皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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HORNETさん |
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平均点: 6.30点 | 書評数: 1074件 |
No.914 | 6点 | チェインドッグ- 櫛木理宇 | 2022/06/19 17:04 |
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Fラン大学に通う大学生・筧井雅也の毎日は鬱屈していた。同級生たちは刹那的な快楽にしか目を向けないバカばかり。そんな雅也のもとに、稀代の連続殺人鬼・榛村大和から一通の手紙が届いた。大和は雅也が幼いころ、近所でパン屋をしていた男。世間を震撼させる連続殺人事件を起こして逮捕された彼からの手紙は「最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」との依頼だった。幼いころよき理解者だった大和に頼まれ、事件を再調査に乗り出す雅也を待ち受けていた、残酷な真実とは。
連続殺人鬼の、「最後の一件だけは僕じゃない」という訴え。魅力的な設定である。それが真実であるという受け止めで、「では、その一件の真犯人は?」という思いで読み進めていくのだが― いろんな意味で読者の予想を裏切り、そういう意味では上手いのだが、上に書いたような流れで正道でいったほうがある意味すっきり楽しめたかもしれない。腕の立つストーリーテラーだと思うが。 |
No.913 | 2点 | 塩の湿地に消えゆく前に- ケイトリン・マレン | 2022/06/05 20:16 |
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猟奇的で思わせぶりな冒頭から期待したのだが…
とにかく合わなかった。読みづらい。分かりにくい(というか、分からない)。それっぽい感じの描写がうるさいうえに、もったいぶった描き方で何がどう進行しているのかとても分かりづらい。 読み始めた以上、読了しないと…という思いのみでページを繰り続けたが、正直苦痛だった。 真相もよく分からない。結局、誰が犯人だったのか、明記されていないから分からない。 合わなかった。 |
No.912 | 5点 | 少女葬- 櫛木理宇 | 2022/06/05 20:06 |
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バス、トイレ共同、敷金礼金なし、保証人不要、性別および年齢制限なしのシェアハウス。毒親からの精神的虐待に堪えかねた16歳の少女・綾希が家出して逃げ込んだその場所は、生活に困窮した者たちの巣窟だった。物を盗られるのは当たり前の、不潔で悪臭漂う場所。そこで彼女は、同じ家出少女の眞実に出会う。唯一心を許せる存在だった眞実だが、まっとうに身を立ててここを抜け出そうとする綾希に対し、危ない世界に憧れ、深みに嵌っていく眞実。些細なきっかけから別離していき、やがて二人はそれぞれの道へ――。
現代の格差社会の暗部を描き出したような作品。ハッピーエンドとは言えないが、「意外な展開」という名のもとに最悪な終わりではなく、物語の流れ上自然な結末でまぁよかった。そのせいで意外性はないのだが。 |
No.911 | 6点 | 人間の顔は食べづらい- 白井智之 | 2022/05/22 18:02 |
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まずこのぶっとんだ設定が作者ならではなのだが、その中で本格推理を堅持するのがこの作者の良いところ。
正直、作中の「河内ゐのり」がどっちがどっちだったのか、最終的にはほとんど分からなくなってるけど…(笑) 解説で道尾秀介が書いているように、各キャラクターが憎めないのも本作品の良いところ。 特殊な作風ではあるが、ある種の才を感じる作者である。 |
No.910 | 7点 | 白鳥とコウモリ- 東野圭吾 | 2022/05/22 17:45 |
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竹桟橋近くの路上の車内で、弁護士の刺殺体が発見された。警視庁捜査一課の五代努は、わずかな手がかりから関係人物を突き止める。それは、愛知県に住む倉木達郎という初老の男だった。やがて倉木は全ての犯行を認め、捜査は終結する。だが、事件の被害者や関係者らが、その真相には「納得がいかない」という。五代自身も疑念を持ったまま、独自で捜査を進めていくうちに、一件落着したかのように見えた事件の本当の姿が明らかになっていく―
