皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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HORNETさん |
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| 平均点: 6.33点 | 書評数: 1208件 |
| No.788 | 5点 | ワトソン力- 大山誠一郎 | 2021/02/14 17:56 |
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| 警視庁捜査一課の刑事・和戸は、自分ではなく自分の周りにいる者の推理力を上げる「ワトソン力」という特殊な能力を持っている。なぜかプライベートでたびたび事件に遭遇する和戸だが、いつも周囲の人々(容疑者含む)の推理合戦となり、真相にたどり着く―
という設定に立ったうえでの連作短編集。一風変わった設定だが、その「ワトソン力」という設定が特に謎や真相に関わってくることはなく、中身はいたって普通のロジカル謎解きである。謎解きのためのロジックありきのような犯人の行為は「推理クイズ」のようにも感じられるところもあるが、それは作者の特徴。荒唐無稽と感じないこともないが、推理クイズ気分で読めばよいかと思う。 |
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| No.787 | 7点 | 家日和- 奥田英朗 | 2021/02/14 17:33 |
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| 「家族」シリーズの初作。私は他作品を先に読み、さかのぼって本作を読んだ。普通の家庭に起きるエピソードをユーモラスに描き上げる筆致は相変わらず面白く、シリーズ化してくれてありがとう!と思った。
作家の家族の話は、シリーズを通して描かれているんだね。このあと「我が家の問題」でマラソンに挑戦し、「我が家のヒミツ」で市会議員に立候補するという展開を知っているので「はじめはこうだったのかぁ」と思いながら楽しんだ。 シリーズ3冊は結構 間を空けながら出されているので、次も出してほしいなぁ、と期待する。 |
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| No.786 | 6点 | 山伏地蔵坊の放浪- 有栖川有栖 | 2021/02/11 16:28 |
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| 毎週土曜日にバー「えいぷりる」に集う常連たちに、山伏地蔵坊が、自身が関わった事件を語って聞かせるという形の連作短編集。事件の概要を山伏が語ったあと、常連たちが犯人を推理するパターンで、読者も同様に推理を楽しむことができる。
有栖川氏らしいオーソドックスなフーダニットで、犯人・トリック当てクイズの体で楽しめた。 |
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| No.785 | 7点 | 我が家のヒミツ- 奥田英朗 | 2021/02/07 15:50 |
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| 大ファンのピアニストが患者としてやってきた歯科事務員の主婦、ライバルとの出世競争に敗北の終止符が打たれた会社員、本当の父親が著名な劇作家であることを知った女子高生、母親を亡くして激しく気落ちしている父親を心配する息子…など、市井の一般家庭に起きた波風を軽妙なタッチで描くシリーズ第3作。ラスト「妻と選挙」には、「我が家の問題」でも出てきた作家先生の家庭が再び搭乗する。
いずれも家庭内、あるいは職場でのゴタゴタを描きながらも、すべて心温まるハッピーエンドなのが良い。特に私は「正雄の秋」が、心に沁みた。 |
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| No.784 | 7点 | 緋色の残響- 長岡弘樹 | 2021/02/07 15:33 |
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| 杵坂署の女性刑事・羽角啓子は、先輩刑事であった夫に先立たれ、中学生の娘・菜月と2人暮らし。家を空けることも多い多忙な母親だが、新聞記者を目指す菜月は、事件について母親と話すことも多く、良好な親子関係だった。本作は、そんな羽角母娘を主人公にした全5編からなる連作短編集。
「翳った水槽」「緋色の残響」「暗い聖域」の3編は、菜月の通う中学校での事件であり、最後の「無色のサファイア」も含めて、本作品集は娘・菜月の活躍場面が多い。どの話も独特の切り口から真相解明に至る仕掛けで、各話ともユニークだった。特に最後の「無色のサファイア」は伏線の描き方からオチまでの流れが非常に巧みだった。 日本推理作家協会賞短編部門受賞の「傍聞き」の母娘が、作者のフィールドである短編で三たび、存分に魅力を発揮する。 |
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| No.783 | 8点 | マジックミラー- 有栖川有栖 | 2021/02/07 14:53 |
