皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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蟷螂の斧さん |
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平均点: 6.09点 | 書評数: 1668件 |
No.1068 | 6点 | 恐怖特急- アンソロジー(国内編集者) | 2018/03/10 19:17 |
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(再読)22篇の短篇アンソロジー。うち8篇のあらすじ。
①「大望ある乗客」中井英夫~バスに乗った乗客5人、彼らはそれぞれ殺人計画を実行するために目的地を目指していたが・・・(どんでん返し) ②「人の顔」夢野久作~幼子は天井や壁に人の顔が見えるという。ある日、父親にあそこにお母様の顔が見えるという。そして隣に・・・(無邪気な証言) ③「死の投影」大下宇陀児~死刑囚の画家Bの告白。師匠を殺害した罪であったが、実はその前に2人を殺害していた。何故殺害してしまったのか・・・(1枚の絵にその因果関係が) ④「箱の中のあなた」山川方夫~女は旅の男に写真を撮ってくれと依頼される。もっといい景色の所があると案内したところ男に襲われる。彼女は男を崖から突き落した。彼女の部屋にはその男の写真が飾られている。更に・・・(サイコ系) ⑤「乗越駅の刑罰」筒井康隆~小説家は駅員に無賃乗車を咎めらた。彼の弁明の言葉尻をとって駅員はいびり出す。もう一人の駅員が来て子猫のスープを作り始めた。金をつかませ逃げようとするが、更に怒りにふれ猫スープを飲まされてしまう。そこへ子猫の親と名乗る猫男が現れた・・・(不条理) ⑥「エナメルの靴」佐野洋~デパートの火災に巻き込まれた妻。身元確認はエナメルの靴を履いていたということだけであった。妻の妹は下駄箱にエナメルの靴を発見した・・・(本格的) ⑦「剃刀」志賀直哉~剃刀の名人である芳三郎は風邪をおして仕事場に立った。しかし、手元が狂い客の顔を傷つけてしまった。血を見た芳三郎は・・・(ホラー系) ⑧「さよなら」山田風太郎~昭和30年、ある町でペスト菌を持った鼠が発見され住民は次々と逃げ出した。しかし、町は汚染されていなかった。ある人物がペスト菌を鼠の死骸にまぶしただけであったのだ。退職した刑事は、この街並みが以前火災で消失した街並みにそっくりなことに気づく。当時、火災の中、男女二人組の犯人を捕らえた。そして女は発狂していたことを思い出した。ある男は何の為にペスト菌を・・・(愛の物語) 「二癈人」江戸川乱歩は「江戸川乱歩傑作選」で書評済み。ベストは③「死の投影」かな。 |
No.1067 | 4点 | 幽体離脱殺人事件- 島田荘司 | 2018/03/05 17:26 |
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本作は「高山殺人行1/2の女」と同様に、セバスチアン・ジャプリゾ氏の「新車の中の女」(1966)のオマージュと思います。皆さんおっしゃる通り、解決篇が著者とは思えないくらい、あっさりしたものでした。その点が残念。 |
No.1066 | 6点 | ネメシスの使者- 中山七里 | 2018/02/01 21:31 |
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初老の女性の刺殺体が発見され、現場には「ネメシス」という血文字が残されていた。彼女は通り魔事件の犯人の母親であった。「ネメシス」とはギリシア神話に登場する復讐の女神である。被害者家族による復讐劇なのか?・・・。死刑制度、被害者家族と加害者家族の問題を扱った社会派色の強い作品。一筋縄で終わらない点は著者らしいが、そろそろエンタメ系の作品を読んでみたい気もする。 |
No.1065 | 6点 | 女相続人- 草野唯雄 | 2018/01/23 20:25 |
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裏表紙より~『不治の病に冒され、死を目前にした富豪大倉政吉は、関係者を病床に呼び集めた。彼の逆境時代に捨てた娘を探り出し、遺産の三分の一を譲りたいというのだった。直ちに捜索が開始された。だが巨額の遺産の行方に重大な影響を及ぼすとあって、さまざまな策謀がくりひろげられた。そして、政吉のいう特徴を備えた娘が、二人発見されたのだ。しかもその前後から、連続殺人があいついだ。卓抜な構想と大胆なストーリー展開で描く長編推理の傑作。』~
幻影城ベスト99(1978発表)の84位にランクインした作品。倒叙方式(但し、犯人名は隠されている)で犯行を描写することや、ラストの章「捜査の限界」でオーソドックスな展開とはならないよう工夫しているなど、著者の意気込みを感じることが出来ました。登場人物の夫々の思惑が交差する点や、関係ないような事故が伏線となるなど、予想以上に楽しめました。 |