500ページを超える作品でありながら、80ページもいかないうちに「すべて私がやりました」という自白を迎える時点で、それが真相でないことはどの読者にも明らか。では真相は何なのか?という関心を持続し続けるだけの筆力が作者にはあり、少しずつ解きほぐされていく関係者の過去と、その端緒となる手がかりの提示は絶妙。 行き着いた先の真相は、正直特段目新しい感じはなかったが、わずかな手がかりやヒントを見逃さずに「気付き」を重ねて真相に迫っていく過程はなかなかに読み応えがあり、楽しめた。 |
No.909 | 8点 | 白日- 月村了衛 | 2022/05/22 17:29 |
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千日出版の教育部門で課長を務める秋吉孝輔は、さまざまな事情で学校に通えなくなった不登校の子に向けた学校「黄道学園」を立ち上げるプロジェクトの中核を担っていた。しかしそんな秋吉に、事業を率いる梶原局長の中3の息子が、謎の転落死を遂げたという衝撃の情報が。プロジェクトは一時中止になり、事故ではなく自殺という噂が社内では急速に広まる。秋吉は部下の前島と調査を開始するが、以前から社長派と専務派が対立する社内。会社の上層部は秋吉に隠蔽を働きかける。少年の死という状況のもと、彼らが気にするのは自社の利益追求と保身だった。
局長の息子の死の真相を追う、という点で十分にミステリなのだが、それ以上に自らの職にプライドを持つ、働き人の矜持と葛藤というヒューマンドラマとしての魅力が勝つ。社内の派閥抗争の中で暗躍する人事課の男、部下の突き上げに苦しみながらも自らの職業倫理と誇りを貫こうとする主人公、さまざまな要素が絡み合って読み応えのあるストーリーに仕上がっている。結末も非常に気持ちの良い具合で、ストーリーテラーとしての作者の技量に魅せられる一冊。 |
No.908 | 6点 | 大義- 今野敏 | 2022/05/08 21:33 |
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横浜みなとみらい署・暴対係係長の諸橋夏男、通称「ハマの用心棒」のシリーズ短編集。
今回は、班員である巡査部長の倉持忠や、巡査長の八雲立夫、監察官の笹本康平らを主人公にした、スピンオフ的な短編集となっていて面白かった。(1話目の「タマ取り」はダジャレネタみたいで失笑だったが。) シリーズを読んでいなくても、今野氏はいつも初読の読者を見据えた描き方をしているのでまったく問題なく楽しめる。むしろ本シリーズの入り口にもなり得る一冊だと思う。 改行の多い作風ということもあって、2時間程度で読了できる。といっても、十分に楽しめる内容。 |
No.907 | 4点 | 人面島- 中山七里 | 2022/05/08 21:13 |
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相続鑑定士の三津木六兵の肩に寄生する人面瘡は、毒舌ながら頭脳明晰で有能な探偵。六兵は「ジンさん」と呼び、頼れる友人としている。
そんな六兵がある日派遣されたのは、長崎にある島、通称「人面島」。村長の鴇川行平が死亡したため財産の鑑定を行うという名目で派遣された六兵だったが、ありがちな話、鴇川家には相続の利権をめぐる複雑な事情が。そんななか、相続人の一人である、行平の息子・匠太郎が何者かに殺害される。時代から取り残された閉鎖的な孤島の村で、横溝正史ばりの陰惨な連続殺人事件が幕を開ける――。 う――ん…なぜだろう…中山氏の作品では自分としては珍しく、入り込んで読み進めることができなかった…。相続を取り巻く家族関係の確執が紋切型に感じたのか、秘密の鍾乳洞とか抜け道とかいう設定が陳腐に感じたのか…自分でもイマイチわからない。限られた登場人物の中で、真犯人も割と予想通りなうえ、不可能犯罪と思われた第一の殺人のトリックもふたを開けて見ればトリックというほどでもない。 登場人物が豊かな語彙で論理的かつ軽妙にやりとりする、氏の作品の特徴は、現代的な舞台の方がしっくりするのかもしれない。 |
No.906 | 7点 | 探花- 今野敏 | 2022/05/04 21:55 |
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横須賀・ヴェルニー公園で刺殺体が発見された。目撃者によると、刃物を持った白人男性が現場近くにいたのを見たという。米軍がらみの案件か?と神奈川県警が眉を寄せる中、県警警務部長に竜崎の同期のキャリア・八島圭介という男が赴任する。八島は同庁入庁の中でトップの成績、ハンモック・ナンバーが一番の男だという。その八島が、米軍との交渉には竜崎が出向くべき、と主張する。八島の目論見は何なのか?
