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HORNETさん
平均点: 6.30点 書評数: 1063件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.34 5点 クイーン検察局- エラリイ・クイーン 2023/01/29 20:39
 アイデア一発のショートショート集。ちょっと紙幅のある「推理クイズ集」のような趣ともいえる。純粋な「謎解き」を主眼としているのでなかなかに面白い。
 他作品を読んでいるということもあるだろうけど、内容的にも「ライツヴィルの盗賊」がよかった。

No.33 4点 盤面の敵- エラリイ・クイーン 2023/01/06 14:56
 先々代の遺産を受け継ぎ、「ヨーク・スクエア」と呼ばれる特異な城郭式の家屋に住む4人の親族。そこで働く下男・ウォルトのもとに、奇妙な手紙が届けられる。「わたしはきみを知っている。きみに大きな仕事をゆだねる」―手紙の指示に従順に従うウォルトの手によって、奇妙なカードで予告された連続殺人事件が幕を開ける―

 うーん…
 読み進める分には苦はなかったのだが、最後がアレでは…。本作は、実行犯は始めから明らかなので、その実行犯ウォルトを操る「手紙の主・Yは誰か?」が必然的に作品の謎の中心になってくるのだが…この時代には衝撃的真相だったのかな?時代によって色あせてしまったともいえるが、やはり根本的にちゃんと別の人物がいることを期待していたので、かなり肩透かしを食った気持ち。
 メッセージカードのJHWHの意味云々も、ピンとこない。欧米のキリスト教徒の人たちなら膝を打つ仕掛けなのかな。そもそも、建物の形にしたカードを送ること自体に最終的に意味を見出せない。(動機から考えると自己顕示欲ということになるのかもしれないが。)
 実際はクイーンの作ではないとされる本作。エラリイのキャラクターにはブレがない感じがして気にせず読めたが、最終的にはイマイチだった。

No.32 6点 悪の起源- エラリイ・クイーン 2023/01/06 14:23
 宝石商を共同経営している2人の男のもとに、意味不明のメッセージが届けられる。共同経営者の一人、リアンダー・ヒルは、最初のメッセージを受け取った後に心労がたたって死んでしまった。残るもう一人・ロージャープライアムのもとには、次々怪メッセージが送り届けられる。致死量未満の砒素、大量のカエルの死骸、鰐皮の札入れ…果たして犯人は誰なのか?送り届けられるものにはどんな意味があるのか?

 傲慢な態度で警察の介入を拒みながらも、何かを隠しているロージャー。成熟した女性の魅力でエラリイを翻弄する、ロージャーの妻、デリア。殺人は起こらないものの、謎めいた状況が刻々と進行していく展開には魅せるものがあった。
 ただ、送られた各メッセージに隠されたミッシングリンクは、いまいちピンとこなかったなぁ。込められたメッセージも。
 最後の最後にあるどんでん返しは面白いとは思ったが、「意外」ではなかった。で、このあとエラリイはこの男をどう処したのだろう。含みをもたせる終わり方だが、坐りの悪さとなって残ってしまった。

No.31 5点 緋文字- エラリイ・クイーン 2022/09/11 17:56
 エラリイと秘書のニッキー・ポーターが懇意にしているローレンス夫妻は、誰もが認める“おしどり夫婦”だったはずなのに、最近夫のダーク・ローレンスが妻マーサの挙動に神経質になり、異様に嫉妬深くなってしまった。ダークの行き過ぎた杞憂をとりなすはずだったエラリイ達だったが、ニッキーが、マーサが本当に不貞を働いていると見られる事実を見つけてしまう。「本当なのか?」エラリイは不貞が事実なのか、調べるはめに。日に日に疑いが濃くなっていくマーサ、「こんなことがダークに知れたら…」心配が募る中、ついに事件は起こる。

 かのエラリイ・クイーンが、浮気調査をする市井の探偵になったような前半。それはそれでなかなか面白いが、まぁ厚みはない展開。それより、「靴に棲む老婆」で登場したニッキー・ポーターが別人のよう。ラジオドラマにでていたニッキーともキャラが違って、出る作品ごとにキャラが変わる面白さがある。
 長編ではあるが、要はダイイング・メッセージに仕掛けられた謎1本勝負といった感が強い。上に書いた前半部分もそれなりに楽しかったので不満はないが、ミステリとしては普通作。

