皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
HORNETさん |
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平均点: 6.32点 | 書評数: 1148件 |
No.328 | 4点 | 吊るされた女- キャロル・オコンネル | 2015/08/14 11:25 |
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キャシー・マロリーの相棒、刑事ライカーの情報屋だった娼婦が吊るされた。美しい金髪は切られて口に詰めこまれ、周囲には虫の死骸。さまざまな推理や憶測が飛び交う中、マロリーは過去に起きた女性殺害事件との関連を考え、連続殺人鬼の仕業と見る。過去の事件について調べていくうちに、当時には見えていなかった真相が明らかになり・・・・。
素直な感想は、「読みにくかった」。なんでだろう。このシリーズをこれまでにも読んでいたら違ったのかな。とにかく、過去の事件の話と、現在の娼婦殺しの話(捜査)が混在している感じで、外国らしいウィットを含んだ登場人物のやりとりも、わかりにくさを助長している気がした。 |
No.327 | 6点 | ビブリア古書堂の事件手帖6- 三上延 | 2015/08/14 11:14 |
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相変わらずの安定感。巻を重ねてもクオリティが落ちず、安心して購入することができる。
今回はまたもや太宰の稀覯本を巡る謎解きストーリー。ミステリとしてだけでなく、こうした文学に纏わるサイドストーリーが楽しめるのも本書の魅力。太宰って、本当に近年の作家で、直に親交や接触があった人がいるというのがなんかすごいなって思った。 どうやらもうすぐ本シリーズは終わりらしい。最後まで読み切ろう。きっと最後は栞子さんと母親の確執中心だろう。 |
No.326 | 5点 | 首折り男のための協奏曲- 伊坂幸太郎 | 2015/05/17 14:37 |
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「首折り男の周辺」、「濡れ衣の話」、「僕の舟」、「人間らしく」、「月曜日から逃げろ」、「相談役の話」及び「合コンの話」の7つの作品
趣向が凝らされた小粒の短編集。一話目「首折り男の周辺」が面白かったかな。「僕の舟」の話はでき過ぎ感が強かった。「人間らしく」(だったと思うが)塾のいじめの話は何の関係があったのか?私の理解力が追い付いてないのか。「月曜日から逃げろ」の趣向は〇。どこがスタートなのか?「相談役の話」は話の仕掛け以上に、嫌味な幼馴染の描写の方がなんか共感できた。「合コンの話」、見事なオチ。 |
No.325 | 6点 | 人質- 佐々木譲 | 2015/05/10 21:58 |
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冤罪で4年間刑務所暮らしを強いられた男、中島喜美夫が、札幌にある洒落たワイン・バーに居合わせた客を人質にとって立てこもり、自分が冤罪を着せられた当時の刑事部長の謝罪を求める。偶然(だんだん行き過ぎの感もしてきたが…)そこに居合わせた小島百合巡査。純粋な冤罪被害者の要求からの事件と思われたが、どうやら裏があるような―。
複数の事件を巧妙に一本につなぐことも多い本シリーズの中で、この作品は基本的に2本線で解りやすい。しかもこの仕掛けの発想は秀逸だと思った。 (ネタバレ) とはいえ、相手が絶対に公にできないネタでの脅迫なら、やはりわざわざ衆目を集める方法をとるよりも、徹頭徹尾陰でやったほうがよいのでは…。考えられる一番の理由は、人質となった家族にも本当のこと(つまり脅迫相手の汚い部分)が解らずに済むということだが…。いくら暗号的な文句でやりとりするとはいえ、HPのような公の場でやり取りするのもあまりに安易な気がするが… |
No.324 | 7点 | 密売人- 佐々木譲 | 2015/05/10 21:21 |
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釧路、函館、小樽の三か所でほぼ同じ日に起きた三つの不審死事件。身元をたどっていくと、3人には「道警のエスだった」という共通点があることが見えてきた。偶然だとは思えない。誰が、何のために、なぜこの日に―?