本の宣伝文句には、「竜崎のライバル出現か?」と謳われているが、結果としてはライバルになんかなり得ない俗物だった。本作品はむしろ、現場たたき上げでキャリアへの反感を持つ板橋刑事課長と竜崎署長の、表層には表れない信頼関係の方が見もの。信頼を寄せながらもぶっきらぼうな態度を崩さない板橋課長、そんなことは何も気にしない竜崎署長、これが名コンビ。 事件の裏を暴いていく過程以上に、信念の男・竜崎と、「キャリアは頭でっかち」という先入観を持っている所轄の署員とが次第に距離を縮めていく様が本シリーズの真骨頂だと思う。 今回もそれを、十分に楽しめた。 |
No.905 | 6点 | 能面検事の奮迅- 中山七里 | 2022/05/04 21:33 |
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大阪地検のエース検事・不破俊太郎。組織に渦巻くパワーゲームや人脈、上席への忖度などに全く関心を見せず、無表情で流儀を貫く。そんな不破が今回あたることになったのは、小学校を作ろうとする学校法人への、国有地の不当な安価売却。しかも捜査に入ったとたん、特捜部の文書改ざん疑惑が発覚する―
森友学園事件をモチーフにしたのは明らかだが、ミステリとしての仕掛けは全く別物。信頼できる検事の文書改ざん疑惑、「何かあるはず」と読者を惹きつける手際はさすがで、その裏に隠れた真相もよく仕組まれていて面白い。 それにしてもシリーズを読んでいると、事務官・惣領美晴の、俗物的・大衆的な正義感と、いつまでも学習しない不破とのやりとりにだんだんイライラしてくる。「思わず口にしてしまう」「不破に一蹴される」「自己嫌悪に陥る」というくだりを何回も何回も繰り返していて、いい加減煩わしい。 今回は岬次席検事も登場し、「中山七里ワールド」の一端も楽しめる。多作で、シリーズの多い作家だが、是非本シリーズも精力的に続けて欲しい。 |
No.904 | 3点 | 変な家- 雨穴 | 2022/05/04 21:16 |
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家の間取りから隠れた謎を暴き出す…という冒頭はかなり興味深かったのだが、次第に呪いやら掟やらでありがちなB級ホラーに帰結してしまった印象。
出典はインターネット連載?なのかな? 2時間もかからず読めてしまう。 どんどんぶっとんだ話になって行くに従い、人物関係も伯父叔母やらいとこやらで複雑になっていき、その両面で興趣は右肩下がりだった。 |
No.903 | 5点 | 6月31日の同窓会- 真梨幸子 | 2022/05/04 21:08 |
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地元ではブランドとされる私立高校・蘭聖学園。そこには、「6月31日の同窓会案内状」が届いた女子には「お仕置き」が為されるという怪伝説があった。卒業してずいぶん経つ、89期生に次々と届く招待状。蘭聖学園OBであり、現在は弁護士を務める松川凛子のもとには、その恐怖におののく89期生たちが次々に訪れる。が、その後続けてそれらのOBが怪死していく。いったい、招待状は誰が送っているのか、怪伝説は本当なのか―
ここ最近(?)の真梨氏の作品によくあるのだが、とにかく登場する女子が多いうえに関係が複雑(あるいは、伏線として前半分かりにくく描写しているためそう感じるのか)で、誰が誰でどの子だったのか、こんがらがってくる。リーダビリティが高く、読むスピードが速くなるためなおさら、短時間にいろんな女子が入れ代わり立ち代わり登場してくる感じになってしまう。 分かりやすいし、ある意味典型的な真梨幸子らしい作品ではあると思う。 |
No.902 | 5点 | 残酷依存症- 櫛木理宇 | 2022/05/04 20:55 |
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大学生・乾渉太は、ツレの航平、匠とともに宅飲みの最中、買い物帰りに何者かに襲われた。気が付けば宅飲みをしていた隠れ家の浴室で、両足の親指と小指を切断されて監禁状態。何が起こったのかさっぱり分からないながらも、こんな目に遭う原因には心あたりがないこともない…