No.30 6点 第八の日- エラリイ・クイーン 2022/08/29 22:58
 かなり特異な設定だが、私はそれがかえって面白く興味深かった。
 「誰か」と勘違いして、村の救世主のように迎え入れられていることに、何の抵抗もせず身を任せているエラリイの良識はちょっと…と思ったが、まぁ本作の設定のためと目をつむれば、それ以降はなかなかに面白い。
 クイーンの長編にしては短めで、それが「シンプルな一発もの」という分かりやすさとしてよくはたらいている気がする。
 後半初めにみる一応の解決がダミーなのは誰の目にも明らか。そしてそう悟ったときに、真犯人もほぼ明らか。そういう意味では犯人あての「謎解き」としては浅いのだろう。だが、その動機や、そこにいたる村人たちの心理がまたミステリであり、魅力的な物語として持続し続けた。
 唯一、エピローグがちょっと飛躍しすぎていて、あまりしっくりこなかった…

No.29 7点 靴に棲む老婆- エラリイ・クイーン 2022/08/14 19:53
 ライツヴィル・シリーズの合間に書かれた本作。得てして「国名シリーズ」「レーン四部作」が人気の中心となる中、ちょっと異色の作風とされる本作だが、なかなかどうして面白かった。
 マザーグースの童謡になぞらえたかのように事件が連鎖していくのだが、そのことはそれほど印象深くない。イカれた一家のキャラクターも物語を盛り上げるものの、意外とフーダニットの本線は堅持されており、自分はクイーンらしいロジカルなミステリと感じた。特に後半に行くにつれて。
 ただ、第一の事件に関して、空砲の茶番劇で終わらせるおぜん立てをした張本人であるエラリイが、意に反して人を死なせてしまったことに対して、何の呵責も感じていないような振る舞いはなんか納得いかなかった。
 また、終盤でエラリイが仕掛けた「罠」は、犯人であるのなら置かれた拳銃が「空砲」であることは知っているはずなのに、わざわざそれを奪って撃つという行為の意味がまったく分からなかった。
 さらに、一旦解決に至る際の推理でも、「空砲を撃たせて終わらせよう」という相談の前に、2つのペアを含んだ14挺をすでに買ってきているのは理屈に合わないのに、それに言及せずに推理が進められているのもおかしさを感じた。
 などなど、やや論理に瑕疵がみられる点もあったが、ラストの真相に至るくだりなどはエラリイらしい理詰めの展開が楽しめた。

No.28 8点 死せる案山子の冒険- エラリイ・クイーン 2022/07/31 17:28
 1巻目「ナポレオンの剃刀の冒険」に続く、ラジオドラマのシナリオ・コレクション。「エラリー・クイーンの冒険」ばりに、出来の良いクイーンのパズラーを短編レベルで楽しめる。
 解説でも述べられているが、今回収録されている編は1巻目よりも登場人物が少なく、シンプルな謎解きとしての色が強い感があった。そのためか、表題作である「死せる案山子の冒険」、出色の出来とされる「姿を消した少女の冒険」は、いずれも完全に真相を看破できた。それはそれで嬉しかった(笑)
 アメリカの風俗事情や英語を理解していないと分からないものもあったが、自分としては「黒衣の女の冒険」と「忘れられた男たちの冒険」が、謎解きとして非常に魅力がありかつ納得のロジックだった。
 巻末の法月綸太郎による解説も非常に興味深かった。
 内容を忘れてしまった頃に再読して楽しみたいなぁ。