「エス」がらみの、警察の暗部を描くのは氏のお得意。佐伯・新宮、津久井らがそれぞれに捜査を進める中で見えない糸がだんだんと明らかになっていくパターンも。その過程が面白い。 タイトルから、てっきり麻薬犯罪のような話かと思っていたが、読み終えて本当の意味が分かった。なるほど。 唯一、篠原学園の話は必要だったのか?違う側面から本筋に絡んでくるのかと思ってたのに…。 |
No.323 | 7点 | 巡査の休日- 佐々木譲 | 2015/05/10 20:56 |
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以前、ストーカーに襲われて危機一髪のところを、小島百合巡査に助けられた村瀬香里。その香里のもとに「見つけたよ、気をつけな」という脅迫めいたメールが届く。以前のストーカー、鎌田は療養中の病院を脱走していた。鎌田の復讐か…?警戒を強め、香里の護衛にあたる道警。
以前は風俗店に勤めていた香里も、事件後は店を辞め、今は「よさこいソーラン」の舞踊チームに所属し、演舞の中心的存在として活躍中。時は奇しくもその「よさこいソーラン祭り」の時期。演舞を休むわけにはいかない、という香里を護衛するため、小島百合巡査も演舞に参加することに…! よさこいソーラン祭りの時期の道警の多忙・混乱ぶり、その中で奮闘する警官たちの様子がよくわかり興味深い。本シリーズは全てそうだが、事件発覚から解決までの数日を一日一日描写するテンポのよさ、スピード感が〇で、非常に読みやすい。 事件の真相はかなり前の方でわかってくる。ミステリを多く読んでいる人なら大抵気付くだろう(伏線の示し方がわかりやすすぎる)。であるが、やはり面白い。 このシリーズは突出して評価が高いものにはならないが、基本水準が高い。ハズレと感じたものはない。 |
No.322 | 4点 | 解錠師- スティーヴ・ハミルトン | 2015/05/02 21:24 |
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家庭事情や生い立ちの状況から、幼くして金庫破りにならざるを得なかった青年の物語。金庫破りになった経緯と、現代の話が交互に展開される構成だが、両者の時期が近くで読むのに混乱した。最後に明かされる主人公の過去の真実は、そうして引っ張った長さに見合うだけの深みは感じず、「ふうーん」と思う程度だった。 |
No.321 | 8点 | アポロンの嘲笑- 中山七里 | 2015/05/02 20:11 |
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突如襲った大地震に、全ての機能が麻痺している福島県。そんなさなかに飛び込んできた殺人事件の一報。東日本大震災を舞台・題材とした重厚なミステリ。著者の原発および原発に関する国政や組織に対する強烈な批判が込められた、社会小説としての要素も色濃い一作である。
福島第一原発の作業員として働く親子、その家族。その家族に迎え入れられているぐらいの親密さで付き合いのあった、同じく原発作業員の加瀬。その加瀬が、世話になっている家族の息子、純一を刺殺した。事件後、警察の隙をついて逃走した加瀬。しかし、その向かっている先はどうやら福島第一原発。いったい加瀬は何を考えているのか、そして事件の本当の内情は…? 当時の悲惨な状況をリアルに描く文章、逃走劇の疾走感、原発政策に対する怒りを発露する力ある描写。非常に「読める」。結末の在り方や真相については、現実主義の人には賛否両論かもしれないが、私は◎。 |
No.320 | 9点 | 追憶の夜想曲- 中山七里 | 2015/05/02 19:46 |
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「さよならドビュッシー」は読んだが、ずいぶん作風の違う本作品を読んで、自分の中で中山七里の評価が跳ね上がった。こっちの方が断然好み。
このサイトで、シリーズの前作があることを知った。まったく知らずにこちらを読んだが…非常に面白かった。元犯罪者の弁護士・御子柴という設定と、その人物像。被告本人も罪を認め、敗色濃厚というか負けしかありえない事案の弁護を買って出た理由の真相。そして、事件の真相。設定、複線、ミステリとしての中心的な謎と、いくつもの要素でリーダビリティを高めているうえに、それが相互に絡み合っている。中山七里という作家の手腕、作品のクオリティの高さに圧倒された。 「さよならドビュッシー」が有名になったことが返って弊害になりはしないか。あの作品だけで氏を評価し、「私はちょっと違う…」と判断する人がいたら非常にもったいない。 |
No.319 | 6点 | OUT- 桐野夏生 | 2015/04/07 21:47 |
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この本に関しては、これまでの書評者が概ね同じような感想を抱いていて面白い。そして私もそれに同意。
