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[ 社会派 ]
時限感染
岩木一麻 出版月: 2019年09月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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宝島社
2019年09月

No.2 6点 E-BANKER 2025/05/03 16:46
「がん消滅の罠~完全寛解の謎」でこのミス大賞を受賞した作者。
今度は「バイオ・テロ」がテーマとなるスケールの大きなミステリを上梓することに・・・
単行本は2019年の発表。

~ヘルペスウイルスの研究をしていた大学教授の首なし死体が発見された。
現場には引きずり出された内臓のほかに、寒天状の謎の物質と、バイオテロを予告する犯行声明が残されていた。
猟奇殺人にいきり立つ捜査陣であったが、彼らを嘲笑うように犯人からの声明文はテレビ局にも届けられる。
事件に挑むのは、警視庁捜査一課のキレ者変人刑事・鎌木。
首都圏全域が生物兵器の脅威に晒される中、早期解決を図るべく、鎌木は下谷署の女性刑事・桐生とともに犯人の手がかりを追いかける。しかしテロは水面下で静かに進行していて――。標的は三千万人! 果たして、史上最悪のバイオテロを止められるか?~

なかなかの力作、だと感じた。ミステリ作家である前に「医師」でもある作者。(最近はこういうスゴイ属性の作家が増えたなあー)
その特性を十二分に活かした作品に仕上がっている。
日本中を恐怖に陥れる犯人に立ち向かう刑事もまた、刑事としては異色、日本最高学府出身、生物学を専攻したという変わり種。そしてコンビを組むのは、空手の達人にして、難病に罹患している若き女性刑事。
なかなかに魅力的だ。

事件の始まりもかなり衝撃。大学の研究所内で、首なし死体が発見されるところから始まる。
そして、中盤からは一転。共犯者が視点人物として登場し、これはもう本格ミステリではなくなった?という気になる。
ただ、そこが作者の仕掛けた欺瞞。
終盤以降は、この「欺瞞」をふたりのコンビが解き明かすこととなる。
で、こんなバイオ・テロを扱っている事件にしては、かなり「普通」の動機が明らかとなる。
ここが問題。
確かにリアリティというか、現実的な解決を重視するならこれもアリだが、うーん。あまりにも矮小化されすぎなのでは?
最後の手記の人物なんて、終盤まで登場すらしなかった人物なのだから・・・
ここがどうしても気になるところだ。

で、本作を読んでると、どうしても頭に浮かぶのが「コロナ禍」のことだ。
本作で犯人が仕掛けた「バイオ・テロ」は、そのままコロナ出現の裏の構図に当てはまらないのか? もちろんさまざまな事情は異なるし、単なるフィクションと現実は比べるべくもないが、素人の私にはどうしても気になってしまった。
知ってる人は知っている、のかもしれないけどね・・・(「知らぬが仏」とも言いますが)

No.1 6点 HORNET 2023/03/19 16:45
 ヘルペスウイルスの研究をしていた大学教授の首なし死体が発見された。現場には引きずり出された内臓のほかに、寒天状の謎の物質と、バイオテロを予告する犯行声明が残されていた。猟奇殺人にいきり立つ捜査陣であったが、彼らを嘲笑うように犯人からの声明文はテレビ局にも届けられる。事件に挑むのは、警視庁捜査一課のキレ者変人刑事・鎌木。首都圏全域が生物兵器の脅威に晒される中、早期解決を図るべく、鎌木は下谷署の女性刑事・桐生とともに犯人の手がかりを追いかける。しかしテロは水面下で静かに進行していて――。標的は三千万人! 果たして、史上最悪のバイオテロを止められるか? 読者を眩惑する、怒涛のどんでん返しに二度読み必至。その完全犯罪は、誰にも止められない――。

 ウイルスを武器としたバイオテロ。潜伏期間が長いため、犯人が仕掛けてから事が起きるのに年単位のラグがあることが物語のミソ。加えて犯人の真のねらい、つまり「動機」の真相がラストに開陳されるところもなかなか考えて仕組まれていた。疾走感のある展開で、リーダビリティは高い。まずます楽しんで読めた。


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岩木一麻
2021年07月
がん消滅の罠 暗殺腫瘍
平均:5.00 / 書評数:1
2019年09月
時限感染
平均:6.00 / 書評数:2
2017年01月
がん消滅の罠 完全寛解の謎
平均:5.25 / 書評数:8