末に哀愁感が漂う作品。
「赤い部屋」(評価7)99人を間接的に殺害してきた男。さて100人目は?。現在ではユーモアミステリーに分類されるかも。
「屋根裏の散歩者」(評価6)「陰獣」の原点?。でもエロチックではない。明智小五郎が禁じ手を(笑)。
「人間椅子」(評価7)醜い貧乏な職人が豪勢な椅子を製作しホテルに納める。その椅子の中に男は潜む。やがてその椅子は女性作家のもとへ。
「鏡地獄」(評価4)鏡に狂った男の物語。
「芋虫」(評価8)読者を選ぶ作品。傷痍軍人を夫に持った妻の物語。この時代乱歩氏にしか書けなかった作品かも。
バラエティに富んだ作品集でした。

No.996 7点 天国は遠すぎる- 土屋隆夫 2017/01/17 10:40
裏表紙より~『自殺した若い娘砂上彩子の遺書には、死を誘う歌としてジャーナリズムを賑わせる「天国は遠すぎる」の歌詞が記されていた。翌日、県庁の課長深見浩一が失踪、絞殺体で発見された。深見は土木疑獄の中心人物。容疑はアルプス建設工業社長尾台久四郎に向けられたが、尾台には完壁なアリバイが。この3人を結ぶ線はあるのか?』~

1959年の作品なので、本邦でのアリバイトリックものとしては結構初期の作品群になるのかも?。非常に丁寧に書かれており好感が持てました。2件目のトリックは、うまい組み合わせで非常に新鮮に感じられました。当然見抜くことはできませんでしたが(笑)。著者の作品はこれで7作目となりますが、今のところ外れはないです。

No.995 6点 こわされた少年- D・M・ディヴァイン 2017/01/13 13:25
裏表紙より~『霧の濃い夜、16歳のイアンは家を出た。優秀な生徒だった彼は、ある出来事を境に不良仲間に入り、急に金回りが良くなり、挙げ句の果ての出奔だった。姉は単なる家出と考えていたが警察に。ニコルソン警部と姉の捜査から家族の秘密・不良仲間との関係・学校での出来事・轢き逃げ事故など様々な手がかりが出てくるが。彼に何が起こったのか、生死は…。そして姉が襲撃される。』~

警部ニコルソンと少年の姉アイリーンの視点で交互に語られます。前半は事件も起こらず、捜査状況や家族関係が描かれるだけなので、やや緊迫感に欠ける印象です。後半、アイリーンが襲われるあたりから盛り上がってきます。本作はミスディレクションをメインにした作品という感じを受けました。

No.994 7点 私家版- ジャン・ジャック・フィシュテル 2017/01/05 10:56
裏表紙より~『友人ニコラ・ファブリの新作。それが彼をフランスの第一級作家に押し上げることを私は読み始めてすぐに確信した。以前の作品に比べ、テーマは新鮮で感動的、文体は力強く活力がみなぎっている。激しい憎悪の奔流に溺れながら、この小説の成功を復讐の成就のために利用しようと私は決意した。本が凶器となる犯罪。もちろん、物理的にではない。その存在こそが凶器となるのだ…。』~

前半はミステリー的な要素はほとんどありません。「あらすじ」を読んでいなければ普通の小説のようです。後半になって、倒叙ものとしてミステリーらしくなります。本作については、アイデアが秀逸であると思い高評価としました。実際にあった事件にヒントを得たようですが、その事件から逆転の発想へとつなげるところが優れていると思います。

No.993 4点 死者を起こせ- フレッド・ヴァルガス 2017/01/03 13:28
裏表紙より~『愛称マルコ、マタイ、ルカの、それぞれ専門の異なる若く個性的な歴史学者と元刑事が、ともに暮らすパリのボロ館。その隣家に住む引退したオペラ歌手の婦人が怯えていた。ある朝突然、見知らぬ木が庭に植えられていたというのだ。ボロ館の四人がその木の下を掘るが何も出ない。そして婦人は失踪した。いったい何が起こったのか?気鋭の女流が贈る仏ミステリ批評家賞、ル・マン市ミステリ大賞受賞の傑作。』~
木が庭に植えられたという謎で引っ張っていきますが、ミステリー的には弱いかなといった感じです。ダイイングメッセージも出てきますがフランス語を知らないと無理!!!(笑)。2014年Twitter企画「フランスミステリベスト100」の7位にランクインした作品。ミステリー部分より4人のキャラクターや生活ぶりなどのユーモア部分が高評価の要因なのかもしれません。