No.1064 | 6点 | 0.096逆転の殺人- 深谷忠記 | 2018/01/21 16:53 |
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本格ミステリ・フラッシュバックで紹介された一冊。アパート(密室)でガス中毒死。ガス栓が開けられた時間及び死亡推定時間に完全なアリバイがある。アリバイ崩しがメインです。推論を重ね、やがて、これで間違いなしと思われるものも、結局瑕疵があり崩れない。そんな展開が続きます。ユニークなアリバイトリックで、題名もそれに因んでいました。 |
No.1063 | 5点 | 悪いものが、来ませんように- 芦沢央 | 2018/01/18 10:43 |
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読後の感想は「うーん、勿体ない」でした。著者は、○○より「真相」に重点を置いて、順序を○○、真相としたのか?。これを逆にしていたら、非常に効果的であったと思います。最後の一行で説明できるのに・・・。プロローグを読み直してみたが、やはりアンフェア―であるという思いは拭い去れなかった(苦笑)。 |
No.1062 | 4点 | 双生児- 折原一 | 2018/01/16 21:16 |
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裏表紙より~『安奈は、自分にそっくりな女性を町で見かけた。それが奇怪な出来事の始まりだった。後日、探し人のチラシが届き、そこには安奈と瓜二つの顔が描かれていた。掲載の電話番号にかけるとつながったのは…さつきは養護施設で育ち、謎の援助者“足長仮面”のおかげで今まで暮らしてきた。突如、施設に不穏なチラシが届く。そこにはさつきと瓜二つの女性の願が描かれていて…“双生児ダーク・サスペンス”。』~
短い章で、人物の視点が変わり、複数の話が進行し、過去と現在が行き来する。よって読者はいつも通りに混乱するのである(苦笑)。トリックは二つ。メイントリックは、著者としては初めて?と思うが、う~ん、どうなのかなといったレベル。登場人物の一人が二重人格らしい設定なのだが、効果的ではなかった。残念。 |
No.1061 | 9点 | カラマーゾフの兄弟- フョードル・ドストエフスキー | 2018/01/15 18:14 |
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(ネタバレあり)「罪と罰」はアメリカではミステリーとしても読まれています。アメリカ探偵作家クラブが選んだミステリベスト100の24位にランクイン。高野史緒氏の「ミステリとしての『カラマーゾフの兄弟』」「カラマーゾフの妹」を読むと「罪と罰」よりも本作の方がミステリー度は数段上ということがわかります。今回、サイトに登録されたのを機にミステリー面(犯人は誰か)を中心に拝読。高野史緒氏は○○を真犯人としています。さて、どうなのか?・・・。なんとなんと、推理するまでもなく序文にて○○が主人公であると著者は明言しているではありませんか。本作(第一部)では○○は決して主人公ではありません。よって第二部(本作の13年後)で○○が主人公となり全貌が明らかにされることになるわけです。つまり、必然的に○○が犯人となる?。ところが、著者が死亡し、第二部は書かれることはなかった。もし完成すればミステリー的には「倒叙式の完全犯罪」ものとなったのかも?。一般的に、犯人は△△の暗黙の指示で●●が実行したという解釈のようです。しかし、著者はその点非常に曖昧にしています。当然です!○○が犯人なのですから(笑)。その点の検証。犯行時、ドアが開いていたか否かが論点。逮捕された◇◇(冤罪)は「窓は開いており、生きている父を見た。ドアは閉じていた」部屋に入っても殺してもいないと主張。その後、現場から逃げる◇◇を見た召使「窓は開いており、ドアも開いていた」。両者とも嘘をつく必然性はない。よって、アリバイのない○○がドアを開けた可能性がある。●●は自分が犯人と告白し自殺する。犯行時、●●は癲癇を起こし寝ていた。仮病というが、犯行後わざわざうめき声を立て看護人を起こす必要はない。ドアは被害者に開けてもらったというが、時間的経過の観点からドアは開いていたという証言と矛盾。凶器の処理、返り血がないなどの不審点。遺書に自分が殺したと書いていない。現金が封筒に入っているのを知っているので、封筒を破り金をとりだす必要もない。等々●●が犯人とする根拠は乏しい。一方、○○が犯人とする根拠。○○のアリバイはない。2日前○○は”闘士”になったと明言。父が母の話をすると、眼が燃え唇が震えだし癇癪を起した。このあたりが動機となるような気がする。第二部の題名が「偉大なる罪人の生涯」?も気になる。一番関心を持った記述は「母屋は中二階のある平屋建てで、隠し部屋があり、思いがけない階段もある」という点です。どんな意図があってこんなのことを書いたのか?。犯人が隠れていたとの大伏線では???などと妄想が膨らみました。 |
No.1060 | 7点 | ディレクターズ・カット- 歌野晶午 | 2017/12/30 20:09 |