「殺人依存症」から続けて読んだが、相変わらず遠慮のない残酷描写。冒頭の渉太は当初被害者でありながら、次第にその悪行と人間性が暴かれ、ろくでもない大学生であることが分かってくる。が、冒頭の描写からだいたい予測できる雰囲気ではあった。 何年か前の「スーパーフリー事件」を題材として得られた着想により描かれた作品で、一般的に受けやすいとも言え、良くも悪くも素人目線といえる。サクサク読めてストレスはないのだが、特筆すべき秀逸さもないかな。 「殺人依存症」よりはこっちのほうがよかった。 |
No.901 | 5点 | 殺人依存症- 櫛木理宇 | 2022/04/30 11:27 |
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息子を六年前に亡くした捜査一課の浦杉は、その現実から逃れるように刑事の仕事にのめり込む。そんな折、連続殺人事件が勃発。捜査線上に、実行犯の男達を陰で操る一人の女の存在が浮かび上がる。彼女は一体何者なのか―。息をするように罪を重ねる女と、最愛の家族を失い死んだように生きる刑事。二人が対峙した時、衝撃の真実が明らかになる。(「BOOK」データベースより)
浦杉の娘と、面倒を見ている少女が後半にどうなるのかかがあまりに予想通り。さらに、どうにもやりきれないバッドエンド。 「慟哭のラスト」との謳い文句通り、あまりにも悲惨な終わり方。そんなにハッピーエンドにこだわる私ではないが… 不愉快で受け付けない人も多そう。 |
No.900 | 7点 | 白雪姫には死んでもらう- ネレ・ノイハウス | 2022/04/30 11:12 |
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トビアス・ザルトリウスは、10代の少女2人を殺害したかどで10年間の服役を終え、生まれ故郷のアルテンハイン村に戻ってきた。事件当時トビアスは泥酔していて記憶がなく、本当に自分が犯した罪なのか未だに分からない。しかし殺人者の烙印を押されたトビアスとその家族に当然村人の目は厳しく、嫌がらせを受ける毎日が続く。そんな折、トビアスの母親が駅の歩道橋から何者かに突き落とされる事件が起きた。殺人未遂事件として捜査にあたったのはオリヴァー&ピアのコンビ。捜査はやがて、10年前の少女殺害事件に隠された真相に迫っていく。
550ページを超える厚みだが、停滞することのない展開で楽しみ続けることができる。事件捜査とは別に、妻コージマとの間に起きた問題に悩むオリヴァーの話も展開し、物語りに幅を持たせている(にしてもオリヴァーも節操がないな…) それにしても人は本当に、犯した罪に口をつぐんで、しかも知人にその咎を負わせたままで生きていけるのだろうか。ずっと心に重石を載せ、心から笑える日などない人生になってしまうと思うのだが・・・ 物語当初から怪しさを感じる人物がやっぱりそうだったので、それほど意外性はない。だが、複雑に入り組んだ事件の様相を一つずつ解きほぐす過程は見ごたえがあり、世間でおおむね好評価なのもうなずけた。 |
No.899 | 3点 | 無邪気な神々の無慈悲なたわむれ- 七尾与史 | 2022/04/25 21:28 |
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子供を神と崇める信仰が根付く児宝島。事故で両親を失った瑠偉を養子に迎えた一年の記念にこの島を訪れることにした辻村京子、正樹夫妻は、多くの子供が居ながらも、大人が一人もいない児宝島に次第に違和感を感じる。夫妻は島を調べ始めるが、その隙に瑠偉が攫われてしまう。攫ったのは、この島でもっとも神様らしい存在だった――。
