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[ 本格/新本格 ]
嘘をつく器 死の曜変天目
一色さゆり 出版月: 2017年07月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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宝島社
2017年07月

No.2 6点 クリスティ再読 2025/01/22 11:45
曜変天目自体は、本作中でちょっとだけ触れられる龍光院以外の2つは評者も実見しているよ。不思議で美しいものではあるのだが、このところの日本人の「曜変天目大好き!」には評者も違和感みたいなものを強く感じていたのが正直なところ。

だからね、評者は本作には好意的。まじめに落ち着いた陶芸小説になっている。

艶やかで青黒い佇まい魔物のような迫力を持つと同時に、有毒植物にも似た過度な美しさを備えた、まさに曜変天目の壺だった。

と作者も曜変天目自体には反発心があるのが窺われる。けど「血を混ぜないと曜変しない」とか、「中国では不吉として割られた」とか、「日本の国宝3椀のみ」とか、「伝説」がその神秘的で宇宙を思わせる不思議と相まって、ヘンにマスコミに取り上げられることも多いわけだ。世の中には曜変天目再現をめざす陶芸家もいろいろいて、そんなあたりを本作はモチーフにしているが、作者の扱いがいろいろと「怪しい」あたりにも踏み込んでいるのが個人的に共感する。
日本人がいい加減なパチモン模作(それも中華製で逆に笑えるが)に騙されるとか、そういう話はよく出ているからね。

天目茶碗というもの自体、茶道では「書院の茶」の象徴みたいなもので、お稽古では天目を使ったお点前も学ぶけども、侘茶の精神とは別物でもあって、献茶式ならともかく、茶事として遭遇することもないものでもあったりする。ましてや「有毒植物のような」華美さのある曜変天目ならば、侘茶の美意識とは相反するものでもある。

そういうわけで、陶芸小説としては作者の視点に大変共感するのだが、ミステリとしてはもう一つかなあ。いや探偵役の馬酔木泉のキャラは評者は好き。

この情報社会で一般常識を知っていることなどなんの役に立つ?そんなもの検索をかければ分かるじゃないか。多くの人が知らないことを飛び抜けて知っている方が、よっぽど価値があるとは思わないか。

まさに御説のとおり。名探偵はホームズの昔からこうでなくちゃ。

No.1 6点 HORNET 2020/08/16 09:18
 早瀬町子は一大決心をし、会社勤めを辞めて陶芸家・西村世外の窯元に弟子入りした。人間国宝の候補と目される世外だったが、同じく陶芸の道に進んだ次男・久作を後継にすることには迷いがあるようだった。そんなある日、世外は何者かに殺されてしまう。町子は美大の先輩で保存科学の専門家・馬酔木を頼り、世外とともに葬られた真相を追う。

 美術・芸術を題材としたミステリを得意とする作者、今回の舞台は陶芸界。幻の名器「曜変天目」をキーパーツとしながら、背景に新興宗教や陶芸界のライバル、後継ぎ問題などを絡ませ、一本筋ではない展開になっている。
 本筋は世外殺しの真犯人を追うフーダニット形式で、ミステリとしてもしっかりした作りになっていた。


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一色さゆり
2020年03月
ピカソになれない私たち
平均:7.00 / 書評数:1
2017年07月
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神の値段
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