No.27 8点 ナポレオンの剃刀の冒険- エラリイ・クイーン 2022/07/30 23:32
 1940年代に放送されていたラジオドラマの脚本ということだが、クイーンの上質なロジカルミステリを定期的に堪能できたなんて…ワクワクしただろうなぁ。
 書籍以外のメディアにも積極的だったというクイーンらしく、媒体を変えても手を抜くことなく上質の謎を提供していると感じる。さらに、オリジナルにはない登場人物・秘書のニッキイ・ポーターや、ちょっとキャラの違うヴェリー刑事部長など、違った楽しみもある(大衆向けの改変だったのかもしれないが)。
 いずれにせよ、「エラリー・クイーンの冒険」に勝るとも劣らぬ粒ぞろいの謎解き短編(?)集に仕上がっている感じで、クイーンファンとしては十分に楽しめた。
 個人的には「悪を呼ぶ少年の冒険」「ブラック・シークレットの冒険」が秀逸。「呪われた洞窟の冒険」は、なかなか原始的な真相で懐かしい。「〈暗雲〉号の冒険」は、面白かったんだけど、録音した音声(蝋管って何?(笑))を聞いた時点で、そこにいる登場人物たちは気づかないの?とは思ったけど。

No.26 7点 ガラスの村- エラリイ・クイーン 2022/01/04 16:43
 数少ない、シリーズ(クイーン親子)外の作品。
 時代の変遷についていけず、寂れつつある閉鎖的な地域で、村の誇りとも言える有名な老婦人画家が殺害された。すると、直前に婦人画家の家を訪れていた、怪しいよそ者の男が居たことが分かり、住民たちでとらえられた。地元の判事・ルイス・シンは、すぐにも州警察に知らせ、公正な裁判に掛けるよう申し出るが、住民たちは「自分たちで裁く。この男は町から出さない」と非常識な態度をとる。男が犯人だと決めてかかり、自分たちで死刑を下そうとする住民たちを前に、シン判事は、あえて無効になる裁判を自分たちで行い、そのまま州警察へ引き渡そうと画策する—

 巻末の訳者のあとがきによると、当時のクイーンが、マッカーシズムに対する義憤を込めて描いた作品であるらしい。そうした政治事情は分からないが、田舎町の歪んだ団結意識と偏見に凝り固まった住民たちと対峙する理性、という構図の物語はなかなか面白かった。
 手作りの法廷で行われる裁判は、終始アリバイ確認の様相で、それが長く続くのは少し退屈ではあったが、被害者が最後に描いていた絵画から真相へと向かっていくくだりはクイーンらしいロジカルな展開で、物語ラストの住民たちの意外な態度も気持ちよく、読後感もよかった。

No.25 5点 帝王死す- エラリイ・クイーン 2022/01/04 16:23
 世界的大富豪である軍事企業の主、キング・ベンディゴに殺害予告が寄せられる。内容を細切れにして送られてくる脅迫状は、最終的に殺害日時を明確に指定したもの。捜査を依頼され呼ばれたクイーン親子だったが、脅迫状の出所を突き止めるのはいかにも簡単で、脅迫者はキングの弟であるジュダと判明。本人もあっさりそれを認め、しかも予告通り殺害を決行するという。そして衆人環視の中起きたのは、壁を隔てた別室で撃った拳銃によって、向かいの部屋のキングが撃たれるという不可能犯罪。犯人は明白(?)、しかし犯行方法は不可能。そんな状況の中、キング兄弟の出身がエラリイに縁深いあの場所だと分かり―

 あまりにも奇妙な犯行様態だが、常識的に考えればそれしか方法はないだろう、というのがそのまま真相ではある。犯罪が仕組まれた背景と真の犯人像も、まぁ思い描いていた通りと言える。真相を看破する手がかりは確かに面白かったが、長編に耐えうる仕掛けとは言い難い。
 現在の、「起こった犯罪」に対する推理よりも、その背景を読み解くことに多くが割かれるタイプの作品で、しかもそれが大戦時という歴史的背景も重なるため、読む意欲を維持するのがなかなか難しい作品だった。

No.24 4点 最後の一撃- エラリイ・クイーン 2021/08/11 16:40
 クリスマス休暇の12日間、毎晩謎の人物からプレゼントとカードが届けられ、その内容が次第に不穏なものになっていく・・・という展開自体は面白いのだが、なんといっても結末が△。隠れた双子の存在という明らかに「偽」と分かる誘導もあざとかったが、最大の謎であるカードに隠されたメッセージについては、あまりにも凝りすぎている上に、知識に拠るところが大きすぎて…。こういう「分かる人は分かる」みたいなのじゃなく、「気付いてみれば、誰にも分かるはずだった」盲点を突くのが本式じゃないかと思うのだが。