プロローグを読んだ時点ではその後の展開に期待をしたのだが、結局そのプロローグで本編の答えを明かしているようなものなので、本編序盤の島の不可解さも、読者としては答えが見えている感じで「長い」という感想になってしまう。 推理らしい推理の場面もなく、ただただ悲劇を追っていくような展開で、ミステリというよりはホラー。ラストもただただ悲劇の終焉という感じで、読み易くはあるものの深みはなかった。 |
No.898 | 7点 | 指切りパズル- 鳥飼否宇 | 2022/04/25 21:13 |
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綾鹿市動物園で、”動物アイドルユニット”を冠する地下アイドル「チタクロリン」のコンサートが行われた。チーフ警備員の古林新男は混乱による事故が起きないよう、職務に力を入れる。ところがそんな最中、ユニットメンバーの飯岡十羽が撫でようとしたレッサーパンダに指をかみ切られる大事故が。不運な事故と思われたが、その後関係者が次々に指を切断される事件が続いていく。
指切断事件が次々と起きていくという猟奇的な展開の中で、それぞれの事件で微妙に不可解な点が累積されていき、ラストにすべてが解決される、きれいな本格ミステリと言える。各事件で違う指が切断されている点にもきちんと理由があり、なかなか作りこまれた作品だと感じた。 |
No.897 | 7点 | マザー・マーダー- 矢樹純 | 2022/04/17 20:37 |
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「息子の恭介は、自宅でコンピューター関係の仕事をしている」と息子自慢をする梶原美里。しかし、その恭介の姿は近隣住民は誰も見たことがない、いわゆる「引きこもり」。普段は愛想よく住民に挨拶もする梶原美里だが、息子のことになると何かが憑いたかのように豹変する。梶原家が抱える秘密は何なのか?本当に恭介はいるのか?現代社会の病理とも言える、引きこもりとその親をめぐる数奇な物語。
いわゆる「毒親」を題材とした連作短編集。一作目などは独立した短編の様相だが、その後の主要登場人物が現れ、次編以降へとつながっていく。全編の中心は梶原美里とその息子・恭介なのだが、さまざまな物語の編み方で違う角度からそれぞれ描かれており、面白い。唯一、初編の事件は闇に葬られたままなのが気になったが… |
No.896 | 5点 | 完璧な母親- まさきとしか | 2022/04/17 20:27 |
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最愛の息子・波琉を事故で失った知可子は、息子を産み直すことを思いつく。同じ誕生日に産んだ妹を「波琉子」と名付け、誕生日にはケーキに兄の歳の数の蝋燭を立て祝うう。そんな知可子の狂気にやがて波琉子は、「お兄ちゃんもうれしいって言ってるよ」と答えるように。それを喜び、知可子は歪な“完璧な母親”を目指し続ける。そんな中「あなたの子供は幸せでしょうか」と書かれた手紙が―。
知加子の「毒親」ぶりが目を引く序盤だが、第二章から物語は違う展開を見せる。池でおぼれた波琉の生まれ変わりだという中年女性とその弟が出てくることで、異なる様相が見えてくる。意外な展開に最初はちょっとついていけないが、ラストで示される真相はなかなかのもの。 そこそこ面白かった。 |
No.895 | 8点 | 星降り山荘の殺人- 倉知淳 | 2022/04/03 20:45 |
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面白かった!
作者の中では一番有名な作品なので、各章の冒頭にある注意書き(?)のようなものにも騙しがあるのかと思って読んでいたが、それは素直に受け止めてよいものだった(笑) <以下ネタバレ> 真犯人が、自身の潔白を自ら証明するために謎のほとんどを論理的に解明し、最後に真の探偵役が一部をひっくり返すという構成はなかなか味があった。 真相解明は(ちょっと行き過ぎているほど)ロジカルで、その部分だけを取り上げれば往年のクイーンのよう。 どちらかといえば昨今は脱力的な(?)作風が印象的な作者だが、真骨頂を見せられた気がして唸らせられた。 |