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| ノンシリーズの、アリバイトリックを主題にした長編。(ただ、作家アリスシリーズの編集者、片桐光雄は登場しているが)
鉄道ダイヤを駆使した、複雑で手の込んだトリックではあるが、カーの「密室講義」の向こうを張らんとする「アリバイ講義」があったり、ダイアローグ・エピローグにまで仕掛けが施されていたりと、二重三重に工夫が凝らされていて全体的に厚みのある作品だった。 重要人物が双子である時点でトリックの概要は何となく予想がつくのだが、それでも各登場人物の言動をテンポよくつないでいく展開は魅力があり、最後まで非常に興趣が尽きることなく読み進められた。 鮎川哲也氏による最後の解説も読後の余韻を後押ししてくれる。 |
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| No.782 | 5点 | 双蛇密室- 早坂吝 | 2021/01/31 07:58 |
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| ・・・よくもまぁ、こんな奇抜なミステリを考えるものだと感心してしまう。ぶっ飛んだ発想だが、これこそがこの作者の色であり、らしいのだが。
藍川刑事の生い立ちに隠された過去の謎を解いていく話。軽い文体と展開、170pほどという長さで、あっという間に読める。そうしたサイズなので、奇抜でおバカなミステリを楽しめばいい、と割り切れるかな。大きく二つの密室の謎を解くのだが、どちらも(とくに二つめは)とても読者が推理して真相を看破するような類のものじゃない。 繰り返しになるが、よくもまぁ、こんな仕掛けを考えるものだ(笑) |
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| No.781 | 7点 | 不穏な眠り- 若竹七海 | 2021/01/31 07:47 |
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| 短編ながらどれもしっかりミステリとして楽しめる4編。短編というサイズで、ハプニングも交えながら事件背景や人間関係が次々に明らかになっていくので、テンポが良いとも言えるが、ちょっとめまぐるしく感じたり、ついていけなかったりする人もいるかもしれない。「逃げ出した時刻表」はちょっとそんな感じだった。
ちょっとした依頼だったはずがどんどん大事になっていく展開の妙と、葉村のキャラクターによりユーモラスに描かれる作風は相変わらず小気味良く、240ページという文量以上に楽しめる質の良いミステリ短編集だった。 |
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| No.780 | 6点 | 透明人間は密室に潜む- 阿津川辰海 | 2021/01/24 22:13 |
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| 世に「透明人間病」が発現して100年余りが経った。発症した人間はまさしく無色透明になってしまうという奇病だ。しかし長年の研究を経て、ついに透明人間をもとの体に戻す新薬が開発されることになった。そのニュースを聞き、透明人間病の一人・内藤彩子は、開発者である大学教授を殺害しようと計画する。いったいなぜ―(表題作)
表題作のほかに3作を収めた作品集。SF的な特殊設定のものは表題作だけ(超人的な聴覚を持つ探偵助手が活躍する「盗聴された殺人」もかな?)だが、まぁ作者らしく他作品も現実性より楽しみを重視。ミステリとしての出来はあまりかもしれないが、「六人の熱狂する日本人」は面白かった。 2020年末の各ランキングで非常に評価が高いが、私としては平均水準の楽しさだった。 |
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| No.779 | 5点 | 仁侠シネマ- 今野敏 | 2021/01/24 12:35 |
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| 任侠シリーズ第5弾。今回の立て直しは、映画館。
今回は、阿岐本組の面々が乗り込んでいき活躍するというような、これまでのような展開とはちょっと毛色が違った。主に代貸・日村と組長・阿岐本が、企業役員や政治家に相対する場面が多く、割と淡々と物語が展開していく感じだった。マル暴の甘糟、女子高生の香苗の登場場面も多かった。 それでもこのシリーズには飽きが来ない。続けて欲しいなぁ。 |
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| No.778 | 7点 | 暗黒残酷監獄- 城戸喜由 | 2021/01/24 12:20 |
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| 学校に友達はおらず、家族の不幸にも涙一つ流さない、まるでサイコパスのような高校生・清家椿太郎(ちゅんたろう)は、独特の価値観を貫いて毎日を飄々と過ごしていた。ある日、姉の御鍬が十字架に磔にされて殺され、財布の中には「この家には悪魔がいる」とのメモが。真犯人を自分で捜査しようと思い立った椿太郎は、嬉々として独自に調べ始めるが、次々と家族の暗部が明らかになっていく―