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シリアル・キラーが、TVの「やらせ番組」で無軌道な行動をとる若者を襲った。TVディレクターは、若者を囮にし殺人鬼の逮捕劇を生中継することを計画するのだが・・・。題名から予想されるどんでん返しを期待していたら、まったく別方向からの一撃が待っていました(笑)。ラストで、「ディレクターズ・カット」の真意が明らかにされるあたりはうまい。 |
No.1059 | 5点 | 断崖- 石原慎太郎 | 2017/12/24 10:03 |
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本格ミステリ・フラッシュバックで紹介された1冊ですが、本格ものではありません(苦笑)。新聞記者が、海に流れ着いた記憶喪失の少年の過去を探るというものです。1962年の発表なので、当時の社会派ブームに乗った作品なのかも?。第一発見者の行方不明、少年がトラックに突っ込まれ大怪我をする、少年が発見時、高価な宝石を持っていたなどの謎を提示、関係者を地道に訪ねていくという展開です。最終章は新聞記者の口から語られるのですが、犯人の告白にした方が効果的だったような・・・。 |
No.1058 | 9点 | 屍人荘の殺人- 今村昌弘 | 2017/12/17 10:28 |
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クローズドサークルとハウダニットの設定は秀逸です。途中で、そっちの方向に行っちゃうのかい?と思わせるのですが、うまく収斂します。第2の事件のホワイダニットが惜しい。ないものねだりですが、もし血縁関係があったらよかったなどと思う次第です。 |
No.1057 | 5点 | 裁く眼- 我孫子武丸 | 2017/12/13 12:03 |
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「落ち(特性)」だけであれば、短編でも良かったような。犯人の「特性」より「動機、結構気に入っています。(笑)」の方をメインに描いて欲しかった。「殺戮にいたる病」の異常性のように。そうすれば、蘭花ちゃんのキャラクターと犯人の異常性が対比され、結構傑作になったかも?。 |
No.1056 | 5点 | 時限病棟- 知念実希人 | 2017/12/05 22:26 |
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裏表紙より~『目覚めると、彼女は病院のベッドで点滴を受けていた。なぜこんな場所にいるのか? 監禁された男女5人が、拉致された理由を探る……。ピエロからのミッション、手術室の男、ふたつの死の謎、事件に迫る刑事。タイムリミットは6時間。謎の死の真相を掴み、廃病院から脱出できるのか!?』~
脱出ゲームとフーダニットの物語。フーダニットのプロットはどんでん返しもあり、楽しめました。だだ、脱出ゲームの方がタイムリミットものにしては緊迫感がない。その点が残念でした。 |
No.1055 | 5点 | ここから先は何もない- 山田正紀 | 2017/11/30 16:52 |
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「星を継ぐもの」に不満があったという著者の発言に魅かれ拝読。結局、どのような不満かは分かりませんでしたが・・・。当初、人間ドラマが不足している点かなと思いつつ読んだのですが、どうも違っていたようです。題名「ここから先は何もない」と関係があるのかも???。正直、SFは大の苦手です。本文中に『―ハァー?という感じだ。いったい何を言っているのか。まるで意味が通じない。』とあります。まったく、その通り(笑)。特にジェネシス到着予定がパンドラに到着した真相や犯人像?。言わんとすることは分かるのですが、イメージできません(涙)。 |
No.1054 | 5点 | 本格ミステリ・フラッシュバック- 事典・ガイド | 2017/11/25 23:05 |
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本格と謳われていますが、サスペンス、警察小説、社会派などに分類されると思われるものも含まれています。本書の価値は1957年から1987年の30年間に絞ったことでしょうか。もう少し早く読んでいれば、掘り出し物が多数発見され、評価は上がっていたかも。本書で紹介されている作品のうち、既読で高評価のものは、別途ガイドブックで紹介されたものが大部分でした。紹介文にそそられて興味の湧いた作品30冊ぐらいをピックアップしてみましたが、本サイトの評価では残念ながら5点台が多かったですね。気になった作品は石原慎太郎氏の「断崖」と荒木一郎氏(元歌手)の「シャワールームの女」あたり。なお、カスタマーレビューに「作家紹介も小林信彦の項などいい加減過ぎる」とのコメントがありました。私も「貸しボート十三号」の紹介内容に疑問(もう少し調べた方がいい)を持ちました。紹介者は市川尚吾氏です。氏は作家の乾くるみ氏と知りビックリ仰天。まあ、好きな作家なのでいいか?(笑)。 |