No.23 9点 エラリー・クイーンの新冒険- エラリイ・クイーン 2021/03/16 19:55
とてもよかった。これまでの方も書いているように、中編『神の灯』が世評の高い作品ということだが、それはもちろんのこと、その他の短編も押しなべて面白く、私としては「冒険」より印象に残る作品が多かった。
 後半の、ポーラ・パリスとカップルで活躍する「スポーツ・ミステリ」の連作短編が、長編との色違いが感じられて興趣が尽きない。読者として作者と推理合戦をするにもちょうどよい手応えだと思う。『人間が犬を噛む』の毒殺トリック、『正気にかえる』の、エラリーの紛失したコートから犯人言い当てるロジックなどはさすがクイーンという感じ。ラスト『トロイの木馬』は、真犯人も隠した場所もすべて当てることができて非常に気分が良かった(笑)
 クイーンの「謎解き小説」の魅力をてっとり早く堪能するには最適の一冊ではないかと思う。

No.22 6点 ダブル・ダブル- エラリイ・クイーン 2020/12/30 21:14
 病死、自殺、失踪と、それぞれ自然死や事故に見える出来事。失踪者の娘がエラリイを頼ってきたことから、エラリイは事件の地ライツヴィルへ向かう。そこでそれぞれの被害者が、童謡の歌詞をなぞっていることに気づいたエラリイは、すべて仕組まれた殺人ではないかと疑い出すのだが・・・

 限られた登場人物でありながら、どの人物も様々な形で一連の被害者に関わっていて、それなりに誰もが疑わしい状況が上手く作り出されていた。童謡殺人とはこれまた今さらな感じはあるが、前作「十日間の不思議」の「十戒」よりは分かりやすく、入っていきやすかった。
 ただ、物語が進んでいく中で一向に推理が進まず、最後のどんでん返しに期待するしかなくなっていく感じはあった。真犯人は私としてはなかなかに予想外だった。

No.21 6点 十日間の不思議- エラリイ・クイーン 2020/12/30 20:59
 それが却ってよい、という人もいるようだが、私は事件が起きるまでの前半は長く退屈だった。「十戒」という、宗教色の濃い(キリスト教)話は当然なじみがないから、そのつながりに気付いたエラリイの興奮もあまり共有できない。
 章立てとして「9日間」と「10日目」に分けられている時点で、最初の解決が真相ではないことは分かる。10日目で開陳された真相(真犯人)はそれほど意外性が高いわけではないが、内容的には面白かった。

No.20 7点 フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン 2020/05/05 17:38
 12年前に起きた殺人の真相を探るという1点だけで書き上げられた長編なのだが、作りがシンプルだからか、間延びする感もなくテンポよく楽しんで読めた。12年前の事実を子細に再現し検証するというエラリイの再捜査は地道だが、可能性を一つずつ潰していくその過程は、クイーン作品本来の魅力であるロジックが前面に出ており、退屈さを感じさせなかった。
 次々に殺人事件が起こるでもなく、「12年前の1件の殺人事件」1本で興味を尽きさせないのは、本作がパズラー一辺倒ではなく、ライツヴイルの人間模様やフォックス家の家族関係という面にも物語の興趣を割いている点にある。それが「ミステリだけでは味気ないから、プラスアルファの味付けとして」上乗せしたものではなく、事件の背景として、物語の一部として分かつことができないものとして描かれているところが、トータルとして読後の満足感を非常に高めてくれた。
 うーん…、私はライツヴィルシリーズでは「災厄の町」よりもこっちのほうが好きかな…。

No.19 5点 災厄の町- エラリイ・クイーン 2020/03/21 21:49
 クイーン自身も自らの最高傑作と称し、国名シリーズ以降の後期代表作とされる本作。各所での評価も高いが・・・

 私としては平均作の域を超えなかったというのが正直な感想。法廷を舞台としたエラリイの活躍は確かに新鮮味はあるが、正直、クイーン作品にはやはり純粋なパズラーとしてのロジカルな仕掛けを期待しているところがどこかにある。そういう意味では今のところ、やっぱり国名シリーズの方が好みかな・・・。
 もちろん謎解きにも工夫は凝らされているのだが、これって構造的には「Yの悲劇」に似てない?犯人が意図的に「利用した」本作と、純粋無邪気な真似事という違いはあるけど・・・
 もうすこしライツヴィルシリーズを読んでみたい。ただ、廃版ばかりで手に入りにくい。