序盤は次々に登場人物が増えていき、話があちらこちらに散逸しているような印象だったが、感情を欠いたような椿太郎と周りの人たちとのやりとりが軽妙に書かれていて、気にせず読み進められた。読み終えてみれば「ここまでやるか」というくらい幾重にも仕掛けが施されており、よくここまで考えたものだと感心してしまった。「この家には悪魔がいる」の真意も・・・。設定やキャラクターが突飛ではあるが、謎解きに主眼を置いて、その楽しみを十分に味わわせてくれた。 |
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| No.777 | 7点 | 巴里マカロンの謎 - 米澤穂信 | 2021/01/24 12:03 |
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| 高校生・小鳩常悟朗は、同級生の小佐内ゆきと、必要な時に互いに手を貸し合うという「互恵関係」を結んでいる。ある日ゆきから、新装開店した名古屋の人気カフェにつき合ってほしいと頼まれ共に店を訪れる。ゆきのお目当ては季節限定のマカロンを食べることだったが、注文したマカロンがなぜか一つ増えていた。そして、そのマカロンの中にはなんと指輪が仕込まれていた・・・
なんと11年ぶりの「小市民」シリーズ。春、夏、秋ときて、「冬(続編)は出ますか?」という質問に作者は「書きます」と答えていたが、なぜか急にタイトルが「国名シリーズ」に(笑)。これは、「冬」で終わらせずに今後も続くということなのだろうか・・・? 2人の特異なキャラクターを軽妙に描きつつ、巧妙に伏線を忍ばせながら「日常の謎」を解き明かしていく作者の手腕は健在。「伯林あげぱんの謎」は、いかにも普段やりそうな人の行為をうまくすくい上げた真相で唸らされた。古典部シリーズと並んで、学生を主人公にした日常の謎もこの作者の重要な領域なのだと感じた。 |
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| No.776 | 6点 | ローズガーデン- 桐野夏生 | 2021/01/17 17:21 |
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| 表題作は、ミロの死んだ夫が主人公の話で、村野ミロの知られざる背景が見られてシリーズを読んでいる人なら楽しめるだろう。まったくミステリではないのだが、ミロの亡き夫・博夫が回想する高校時代のエピソード内でミロが話していたことは果たして本当なのか、フェイクなのか?そういう意味ではミステリアスだ。
他の短編もなかなか面白い。一番私立探偵小説らしいのはラストの「愛のトンネル」かな。「独りにしないで」は、結構予想外の真相で面白かった。 |
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| No.775 | 6点 | 頼子のために- 法月綸太郎 | 2021/01/17 17:11 |
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| 著者が学生時代に書いたものを大幅加筆して長編化したものというだけあって、ミステリとしては始めから真相が見通せるものだった。
ただ、真相解明に行きつくまでの物語自体が結構面白く、予想していた結末ではあったが、それまでの過程を楽しんで読むことができた。 |
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| No.774 | 5点 | 愛なんてセックスの書き間違い- ハーラン・エリスン | 2021/01/17 17:06 |
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| 著者は有名なSF作家らしく、本作はそのエリスンのSFではない初期の短編を集めたものということ。
作品により多少の雰囲気の違いはあるが、概ねセックス、金、暴力が飛び交うアメリカの俗文化というイメージで、短絡的でわかりやすいものもあれば、持って回った言い方の連続で話がつかみにくいものもあった。ただどの話もテンポよく展開していき、一話一話はそう長くないので苦なく読み進めることができる。 読み慣れてきたからか、「クールに行こう」「人殺しになった少年」「パンキーとイェール大出の男達」などの後半の方の作品が印象に残った。 |
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| No.773 | 5点 | あの子の殺人計画- 天祢涼 | 2021/01/10 18:57 |
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| 児童虐待をテーマとしていて、話としては面白かったのだが…
・・・うーん・・・ ラストのどんでん返しは、意表を突くことに凝りすぎててなんだか。 それまで読んできた部分を見返して、どっちがどっちの「きさら」なのかを復習しようとも思ったけど、面倒になって投げ出してしまった。 前作「希望の死んだ夜に」がよかったので、期待して読んだが、期待以上ではなかったなぁ。 |
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| No.772 | 9点 | カッティング・エッジ- ジェフリー・ディーヴァー | 2021/01/10 18:06 |