No.1053 | 7点 | 文豪の探偵小説- アンソロジー(国内編集者) | 2017/11/21 10:30 |
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江戸川乱歩氏の前の時代、明治から大正の作品集です。よってミステリー要素を含んだ純文学といって良いかも。現在のカテゴリーに無理やり当てはめてみました。敬称略、( )は採点。
「途上」谷崎潤一郎・・・プロバビリティの殺人(5) 「オカアサン」佐藤春夫・・・安楽椅子探偵(6) 「外科室」泉鏡花・・・衝撃の動機・ホワイダニット(8) 「復讐」三島由紀夫・・・ラストの一行・ホラー系(7) 「報恩記」芥川龍之介・・・ホワイダニット(8) 「死体紹介人」川端康成・・・猟奇風・奇妙な味(7) 「犯人」太宰治・・・どんでん返し(7) 「范の犯罪」志賀直哉・・・リドルストーリ―(8) 「高瀬舟」森鷗外・・・社会派(8) ミステリー要素だけを評価すれば、もっと低くなるのですが、さすが文豪と呼ばれているだけのことはあります。読ませます(笑)。 |
No.1052 | 5点 | 怪奇探偵小説名作選〈4〉佐藤春夫集-夢を築く人々- 佐藤春夫 | 2017/11/13 15:48 |
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裏表紙より~『谷崎潤一郎とともに探偵小説のジャンルも開拓し、のちに文壇の重鎮的存在となった佐藤春夫の、幻想美溢れる作品世界。初期の代表作「西班牙犬の家」、探偵小説の先駆けとなり谷崎が絶賛した「指紋」、新しい方法意識で小説世界の幅を広げた未来都市小説「のんしゃらん記録」の他「女人焚死」「女誡扇奇譚」など、幻想・耽美的作品を収録。また評論として「探偵小説評論」「探偵小説と芸術味」も収録。』~
探偵小説(的小説?)としては「指紋」「オカアサン」「「女人焚死」あたりか。「指紋」は1908年警視庁が指紋制度を採用、その10年後の作品です。当時としては新鮮な題材であったのかも。「オカアサン」(1926)は買い取ったインコの言葉だけから前の持ち主の生活を推理するもの。「九マイルは遠すぎる」のパターンを先取りしています。「女人焚死」は足を縛られた女性の焼死体が発見される。他殺か自殺かというもの。その他、全体的には幻想譚的な作品が多かった。ミステリーの歴史を知るには役立つと思います。次回は、江戸川乱歩氏の前の時代、明治から大正初期の作品集「文豪による探偵小説」を手にする予定。 |
No.1051 | 5点 | ドクター・デスの遺産- 中山七里 | 2017/11/10 15:08 |
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刑事犬養隼人シリーズの第4弾。臓器移植、子宮頸がんワクチン問題に続き、今回は安楽死問題。~警視庁に少年から「悪いお医者さんがうちに来てお父さんを殺した」との通報が入る。ドクター・デスという安楽死を生業とする人物の存在が・・・。~ミステリーとして「どんでん返し」はありますが、読後はミステリーより問題提起の方がウェイトが大きいとの印象。よってマイナス1ポイント。最近著者の作品は「社会派」が多い(苦笑)。 |
No.1050 | 6点 | ねずみとり- アガサ・クリスティー | 2017/10/30 20:48 |
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裏表紙より~『若夫婦の山荘に、大雪をついて五人の泊り客、そして一人の刑事がやってきた。折しも、ラジオからは凄惨な殺人事件のニュースが流れはじめる。やがて、不気味なほどの緊張感がたかまり、舞台は暗転した!マザー・グースのしらべにのって展開する、スリリングな罠。演劇史上類をみないロングランを誇るミステリ劇。』~1幕、2幕とも同じ舞台で演じられます。こういうスチエーションがなぜか好みなんです。ある犯人像を著者が書かないわけがないと思っていたので、やっと出会った感じ(笑)。 |
No.1049 | 5点 | 死のロングウォーク- スティーヴン・キング | 2017/10/23 11:46 |
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ロングウォークという競技。ゴールはない。歩行速度が落ち、3回警告を受けると射殺されるというもの。そこには「死」だけがある。近未来のSFに近い設定です。ミステリーを読む立場からすると、少年たちは何故このようなゲームに参加するのか?、主宰者の大佐とはいったい何者か?といった謎に興味を持つはず。しかし、本書の解答は?・・・・・。死ぬことがわかっていて参加するのでクローン人間かな?と思いましたが違っていました(苦笑)。解説によると登場人物の心理描写やキャラクターの魅力がメインとのこと。なお、米澤穂信氏の「インシテミル」は本書を意識して書かれたとのコメントがあり、本書を手に取ってみました。 |