弁当工場で働く年増の女グループが、あるい日を境に一線を越えていくという設定に入り込み、リーダビリティの高さに引き込まれていくが、ラストに行くにつれ雲行きが怪しくなる…という感想。日常的な設定の中で非日常が描かれていく様相により、「あり得ないこと」を、何となく「誰にでもあり得ること」のように錯覚させているのがこの話の面白い所だと自分は感じる。が、ラストに行くにつれだんだんブッ飛んでいってしまい、共感的要素がまるでない、やはり「あり得ないこと」になってしまっているため、話が大味になってしまっている感じがして残念だった。 ただ読み進めることが面白かったので、損した感じはない。 そんなこんなでこの点数。 |
No.318 | 3点 | 被害者を捜せ!- パット・マガー | 2015/04/07 21:31 |
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うまく言えないけど、題名からもっと違う話を想像していた。現場と離れた所で推理合戦をするという話とは思っていなかった。「当時は斬新」とかそういうことではなく、例えばバークリイの「毒入りチョコレート」などは今読んでも十分力があり面白い。結末も平易で、自分としては正直期待外れだった。 |
No.317 | 9点 | 本陣殺人事件- 横溝正史 | 2015/04/07 21:14 |
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トリックは「なんとなく」イメージできる程度だが、まぁそれでいいんじゃないか。むしろ密室とされた動機や、「三本指」の真相、猫の墓の関わり方など、緻密なまでの作者の仕掛け・策に脱帽。確かに「探偵小説」と呼ばれていた時代の、策ありきの様相は色濃いが、本格ミステリの王道をいく、世評の高さに偽りなしの作品と感じた。
3作目の「黒猫亭事件」が光っている。これに類似の発想で描かれた短編は現在多くあるのではないか。表題作があまりにも有名だが、2編目の「車井戸はなぜ軋る」も含め、非常にクオリティの高い、贅沢な一冊である。 |
No.316 | 7点 | 悪魔が来りて笛を吹く- 横溝正史 | 2015/03/08 19:36 |
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密室トリック,なかなか納得◎。しかもこの厚みと展開の中ではそれはあまり重要ではなく,純粋なフーダニットで◎。しかしこの人の作品を読んでいると,華族とか名家とか,そういう高尚な家柄の人間は何か歪んでいるという偏見をもってしまう。
後半怒涛の勢いで分かってくる新事実が多く,飛躍的な想像やなんとなくの勘でしか真相を事前に看破できる感じはないとも思うが,「悪魔が来たりて…」のフルート曲に隠されていた真実には思わずうなった。そこで+1点してこの点数。 横溝作品にしてはすらすら読める印象が強かった。 |
No.315 | 6点 | ベスト本格ミステリ 2014- アンソロジー(出版社編) | 2015/03/08 19:27 |
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「水底の鬼」(岩下悠子)…テレビドラマのロケ場所にある鬼の面に纏わる伝説に隠された真実。よく考えられたオチ。
◎「ボールが転がる夏」(山田彩人)…ユーモアミステリになると思うが、トリック解明のくだりは本格的。 「狼少女の帰還 Return of the wolf girs」(相沢沙呼)…教育実習生が遭遇した日常の謎。ロジックは面白いが終わり方がもうひと押し。 ◎「フラッシュモブ」(遠藤武文)…ストーカーの犯罪とされた一年前の事件の真相を、キャリアとそれに付き合わされる刑事が解決。 「あれは子どものための歌」(明神しじま)…お伽話みたいなミステリ。「絶対に賭けに負けない」力と引き換えに声を失った女。 「ディテクティブ・ゼミナール 第三問 ウェアダニット マリオネット」(円居挽)…水槽の中で死んだ男がどこで死んだかを当てるゲーム。 「黄泉路より」(歌野晶午)…練炭自殺をするグループに突如起こった異変。どんでん返しが面白い。 「紙一重」(深山亮)…土地の相続登記に関わる遺言書紛失の謎を、司法書士が解く。各登場人物の人間らしい本音が肯定的に描かれているところが好ましかった。 「犯人は私だ!」(深木章子)…ちょっと変則的なダイイング・メッセージもの。明かされた真相はなかなか面白かった。 ◎印が自分はお気に入り。 |
No.314 | 6点 | 退出ゲーム- 初野晴 | 2015/03/01 23:13 |