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| ダイヤモンドのカッティングを手掛ける宝石店に男が押し入り、店主と居合わせたカップルを惨殺した。多くあるダイヤモンドには手を付けず、原石のみを持ち去ったらしき犯人のねらいは?その後、「プロミサー」を名乗る男が、婚約中のカップルを次々と襲う事件が続く。ダイヤモンドへの妄執を伺わせる言動から犯人と犯行動機に迫るライムたちだったが、物語は後半から怒涛の展開を見せる。
シリーズ14作目にしても、まったく色褪せない面白さ、作者のアイデアに脱帽。「どんでん返しの帝王」と冠されていることにより、作者にとってはただでさえハードルが高いと思うのだが、それでも驚かされてしまう手腕、手数の多さに本当に感心する。 ダイヤモンドへの偏執狂による狂信的犯罪というストレートなパターンと思わせておいて、後半から怒涛のどんでん返しに向かう展開は圧巻。 とてもよかった。 |
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| No.771 | 8点 | 病院坂の首縊りの家- 横溝正史 | 2021/01/03 21:00 |
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| なんだか本サイトではあまり評価が芳しくないが、私はかなり楽しめた。
昭和28年に起きた生首風鈴殺人事件。真犯人と思われる小雪という女性の手記と失踪で、一応の解決を見たように感じられた事件が、20年の時を経て動き出す。生首風鈴事件の被害者「ビンちゃん」がリーダーを務めていたジャズコンボの同窓会中、生首写真を撮影した写真館の当主が目の前で墜落死。次いでジャズコンボの元メンバーの一人も殺害され、20年前の真相を金田一が暴いていく。 生首が風鈴のごとく吊るされているという、正史らしい舞台演出もよかったし、愛憎交差する人間関係も各巻に付されている家系図でそれほど苦にならず理解でき、絶えず動的な展開に上下巻という厚みも苦にせず読み進められた。相似の人物の入れ替わりというトリックは確かにやりつくされた(特に横溝作品では)感はあるものの、婚礼写真撮影の謎や、胴体消失の謎など、そこには数々の謎が散りばめられており、それらを一つに結ぶ結末はなかなかに読み応えがあった。 氏の有名作品は閉ざされたムラ社会での陰鬱な展開のものが多く、もちろんそれは大きな魅力だが、本作は20年という時期をまたいで(作者の事情で結果そうなったようではあるが)比較的近代的な舞台となっており面白かった。 私としては金田一耕助シリーズの中でも決して見劣りする作品ではなかった。 |
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| No.770 | 6点 | たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説- 辻真先 | 2021/01/03 20:37 |
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| 終戦直後の昭和24年。進駐軍により急激な民主化が進められる中、カツ丼こと風早勝利は、名古屋市内に急遽設けられた新制高校3年生になった。それまで決然と分けられた男女が民主化の方針によって共学に。すぐに順応するカツ丼たちを「軟弱なヤツラ」とさげすむ一派もある中、推研と映研に所属するカツ丼たちは、顧問と男女生徒5名で湯谷温泉へ、修学旅行代わりの小旅行へ。そこで事件は起きた。
各ランキングで1位をとっている本作だが、それは多分に昭和24年の世情を描いた物語全体の味と、ベテランの作者への畏敬によるところが大きいのでは。と記すように、私も十分楽しんだが、本格ミステリとして傑出した出来とはさほど思わない。序盤から最も怪しかった人物が、その通り真犯人だった。これが物語の中では好人物で、読者の心情的には裏切ってほしくないという思いもあるが、第一の殺人での不審な行動や、第二の殺人での状況からはストレートに怪しかった。それが裏切られる結末を期待していたのだが、その通りだったところがミステリとしては拍子抜けの感がある。 ただ初めに書いたように、終戦後2年当時の世情・風俗事情をリアルに描き、その中で青春時代を過ごす若者たちの青春群像劇は、それはそれで非常に面白かった。 |
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| No.769 | 6点 | ダブル・ダブル- エラリイ・クイーン | 2020/12/30 21:14 |
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| 病死、自殺、失踪と、それぞれ自然死や事故に見える出来事。失踪者の娘がエラリイを頼ってきたことから、エラリイは事件の地ライツヴィルへ向かう。そこでそれぞれの被害者が、童謡の歌詞をなぞっていることに気づいたエラリイは、すべて仕組まれた殺人ではないかと疑い出すのだが・・・
限られた登場人物でありながら、どの人物も様々な形で一連の被害者に関わっていて、それなりに誰もが疑わしい状況が上手く作り出されていた。童謡殺人とはこれまた今さらな感じはあるが、前作「十日間の不思議」の「十戒」よりは分かりやすく、入っていきやすかった。 ただ、物語が進んでいく中で一向に推理が進まず、最後のどんでん返しに期待するしかなくなっていく感じはあった。真犯人は私としてはなかなかに予想外だった。 |
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