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優等生は探偵に向かない
ピップシリーズ
ホリー・ジャクソン 出版月: 2022年07月 平均: 5.33点 書評数: 3件

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東京創元社
2022年07月

No.3 6点 HORNET 2023/06/04 20:16
 友人の兄ジェイミーが失踪し、高校生のピップは調査を依頼される。警察は事件性がないとして取り合ってくれず、ピップは仕方なく関係者にインタビューをはじめる。SNSのメッセージや写真などを追っていくことで明らかになっていく、失踪当日のジェイミーの行動。ピップの類い稀な推理で、単純に思えた事件の恐るべき真相が明らかに……。(「BOOK」データベースより)

 物語の後半に、急に過去の児童誘拐殺人の話が出てきて急展開に。ジェイミーの失踪に新たな様相が加わってきて謎は面白みを増すが、いささか唐突か。前作で関係に決定的な亀裂が入ってしまったナタリーとの関係修復の下りはよかったし、ジェイミー誘拐(?)の犯人に対する主人公の態度も好感が持てた。
 ただ、伏線としてちりばめられた手がかりを追って真相にたどり着くというたぐいの作品ではないかと。物語として面白く読めるが、ミステリとしての評価はこのあたりか。

No.2 4点 nukkam 2023/03/29 08:35
(ネタバレなしです) 2020年発表のピップ三部作の第2作で英語原題は「Good Girl, Bad Blood」です。文生さんのご講評で紹介さている通り、前作の「優等生は探偵に向かない」(2019年)の後日談的要素があってネタバレも豊富、そして何人もの事件関係者が本書で再登場していますので前作を先に読んでおくことを勧めます。前作は殺人事件があって殺人犯と目された容疑者の無実を晴らそうとする(真犯人探しでもある)本格派推理小説でしたが、本書は失踪人探しというハードボイルド小説的なプロットです。高校生のピップ自身はハードボイルド小説によくいるタフガイ探偵とは程遠いのですが、捜査が難航して悲劇的結末の可能性がじわじわと高まる展開はある種のハードボイルドを連想させます。犯罪がなかなか確立しない失踪事件で派手な場面もほとんどありませんが、500ページを超す創元推理文庫版の長さも退屈させない語り口は見事でサスペンスも十分にあります。しかし結末が個人的には残念です。あまりにも唐突に明かされる真相、しかも推理による解決ではありません。あれでは誰を犯人(というか陰謀者?)にしてもよかったようにさえ思えます。とはいえ本格派へのこだわりが強くない読者なら高評価してもおかしくない作品です。

No.1 6点 文生 2022/08/03 12:10
今回は突然失踪した青年の行方を追う話ですが、前作同様SNSと関係者インタビューを駆使した調査が繰り広げられ、捜査小説しては相変わらずの面白さです。調査を続けていくうちに驚くべき事実に行きあたる展開にも引き込まれます。それになにより、ピップとラヴィのコンビが魅力的です。
ただ、独自の調査方法に対する新鮮味はさすがに薄れてきましたし、後味の悪い結末は好みがわかれるかもしれません。一方で、主人公の挫折と成長が描かれるなど、ドラマとしての深みは前作以上です。一方、三部作の真ん中ということもあって、結末はかなりもやもやしたものになっており それが作品の評価を下げる原因となっています。
ちなみに、本作の冒頭で前作のネタバレを盛大にしています。それに、物語自体も前作と密接に繋がっているので、本作の前に『自由研究には向かない殺人』を読んでおくことは必須です。


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