No.992 5点 炎の背景- 天藤真 2016/12/27 09:14
「BOOK」データベースより~『新宿歌舞伎町で酔いつぶれた「おっぺ」こと小川兵介は、見馴れぬ場所で目を覚ました。傍らには初対面の通称ピンクルと、もうひとり恰幅のいい中年男。何故かしら男の脇腹には深々とナイフが刺さり、とうの昔に冥途へいらしたご様子だ。山荘の屋根裏に閉じ込められている状況下、前夜の記憶を手繰りラジオのニュースを聴くに及んで、抜き差しならない罠に落ちたのだと悟るおっぺんとピンクル。突如爆発した山荘を命からがら脱出した二人は、度重なる危難を智恵と勇気と運の強さで凌ぎながら、事件の真相に迫ろうとするが…。』~
若い男女の逃避行。著者の作品の特徴であるユーモアは、ややおとなし目でした。もう少しドタバタ調でもよかったのではと思います。二人は性に関し、お互いトラウマを持っており、その点が副主題(青春ミステリー)になっています。「ピンクル」が水死しそうになったあと、「おっぺ」がマッサージする場面があるのですが、非常に微笑ましいものでした。真相やラストについては爽快感不足か?。

No.991 8点 恐怖の誕生パーティー- ウィリアム・カッツ 2016/12/23 14:19
事前情報(読むきっかけ)はクリスティ氏のある短篇がモチーフであるらしいとのことだけでした。何も知らず読んだ結果、それが大正解!!。読後はコーネル・ウールリッチ氏の作品(1948)を思い起こしました。本サイトでは本作の書評1件のみでしたが、読書Mではまあまあの数の書評が載っています。結構ネタバレ気味の内容が多いので先に読まなく良かった(ホッ)。著者の作品の翻訳は3~4冊程度みたいです。高評価の理由は、心理サスペンスもので登場人物が少なく読みやすいことと、ラストがドンピシャと壺にハマったということです。

No.990 5点 肖像画(ポートレイト)- 依井貴裕 2016/12/17 21:14
著者の文章は、ややとっつきにくいところがあり相性が良くない。3人称でありながら主語がない文章など。殺人事件が起こったあと、一人が行方不明、一人は部屋に閉じこもり顔を見せない。そのような状況で、警察が来ても「開かずの間」を開けないという不自然さ。開けると物語が成立しないのかもしれないが。また焼死体が部屋にあるにも拘わらず臭わないなどは興ざめです。まあ、ミスリードや伏線の回収などは標準以上であるとは思います。

No.989 5点 死の贈物- パトリシア・モイーズ 2016/12/15 09:15
裏表紙より~(略)『クリスタル未亡人の誕生日には、例年外国人に嫁いだ、三人の娘が集うのが習いであった。スシス人医師に嫁いだ長女ブリムローズはバースデーケーキを、オランダ人園芸家に嫁いだ次女バイオレットは真紅のバラを、アメリカ人大富豪に嫁いだ三女ダフォディルはシャンパンをもって、ドーバー海峡を渡ってくるのだ。主任警視ヘンリ・ティベットにしてみれば、今回の特別任務~被害妄想にかかった老未亡人のおもり役などは心外であった。しかしパーティーの席では毒見役をかって出た。未亡人はケーキを食べ、シャンパンを飲み、バラの香りをかぎ・・・次の瞬間、未亡人は大きくあえぎ、床に倒れたのだ!殺人は行われた。予知された殺人を許し、苦悩するヘンリは、ヨーロッパを舞台に執念の調査を開始した』~

メインはハウダニットになりますが、それは非常に特殊なもので専門家以外の読者が解くことは不可能でしょう。フーダニットについては、前半部分は誰もが怪しくないという筋書であり、クリスティ氏の逆バージョンのような気がします。従って、やや盛り上がりやメリハリにかけるきらいがあります。推理というより、ヘンリ主任警視の調査が主体の物語であると思いました。なお、「著者あとがき」は完全にネタバレしていますので、絶対先に読まないよう注意が必要です。

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蟷螂の斧さん
ひとこと
ミステリーは、作家中心では読んでおらず、話題作や、ネットでのお勧め作品を読んでいます。(2013.6追加~本サイトを非常に参考とさせてもらっています。現在は、読後、類似なトリック・モチーフの作品を探した...
好きな作家
ミステリー以外で「石川達三」、短編で「阿刀田高」、思想家で「荘子」
採点傾向
平均点: 6.09点   採点数: 1668件
採点の多い作家(TOP10)
アガサ・クリスティー(53)
折原一(48)
中山七里(34)
松本清張(28)
アンソロジー(国内編集者)(22)
西村京太郎(20)
島田荘司(20)
歌野晶午(20)
東野圭吾(20)
綾辻行人(18)