No.18 4点 日本庭園の秘密- エラリイ・クイーン 2020/02/29 16:51
 フーダニット形式で、一番好まない真相のパターン。
 あと、私立探偵テリーが最後まで好きになれなかった。訳の時代(東京創元・1961年版)もあるからだろうけど、エヴァを「おねんねちゃん」と呼んだり、なんか鬱陶しかった…(原点は「Baby」とかなのかな?)
 他にも、日本人女中キヌメのセリフが「・・・ある」と訳されているところにも時代を感じた。そっちは笑えた。

 国名シリーズの方は新訳は出ないのかなぁ。

No.17 6点 九尾の猫- エラリイ・クイーン 2020/02/29 16:26
 2015年新訳版。かなり読み易くなっているのか、厚みの割にはスラスラと読めた。
 ニューヨークを震撼させている連続殺人事件。解決が見いだせない難事件に対して、市長はエラリイを特別捜査官に任命する。だがエラリイが依頼を受けて以降も連続する事件を止めることができず、手がかりもつかめない。エラリイは「被害者の共通点」が事件を解くカギと考えるが、それがなかなか見えてこない・・・
 トリック中心のパズラーを脱皮し、作風の幅を広げていったとされるいわゆる後期クイーンの代表作。確かに、現場をじっくりと検分し捜査する前期の作品とずいぶん雰囲気が違い、特に本作は劇場的な色が強い。疾走感もあり読み易いのだが、ミステリとしては普通の出来ではないかと思う。解き明かされるミッシング・リンクも真犯人も、悪くはないが、スタンダードなレベル。
 クイーン作品の中で特に高い評価にはならないが、標準程度に面白いと評価する。

No.16 10点 エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン 2019/07/07 20:33
 ロジカル・ミステリの「うまみ」を短編として凝縮したような作品集。
 意味深な伏線を仕込みながらじわじわと結末に向かう長編もそれはそれで楽しい。短編はロジックに特化して、削ぎ落された純粋なパズラーぶりがたのしい。堪らない。
 短い尺でありながらも、現場の状況や情報から考えられる可能性を挙げ、不可のものを一つずつ潰していく丁寧さには揺るぎがない。他の人は気にならない犯行の瑕疵に気を留め、そこから真相にたどり着く様は期待通り。私としては「三人の足の悪い男の冒険」「見えない恋人の冒険」「チーク煙草入れの冒険」「七匹の黒猫の冒険」が、エラリーが何をどう切り崩すのか見当がつかなくて、その分後半を嘆息しながら読んだ。
 新本格の作家たちがこぞって崇拝するクイーンの魅力が凝縮された贅沢な一冊だと言いたい。

No.15 6点 最後の女- エラリイ・クイーン 2019/03/23 13:47
 親の遺産を継いだ放蕩息子が、3人の前妻を呼んで離婚契約の変更を諮っている過程で殺された。息子はエラリイの知り合いで、事前に遺言書の書き換えの証人になってもらっていたのだが、死後にそれを開封すると、前妻たちにほとんど遺産は残らないことに。殺したのは誰か?背後に潜んでいる人間関係は?

・・・と、ある意味非常にオーソドックスなオールドスタイルミステリで、出来栄えも標準的。ダイイングメッセージの論理は面白く(死ぬ間際にそこまで考えを巡らせられるか!という無粋な指摘はこの際置いといて)、それがメインで作られた話なのだろう。
 少なくとも不可はなく楽しめる長編と感じた。

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HORNETさん
ひとこと
好きな作家
有栖川有栖,中山七里,今野敏,エラリイ・クイーン
採点傾向
平均点: 6.30点   採点数: 1063件
採点の多い作家(TOP10)
今野敏(47)
有栖川有栖(44)
中山七里(40)
エラリイ・クイーン(34)
東野圭吾(34)
米澤穂信(20)
アンソロジー(出版社編)(19)
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