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ラノベテイストの甘酸っぱい設定、雰囲気だがミステリとしてしっかりしている。私は表題作より前の2作の方が好きだ。青春ミステリのカテゴリに入っているが、「日常の謎」の秀逸作とも言えるのでは。無理に長編にせずに仕掛けのサイズに合った中編にしているのも好ましい。 |
No.313 | 5点 | !(ビックリマーク)- 二宮敦人 | 2015/02/28 16:28 |
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ラノベテイストの軽い文章で、現代風ホラーが描かれている読みやすい作品。メルカトルさんが書いているように、乙一が好きな人はきっと気に入るだろう。
個人的には2作目「穴」が展開としても、オチのありかたも一番良かった。全体として奇抜な発想・着想が勝負、というスタイルで、細々と伏線に目を凝らすのが苦手なタイプの読者にも受け入れられると思う。 |
No.312 | 3点 | 有限と微小のパン- 森博嗣 | 2015/02/28 16:08 |
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評価が分かれるのがよく分かる。自分は△のほう。こんなトリックはアンフェアだと思う。長く読まされて、この結末には「なんじゃそりゃ」と思った。森博嗣を読んでみようと思い、このサイトでもっとも評価が高いのでまずはこれを読んでみたが、順序を誤ったのもあるかもしれない。
ただ、登場人物のキャラクター設定は気に入った。特に真賀田四季。きっとこのシリーズファンには彼女のファンも多いのだろう。突き抜けた人物像は、作品の色をそれだけで決めてしまう力がある。 とりあえず懲りずにこのシリーズ他を読んでみたい。 |
No.311 | 6点 | 養鶏場の殺人/火口箱- ミネット・ウォルターズ | 2015/02/28 15:58 |
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読みやすさなら「養鶏場の殺人」、ミステリとしての面白さなら「火口箱」。
「養鶏場の殺人」はイギリスで実際に起きた殺人事件についての作者の推理が描かれている作品と言えばよいだろう。それも1990年代に起きた事件ということで、現代にも通じる人間の感情が描かれていて読みやすい。 「火口箱」は閉鎖的なムラ社会の海外版のような話。事件の真相解明だけでなく、今にもまだあるらしい人種による同族意識、敵対意識の様相が作品の主要な要素になっていて面白い。終末はそちらのこともよい方向に向かう結末で、読後感もよかった。 |
No.310 | 7点 | アルモニカ・ディアボリカ- 皆川博子 | 2015/02/28 15:50 |
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前作を読んでから時間が経っていたので登場人物の相関を思い出すのに時間がかかり、前半はやや読みにくかったが整理できてきてからは一気に読めた。オックスフォード郊外で発見された身元不明の死体と、その体に書かれた「ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ」という言葉。ジョン・フィールディング判事とダニエルの弟子たちによる真相究明から、そこにはかつての同僚、ナイジェル・ハートの生い立ち、彼が入所していた精神病院の過去、さらにその背景に当時のイギリス皇室事情が絡んでいることが見えてくる。
18世紀のイギリスを舞台とした歴史的要素を含みながらも、ユーモアも交えた軽快なストーリー展開の魅力は筆者ならでは。このシリーズは今後も続くのだろうか。注目していたい。 |
No.309 | 7点 | さよなら神様- 麻耶雄嵩 | 2015/01/18 16:51 |
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「全知全能の神様」という設定や,同じ小学校でこんなに立て続けに人が死ぬなんて、というあたりは漫画のような非現実的さだが、割り切って楽しんでしまえるのが麻耶作品のよさ。こんな大人の会話をする小学5年生なんてありえない(笑)。
「貴族探偵対女探偵」のように、短編集ではあるが一冊を通したシリーズ的ストーリーになっており、こういう仕掛けは相変わらずうまいなぁと感じる。その流れの中での第4話「バレンタインと昔語り」は秀逸。ここから神様・鈴木の託宣が、真相にも深く深く関わってくる段階性は絶妙。毎回、主人公・桑町たちだけが真相らしきものにたどり着き、現実では未解決や別解決で終わっているダークさは麻耶作品らしさだが、すっきりしたい人には消化不良の思いが残るかも。私もどちらかといえばそうかな。でもこれが氏らしさでもあるので…気にしないことにしている。 ラストは予想通りだった。これもある意味ダークだが、そのままぽん、と投げて終わってしまうあたりは「さすがだな」と思った。 |